AIに「好きそうな作品ランキング」を作らせたら?
回の冒頭は雑談です。中里祐次さんには、見たいものや読みたいものが常に多すぎて、優先順位をつけられずに迷うという悩みがあります。
最近の中里さんは、ランチ中の12時から13時ごろにスマホで動画を見る時間ができました。忙しい時間帯なので、何を見るかで迷いたくないといいます。
そこで中里さんは、読みたいノンフィクションやドキュメンタリーのタイトルを約100作並べたリストと、映画やドラマの記録サイトFilmarks ── 映画・ドラマ・アニメの感想や視聴記録を残せる日本のレビューサービス。見た作品や見たい作品を登録できますに登録した作品をAIに読ませました。そのうえで、好きそうな作品のランキングを作ってもらったそうです。
並び替えだけじゃなくても新しいのを入れてもいいから。
AIは、連続ドラマ型と映画のような単発型に分けてランキングを作りました。そこで勧められたのが、中国の一人っ子政策を扱ったAmazonプライムオリジナルのドキュメンタリー『一人っ子の国』です。
中里さんにとって『一人っ子の国』は、自分のリストにもFilmarksにも入っていなかった作品でした。見てみるとすごく良かったそうで、AIに「ありがとう」と言いたくなるランキングだったと話します。
「もったいない精神」と「気分で選ぶ」の違い
中里さんの迷いの正体は、見た作品がハマらなかったときに「優先順位を間違えたのではないか」と感じるストレスです。この話は、いろいろな人に言っても伝わりにくいといいます。
この1時間だったら、この優先順位2位にあったこれを見てた方が自分には響いたんじゃないかとか、後で思っちゃう。
桜林直子さんはこれを「時間恐怖症みたい」と受け止めます。中里さん自身も、死ぬまでいいものをたくさん見たいという気持ちから、いつも時間に追われていると認めます。
一方の桜林さんは、そもそもリストを作らず、気分を最優先にしています。夜ご飯を食べながら見るもの、寝る前に見るものなど、場面ごとに合う作品が違うといいます。
ビジネス書がどうしても読めない時期は、どんなに必要でも読まないし。
だからつまんなかったのか、気分に合わなかったのかもわかんないし。
桜林さんは、体調や気分はAIには絶対にわからないと話します。中里さんも、8月末の繁忙期に疲れすぎて、マンガ『ザ・ファブル』しか読めなかった経験を挙げ、気分の大切さにうなずきました。
見たい作品をリスト化し、AIに優先順位をつけてもらう。外れると「もったいない」と感じる
リストは作らず、その時の気分や体調を最優先する。外れても気分のせいかもしれないと考える
「夫婦の教育方針は一致させるべき」というお便り
本題の「のろい」は、「夫婦の教育方針は一致させるべき」です。桜林さんが、リスナーのポーさんから届いたお便りを読み上げました。
夫婦間の教育方針のずれで悩んでいます。息子は5歳の時に自閉スペクトラム症と診断され、支援級入学から通常級に進み、6年生になりました。WISCのテストは74で平均より低いです。勉強面は習い事でフォローしていますが、コミュニケーションが苦手です。
ポー さんから
今回相談したいのは、定期的にカウンセリングを受けている児童発達支援の方から進学に向けてWISCを受けてはどうかと言われ、夫婦で意見が割れていることです。私はテストの結果が前回より低くなったとしても、特性を理解するのは必要だと思っています。けれど、夫は小学生で何でもできる子は一握り。ゆっくりなのも個性だから、あえて結果が障害と言われるテストを受ける必要はないと言います。
ポー さんから
他にも暑さが苦手で、高学年になっても送り迎えで登校しているのも、私は必要な支援と思っていますが、手伝いすぎだと言われます。私も頑固なのでテストの予約は変えたくありません。こっそり受けに行って結果を伝えないというのは事態が悪くなるでしょうか。
ポー さんから
ポーさんの相談には、検査を受けるかどうか、送り迎えは手伝いすぎか、こっそり受けてよいか、という3つの論点が含まれています。最後の問いには、桜林さんも思わず笑ってしまったそうです。
方針はどこまでそろえるべき?WISCは何を測る検査か
中里さんはまず、タイトルの「のろい」について、教育方針は一致させた方がいいと前置きします。ただし、考えを全部同じにするのは難しいという点で、二人の意見はそろいました。
無理だけど、お子さんの前では同じ感じでいた方がいいんじゃないかな。
お母さんはこう言ってるけど、お父さんはこう言ってるっていう違う何か答えが来ると、お子さん的にはちょっと(つらい)。
桜林さんは、方針はなんとなく一致させた方がいいとしつつ、夫婦で大事にしたいことは違うのだろうと付け加えます。そのうえで、WISCを受けると診断が出るのかを中里さんに尋ねました。
中里さんによると、WISC ── 児童向けの知能検査。言語理解やワーキングメモリー、処理速度など複数の指標を測り、得意・不得意のバランスを見るために使われますには知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度などの項目があります。Branchに来る子でいえば、知覚推理が120台なのに処理速度が70や80しかないような、凸凹の激しさから困りごとを読み取るそうです。
中里さんは、WISCそのものが発達障害だと結果を出すわけではないと説明します。凸凹を見たうえで医師が診断するもので、項目の差が40ほどあると診断されることが多い、という感覚だといいます。全体的に低い場合は、発達障害とはまた別で、知的にゆっくりという見方になるそうです。
検査は「子どもが生きやすくなるためのツール」
中里さんは、ポーさんは知識がしっかりある人だろうと見ています。夫に検査の意味をきちんと伝えるか、先生からWISCを受ける理由を説明してもらえば、解決するかもしれないと話します。
中里さんが挙げた具体例は、処理速度が低く、知覚推理やワーキングメモリーが高い子です。先生の話や問題は理解できているのに、答案用紙に書き写すことが苦手で、テストの点が悪くなることがあるといいます。
中里さんによると、そうした凸凹がわかれば、書字障害 ── 文字を書くことに著しい困難がある学習障害の一種。読む・理解する力に問題がなくても、書き写しや文字を書く作業でつまずきますなどに合わせて、書く練習やサポートを考えられます。支援施設にもつながりやすくなるそうです。
困りごとがよく理解でき、それによってサポートの仕方がよりわかるようになるっていう、なんかツールみたいに考えた方がいいんじゃないかなと思って。
この話を受けて、中里さんはWISCを障害のレッテルではなく、サポートの方法を知るためのツールとして捉える見方を示しました。
検査を受ける
知覚推理や処理速度などの凸凹がわかる
困りごとを理解する
理解はできるのに書き写せない、などの原因が見える
サポートを考える
苦手な部分のトレーニングや手助けの方法がわかる
支援につながる
支援施設などにもつながりやすくなる
送り迎えが「手伝いすぎ」と言われる点について、桜林さんは、中里さんがこれまでも話してきたことを確認します。
他の人から見たら過保護でやりすぎって見えるかもしれないけど、その子にとっては必要なことっていうのがあるから、周りにどう思われるかは関係ないんだよね。
中里さんによると、発達の特性がある子の親は、普段から「そこまでやったら自分でできるようにならない」と言われがちです。それでも子どもにとって大切なことなら、周りの意見は気にしなくていいと話します。
中里さんは、ポーさんは児童発達支援のカウンセリングを受けながら学んでいるので、適切な対応をしているのではないかと見ています。桜林さんも、何でも手伝うのではなく、苦手な理由がわかったうえでサポートしているのだろうと話しました。
夫が検査をためらう理由と、こっそり受けることの危うさ
桜林さんは、夫にとっては「これができて、これができない」と言われること自体が不快なのかもしれないと推し量ります。
お父様からすると、なんか障害っていうレッテルが貼られると、まあこの子がかわいそうだ、なんなら自分もそのレッテルを貼られた子を見るのがちょっと苦しいとかもあるかもしれないし。
それでも中里さんは、検査で子どもが楽になる可能性があると話します。障害があることを本人に伝えるかどうかは、また別の話だとも補足しました。
桜林さんは、子どもによいことをしたい気持ちは夫婦とも同じでも、どこまでやるかや、何を大事にするかが違ってぶつかることはよくあると話します。中里さんはさらに、発達障害の分野は当事者になって初めて学ぶ人が多く、知識の差から対立しやすいと見ています。
こっそり検査を受けに行くことについては、二人とも勧めませんでした。中里さんは、いずれ伝えるかどうかの話になり、後で知られたときにこじれる可能性を挙げます。
夫が自分はもう結果を見たくない、受けるなら勝手に受けて来いって言うんだったら結果見せずに受けに行くは別にいいけど、でもそんなに頑なに見たくない理由もなんでかなってなっちゃうしね。
凸凹はゼロの人はいない、という当事者の目線
中里さんは、夫婦の間には知識の差があるだろうとしつつ、当事者として感じたことも語ります。子どもに発達障害の診断が出たあとも、レゴにすごく集中したり、言語能力が高かったりと、面白い部分があると思っていたそうです。
中里さんの子どもは、実際にWISCを受けると言語理解が120台と高かったそうです。そのうえで中里さんは、数値に出ない部分も含めて、凸凹がゼロの人はいないと話します。
桜林さんは、凸凹は全員にあるという点は夫の言う通りだと受け止めます。そのうえで中里さんは、検査結果と親の見方をどう両立させるかを語りました。
僕はここが可愛いしいいしいい子だなと思うし、面白い部分だなと思うから、それでOKってなんか思えればいいんじゃないかな。
桜林さんはこれを「見方の問題」とまとめます。検査結果が出ても、子どもの良さを信じる気持ちは揺らがなくていい、という視点です。
子どもの頃に受けたかった?得意を知ることの意味
桜林さんは、自分が子どもの頃にはこうした検査を受ける機会がなかったと振り返ります。小学生のときに受けて、自分の得意を知りたかったといいます。
なんかやっぱりそっか、私これ得意なんだ、伸ばそうみたいなの自分でも知りたかった気がする。
中里さんは、大人になってから受ける人もいると紹介しつつ、桜林さんは言語理解が絶対に高いと思うと返します。桜林さんは、本をたくさん読んだから言語理解が高くなったのか、元々高いから本を読んだのかが気になると話しました。
中里さんの答えは、どちらもあるだろうが、特性として元々高かったのではないか、というものです。話は「嫌がる子にも本をたくさん読ませればいい」という考え方に移ります。
嫌いになるが一番やっぱダメで。
やらせるで嫌いになっちゃった時は結構最悪な結果になっちゃうから。
中里さんによると、勉強でも何でも、無理にやらせて嫌いにならないようにすることは保っておいた方がいいそうです。
桜林さんは、WISCには言語理解、視空間、流動性推理、ワーキングメモリー、処理速度の5つの指標と全検査IQがあることを調べて紹介します。ポーさんの書いた74は全体の平均の値だろうと、中里さんは見ています。
二人によると、平均で74という数字だけでは、本当に知りたい得意・不得意のバランスはわかりません。ポーさんの子どもの場合も、おそらく凸凹が出ているのだろうと中里さんは話します。
診断は受けた方がいい?HSCとの違い
桜林さんは、WISCの注意点として、検査だけで診断の確定はできず、専門医が総合的に判断すると読み上げます。WISCはあくまで傾向の指針だという確認です。
中里さんは、意見は人それぞれだと前置きしたうえで、診断は基本的に受けた方がいいという考えです。診断が出たからこそつながれる施設や、同じ立場の親と知り合える場があり、ASDについての本を読み始めるきっかけにもなるといいます。
でも名前がついたら何か変わるわけじゃないから、その(名前が)つく前が一緒なんだったら、どうサポートしたらいいかとか、そういう傾向を勉強したりとかっていうのができるなら知りたいね。
中里さんは対比として、3、4年前に流行したHSC ── Highly Sensitive Childの略で、生まれつき感受性が強く敏感な子どもを指す言葉。医学的な診断名ではなく、心理学の概念ですを挙げます。発達障害と診断されたくない人が、その手前で「HSCです」と名乗る面もあったといいます。
あれHSCって診断じゃないんですよ。もうほぼ占いと同じようなもんで、私この傾向ありますって時に。
桜林さんも、HSCやHSPは人がつけるものではなく自称だと応じます。中里さんは、自称だからこそ困りごとを解決する施設にはつながれない点がデメリットだと話しました。
検査などを踏まえて専門医が判断する。困りごとを解決する施設や支援につながりやすい
自分で「この傾向がある」と名乗るもの。仲間とはつながれても、支援施設にはつながれない
最後に中里さんは、相談への答えを2点にまとめます。考えを全部一緒にするのは難しくても、子どもの前ではあまりずれない方がいいこと。そして、検査は子どもが生きやすくなるための提案をしてくれる場なので、受けた方がいいということです。
桜林さんは、気持ちだけで方針を決めると夫婦はずれるが、1つ指針があれば決めやすくなると締めくくりました。
まとめ
「夫婦の教育方針は一致させるべき」というのろいに対して、二人は「考えを全部そろえるのは無理でも、子どもの前ではずれない方がいい」と答えました。そのうえで、WISCや診断は子どもにレッテルを貼るものではなく、困りごとを理解してサポートにつなげるためのツールだと捉え直しています。
- 夫婦の考えを全部一致させるのは難しいが、子どもの前では方針をそろえた方がいい
- WISCは凸凹を見るための指針で、それだけで診断が確定するものではない
- 周りから過保護に見えても、その子に必要な支援なら気にしなくていい
- こっそり検査を受けるのは、後で知られたときにこじれる可能性がある
- 診断は支援施設や同じ立場の親とつながるきっかけになり、自称のHSCとはそこが違う






