AIは部下ではなく上司として扱うべき?
三浦さんによると、最近のThe Solutionsでは40代のビジネスパーソンがこれからどう生きていくかという話が求められているそうです。20代や10代はAIネイティブとして新しい働き方を自然に作っていくのに対し、スマホとGoogleで育った世代はどうすればいいのか、というのがこの回の出発点です。
三浦さん自身は「AIを使っているふり」をしていて、実際はアメリカ出張に必要なものを聞く程度だと打ち明けます。ChatGPTをGoogleの代わりに使う程度の人は次に何をすべきか、という問いに、深津さんはまず考え方を変えることを勧めました。
深津さんの提案は、AIを部下として使いこなすのではなく、AIに上司になってもらい、自分に命令を出してもらうというものです。AIを上司にして自分が働き、成果が出るかを試すほうがよいのではないか、と話します。
むしろ(GOの)会長にAIを置いて、会長の意向を伺ってみたらどうなるか試す方が楽だし。
深津さんはこのやり方を、宮崎駿さんのカバン持ちをするような期間にたとえます。それを1年か2年過ごせば、40代にもまだ成長の伸び幅があるのではないか、という見立てです。
深津さんが指摘する多くの人の間違いは、自分のほうがAIより頭がいいと思い込み、AIが考える案よりもレベルの低い命令を出してしまうことです。三浦さんは、上司から指示を受けたときに作業をAIに投げるのではなく、「こんな指示をされたけどどうしたらいい?」と相談する使い方だと受け止めました。
深津さんは、トップレベルの人材はまだAIより頭がいいかもしれないとしつつ、あらゆる分野で自分がトップという人はほとんどいないと続けます。経営もレシピもフィットネスも株式運用も、平均点で言えばAIのほうが上手になるため、AIを上に置き、機能しないところだけ自分でやるほうがよいという考えです。
ChatGPT・Claude・Geminiはどう使い分ける?
三浦さんが使い分けを尋ねると、深津さんは最近ChatGPTからClaudeに主役を交代させたと答えます。ただしAIの優劣は築地の魚のように「今月はこれが活きがいい」という話で、すぐ変わると前置きしました。
深津さんによると、ChatGPTのアステラはとても頭がいい一方で、一切責任を負わない大蔵省の官僚のような存在です。言われたことしかやらず、間違っていると思っても言われたとおりにこなすため、間違った仕事すら完璧に仕上げてしまうといいます。
最悪の人間じゃないですか。
一方でClaudeは、能力では一段下がるものの、こちらの意図を察して「こういうのも準備すると良さそうなので提案していいですか」と寄り添ってくれる存在だと深津さんは話します。Geminiは、Googleがビッグテックであるためにコンプライアンスや審査に縛られ、攻めたことができないのが気の毒なところで、ちゃんとした外注先のような動き方だと評しました。
深津さんの3つのAIの性格づけは、次のように整理できます。
| AI | たとえ | 特徴 |
|---|---|---|
| ChatGPT | 責任を負わない大蔵省の官僚 | 頭はとても良いが、言われたことだけを完璧にこなす |
| Claude | 一緒に考える相手 | 一段下がるが、意図を察して提案してくれる |
| Gemini | ちゃんとした外注の人 | 規制に縛られ攻められないが、硬い仕事をきちんとこなす |
よほどAIの操作に慣れた人でなければ、Claudeと一緒に考えて計画表を作り、それをChatGPTに渡して実行させる形が今はよい、と深津さんは勧めます。ChatGPTは「究極の下請け」にするのがよいという位置づけです。
なぜ「出す」より「入れる」が大事なのか?
真面目に仕事をする前提で一番やるべきことを問われ、深津さんは「出す」より「入れる」のほうが優先順位が高いと答えます。情報発信は今年でも来年でもできますが、今年の仕事のデータをAIに入れる作業は今年やらないと、来年になってから取り戻せないからです。
深津さんはGOを例に、プロジェクトのログ、会議の会話、途中のプロトタイプをすべて貯めておけば、その中からバズるものやエモいものを編纂して記事にしてとAIに頼めるようになると説明します。途中経過やプロセスを全部残しておくことが前提になるという話です。
深津さんが考えるAIネイティブ世代と40代の最大の差は、AIが持っている本人のデータ量です。AIネイティブの子は、生まれたときから会話、行動、好み、失敗をすべて知っているAIと一緒に仕事ができます。
俺らは40からスタートの信頼関係しか持ってないけど、向こうは生まれた時からの信頼関係。
三浦さんはこれをポケモンとトレーナーの関係の深さにたとえ、深津さんはサトシとピカチュウのようなものだと応じました。40年分の過去は捏造して作ることができないため、それが一番大きな差になると深津さんは考えています。
深津さんは健康を例に挙げます。深津さん自身は人間ドックの結果を10年分ChatGPTに読ませていますが、多くの人は2〜3年分程度です。一方でAIネイティブ世代は、生まれたときからの血液データや食生活による血糖値の変化をもとに助言を受けながら育つため、体力や健康の基礎値から違ってくるといいます。
生まれた時からの会話・行動・好み・失敗・健康データを知るAIと組める
40歳前後から先のデータしか知らないAIと組むしかない
深津さんは、この差が財産や人生、意思決定、教育にも及ぶなら、40代は「だいぶハンディキャップを負った勝負」をしなければならないのではないかと話します。三浦さんは、スマホ時代の若い世代が発信ネイティブだったのに対し、これからはインプットネイティブ、パートナーネイティブの世代になると整理しました。
同じ土俵で素直に戦えば、積み重ねたパートナー力で「ピカチュウとサトシ」に蹂躙されると深津さんは言います。だからこそ今からでも全人生を貯めていく、というのが二人の結論です。
データを貯める最初の一歩として深津さんが挙げたのは、次のような手順です。
深津さんは、社員に録音機器を配って勤務時間を記録したり、オフィスにカメラとマイクを付けたりするのが数年後を想定すれば理想だとしつつ、プライバシー法やNDAがあり、今の日本社会ではまだ受け入れられないと補足します。
深津さんによれば、これはトレードオフの問題です。こっそり何かをする自由を失う代わりに健康や寿命、財産、安全が手に入るとしたらどちらを選ぶかで、プライバシーが欲しい人は記録しない空間を作り、人生のレバレッジが欲しい人は自宅まで全録音にしてもよいかもしれない、と話しました。
40代は何を諦め、何を諦めなくていいのか?
三浦さんは、ミッドライフクライシスの話題が増えていると切り出します。仕事がAIに置き換わり、手を動かすやりがいが失われるかもしれないとき、40代は何にやりがいを持てばいいのか、という問いです。
もう後半戦というか、ゲームの流れは大体決まっちゃったので、受け入れるのが一番楽な気はしますけどね。
三浦さんが「残酷なブッダ」「悟るには早すぎる」と返すと、深津さんは、まだできると思うこと自体はよいとしたうえで、そのやり方をAIありきの社会でどう実現するかという考え方にせざるを得ないと話します。AIと殴り合って勝つという発想は、年齢的にも潰れてしまうのでやめたほうがいいという見方です。
何を諦めるべきかについて、深津さんは、億万長者になることは諦めなくてもいいかもしれない一方で、上場するスタートアップを作るといった目標は、だんだん諦めたほうがいい社会になっていく気がすると述べます。
さらに深津さんは、行動力のある人がすべてを持っていく時代になると指摘します。今はAIを本格的に使う人が少ないため、お金と行動力がある人が取りたい放題の状態ですが、これから椅子取りゲームが始まると見ています。
現在
AIを使う人が少なく、お金と行動力がある人が取りたい放題
椅子取りゲーム
全員がAIに頼んで取りに行くようになる
大手の全勝ち
資金とリソースを持つ代理店や商社が全部持っていく
隙間の消滅
見落とされたお金持ちスポットがほぼなくなる
そのため、庶民にチャンスが降りてこない時代が増えていき、今はとにかく早く行動するかどうかの勝負になると深津さんは話します。チャンスの入り口はどんどん小さくなると思っておいたほうがいい、という警告です。
肉体労働もAIに吸収されるのか?
三浦さんは、画面の中の解決策が簡単に出てくる時代だからこそ、画面の外が重要になると考えています。たとえばオフィスを掃除する人のように、体を動かして価値を生む人の価値は上がるのではないか、と問いかけました。
深津さんは、体を動かす仕事のトップ層はスポーツ選手のような貴重な人材になる一方で、それ以外は代わりがきく低賃金の構造になると見ています。あらゆる肉体労働がスポーツ選手と同じ一部の一人勝ちの構造になっていく、という見立てです。
さらに深津さんは、体を使う仕事も人々が思っているよりAIに取り込まれると注意を促します。ライバルはせいぜいロボットで、ロボットには複雑すぎる、コストが合わないから大丈夫、という考え方は危ういといいます。
深津さんの説明では、儲かる肉体労働の業界やAIがアクセスできない業界があれば、AIやAIを持つ会社がその業界の会社を買収し、AIのAPIとつないでしまいます。すると「ChatGPT、壁を塗って」と頼むだけで「この人を派遣するので1万円ください」と返ってくる社会になるかもしれません。
我々はAIに負けないって思ってるけど、AIの下部組織として吸収される可能性。
三浦さんはこれを、AIがコントロールセンターになり、人間がインターフェイス化していく状態だと言い換えました。深津さん自身も、今は企業の役員が「ChatGPTに聞いたら深津さんを推薦された」と訪ねてくることがあるものの、長期的には「外注しなくても私ができます」とAIに言われる可能性があり、油断はできないと話します。
三浦さんも「今だけ調子がいいのではないか」という恐怖心をずっと抱えていると共感します。深津さんが気が大きくなってビルや工場を作ると大変になるかもしれないと冗談めかすと、三浦さんは最近広尾にバーを買ったと明かし、深津さんはバーはAI時代に欲しいものの一つだと羨ましがりました。
三浦さんはここまでの話から、AIを部下ではなく上司として捉えるなど、AIをどう捉えるか次第で生き方の楽さが変わると感じたと話します。深津さんは経営者にも、AIを「人生のカーナビ」だと思うよう伝えているそうです。
別にカーナビにディズニーランド行く時、一番最短経路を聞くの屈辱ではないし。
三浦さんは、爆笑問題のリーダーは田中さんだが、太田さんは「田中をリーダーに決めたのは俺」と言う、というエピソードを紹介します。AIは自分の人生のリーダーだが、AIをリーダーにしたのは自分だ、という気持ちで向き合うのがヒントになるのではないかという考えです。
AIで暇になった時間に何をするか?
三浦さんは、AIによって人間はどんどん暇になり、余暇が増えていくと指摘します。深津さんは、そこで知的好奇心の側に行くか、散財して遊ぶ側に行くかで大きく分かれるのではないかと答えました。
深津さん自身は、労働時間で言えばかなり暇になったものの、勉強を労働と考えるなら密度はむしろ上がりすぎていると話します。三浦さんは、友達も勉強したい気持ちもないと無駄な消費に走ってしまうと懸念し、深津さんもソシャゲでガチャを回し続けるのはもったいないかもしれないと応じました。
おすすめの時間の使い方として深津さんが挙げたのは、アプリを1〜2本、一人で作ってみる実験です。ただ三浦さんは、それほど前向きな意識を持てない人も多いと返します。
別に僕もアプリそんな作りたくないもんな。何したらいいんだろう。
三浦さんが今楽しんでいるのは、気になったことをすぐAIに聞くことです。「今日の空はなぜこんな景色なのか」「この花の名前は」「山の上は太陽に近いのになぜ寒いのか」と、小学生のような気持ちで質問しているといいます。深津さんは、それが一番健全な楽しみ方だと認めました。
そのうえで深津さんは、三浦さんが買ったバーに、予算的には絶対に見合わない注文システムを作ってみようと提案します。カクテルの入れ方の動画や由来、うんちくがすべて入り、音楽まで制御できるようなアプリです。三浦さんはNOT A HOTELの館内制御システムをバーでやるようなものだと面白がりました。
今言ったみたいな経済合理性無視したオーバークオリティでやりたいものが1個でもあれば、結構楽しい人生になる。
深津さんによると、これまで大富豪の道楽でしかできなかったことが、今はAIに頼めば作れてしまいます。三浦さんは、持っている本の写真を撮って送るだけで、毎週好きな本を薦めてくれるアプリが作れると例を挙げ、深津さんは登山好きなら山の草の写真を集めて自然事典を作るといった「意味不明なオーバークオリティ」を探せる人は超楽しいと話しました。
深津さん自身は今、自分専用のVRフィットネスシステムを作っているそうです。VRゴーグルを被って歩きながらChatGPTに改善を指示し、開発と健康を同時に進めるという試みで、作っても1ミリも儲からないけれど夢中になっていると明かしました。
幸せの条件は「褒められないで楽しい」を見つけられるか?
深津さんは、AI時代に幸せになれるかどうかの最低条件として、自分の中から喜びや達成感を掘り出せるかどうかを挙げます。自分の中から幸せを掘り出せる人は大丈夫だと話しました。
一方で、幸せの大半を他者からの「すごいね」や「羨ましい」から得ている人は苦しくなる、と深津さんは指摘します。ほとんどの技術やスキル、知性はAIがこなすため、「別にすごくない」で終わってしまい、あらゆる達成感がなくなってしまうからです。
三浦さんは、時間が余ったからとソシャゲに課金し続けるのはもったいないとし、「ソシャゲをやるな、ソシャゲを作れ」かもしれないと個人的な意見として述べます。深津さんは、意味なく脳を刺激するためだけに好きでもないことを続けると、合法な依存症のスパイラルに陥ってしまうと応じました。
深津さんは、自分で楽しさを生み出せない人ほどそこにハマる人が増え、それしかやることがなくなってしまうのではないかと懸念します。三浦さんは、自分が楽しいと思えることを見つけ、作れということであり、それはAIで作れてしまうと整理しました。
深津さんはそこに、欲望さえ注入できればという条件を付けます。多くの人は欲望の注入が下手だという印象があり、広告の提案書なら「コンペの要件を満たした提案を作って」で止まってしまうといいます。
深津さんが勧めるのは、「この提案を見た会長が感動して直接会いたいと言い出し、賞を取り、フラッグシップ案件になってキャリアが変わる」ような資料を作って、とまで言えるかどうかです。仕事でも人生のプランでも楽しさでも、欲望をどれだけ大きく入れられるかが一番雑で一番大きな差になると話します。
海賊王に俺はなるぐらい(欲望を)入れときゃいいと思うんです。
まとめ
深津さんの提言は、40代がAIネイティブ世代と同じ土俵で戦えばハンディを負うという現実を受け入れたうえで、AIを上司やカーナビとして使い、今から自分のデータを貯め、自分の中から楽しさを生み出すことに集約されます。
- AIより頭がいいという前提を手放し、AIを上司や人生のカーナビとして扱う
- 情報を出すより、仕事や健康のログをAIに入れて貯めることを優先する
- チャンスの入り口は小さくなるため、早く行動するかどうかが分かれ目になる
- 肉体労働もAIに吸収されうるため、画面の外だから安全とは考えない
- 褒められなくても楽しいことを見つけ、大きな欲望をAIに注入して経済合理性を無視したものを作る




