タリーズ初の海外アーティストコラボは何を仕掛けたのか
この回のきっかけは、外食企業がK-POPやアニメとの異業種コラボを次々に展開しているというニュースです。タリーズコーヒーはK-POP、餃子チェーンの肉汁餃子のダンダダンはアニメと組んでおり、CEOセオさんは「似ているようで違う戦略」が見えてきたとして、数字面も含めて深掘りしています。
タリーズのコラボは、同社にとって初の海外アーティストとの取り組みです。若年層との接点拡大を狙ったもので、2027年8月の創業30周年に向けた挑戦だとコメントされています。
コラボ商品には、キャラメルフォームアメリカーノやマンゴーセパレートティーのほか、ヤンニョムチキンチーズサンドのような韓国発祥のフードも並びました。さらに、コラボドリンクを買った人は1人2点まで、900円のステッカーセットや880円のプクプクチャームを購入できます。
タリーズのコラボでは、グラスやボトル、ショルダータイプのエコバッグ、ミニポーチといった単品物販も、おおよそ1900円から3000円の価格帯で用意されました。展開は東京・大阪・愛知の3店舗から始まり、7月25日から札幌・仙台・博多が加わって計6店舗になっています。
タリーズは来店を1回で終わらせない仕組みも用意しました。アプリのスタンプラリーではスタンプ3個で抽選ステッカーがもらえ、Xでフォローやリポストをすると、抽選で100名に300円分のデジタルギフトが当たります。
CEOセオさんが特に面白いと見ているのは、タリーズの企画の作り方です。商品開発の担当者がライブ会場やイベントでファンを徹底的に観察し、半年以上議論して設計したといいます。
単純に人気だからちょっとコラボしようというよりは、まあ結構そのファンの動向とか、アーティストの特徴とかね、こういったところをしっかり見た上で、今回の企画を設計したということです。
アニメと組み続けるダンダダン、狙いは新規客の獲得
比較対象として挙げられたのが、肉汁餃子のダンダダンです。運営するのは東証グロースに上場するナッティースワンキーホールディングスで、ブルーロック、五等分の花嫁、新テニスの王子様など、さまざまなアニメとコラボしています。
ダンダダンのIRでは、コラボの目的は新規来店の創出だと書かれています。CEOセオさんは、IPのファンを新しい顧客として獲得しに行くのは、コラボとして当然の狙いだと受け止めています。
CEOセオさんは、タリーズのK-POPとダンダダンのアニメを対照的な事例として見ています。タリーズに近い例としては、ゴンチャジャパンがStray KidsのFelixをグローバルアンバサダーに起用したことや、ファーストキッチンがi-dleとコラボしたことが挙げられました。
まあK-POPと、まあアニメという違いもあるんですけども、それとはまた少し違う深みがあると、えー、いうところです。
「明日を共に」とブランドのビジョンを重ねるとどう変わる?
タリーズのコラボで大きく語られているのは、ブランドのビジョンとアーティストを重ね合わせている点です。TOMORROW X TOGETHER、通称TXTというグループ名には「明日を共に」という意味があり、タリーズが伝えたいメッセージとも重なっています。
CEOセオさんによれば、単純なコラボなら、ファンは「たまたまタリーズがやってるから行く」程度で終わりかねません。一方でメッセージが一致していれば、コラボ終了後もタリーズが選択肢として残る可能性があります。
このTXT好きだから、まあこのTXTが掲げてる明日を共にというこんなもん好きだから、えー、だったらタリーズ行こうかなみたいな(選択肢として深く刻まれる)。
ブランドの理念は本来プロダクトを通じて伝わるのが理想ですが、CEOセオさんはそれは簡単ではないと話します。コラボを使ってブランドのメッセージを直接伝えることが、タリーズの設計の要だという見方です。
タリーズはお金の流れも工夫しています。ドリンクは690円程度でも、グッズで2000円や2900円の買い物が加わるため、全体の客単価が大きく上がります。
タリーズのコラボの仕組みは、売上・来店・宣伝の3方向でリターンを取りにいく流れとして整理できます。
ドリンクとフード
コラボ商品で来店のきっかけを作る
限定グッズの物販
飲食以上の売上を取り、客単価を上げる
アプリのスタンプラリー
1回で終わらせず来店頻度を高める
Xでのフォロー・リポスト
ファンの推し活の熱量を宣伝に変える
店頭では、店員がおすすめや体験を補う声掛けをしているといいます。CEOセオさんは、タリーズがコラボの意味を丁寧に伝え、物販とブランドメッセージの浸透に力を入れていると見ています。
これに対して肉汁餃子のダンダダンは、多くのIPとコラボしているぶん、ブランドメッセージを浸透させるのは難しいとCEOセオさんは指摘します。ブルーロックのファンと新テニスの王子様のファンは客層が違い、親和性を作りにくいからです。
とにかく新規のお客さんを捕まえてくるためにコラボしまくってるなというふうに見えるので、結論、要するに掛け捨てに見えるってことですね。
ただしCEOセオさんは、ダンダダンが悪いわけではないとも付け加えています。コラボはもともと掛け捨てが基本で、K-POPはマーケティングファーストでアーティストが作られているぶん、企業がアサインしやすく、物語も設計しやすいという違いがあるという見立てです。
ビジョンが重なるアーティスト1組と組み、物販・来店頻度・SNSまで設計して継続につなげる
多くのIPと次々に組み、新規来店の創出を狙う。客層がばらけ、掛け捨てに見えやすい
数字で見るタリーズとダンダダンの明暗
CEOセオさんは、掛け捨てのコラボを重ねるだけでは厳しいことが数字にも表れていると話します。タリーズは売上437億円、営業利益35億円で、前期比で売上8.5%増、営業利益8.7%増と、3期連続の増収増益です。
タリーズの店舗数は現在830店舗で、2029年に1000店舗を目標としています。伸びている局面で、掛け捨てではない継続性のあるコラボを展開しているという位置づけです。
一方の肉汁餃子のダンダダンは、売上高76億円で前期比6.8%増ですが、営業損益は5億円の赤字です。2027年1月期の予想では売上高80億円、営業利益4000万円で黒字転換を見込んでいます。
ダンダダンの既存店売上は月間平均で98.4%にとどまり、店舗数も142店舗から133店舗に減りました。さらに2027年1月期末には129店まで減らす計画だといいます。
両社の主要な数字を並べると、規模と利益の差がはっきり見えます。
| 項目 | タリーズ | ダンダダン |
|---|---|---|
| 売上高 | 437億円(前期比8.5%増) | 76億円(前期比6.8%増) |
| 営業損益 | 35億円(前期比8.7%増) | 5億円の損失 |
| 店舗数 | 830店舗(2029年に1000店舗目標) | 142店舗から133店舗に減少 |
CEOセオさんは、タリーズは好調のなかでさらに上積みを狙い、ダンダダンは欠けた部分をどう埋めるかを考える立場だと整理します。既存店売上98.4%を伸ばすには新規客が必要で、新客を集める設計が欠かせないため、戦略も違ってくるという見方です。
35万人を動員するK-POPの熱量と、外食市場の現実
CEOセオさんは、K-POPの動員力にも注目しています。TXTは2024年にK-POPアーティスト史上最速で日本の4大ドームツアーを行い30万人を動員し、2025年11月から2026年2月には自身初の日本5大ドームツアーで35万人以上を動員しました。
CEOセオさんによれば、SNSのフォロワーやチャンネル登録はワンクリックで済み、移動もせず好きなときに見られます。ライブの動員は、自らお金を払い、現場に足を運び、2〜3時間を過ごすもので、重みが違うといいます。
だからこういう人たちは「タリーズでこういうことやるよ」って言ったら大体行きますよね、そのコアなファンは特に。
ファンの熱量が高いぶん、タリーズにとっては、コラボを掛け捨てにせず積み上げにすることが戦略上とても重要になります。CEOセオさんは、それが今のコラボに必要な土台だと考えています。
アニメ産業も伸びており、2024年は3兆8400億円で前年比114%です。海外市場は2兆1700億円と、初めて国内を上回りました。CEOセオさんはアニメもIPとして非常に強いとしつつ、K-POPアーティストの熱量はまた違うと見ています。
外食産業全体は2023年に24兆1500億円まで伸びています。ただ売上高の前年比107%に対して客単価が104%伸びており、CEOセオさんは、値上げで市場のパイが膨らんでいるだけで、客数はそれほど増えていないと読み解きます。
CEOセオさんによれば、決算を見ると、うまくいっている飲食企業は値上げしても客数が増えています。うまくいっていない企業は、売上が伸びても利益が減る増収減益が多く、その減益分を補う一つの解としてコラボがあるという見立てです。
コラボは万能薬ではない、強者がより強くなる構図
CEOセオさんは最後に、単発のコラボや多方面とのコラボが増えていることに注意を促しています。コラボで一瞬伸びたように見えても、そのお客さんが本当に自社の客になるかは別の問題だからです。
CEOセオさんは、コラボをファッションのセールに近い感覚だと例えています。セールに慣れた客が通常価格で買わなくなるように、コラボだけに来る客を自社の客に誘導できていないケースがあり得るという指摘です。
さらに、成功しているアーティストやIPは、成功している企業と組むことが多いといいます。タリーズは好調で830店舗あるからこそ有力なアーティストとコラボできますが、店舗数の少ないこれからのブランドが同じことをするのは難しいと考えられます。
結局は二極化してるというか、強いところはどんどん強くなるし、弱いところはどんどん弱くなるというのが今の現状のマーケットなんで、えー、この辺をうまく戦略的に、えー、考えていく必要があると。
だからこそCEOセオさんは、コラボに頼る前に自社の本業を伸ばすことがまず必要だと結論づけています。
まとめ
タリーズはビジョンの重なるTXTと組み、物販・来店頻度・SNSまで設計して、コラボを積み上げ型の施策にしました。一方で多くのIPと組むダンダダンは掛け捨てに見えやすく、CEOセオさんは、コラボは万能薬ではなく、本業の強さが前提になると話しています。
- タリーズはTXTの「明日を共に」とブランドのメッセージを重ね、コラボ後も来店が続く導線を設計した
- グッズ物販、アプリのスタンプラリー、Xでの拡散によって、客単価・来店頻度・宣伝効果を同時に狙っている
- タリーズは3期連続増収増益、ダンダダンは営業赤字と、業績の差がコラボの狙いの違いにも表れている
- 外食市場の伸びは値上げによる部分が大きく、客数を増やして何度も来てもらう工夫が求められている
- 強い企業ほど強いIPと組める二極化の中では、まず本業を伸ばすことが欠かせない





