コンビニ初のTシャツ制服、ファミマは何を変えたのか
ファミリーマートが、9月1日から全国約1万6500店舗で10年ぶりにユニフォームを刷新するというニュースが出ました。CEOセオさんによると、Xやネットでも話題になっていて、外国人向けや多様性への対応として賛否が起きています。
CEOセオさんは、コンビニの仕事は採用が難しく、今回の刷新は採用戦略の一つだとみています。一方で、外国人労働者への圧力や政治的な背景から反発する論調もあることに触れたうえで、ビジネスとしてどんなメリットがあるのかを考えていきます。
新しい制服は、コンビニ業界で初めてのTシャツタイプで、素材は綿100%です。ベースになっているのは、累計販売数700万枚を突破したコンビニ専用のアウターTシャツで、デザインはファセッタズムFACETASMの落合さんがクリエイティブディレクターとして担当しています。
(ファミマは)売れてるTシャツを型にしてますから、人気があるというものをスタッフ向けに作ったということですね。
CEOセオさんは、海外のラグジュアリーブランドでもスタッフ用のシャツをかっこよく作り、それがメルカリで出回るほど人気になる例が多いと話します。スタッフ専用の靴下も作られているため、ファミマのスタッフTシャツや靴下も、未使用品としてメルカリに出てくるかもしれないと冗談まじりに語っています。
サイズはXSから11Lまでの全14サイズで、抗菌防臭加工もされているそうです。
髪色もヒジャブも自由に。25年前は「ロン毛で不採用」だった
ファミリーマートは制服と同時に、9月1日から「ファミマコーデ」という身だしなみ基準も導入します。髪色の制限などを全面的に撤廃し、重ね着でおしゃれを楽しむことも、ヒジャブの着用も認めるという内容です。
あわせて、ワーキングネームや、耳が聞こえにくい、話すことが難しいといった事情を周囲に知らせるバッジもつけられるようになります。
ファミリーマートはこの刷新を、創立45周年の目標である「一番働きたいコンビニ」を目指す取り組みと位置づけています。応募数を1.5倍にするKPI ── 重要業績評価指標のこと。目標の達成度を測るために設定する具体的な数値指標で、ここでは応募数がそれにあたりますを設定して踏み切ったといいます。
CEOセオさんは、このニュースを見てすぐに自分の学生時代を思い出したそうです。大学生のころはロン毛で茶髪だったため、コンビニのアルバイトに何件も落ちたといいます。
本当に受かんなくてですね、コンビニも何件落ちたことか。コンビニだけじゃなくて、僕カラオケも落ちたし。
家庭教師のアルバイトでも、採用には条件が付いていたといいます。
「条件付きで採用します」って言われたんですよ。その条件が「髪を切ること」と言われたぐらいです。
CEOセオさんは、髪が長い、色が入っている、ピアスをしているだけでアルバイトが決まらなかった25年前と比べると、どんな格好でも採用される今の変化はルッキズムの解消という意味でポジティブだと捉えています。
約25年前は、ロン毛・茶髪・ピアスだけでコンビニやカラオケのアルバイトに落ちた
ファミマは髪色の制限を撤廃し、重ね着やヒジャブも認める
ただし、外国人労働者が増えることで犯罪などを不安に思う日本人もいて、ネット上では賛否が分かれているというのがCEOセオさんの見立てです。
制服は求人広告になる?アパレル200億円のファミマだからできた一手
CEOセオさんは、今回のファミリーマートの刷新をビジネスモデルとして見ると、基本的には採用マーケティングの一つだと説明します。採用の裾野を広げるには、働く人へのサポートを増やすしかないという考え方です。
一般企業がリモートワークや副業の解禁で人を集めようとしているのと同じように、ファミリーマートは服装を自由にすることで採用しやすくしようとしている、とCEOセオさんはみています。コンビニは作業中心の仕事で、営業に出るわけでもないため、見た目はあまり関係ないとも話しています。
背景には、ファミリーマートのアパレル事業の強さがあります。2021年に始まった「コンビニエンスウェア」は、5年で靴下が累計3000万足売れ、2025年にはアパレルだけで200億円を達成し、2026年の目標は300億円とされています。
他のセブンイレブンとかローソンだったらもうちょっと違うイメージがあるかもしれないですけど、ファミマがやるというのはある意味すごくわかりやすかったのかなというふうに思いますね。
CEOセオさんは、制服刷新がファミリーマートにもたらす効果をいくつも挙げています。
応募の動機づけ
学生などが「この服を着たいから」と応募するかもしれない
多様性のメッセージ
特に外国人に向けて、多様性を認める職場だと伝える
ブランドの統一
店舗スタッフ約20万人が着ることで、自然と統一感が出る
広告塔
ファミリーマートの[[ブランドエクイティ::ブランドが持つ無形の資産価値のこと。認知度やイメージの良さなどが、商品やサービスの価値を高める力として働きます]]を高める
人手不足の数字も、ファミリーマートの判断を後押ししています。CEOセオさんによると、有効求人倍率は下がったとはいえ2025年時点で1.22倍あり、小売業では慢性的な人手不足が続いています。
一方で、スキマバイトの市場は3年で倍になり、1500億円規模とされています。厚労省のデータでは卸売・小売業の離職率は15%で、CEOセオさんは小売業を「辞めやすく取りにくい」状況だと表現しています。
都内では外国人比率40%。コンビニで何が起きているのか
コンビニで働く外国人は、特に都内で大きく増えています。CEOセオさんによると、コンビニ大手3社の外国人従業員は11万人にのぼり、全体の十数パーセントを占めるといいます。
ローソンが出している都内の外国人比率は40%とされ、都内の一部エリアでは2人に1人が外国人スタッフかもしれないとCEOセオさんは話します。渋谷などではほぼ外国人で、吉野家などの飲食チェーンでも同じ状況が広がっているそうです。
CEOセオさんは、こうした現状が外国人の雇用をすべて否定できない理由だと説明します。
人手不足の場所の多くが日本人が働きたくないということで、もう外国人を入れざるを得ないというのが現状なんですよね。これがコンビニでも起きているということです。
CEOセオさんは、海外では外国人を受け入れるために、お祈りの場所を設けている例があることも紹介します。シンガポールのようにさまざまな国の人がいる場所では、お祈りの時間に店を一時的に閉めることも当たり前になっているそうです。
もうこの先10年、20年後には日本もコンビニのちょっと端とかに、こうね、お祈りする場所とかも必要になるのかも。
コンビニは店舗スタッフ約20万人を抱え、年間でおよそ3万人が入れ替わる業態です。CEOセオさんは、離職が多いうえにこの規模を採用し続けなければならないことが、人手不足の根本にあるとみています。
「多様性を受け入れる」のではなく「多様性しか残っていない」
CEOセオさんは、ダイバーシティやZ世代への対応といった言葉で語られがちな今回の刷新を、もっと切実な経営判断だと捉えています。待ったなしで採用ができない状況での、プロモーションであり求人コストの削減でもあるという見方です。
アパレル事業で200億円を売り上げるほど生産量が増えているため、スタッフ用の服を作るのは上乗せするだけで済みます。CEOセオさんは、それが原価率の低下にもつながるかもしれないと話しています。
CEOセオさんは、ほかの企業にも同じ流れがあったと紹介します。スターバックスは2021年8月に髪色やドレスコードを大幅に緩和し、さらにさかのぼると1970年代のアメリカのファストフード業界でも、マクドナルドがヒスパニック系やシニアの雇用に踏み切った実績があるそうです。
CEOセオさんは、この流れは正直止まらず、日本のコンビニも海外のコンビニのようになっていく可能性が高いとみています。海外のコンビニはサービスも品揃えも悪く、日本のコンビニの高いクオリティとは違う形になっていくだろうと話します。
ただし、コンビニに行く目的は、サービスを受けることよりも、今必要なものを買うという緊急性にあるとCEOセオさんは指摘します。
ですから、誰が売ろうとあんま関係ないということも言えるわけです。外国人だろうと日本人だろうと、めちゃくちゃサービスがいい人だろうと、サービスがちょっと悪い人だろうと、あんまり関係なくて。
一方で、コンビニで従業員と客が言い争う動画は、Xで炎上ネタとしてよく上がってきます。
ファミマのTシャツとシリコンバレーの社食、共通点はどこにある?
コンビニでの言い争い動画について、CEOセオさんは、昔から起きていたことが動画で拡散されるようになっただけかもしれないと話します。外国人が増えて争いが増えるのは嫌だとしつつも、ファミリーマートの刷新はあくまで経営戦略だと位置づけています。
CEOセオさんが面白いと感じているのは、求人ができないときに求人広告費を増やすのではなく、満足度を上げたり、受け入れるパイを別から増やしたりするという発想です。
CEOセオさんは、ファミリーマートのスタッフTシャツに似た例として、シリコンバレーのFacebookやAppleなどの社宅や社食を挙げます。従業員がいつでも食事をとれる環境を整え、食べ物で人を採用しているといいます。
僕が行ったFacebookでのその従業員の社食見に行った時に、すごいですよ、目玉焼きの、その卵黄なし版だから白身だけしかないとかね。あとはもうチキンでもささ身だけとかね。
Facebookの社食には、筋トレをする人向けの食事だけでなく、世界中の食事がそろっているそうです。CEOセオさんは、世界の人が働けるグローバルスタンダードな食事や環境を整えるのがグローバル企業のやり方だと説明します。
CEOセオさんは、賛否はあるものの、ファミリーマートは海外にも展開するコンビニだからこそこうした変化が起きていると締めくくります。リスナーの企業でも、海外展開を考えるうえでの参考にしてみてもいいのではないかと呼びかけています。
まとめ
ファミリーマートの制服刷新と身だしなみ自由化は、多様性のアピールというより、人手不足のなかで働き手を確保するための採用マーケティングだとCEOセオさんは読み解いています。アパレル事業の強さを生かし、求人広告に頼らず働く環境から人を集める発想は、グローバル企業のやり方に通じるものです。
- 9月1日から全国約1万6500店舗で、コンビニ初のTシャツ型制服と髪色制限などを撤廃する「ファミマコーデ」が導入される
- 応募数1.5倍をKPIに掲げた、アパレル事業200億円のファミマらしい採用マーケティングとみられている
- 大手3社の外国人従業員は11万人、都内のローソンでは外国人比率40%とされ、日本人が働きたがらない職場を外国人が支えている
- CEOセオさんは「多様性を受け入れる」より「多様性しか残っていない」のが本音かもしれないと指摘する
- 求人広告ではなく満足度や環境で人を集める発想は、シリコンバレーの社食と同じグローバル企業のやり方だと語られている





