マクドナルドはなぜ強いのか?
日本マクドナルドが、企業内教育機関「ハンバーガー大学」の取り組みを公開し、人材育成やデジタル活用、店舗運営の変化を成長の背景とともに説明しました。CEOセオさんは、マクドナルドの強さを読み解くニュースとしてこれを取り上げます。
CEOセオさんによると、マクドナルドはタッチパネルでのオーダーなどDXが進み、海外でも共通して先進的なテクノロジーを取り入れながら、アナログな飲食ビジネスを展開している企業です。
ハンバーガーは飲食店での非常に大きなコンテンツだと言えますね。ここで成功すると世界何番になれるんだ、というようなことが言われております。
そのハンバーガーの王者として君臨しているのがマクドナルドだ、とCEOセオさんは位置づけます。記事が伝えているのは、味も重要だが、強さの本質は結局「人の仕組み」にあるという点です。
ハンバーガー大学の取り組みは数字にも表れています。2025年12月期の全店売上高は8886億円、純利益は339億円で、いずれも過去最高となりました。
2025年末の店舗数は3025店舗、クルーは直営とFCを合わせて22万人に上ります。これだけの人数を抱えるマクドナルドは、オペレーションの精度を上げなければ効率化できず、売上も利益も伸びない、とCEOセオさんは指摘します。
2026年の通期予想は全店売上高9480億円、純利益350億円で、上方修正された数字です。
人を大切にしつつ、テクノロジーは妥協しない
CEOセオさんがマクドナルドをすごいと感じるのは、人を育てる話と同時に機械の導入も進めている点です。人を大切にしながらもテクノロジーは妥協しないという両立が、マクドナルドの特徴だといいます。
その上で問われるのが、機械を入れたあと人は何をやるのかという点です。AIの導入でもよく言われる問いですが、マクドナルドはその「人がやるべきこと」にも妥協せず、研修を含めて取り組んでいる、とCEOセオさんは見ています。
AIを導入したら、じゃあ人は一体何をやるのかということが言われるわけですけども、その何をやるのかにも妥協しないというかね、人間がやるべきことをしっかり研修も含めてやっていくんだということですね。
研修が軽んじられる時代に、研修でしかわからないこと
CEOセオさんは最近、ビジネス界隈で人材への投資や研修が弱まっていると感じています。YouTubeやSNSで自然に勉強できるから研修のようなものだ、という空気があるのではないかと考えています。
研修を受けたくない人も増えているのではないか、とCEOセオさんは話します。デジタルで気軽に学べるのに、なぜ研修をしなければいけないのか、という感覚です。そのうえで、CEOセオさんの会社でも研修プランを多く取り入れていると明かします。
でもね、研修でしかわからないことってあるんですよ、本当に。
(デジタルで)知識はいくらでも身につくんですけども、体験とか、仲間と一緒にワークを達成するとか、こういった体験というのはいくらデジタルでも難しくて。
知識はいくらでも気軽に身につく
仲間と一緒にワークを達成するなどの体験が得られる
商売は結局人と人が行うものなので、研修は妥協してはいけない、とCEOセオさんは考えます。やりたくない、面倒だという気持ちはわかるとしつつも、業績を伸ばしている会社は人材育成にしっかり力を入れており、マクドナルドもその一例だといいます。
フランチャイズ78%のチェーンを支える教育の仕組み
マクドナルドの店舗は直営とFC(フランチャイズ)で展開されており、そのうち78%がFC、直営は2割ちょっとです。FCが大半を占めるからこそ、教育の仕組みが非常に重要になる、とCEOセオさんは説明します。
FCであってもマクドナルドの高品質なサービスと商品は欠かせません。商品は本部が管理し、カリキュラムを教えればなんとかなりますが、人の部分はしっかりやらないと店ごとにバラバラになってしまいます。
商品は美味しいんだけど、あの店やだなとかになっちゃうとブランドが毀損しますよね。
FCごとに接客がバラバラ
本部の教育が人まで行き届かない
「商品は美味しいけど、あの店は嫌だ」
客がそう感じてしまう
ブランドが毀損する
チェーン全体の価値が下がる
CEOセオさんは、FC展開をしている会社ほど人材に力を入れ、その取り組みを世の中に伝える力を持っていると話します。自分の店だけ強くしてもチェーンは強くならず、他社が運営する店でも同じ品質を提供するには、ものだけでなく人にも同じ仕組みが必要です。
自分の店だけ強くしたって、結局チェーンは強くならないですよね。
注文を機械に任せると、人には何ができるのか?
とはいえ、すべてを人にやらせるのは大変です。そこでマクドナルドは、モバイルオーダーやデリバリーといった店頭に来ない客向けのテクノロジーもしっかり導入している、とCEOセオさんは評価します。
店内のタッチパネル式の注文端末も同じ役割を果たしています。注文端末があるおかげで店員は注文を取らずに済み、その分、注文に悩んでいる人やベビーカーの人に声をかけられるようになります。
そうすると単純に「いいサービス提供してるな」と。マクドナルドでいいサービス提供してるなという付加価値にもなってくるわけですよね。
店員は注文を取ることに時間を使う
注文は端末に任せ、困っている人やベビーカーの人に声をかける
マクドナルドは店舗の改装も進めています。処理容量の強化や、注文端末などの効率的なレイアウトを目的に、2025年から2027年にかけて1000店舗以上を改装する計画です。注文を取りやすくするだけでなく、受けた注文をさばきやすくし、集客と処理能力を同時に改善する狙いがあるといいます。
浮いた時間を「おもてなし」に変える
今のマクドナルドでは、セルフ注文端末に任せて店舗の負荷を軽減し、人に余力が生まれた部分を、困っている人を助けるようなおもてなしに回しています。
マクドナルドは決算説明会で、食事中の声掛けなどを「おもてなしオーダー」として説明しています。CEOセオさんは、やたらめったら声をかけるのではなく、困っている人に声をかけることがおもてなしオーダーの一つだと補足します。
機械化で時間が浮く
セルフ注文端末が店舗の負荷を減らす
サービスに展開する
困っている人への声掛けなどのおもてなし
ロイヤリティが上がる
客の店への愛着が高まる
ブランド価値と価格に反映
価値の高さを価格に乗せられる
ハンバーガー大学は基本的に店舗でのOJTで人を育てる仕組みで、CEOセオさんが先に語った研修の考え方と非常に似ているといいます。デジタルだけでは学べないことをしっかり学んでもらう場です。
入社した店舗社員は店舗でOJTを受け、リーダーシップや役割と責任を担う力、さらに店長に必要なチーム作りや総合マネジメントを学びます。CEOセオさんはこれを、ビジネスさながらに経営者を育てるような取り組みだと表現しています。
リーダーシップは机上では学べない
CEOセオさんが自社の研修で重視しているのも、リーダーシップです。リーダーシップは机上の空論では学べないので、必ずフィジカルでやる必要がある、と強調します。
CEOセオさんは、次世代の経営者を育成することも自分のミッションだと考えています。自分がずっと経営を続けるわけにはいかないので、フィジカルの研修をやらないと、そこがぽっかり空いてしまうといいます。
例として挙げたのが音楽業界です。音楽業界では、売れたアーティストを育成した人が上に行くモデルが基本になっていますが、CEOセオさんはそれ自体は良いとしたうえで、自分と同じことができる人を育てることも必要だと話します。
基本的に再現性というのがビジネスには非常に重要で、その再現性が非常に難しいアーティスト育成、ボラティリティも高く、時間もかかる。
いつか当たってくれたらいいなと祈るようなやり方には限界があり、だからこそ研修が必要になる、とCEOセオさんは考えます。AIにやらせて人は何をやるのか、という問いはAI時代にも必ず出てくるため、ここが非常に重要になるといいます。
値上げだけではない、すべての指標が伸びる強さ
2025年12月期のマクドナルドは9000億円に迫る売上で、営業利益率は12%です。CEOセオさんは、これが連結売上に対する営業利益率で計算式が少し異なると断ったうえで、12%を超えていく水準だと説明します。
CEOセオさんが面白いと感じるのは、マクドナルドの好調が値上げだけによるものではない点です。月次の既存店客数は12ヶ月すべてで前年を上回っています。
CEOセオさんは飲食店を深掘りしてきた経験から、インフレや原材料高を理由に値上げすれば売上自体は上がると話します。ただ、値段に見合わないと客が感じた瞬間に客数は離れ、売上はなんとか保てても利益率が下がったり、注文数が減ったりするといいます。
その中でマクドナルドは、売上・客数・客単価のすべての指標をプラスにしている点がすごい、とCEOセオさんは評価しています。
出店と同じくらい大事な「撤退」の決断
マクドナルドは店舗の入れ替えも進めています。2025年度は新店を120店舗出した一方で、閉店も83店舗あり、純増は37店舗です。
CEOセオさんは、ダメなものはダメとしっかり撤退することを「経営の基本」と表現します。撤退をズルズル先延ばしにすると、せっかくいい店舗ができても、その利益をマイナスの店舗で相殺してしまうからです。
決断の連続じゃないですか、この店舗をやるとか、やめるとかね。
ハンバーガー大学の歴史も長く、開設は1971年です。銀座1号店の開業より1ヶ月早く、開業に合わせて人材育成がスタートしていたことになります。
CEOセオさんはマクドナルドの強さを3つにまとめます。フィジカルを含めた研修でリーダーシップや経営者を育成するマネジメント、テクノロジーの活用、そして撤退の決断です。これらができているからこそ、飲食のトッププレーヤーになっているといいます。
競合の倍の利益率はどこから来るのか?
競合にあたるのはモスフードサービスや日本ケンタッキー・フライド・チキンです。CEOセオさんによると、両社の営業利益率はマクドナルドの大体半分ぐらいです。
| 企業 | 連結売上高 | 営業利益率 |
|---|---|---|
| 日本マクドナルド | 9000億円に迫る | 12% |
| モスフードサービス | 1027億円 | マクドナルドの半分ぐらい |
| 日本ケンタッキー・フライド・チキン | 1100億円 | マクドナルドの半分ぐらい |
モスもケンタッキーも売上高1000億円を超える企業ですが、マクドナルドは売上が4倍ほどありながら、利益率でも上回っています。普通は売上や規模が大きくなると利益率は下がるもので、それを上げられるのは工夫があるからだ、とCEOセオさんは指摘します。
CEOセオさんは、マクドナルドは何にお金を使い、何に使わないかをしっかり判断できているのではないかと見ています。
2025年度の営業利益の増加分の内訳も興味深いといいます。全店舗の売上増で約99億円、効率化で35億円のプラスがあった一方、店舗・人材・IT等の設備投資で51億円のマイナスとなっています。
売上増
約99億円のプラス
効率化
35億円のプラス
店舗・人材・IT等の設備投資
51億円のマイナス
投資をしながらも、投資以上のリターンをきちんと取っている点に、CEOセオさんは経営のうまさを感じています。IT投資のように最初は先行投資でマイナスが膨らむものもありますが、しっかり数字を合わせにいくところが素晴らしいと評価します。
テクノロジーが進化し、人間が退化していく時代に
全体を振り返り、CEOセオさんは今の時代は機械に依存しすぎて、人の育成に手を抜いているのではないかと感じています。テクノロジーがこれだけ伸びれば、育っていない人材でもそれなりの成果を出せる、という考え方があるのではないかというのです。
しかし、それでは本人が将来困ります。CEOセオさんは、人材をきちんと育成し、どこでも働ける、食べていける人にすることが会社にとっての使命だと考えています。
だからこそビジネスでは人材育成に力を入れないといけないと、CEOセオさんは強く思っているといいます。マクドナルドはその好事例だとして、この回を締めくくり、リスナーにも考えを寄せてほしいと呼びかけました。
まとめ
マクドナルドの過去最高益は、テクノロジーで効率化を進めつつ、人がやるべきことにも妥協しない姿勢から生まれている、とCEOセオさんは読み解きます。機械に任せて浮いた時間をおもてなしに回し、ハンバーガー大学のフィジカルな研修でリーダーシップを育てることが、AI時代にも通じるヒントだといいます。
- 2025年12月期の日本マクドナルドは全店売上高8886億円、純利益339億円で、いずれも過去最高
- FCが78%を占めるチェーンでは、商品だけでなく人の品質をそろえる教育の仕組みが欠かせない
- セルフ注文端末で注文を機械に任せ、浮いた時間を困っている人への声掛けなどのおもてなしに使っている
- リーダーシップは机上では学べず、フィジカルな研修でしか育たないとCEOセオさんは考えている
- 出店と撤退の決断、投資以上のリターンの確保など、経営の基本を徹底している







