シーズン終盤のケガは何だったのか?
スコット・エサトン選手は、オフシーズンを母国で家族と過ごしながら、足のリハビリに多くの時間を使ったと振り返ります。昨シーズンは、終盤のケガによってプレーオフを欠場する形で終わっていました。
エサトン選手によると、ケガをしたのはシーズン終盤の三河戦です。当初は原因がわからず、炎症だろうと考えて2〜3週間ほど様子を見ていました。
(炎症の治療で)2〜3週間、復帰できるか様子を見ていたけど、全然良くならなかった。それでもう少し詳しく調べたら、足の靭帯が断裂していたんです。
靭帯の断裂がわかったあと、エサトン選手は早めの手術を選びました。待ちすぎると回復がさらに長引くためで、手術は昨年の終わりごろに日本で受けています。
上の流れのとおり、エサトン選手の足は現在ほぼ100%の状態だといいます。少し残っている部分はあるものの、跳ぶ動作にも問題はなく、開幕までには万全になる見込みです。
プレーオフを外から見ていた期間について、エサトン選手は「つらかった」と語ります。チームが好調だったうえ、試合が短期間に詰まる終盤にビッグマンの外国籍選手が抜けたことが、チームに大きく響いたと感じていました。
本当に、ただ運が悪かった。不運なケガでした。
名古屋が「ホーム」になったのはいつ?
2025-26シーズンは、エサトン選手にとって名古屋での6シーズン目です。エサトン選手自身も「長く感じる」と話し、1年目に一緒にプレーした選手の中には、もう現役を引退した人もいるといいます。
名古屋を本当のホームだと感じ始めたのは、2年目か3年目以降だそうです。1年目はコロナ禍で、体育館はいつも半分ほどしか埋まらず、静かな環境でした。
その次の年はもっと良くて、プレーオフではホームでものすごい雰囲気になった。すごく楽しかったです。
大西さんが「5年前の自分に声をかけるなら?」と尋ねると、エサトン選手は少し考えてから、先のことを考えすぎないように、という答えを返しました。
エサトン選手によると、キャリアや名古屋での生活が始まったころは、将来どうなるのかをよく考えていました。先のことを考えすぎると、今のプレーや生き方に影響が出るというのが、6年を経た実感です。
(先のことを考えすぎて)良いことなんて、一度もないですから。
寡黙な共同キャプテンと、名古屋を選び続ける理由
エサトン選手は今シーズン、共同キャプテンを務めます。キャプテン経験は大学時代にあるものの、プロでは初めてです。
エサトン選手は選ばれたことを喜びつつ、チームには長く在籍する選手が多いため、自分の役割はあまり変わらないだろうと話します。コート上で起きる細かいことに対応する程度、というイメージです。
大西さんから「チームの中では静かなタイプでは?」と聞かれると、エサトン選手はそう見られていることを認めたうえで、試合中は違うと説明しました。
試合中は、たくさんコミュニケーションを取る中心の一人だと思います。よく見えているし、長くここにいるから、誰とどうプレーすればいいかわかっているんです。
タイムアウト中も積極的に発言するというエサトン選手ですが、ロッカールームでの振る舞いについては「今年は少し変わるかもしれない。様子を見ましょう」と含みを残しました。
エサトン選手はこのオフに、ドルフィンズとさらに3シーズンの契約を結んでいます。契約で重視したことを聞かれると、エサトン選手は家族の生活環境を挙げました。
今は子どもたちが良い学校に通っていて、ここで快適に過ごしている。それが一番大きいことです。
エサトン選手によると、名古屋は学校の選択肢、食事、子どもがスポーツをするクラブなどがそろった便利な街です。日本の他の場所では同じ環境が得られないかもしれない、という見方も示しました。
3シーズンを全うすると名古屋で8シーズンになります。外国籍選手の多くは1年で去るため、エサトン選手は長く在籍することで選手やスタッフと深いつながりを築けたと話し、ここまで長くなるとは想像していなかったとも明かしています。
4番起用で得点が減った昨季、今季はどう変わる?
昨シーズンのエサトン選手は、得点が少し減りました。大西さんが「チームファーストが模範解答だとして」と前置きして尋ねると、エサトン選手は慣れないポジションでプレーしていたことを理由に挙げます。
昨季は主に4番。オフェンスへの関与が少なく、ボールスクリーンはカイルとアレンが中心
今季はロイHCのもと5番がボールスクリーンに多く絡む見込み
上の図のとおり、エサトン選手は4番では5番ほどオフェンスに関わらないと説明しています。5番のほうがボールスクリーンをかけて優位を作りやすく、さらに昨季は点を取れる選手が多かったことも重なりました。
(得点が減ったことに)腹を立てているとか、そういうことはまったくないです。
今季について、エサトン選手は「変わると思う」と話します。ロイHCのオフェンスには5番を使ったボールスクリーンが多く、エサトン選手や新加入のQ選手も多くのプレーに関わる見込みです。
さらに、シュート力のあるライアン選手やテン選手が4番に入ることで、エサトン選手だけでなく全員にスペースが生まれるといいます。
(今季は)去年よりずっと見ていて楽しいバスケになると思います。去年が悪かったという意味ではないけど。
エサトン選手は、ライアン選手がよくシュートを決める、技術があって賢い選手だと評価します。一方で、本職の4番がいなかった昨季もリバウンドやディフェンスはうまくいっていたので、今季はそこが課題になるとも見ています。
大西さんは、エサトン選手、Q選手、ライアン選手の外国籍3人について、項目ごとに「誰が一番か」を尋ねました。
| 項目 | エサトン選手の答え | 補足 |
|---|---|---|
| フィジカルの強さ | 自分とQ選手 | 少し迷ったうえでの回答 |
| リバウンド | 自分を選ぶ | ただし「様子を見ないと」 |
| シュート | ライアン選手 | 自身も今季は良いシュート機会が増える見込み |
| パス | 答えにくい | まだ試合で一緒にプレーしていない |
| 一番しゃべる | 3人とも静かなタイプ | 3人同士ではよく話す |
| スイッチ時のPG守備 | 自分を選ぶ | 大西さんも昨季の守備を評価 |
チームで一番声が大きいのはアーロン選手とゼイ選手だという点で、二人の意見は一致しました。
ロイ・ラナHCの新体制で何が変わったのか?
新しく就任したロイ・ラナHCについて、エサトン選手が最初に挙げたのは「組織立っている」という違いです。前任のショーンHCとの比較で、その特徴を説明しました。
あえて組織化しすぎず、選手に判断を任せて混乱を起こさせるスタイル
全員が同じ認識を持ち、常に正しい位置に立つことを求めるスタイル
(2人は)単に違うコーチングスタイルというだけ。片方が間違っていて片方が正しい、というものではありません。
選手の多くは昨季から残っている一方、コーチ陣はほぼ一新されました。エサトン選手は、新HC、新しい外国籍選手、新ルールがそろい、アシスタントコーチもKJ以外は新顔になったことで、チームが良い意味で新鮮になったと話します。
具体的な違いを聞かれると、エサトン選手は「本当に全部」と答えました。練習は朝に行うようになり、時間は少し短くなった一方、ドリル間の切り替えが速く、走る量が大きく増えたといいます。
大西さん自身も、昼過ぎに練習場を訪れるとすでに練習が終わっていた、というエピソードを紹介しています。
34歳になったエサトン選手に、24歳のころより上達したことを聞くと、フィジカルの扱いという答えでした。若いころは当たり合いやリバウンド争いに慣れていなかったものの、Bリーグで経験を積むことで大きな選手にも対応できるようになったそうです。
大西さんが「外でも選手同士がずっとつかみ合っている」と話すと、エサトン選手はゴール下はもっとひどく、ただ見えにくいだけだと応じます。リバウンドのためにスクリーンもかけず争う選手が多く、相手を押さえ込む力が欠かせないといいます。
B.PREMIERの開幕で何が待っている?
2026-27シーズンからBリーグは新たなトップリーグB.PREMIER ── Bリーグが新たに設ける最上位カテゴリー。サラリーキャップや試合フォーマットなど、これまでとは異なる制度のもとで運営されますへ移ります。エサトン選手が注目するのは、外国籍選手3人が同時にコートに立つ中で各チームがどう戦うかです。
エサトン選手は、名古屋には良い日本人選手がいるのでローテーションは充実すると見ています。一方で、東アジア出身の選手など、いわゆるパスポート選手が強いチームはビッグマンを4人並べられるため、東京や渋谷渋谷のチーム名との対戦は厳しくなるといいます。
新しいサラリーキャップ制度によって戦力が分散していることにも、エサトン選手は触れました。千葉はほぼチームが入れ替わり、秋田は数年前に長崎でプレーしていたマーク・スミス選手を獲得するなど、下位だったチームも実力者を補強しています。
(今季は)簡単な試合なんて一つもないでしょうね。
日程も大きく変わります。土日の連戦がなくなる代わりに平日開催が増え、移動も多くなる見込みです。エサトン選手は「楽しみではない」と率直に語りました。
週末に1〜2試合やって、そのあと1週間練習する時間があるのが好きなんです。今は、練習の時間がほとんどなさそうですね。
大西さんは、短い練習からどれだけ得られるか、そして誰が最初に新しい日程に慣れるかの競争になる、と見立てます。エサトン選手も、体調を維持できるかが鍵になると応じました。
エサトン選手の試合日のルーティンは、練習日と同じ過ごし方をして、何も変えないことです。
試合前に何も食べずスムージー程度で済ませるアーロン選手とは対照的です。ジンクスもまったく持たず、一度始めるとやめられなくなるので、あえて作らないようにしているといいます。
伸び盛りのタケと、釣りとゴルフの休日
昨季から今季にかけて伸びた選手として、エサトン選手は加藤嵩都選手の名前を挙げます。毎年うまくなっていて、速さとシュート力を持ち、ときに少し荒っぽいところもある見ていて面白い選手だと評しています。
コートの外では、エサトン選手は釣りが趣味です。母国には義父と一緒に湖へ出る釣り用のボートを持っていますが、日本ではまだ釣りをしたことがありません。
(日本では)まだ行ったことがないけど、琵琶湖に行ってみたい。有名なブラックバスがいるんです。
一方、日本ではゴルフを何度かしています。マイケル・ジョーダンもゴルフ好きだったと触れつつ、エサトン選手は「楽しくてリラックスできるスポーツ」と話しました。最近買った新しいクラブは、標準より半インチ長いだけだったそうです。
ゴルフを始めて1年という大西さんが苦戦していると話すと、エサトン選手は「難しいスポーツ。大人になってから始めると特に」と共感していました。
チームメイトと釣りに行くなら、キャンプなどアウトドア好きのテン選手。一緒に行きたくないのはアーロン選手で、理由は「あまり楽しめなさそうだから」だといいます。大西さんは、アーロン選手やゼイ選手はずっとしゃべって魚を逃がしそうだと笑いを添えました。
家族と暮らす名古屋の街はどう映る?
エサトン選手は、子どもがいるため趣味は釣りとゴルフくらいだと話します。息子はゴルフに興味を持ち、ほかの子どもたちも始めつつあり、公園ではサッカーやバスケットボールをして過ごしているそうです。
選手、父親、夫を同時にこなす大変さについて、エサトン選手は「もう慣れた」としつつ、試合の翌日の朝がつらいと明かしました。
(試合の翌日も)ちゃんと起きて、父親でいなきゃいけないんです。
家族は名古屋をとても気に入っています。名古屋には飲食店が多く、家族でいろいろな店に食べに行くのが楽しみで、子どもたちは街中の公園を知り尽くしています。バスケットボールと関係のない友人ができたことも、心地よさにつながっているようです。
親戚や友人が来日すると、京都、東京、大阪はもう一通り案内し、休みに義理の家族とベトナムへ行ったこともあるといいます。名古屋で必ず連れて行くのは、みそかつの矢場とん ── 名古屋名物のみそかつで知られる老舗の飲食店。濃厚な味噌だれをかけたとんかつが看板メニューですです。
唐揚げとか、日本のコンフォートフードを(来た人に)食べてもらうのが好きなんです。
寿司を食べに連れて行くと、来日した人たちはマヨネーズを使ったロールが中心のアメリカの寿司との違いに驚くそうです。
ピック&ロールで最初に見ているものは?
話はコート上に戻ります。齋藤拓実選手とのコンビで知られるエサトン選手に、ピック&ロールでスクリーンをかけるとき最初に何を見るかを大西さんが尋ねました。
自分のマークマンの位置を見る
相手がどんな守り方をしているかを確認する
マークが遅れていれば
スクリーンをフェイクして素早く抜け、ガードに優位を作る
ビッグマンがガードに出てきたら
ガードからエサトン選手へパスが通る
上の流れのとおり、エサトン選手が角度を変える基準はボールハンドラーが誰かではなく、守備の動き方だといいます。
拓実選手のパスに驚かされることもあり、最近は加藤選手が拓実選手をよく見てビハインドバックパスなどをまねしているそうです。エサトン選手は加藤選手と映像を見たり話し合ったりしながら、互いに助け合っていると話しました。
ファンがあまり気づいていない強みとしてエサトン選手が挙げたのは、ボールスクリーンへのディフェンスです。外に出てトラップを仕掛け、相手を驚かせることがあるといい、大西さんも「気づいている」と応じました。
これまで守った中で最高の選手には、仙台のジャレッド・カルバー選手を挙げています。スイッチで数回守っただけでも、速くてシュートが打て、何でもできる選手だと感じたそうです。
リバウンドについては、教えるのが難しい「感覚」だとエサトン選手は話します。リングに当たったボールがどう跳ねるかを感じ取り、落下地点に先に入ること、そして努力が欠かせないといいます。
(ボールの回転を見るというのは)ちょっと大げさかもしれない。でも、シュートが上がったときにボールを見ていれば、わかることはあります。
大西さんが紹介したのは、デニス・ロッドマン ── 1980〜2000年代にNBAで活躍した名リバウンダー。リバウンド王を7度獲得し、独特の言動でも知られた選手ですがボールの回転を見ていたという話です。エサトン選手は、落ちる方向を覚えられるかはわからないとしつつ、ボールを見ていれば早めに動き出せることがあると答えました。
無人島に持っていく3つは?
終盤は、コート外の話題を次々に聞く一問一答です。好きなアーティストはカントリー歌手のザック・ブライアン、映画はあまり見ないもののデンゼル・ワシントンが好きで、『マイ・ボディガード』(原題: Man on Fire)を挙げました。
好きな食べ物は「矢場とん」。大西さんは「完全に日本人になった」と笑っていました。最後に検索したのは日本語の単語の言い方だそうで、エサトン選手は語彙を増やしたいと日本語の勉強を続けています。
無人島に3つ持っていくなら、釣り竿、ライター、料理用の鍋。エサトン選手は、サバイバル用か楽しみ用かを確かめてから選び、「まずこの3つが必要」と答えています。
新シーズン、ファンは何を期待できる?
今季の楽しみとして、エサトン選手はしばらく先になるホーム開幕戦、毎年楽しいという愛知カップ、そして新HCと新戦力のもとでチームがどう成長するかを挙げました。
愛知のIGアリーナでの初めての試合は、最初は少し不思議でホームゲームらしく感じなかったといいます。ただシーズンが進むにつれて、大がかりな選手紹介や満員の観客の中でプレーすることが、いつも特別な体験になっていったそうです。
ファンへのメッセージとして、エサトン選手は応援への感謝を伝えたうえで、会場に足を運び続けてほしいと呼びかけました。
会場がうるさいほど、相手チームはプレイしにくくなる。だから、できるだけ多くのファンに来てほしいんです。
エサトン選手によると、今季のドルフィンズは速いテンポで走り、3ポイントを多く打つスタイルになります。見ていて楽しいバスケが、エサトン選手からファンへの約束です。
まとめ
名古屋で6シーズン目を迎えるスコット・エサトン選手は、靭帯断裂からほぼ完全に回復し、共同キャプテンとして新シーズンに臨みます。ロイ・ラナHCの新体制やB.PREMIERという大きな変化の中でも、家族とともに根を下ろした名古屋で、今を大切にする姿勢が語られた回でした。
- 昨季終盤の負傷は足の靭帯断裂で、日本で手術を受け、現在はほぼ100%まで回復している
- 共同キャプテンになっても役割は大きく変えず、試合中のコミュニケーションでチームを支える
- ロイ・ラナHCのもとでは5番のボールスクリーンが増え、エサトン選手のオフェンス関与が高まる見込み
- B.PREMIERでは外国籍3人同時出場や平日開催が増え、日程への適応が鍵になる
- 3年契約の決め手は、子どもの学校や生活環境に恵まれた名古屋での家族の暮らし




