7歳の会社に何が起きている?増え続ける「契約書に書かれない取り決め」
小橋正樹さんが代表を務めるoneself.は、11月1日で7周年を迎え、Podcast「産業医の本音」も2周年になりました。小橋さんは、4ヶ月ぶりの更新になったことを詫びつつ、節目に合わせて久しぶりに収録しています。
今年度のoneself.の一大テーマは「整える」です。会社が7歳、人間でいえば小学1年生になり、取引先や関わる人が増えるほど、やることが増えて複雑になってきたといいます。
ワンセルフももう七歳、人間でいうと小学1年生ですから。
小橋さんが例に挙げるのは、契約書では定めないような細かな取り決めです。あるクライアントとはSlack ── ビジネス向けのチャットツール。チャンネル単位でやり取りを整理でき、社内外のコミュニケーションに広く使われています、別のクライアントとはChatWork ── 日本発のビジネスチャットツール。中小企業を中心に、社外とのやり取りにもよく使われていますで連絡する、といった違いが積み重なっていきます。
担当者が変わってニュースレターの送り先を変える場面でも、フロント担当とニュースレター担当が別の人だと、伝言が必要になります。やり取りが閉じていると「結局誰がどう対応しているのか」がわからず、逆に全員にCCを付けると、本当に追うべき情報を見逃してしまうと小橋さんは話します。
もう1つの悩みが、どの資料が最新で正しいのかという問題です。oneself.ではGoogle Workspace ── Googleが提供する業務用のクラウドサービス群。ドキュメントやスライドをオンラインで共同編集でき、ファイルの版が分かれにくいのが特徴ですで資料を作っているため、メール添付で「最終版改」が増えるような混乱は起きにくいそうです。ただ、コピーして継ぎ足すことを繰り返すと、どの資料を起点にすればいいのかわからなくなりがちだといいます。
モニターに映った「値上げ前の料金表」。血の気が引いたキックオフ
小橋さんは、資料の乱立が実際のミスにつながった出来事を明かしています。oneself.では契約後にキックオフミーティングを開いており、当時はその資料を、別のクライアント向けに使った資料を改変しながら作っていました。
あるキックオフで、モニターに資料を映しながら進めていたところ、値上げ前の古い料金体系のスライドが出てきてしまいました。目の前のクライアントは、値上げ後の料金で契約していたのにです。
これは最後自分がちゃんと確認できてなかったのが本当悪いんですけど。
なので本当血の気が引きましたね。やばみたいな。
幸い雰囲気は良く、小橋さんが「これ昔のです」と謝ると、先方は笑顔で「昔はもっとお安かったんですね」とツッコミを返してくれたそうです。
この経験から、oneself.では資料の作り方のルールを変えています。変わる前と後を並べると、次のようになります。
以前の別クライアント向け資料をコピーして改変し、資料が乱立していた
決まったフォルダにあるフォーマット資料をベースに、各クライアント用の資料を作る
小橋さんは、1人なら多少資料が乱立していても正解は一発でわかるけれど、複数人になると誰が何を作ったのかわからなくなると話します。だからこそ、ミスやトラブルをなくすための「整える」作業が大事になる、というのが小橋さんの実感です。
バックオフィスの難所はどこ?請求するより「請求される」側
「整える」はサービス側だけでなく、oneself.のバックオフィスでも進められています。小橋さんが特に挙げるのが経理まわりです。
経理には、請求する側の債権管理 ── 売上の請求や入金を管理する業務。請求書を送り、期日までに入金されたかを確認するのが主な仕事ですと、請求される側の債務管理があります。oneself.の場合、請求する側は請求書払いに一本化しているので、請求リストを作って月末月初に送り、翌月末に入金を確認するだけで、比較的楽だといいます。
小橋さんにとっての問題は、請求される側、つまり支払い管理のほうでした。日々届く領収書や請求書が「何払いなのか」を把握しきれなくなってきたのです。
小橋さんが1人で会社をやっていた頃は、取引先も少なく変化もなかったので、請求書払い、クレジットカード払い、口座振替、個人立替えの区別がすぐにつきました。帳票の整理は税理士に任せる運用でも回っていたそうです。
社員さんも取引先も増えてくると、いろんなとこからいろんな帳票、領収書とか請求書、そういったものが来ますから、もうわけわかんなくなってくるんですよね。
その結果、請求書払いなのに期日までに振り込んでいなかったり、領収書を誰が持っているのかわからなくなったりといった問題が起きました。その都度対応にリソースを割く状態に、小橋さんは「もう耐えられない」と感じたといいます。
支払い管理をどう立て直した?カードと専用アドレスで帳票を一本化
支払い管理の立て直しとして、小橋さんはまず取引先のリストを作り、支払い方法ごとに帳票をどのフォルダに入れるかを整理しました。
大きかったのは法人カードの切り替えです。oneself.で使っている会計ソフトマネーフォワード ── クラウド型の会計ソフトのシリーズ。銀行口座やカードの明細を取り込み、仕訳や経費精算を効率化できますと相性のよい法人カードに替えたことで、どの社員がいつ、どこに、いくら払ったかがほぼ瞬時にわかるようになりました。
もう1つの工夫が、請求書や領収書を受け取る専用のグループメールアドレスです。取引先にそのアドレスへ送ってもらうよう伝えれば、帳票の集まる先が一本化されます。
専用サイトからダウンロードする請求書の場合も、取得した社員がそのアドレスに添付して送ればよいので、抜け漏れがかなり減ったそうです。現在の支払いの流れを整理すると、次のようになります。
集める
請求書や領収書を専用のグループメールアドレスに集約する
見える化
法人カードと会計ソフトの連携で、誰がいつどこにいくら払ったかを把握する
支払う
請求書払いが必要なものは、まとめて月末に支払う
面倒でも今やるべき理由は?10人弱の会社が直面する共通課題
小橋さんは、この切り替え作業がかなり大変だったと振り返ります。クレジットカードやメールアドレスの変更は取引先ごとに手続きが必要で、お金まわりは結局、社長自身が確認して手を動かす部分が多いからです。
ただ逆にこれ(整理)を今やっておかないと、将来やるとしたらもっと大変だろうということで。
銀行の整理など、今のうちにやっておくべきことは次々に浮かぶものの、一つずつやっていくしかないというのが、2026年度のoneself.の「整える」の現状だと小橋さんは話しています。
小橋さんは、この話を「零細企業の社長のぼやき」と笑いつつ、社員10人弱くらいの会社なら大なり小なり直面する課題ではないかと考えています。共感やよいやり方のアドバイスがあれば、ぜひコメントがほしいと呼びかけて、リハビリを兼ねた3年目の配信をスタートさせました。
まとめ
会社が育つほど、契約外の取り決めや資料、帳票が増えて複雑になります。oneself.の小橋さんは、古い料金スライドを見せてしまった失敗や支払い管理の混乱をきっかけに、仕組みで「整える」ことに取り組んでいます。
- 取引先や人が増えると、契約書に書かれない取り決めや情報共有の範囲が課題になる
- 資料はコピーの継ぎ足しをやめ、決まったフォーマットを起点にすることで古い情報の混入を防げる
- 支払い管理は、取引先リスト、法人カードと会計ソフトの連携、帳票専用のメールアドレスで一本化できる
- 面倒な整理ほど、規模が小さい今のうちに一つずつ進めるのが近道と話されている







