産業医面談の振り返りと、節目のリラックス回
産業医の本音では、前回まで4回にわたって産業医面談の実際を取り上げてきました。第30回となる今回は、その流れをいったん離れ、リラックスモードで進めていきます。
小橋さんはまず、クリニックや病院の外来と産業医面談の違いを整理します。外来は患者側が理由を持って受診するため、医師は基本的に受け身から始まると言います。
一方で産業医面談は、会社側から本人にアプローチすることが相対的に多いと説明します。そのため産業医は、面談の目的や情報の取り扱いを説明し、本人の意向を積極的に引き出す役割を担うことになります。
面談というよりファシリテーションみたいな感じで全体的に進めていく。これが産業医面談の特徴と言えるのかなと思います。
小橋さんはもともと救急医で、生きるか死ぬかの患者を見てきた経験があります。そのため、働く人のメンタルヘルスを見られるのか、当初は不安があったと振り返ります。
それでも産業医面談を通じて、多くの人の人生観、労働観、健康観に触れたことで、一定の自信と相場観を持てるようになったと話します。産業医面談は価値を発揮する中核業務であり、同時に産業医自身が学ぶ機会でもあると位置づけています。
リスナーの声で温めていた「聴いている番組」の話
今回のテーマの発端は、第1回で触れた「Podcastでのインプットが仕事に役立っている」という話でした。そこにリスナーから、具体的にどんな番組を聴いているのか知りたいというコメントが寄せられていたと言います。
小橋さんは、そのテーマをどこかでやりたいと温めてきたと明かします。今回は、企業の健康管理に関わる人にとって特に役立ちそうな番組を独断で取り上げていきます。
これまでの回で紹介した番組にも改めて触れます。第19回・第20回に出演したワンハート吉田先生の「10分で労務がわかるラジオ」は、人事労務や産業保健に関わる人に勧めたい番組だとしています。
第10回のビジネスパートナー回で紹介した番組にも言及します。ウィブ渡さんの「シンカホリック」、インク若林さんの「企業のデットファイナンス」は、ビジネスパーソンとして毎回勉強になると振り返ります。
Podcast制作の作り手、Chronicleという存在
今回まず紹介するのは、番組そのものというより作り手です。ビジネス・経済・教養系を中心にPodcast番組を手がけるコンテンツレーベル、Podcast Studio Chronicleです。
Chronicleは野村貴史さんが代表を務めています。小橋さんが野村さんを知ったのは、野村さんの前職である経済系ニュースメディアNewsPicksでのリアルイベントがきっかけでした。
そのイベントは仏教とメンタルヘルスに関するもので、小橋さんは参加者として2、3分ほど野村さんと話したと言います。その後、3年ほど前に野村さんがChronicleを立ち上げたことをSNSで知り、いろいろな番組を聴くようになったと振り返ります。
Chronicleの代表的な番組には「ニュースコネクト」や、後述する「経営中毒」があります。トータルで20番組ほどを手がけているのではないかと小橋さんは見ています。
ポッドキャストランキングっていうのがネット上で検索できるんですけど、もうビジネス部門では軒並みクロニクルさんの番組が勢揃いみたいな。
小橋さんが惹かれるのは内容の充実だけではありません。会話のテンポやBGMが自然でありながら洗練されている点を、個人的な好みとして挙げます。
産業医の宝物「経営中毒」、社長のありのままを知る
数ある番組のなかで、小橋さんがまず勧めるのが「経営中毒」です。野村さんと、企業変革支援事業などを手がけるエッグフォワード代表の徳谷聡志さんがメインMCを務める番組だと紹介します。
小橋さんは、社長は偉い人・強い人というイメージがある一方、社員からは「理解してくれない」「動いてくれない」と言われがちだと指摘します。
しかし社長は、人や組織はもちろん、資金繰りや事業開発など、日々さまざまな困難やプレッシャーに向き合っています。「経営中毒」は、その厳しさや大変さだけでなく、尊さや楽しさも含めた社長のありのままの姿をさらけ出すコンセプトだと説明します。
社長目線でここまで企業経営のあれこれについてリアルに語ってもらえるっていうのはもう宝物なんですよね。
小橋さんにとっては、経営者としての学びも大きいと言います。ワンセルフの大事な意思決定は、大体それと関連する経営中毒の回を聞いてからやっているというほど、この番組に頼っているそうです。
風神雷神への表敬訪問、感謝を伝えに行った日
小橋さんは「経営中毒」への感謝を、実際に表敬訪問という形で伝えに行ったエピソードを語ります。「経営中毒」は2024年に書籍化されています。
きっかけは、ビジネス書の聖地として知られる丸善丸の内本店で年に一度開かれるイベントでした。そこに野村さんと徳谷さんが登壇するという情報をつかんだと言います。
しかもその日は2024年11月8日で、産業医の本音の第1回配信の翌々日にあたっていました。小橋さんは、Podcastの神と経営の神が一堂に集うなら行くしかないと考えます。
私にとってのポッドキャストの神と経営の神、いわば風神雷神ですよ。
あまり追っかけをするタイプではないという小橋さんですが、この日ばかりは全力で表敬訪問したと言います。今までの感謝とPodcastを始めた報告を一方的に伝えたところ、2人には温かく迎え入れてもらえたと振り返ります。
医療の外へ、Chronicleのおすすめ3番組
小橋さんは、Chronicleの他の番組からあえて3つを紹介します。1つ目は、アルバラボとのコラボによる「誰もやらないビジネスのつくり方」です。
アルバラボは医療スタートアップで、セルフ透析というサービスを運営しています。この番組では、代表の桜堂航さんからセルフ透析の開発ストーリーや、そこから得られる普遍的なビジネスの考え方が学べると言います。
小橋さんは、医療の中だけでは課題解決に限界が出てくると感じてきました。救急医を経て産業医の道を選んだのも、その課題意識からだったため、この番組には親近感を持ちながら聴いていると話します。
2つ目は、ファーストライトキャピタルとのコラボによる「VIVA VC」です。VCはベンチャーキャピタルの略で、成長が期待されるスタートアップに投資する投資会社やファンドを指します。
ワンセルフもスタートアップを支援する機会が多く、クライアントからVCという言葉をよく聞くと言います。VC側の視点を持っておくと、スタートアップ界隈の全体像がよりクリアに把握できると考え、毎週勉強になりながら聴いているそうです。
3つ目は、フリーランス協会とのコラボによる「WHY ARE YOU ?」です。フリーランス協会代表理事の平田麻莉さんと、クリエイティブディレクターの山崎晴太郎さんが、毎回一人ずつ独立して活躍するクリエイターをゲストに招く番組だと紹介します。
小橋さんは、フリーランスの安全衛生の課題が業界でも問題になっていると指摘します。適切な予防ができず健康を害したり、病気や障害を持ちながらの仕事の両立ができなかったりする事態を防ぎたいという思いを語ります。
一方で、フリーランスの働き方そのものや、どんな思いで仕事と向き合いキャリアを築いてきたのかに、毎回驚きと発見があるとも話します。課題解決の糸口としてだけでなく、純粋に楽しみながら聴いていると言います。
生の声が視点を広げる、Chronicleへの感謝
小橋さんは、他にも「アスコープ」「タレントーク」「みんなのメンタル」など魅力的な番組が多いと挙げます。総じて言えるのは、ビジネスパーソンの生の声がこれだけ聴けるということです。
ビジネスパーソンの生の声がこれだけ聞けるっていうのは、それだけ視点や思考の幅っていうのが広がってくるっていうことですから。
人事労務や産業保健に関わる立場として、これほどありがたいことはないと小橋さんは言います。今回の紹介は、野村さんやChronicleに一切許可を取っておらず、純粋に感謝の念からのものだと断っています。
構造を「パクってもいい」、支える側としての関わり方
小橋さんは、番組を聴くだけでなく、産業医の本音の全体的な構成や雰囲気にChronicleの要素をふんだんに取り入れていると明かします。そのことを野村さんに正直に伝えたそうです。
(野村さんが)構造はもう全然パクってもらっていいんで、業界良くしていきましょうみたいな、そんな感じで言っていただいて。
快い返答に、小橋さんは感謝を超えて申し訳ない気持ちになったと語ります。そこで、Chronicleを自発的に支援できるサポート会員の制度を使い、個人として陰ながら応援していると言います。
サポーター特典のボーナストラックも良いと小橋さんは続けます。今は「クロニクルの企画準備室」というシリーズが配信されており、野村さんのビジョンやPodcast制作の裏話など、本質的な部分まで知ることができると話します。
Chronicle以外にもおすすめの番組はたくさんあるとしつつ、それは第40回目あたりの機会に取っておきたいと締めくくっています。
まとめ
第30回は、産業医の小橋正樹さんが仕事のインプットに使っているPodcast、特にPodcast Studio Chronicleの番組を独断で紹介する回でした。ビジネスパーソンの生の声を聴くことが、視点や思考の幅を広げるという実感が全体を貫いています。
- 外来は受け身から始まるが、産業医面談は会社側からアプローチし、本人の意向を引き出すファシリテーション的な進め方が特徴となる
- 小橋さんが特に勧めるのが、社長のありのままの姿をさらけ出す「経営中毒」で、経営の意思決定の参考にもしている
- 医療スタートアップの「誰もやらないビジネスのつくり方」、VC視点の「VIVA VC」、クリエイターに迫る「WHY ARE YOU ?」も紹介された
- フリーランスの安全衛生の課題など、産業保健の視点から関心を寄せる番組もある
- 番組構成にもChronicleの影響があり、小橋さんはサポーターとして陰ながら応援していると語った




