この番組は誰に、何を届けるのか
番組冒頭で小橋正樹さんは、企業活動を支える「働く人」や「働く組織」の健康にフォーカスすると語ります。産業医であり、時に経営者でもある立場から、企業が直面する健康課題を掘り下げていく方針です。
専門的な知見だけでなく、現場の本音も交えるのがこの番組の特徴です。さらにゲストやリスナーとも一緒に、健康と経営のより良い形を語っていく配信を予定していると話されています。
進め方は具体的で、1回1テーマ、週1回配信を基本とします。所要時間はおおむね10分から15分程度で完結するイメージです。
扱う内容は、大きく3つの軸で構成されると説明されています。基本編・お悩み編・トレンド編の3つです。
小橋さんは、この番組を先生と生徒のような一方通行の場にはしたくないと語ります。正論だけでなく、実際にどう思うか、どうした方がいいかというリアルな本音を届けたいという姿勢です。
これが正論なんだけど、実際はこう思うし、こうした方がいいんじゃないかなっていう、よりリアルな、このポッドキャストでこそ話せる内容にしていきたい
想定するリスナーは、経営者や人事労務担当者といった、人に関わる仕事の実務を担う人たちです。加えて、産業保健の領域で働く同業者にも参考になる部分があるだろうと話されています。
岡山から福岡へ、産業医になるまでの歩み
本編ではまず、小橋さん自身の経歴が語られます。1985年に岡山県で生まれ、高校時代までを岡山で過ごしたといいます。
医者の家系ではなかったものの、仲の良かった中学高校の先輩が産業医科大学に進んだことが転機になりました。その先輩から大学や産業医の話を聞くうちに、産業医という仕事に興味を持ったそうです。
その先輩から大学のこととか産業医のこととかの話を聞いているうちに、産業医という仕事に興味を持って、そこから勉強して、なんとか産業医科大学の医学部の方に入学しました
2010年に大学を卒業した後は、3年間臨床医として働いています。主に福岡や沖縄で、救急診療や総合診療に携わったといいます。
その後は産業医科大学に戻り、2年間の産業医修業を行いました。修業を終えた2015年からは縁があって東京に出て、現在は関東を中心にさまざまな企業で産業医活動を行っています。
産業医として持つ、もう一つの顔
現在の小橋さんは、仕事上で2つの顔を持っていると語ります。1つ目は産業医としての顔です。
産業医の仕事は、働く人・組織・社会の健康にコミットするものです。この領域を、業界では産業保健 ── 働く人や職場の健康を守り、増進するための取り組み全般を指す分野。産業医や保健師などの専門職が関わる。と呼ぶと説明されています。
小橋さんは、産業医の具体的な仕事を3つに整理します。健康チェック、就業のジャッジ、そして健康に働くためのアドバイスです。
この3つを担う産業医を、小橋さんは「企業におけるチームドクター」と表現します。目指すのは、医学という観点からの人と仕事のマッチングだと語られています。
oneself.が掲げる、3つのサービスの特徴
2つ目の顔が、株式会社oneself.の代表としての顔です。この会社は企業に向けた産業保健サービスを展開しており、小橋さんは「企業の健康管理に特化した士業事務所」というイメージだと説明します。
サービスの特徴は3つあると語られます。1つ目はチーム型のサービスです。
産業保健には産業医以外にも専門職がいて、その代表が保健師 ── 健康指導や保健指導を専門とする看護職。職場で働く保健師は産業保健看護職とも呼ばれ、企業の健康管理を担う。だといいます。病院でいう看護師のような存在です。
少なくともこれからの時代は、この保健師さんが中心となって、産業医とか心理士とか理学療法士とか、そういった専門職がチームとして連携していくのが最も持続的かつ理想的な産業保健のあり方なんじゃないか
2つ目の特徴は、シームレス型(ハイブリッド型)のサービスです。従来、産業医や保健師は月に1〜2回企業を訪問して業務を行うのが典型的でした。
しかし訪問と訪問の間にも、企業の中では健康の課題が発生します。小橋さんは、体がその場になくてもクライアント企業とつながっていることが大事だと考え、オンラインと対面を柔軟に組み合わせていると話します。
3つ目の特徴が、ハンズオン型のサービスです。専門的な助言を伝えること自体にも価値はありますが、「言うは易し行うは難し」がこの業界には特に多いといいます。
そこで、専門性が高く後回しにされがちな健康管理の実務を、意思決定は企業に委ねつつ、求めに応じて代行できるようにしています。それがハンズオン型の狙いだと説明されています。
月1〜2回の訪問時に業務を行い、助言を伝えることが中心。実務は企業側に委ねられがち
保健師を中心としたチームで、オンラインと対面を組み合わせ、後回しにされがちな実務まで代行する
なぜ、届きにくかった企業の健康を底上げするのか
小橋さんは、こうしたスタイルでサービスを提供する理由を語ります。狙いは、これまで産業保健の手が届きにくかった企業に、その仕組みを届けることです。
具体的には、中小・零細・スタートアップといった小規模な企業や、地方に拠点を持つ企業を挙げています。そうした企業にも産業保健が届く仕組みを、民間の立場から作りたいという思いです。
世の中には保健師や産業医を直接雇い、健康経営で先進的な取り組みを行う大企業も一定数あります。小橋さんはそれを素晴らしいものだと認め、学ぶことばかりだと話します。
oneself.のスタッフの多くは大企業に雇われた経験があり、数百人から数千人規模の健康管理も得意としています。実際に今もそうした企業を支援しているといいます。
一方で、世の中の99%以上の企業はそうではありません。健康格差という観点からは、中小・零細・スタートアップの健康課題のほうが喫緊であることが多いと指摘されています。
さらに、企業の規模が小さくなるほど、一人ひとりの影響力は大きくなります。だからこそ、そこで頑張る人たちの健康を底上げしたいという思いが根底にあると語られています。
この番組を始めた、いくつかの理由
続いて小橋さんは、番組を始めた背景を語ります。マーケティング的な側面もあると認めつつ、根底にあるのは自身のスタイルだといいます。
そのスタイルとは、同じところで何度もつまずかないように仕組み化を進め、産業保健のレベルを底上げしていくというものです。小橋さんは、これを別の言い方で率直に表現しています。
要は根が怠惰な性格なので、楽するために本気出すみたいなマインドが根底にあるんですよね
実際にこれまでも、健康診断後のフローや、就業を制限する基準、休復職の際の基準などを次々と作ってきたといいます。番組もその延長線上にある取り組みです。
産業保健の活動では、経営者や人事労務担当者と個別事例を議論することが多い一方、基本的な考え方は毎回似たようなことを話しているといいます。それをポッドキャストにまとめれば、何度も聞けるうえ、似た悩みを持つ人の役にも立つと考えたそうです。
4児の父が実感した、音声メディアの価値
小橋さんには、テキストのコラムと並行してポッドキャストを始めるにあたっての原体験があります。それは4人の子どもの父親という立場から来ています。
子どもは7歳、5歳、3歳、1歳で、仕事や家事、育児に追われる毎日だといいます。まとまってインプットする時間が取りづらい状況です。
そんな中でここ1年、自分の仕事領域に近いポッドキャストがあることを知り、何かをしながら有益な情報を聴ける音声メディアに助けられたと語ります。
移動しながらとか、洗濯畳みながらとか、昼ご飯食べながらとか、何かをしながらでも有益な情報を聴ける、このポッドキャストというものにめちゃくちゃお世話になった
同じように感じる人がいるのではないか、という気づきが番組を始める後押しになりました。加えて、テキストや動画では構えてしまうことでも、音声なら間や雰囲気ごと伝えられる点も魅力だといいます。
そこで小橋さんは、コラムとポッドキャストの役割を分けて考えることにしました。コラムはがっちりとした知識の発信、ポッドキャストは全体的な文脈の発信という使い分けです。
がっちりとした知識の発信。体系的な情報を整理して届ける
周辺情報や実情も含めた、全体的な文脈の発信。本音や等身大の話を伝えやすい
「健康と経営の間」で悩む本音を語る番組へ
どんな番組にしていきたいかについて、小橋さんはクライアント企業と議論している内容を、より多くの人に届けたいと語ります。届けたいのは経営者や人事労務担当者、そして産業保健の専門職です。
番組タイトルにある「健康と経営の間」には、小橋さん自身の実感が込められています。産業医であると同時に経営者でもあるからこそ、その間で日々悩み、葛藤しているといいます。
だからこそ、あるべき論を語るだけでなく、悩んでいることや考えていることも包み隠さず発信したいと話されています。いろんな側面から健康と経営を考えることが、気づきや学びにつながればという狙いです。
最初のうちは一人で話す回が多くなる見込みですが、いずれは同じ産業保健の専門職、社労士や弁護士といった士業、当事者である経営者や人事労務など、さまざまなゲストと語りたいと展望を述べています。
そして何より、リスナーからのお便りを取り上げ、一方通行ではなく双方向的に対話しながら健康と経営を考える番組にしたいと語られています。
設立5周年に始めた、この一歩
番組の締めくくりで、小橋さんはこの初回の特別な意味に触れます。配信された2024年11月は、株式会社oneself.を設立してからちょうど5年が経ったタイミングでした。
もっとも、最初の3年ほどはコロナ禍もあり、一人で目の前の産業医業務に追われる個人商店のような状態だったといいます。感覚的にはまだ2期目や3期目のようだと、率直に語られています。
それでも、設立5周年という節目にポッドキャストを始められたことは、自分の中でもいい思い出になると話します。
記念すべき設立5周年という月にこうやってポッドキャストを始められたのは、自分の中でもいい思い出だなと勝手に感じております
番組がいつまで続くかはまだ言えないとしつつ、多くの人に長く聞いてもらい、自分自身が長く続けたいと思える番組にしたいと、小橋さんは初回を締めくくっています。
まとめ
第1回は、産業医であり経営者でもある小橋正樹さんが、番組の狙い、自身の歩み、株式会社oneself.の取り組み、そして番組を始めた背景を語る回でした。「健康と経営の間」で悩む本音を、一方通行ではなく双方向で共有していく姿勢が示されています。
- 番組は基本編・お悩み編・トレンド編の3軸で、1回1テーマ・週1回・10〜15分を基本に配信される
- 想定リスナーは経営者・人事労務担当者を中心に、産業保健の専門職も含まれる
- 小橋さんは産業医と経営者の2つの顔を持ち、中小・零細・スタートアップや地方企業の健康の底上げを目指している
- oneself.のサービスはチーム型・シームレス型・ハンズオン型の3つを特徴とする
- コラムは知識の発信、ポッドキャストは文脈や本音の発信として役割を分け、双方向の番組づくりを目指している



