4代目に何を引き継ぐのか
最終回は、鶴仙園がこれから先どう進むのか、という話から始まります。鶴岡さんが挙げたのは、伝統を守りつつ毎年新しいものを加えていく、という方針でした。
4代目に引き継ぐために、今の伝統を守りつつ、やることは基本的に植物を育ててお客様にいいものを提供する。これがサボテン愛ということでひとくくりになるんです。
それにプラスアルファで毎年毎年新しいものを加えていかないと、これからはちょっとダメなので、何かを考えていかないといけない。
4代目である息子さんは、元々は洋服店に勤めていて、家業を継いで4年ほどになるといいます。20代の若い世代がこれからどう店を動かしていくかが、この回の焦点になっていきます。
おじいちゃんがいて、会長がやって、ヒデの世代でそういうセレクトショップ的な動きをして、今4代目がこれからどうしていくかっていうところ。
サボテンの値段はAIに測れるのか
話題は、4代目が生きるAI時代へと移ります。種市さんによれば、4代目はうんちくや文章を書くのが得意ではないものの、AIを実際に使い始めているそうです。
画像を処理したり、動画を編集したり、文章は箇条書きで書くと整えてくれる。そのぐらいはできるようになった、最近。
一方で、種市さんはAIの誤りへの不安も口にします。存在しない情報をもっともらしく答える、いわゆるハルシネーションの体験です。
ソースは何?って言ったら、あなたが喜んでたんで嬉しくなると思ってその名前出しちゃいましたみたいな。お前ふざけんなよみたいな。
では、サボテンの値段はAIで測れるのか。ここで小畑さんが、そもそも適正価格が成立しにくい理由を説明します。
ニンジンってどこにでも売ってるから、なんとなくみんなの適正なプライスが頭の中にある。でもサボテンってないから、適正価格がみんなないと思うんですよね。
しかも値段はディテールで細かく決まるため、AIが適正価格を出すのは難しいと小畑さんは話します。ただ種市さんは、逆の側面にも気づきます。
AIって信頼関係をすごく出すから、そう考えるとヒデの店って絶対強いんだよね。100年続いてる老舗なので、あそこで言ってることは間違いないと思います、買いですみたいな感じで言ってくれる。
店の歴史そのものが、AIの中での信頼の指標になりうるという指摘です。
時間をかける非合理が、なぜ今響くのか
AIが何でも高速に作れる時代だからこそ、時間をかけて育てる価値が際立つ、という話に展開します。小畑さんは自分たちの仕事との対比で語ります。
僕らやってることは、どんだけ早く作るかみたいなこと毎日やってる。でもこれは5年かけてこれだから、めちゃくちゃ価値あるなって思います。
鶴岡さんは、植物を育てる時間が持つ独特の感覚を、こう表現しました。
ゆっくり時が流れるんじゃないですかね、これを管理してる時に。
むしろテクノロジー業界の人ほど、この非合理な豊かさに惹かれるのではないか、と3人の見方は重なります。
さらに鶴岡さんは、サボテンや多肉が生活のライフスタイルの一つとして根づいている様子を語ります。会社に行く前に世話をし、帰ってからまた面倒を見る。花が咲いて種ができれば、自分のオリジナルも生まれていくといいます。
店を増やさない100年経営
鶴仙園は今も池袋を中心とした少数の店舗で運営されています。店舗を増やす選択肢はなかったのか、小畑さんが尋ねます。
店舗を増やそうと思った時期もあった。でもクオリティのいいものを出すためには、ある程度絞ったところでしかできないよっていう話をしてて。
立地についても、毎日の納品や作業工程を考えると、拠点を集約するほうが合理的だと鶴岡さんは説明します。
種市さんは、大きくすることがゴールではない経営として、この姿勢を評価します。
やたらめったら大きくするっていうことがゴールではない。なんかすごく正しくいってるなっていう感じもする。
一方で、AIやテクノロジーを使った新しい仕掛けには、まだ余地がありそうだという話につながっていきます。
転売と、本当に愛するファンをどう守るか
ここから、コミュニティと顧客管理の話に入ります。鶴仙園にはお客さん同士のつながりがあり、グループでポップアップに来る人も多いといいます。
種市さんは、小畑さんが手がける会員権サービスとの共通点を指摘します。
趣味嗜好が合ってる人たちがどんどんコミュニティ化していくっていう話をしてたじゃん。なんか似てるんだよ。
同時に浮かび上がるのが転売の問題です。鶴岡さんによれば、サボテン本体の転売は少ないものの、鉢は一定数あるといいます。
新しいものを植物を買いたいから、これはもういらないなっていうので、そういう方も多分いらっしゃると思いますよ。
現在の顧客管理は主にInstagramで、かつてのようなはがきの住所録などは使っていないそうです。多くのフォロワーを抱える一方で、個人情報は取らない運用になっています。
鶴岡さん自身も、これからは囲い込みが必要な時代になると感じています。
これからはやっぱりそういう囲い込みをしないとダメな時代になってくると思いますね。ライバルもいっぱい増えてきてますし。
鶴仙園というステータスと、会員権の可能性
鶴仙園で買ったこと自体が、お客さんにとってステータスになっている面があります。鶴岡さんは、ロゴを大胆に入れた鉢の話をします。
鶴仙園のロゴを大胆にして鉢のデザインに入れる。そうするとその鉢に植えて、鶴仙園で買いましたってポストしてくれる。
そこから、鶴仙園のデジタル会員権があってもいいのでは、という発想が生まれます。小畑さんは、欧州サッカーの年間シートを例に、レアリティが生む価値を説明します。
欧州の名門クラブの年間シートって買えないんですよ。100個しかなくて、1番から100番までみんな持ってる。空きが出ないんですよ。
一方で種市さんは、平等性が失われる怖さも指摘します。ここで論点になるのが、ロレックスマラソンのような「お金を払えば買える」仕組みの是非です。
この問いに対し、鶴岡さんの答えははっきりしていました。
そのため鶴仙園では、人気商品はゲリラ販売や、来店者による抽選という形をとっているといいます。
人気のある商品が出る時はゲリラで販売して、来た人に当たればいいかな。
種市さんは、転売目的の人ばかりが限定品を買っていく状況を避けるためにも、長年のファンに報いる仕組みがあってよいのでは、と提案します。ファンクラブという発想です。
小畑さんは、レストランの会員権を例に、お金があれば買えるわけではない世界があることを紹介します。金額と数のバランスが、いやらしさとレアリティを分けるのではないか、というのが着地点でした。
年間5000円で誰でも入れるとレアリティは低い。でも10万円で100個になるとレアリティがあって、いやらしい感じがする。だからそのバランスかもしれない。
まとめ
100年続く鶴仙園が、AI時代にどう伝統とコミュニティを次世代へ渡すかを語り合った最終回です。効率やスピードが求められる時代だからこそ、時間をかけて育てる価値と、本当に愛してくれるファンをどう守るかが軸になりました。
- 鶴仙園は伝統を守りつつ、毎年新しいものを加える方針で4代目へ継承しようとしている
- サボテンは適正価格が成立しにくく、AIでの値付けは難しいが、店の歴史は信頼の指標になりうる
- 何でも高速に作れる時代だからこそ、時間をかけて育てる非合理な豊かさが響く
- 店を増やさずクオリティを絞る少数店舗経営で、100年の家族経営を続けてきた
- 転売やファン保護の課題に対し、ゲリラ販売や抽選、会員権など「本当に愛する人に還元する」方法を模索している




