札幌からの出張収録。「今どこにいるかわからない人」の現在地
この回は札幌での出張収録です。ホストの中澤理香さんがプライベートで札幌を訪れたのを機に、ゲストの不破大樹さんに話を聞いています。
不破さんの今の肩書きは事業開発で、担当は札幌の立ち上げです。
不破さんは新卒でソフトバンクに入り、システム企画などを7〜8年経験した後、配車アプリ「DiDi」の立ち上げに携わりました。
その後AIの会社を経て、2024年5月にnewmoへ入社しました。中澤さんとは同じ入社月の同期にあたります。
本社行ったのも多分半年ぶりで、オフィスの入り方どうやって入るんだっけ、みたいな。あの鍵の開け方とか。
各地を飛び回るため本社に顔を出す機会が少なく、今どこにいるかわからないと評されるほどの動き方をしています。
1拠点から5拠点同時進行へ。newmoでの2年をたどる
以前は大阪でメンバー全員が集まって動いていましたが、今は複数の拠点を同時に立ち上げる体制に変わっています。
1拠点みんなでやってたのが、今や5拠点を同時進行で開けていってるって感じですね。
不破さんのnewmoでの歩みを整理すると、1年目はライドシェアのオペレーションをゼロから作る仕事でした。ドライバーの獲得、オンボーディング、稼働後の運用までを担いました。
2024年末には、大阪・御堂筋のライトアップに合わせてライドシェアが24時間解禁される場面もありました。万博の前哨戦にあたる動きです。
大きな転換点は2025年6月でした。newmo社員が営業所に入り、所長を務める方針が打ち出され、不破さんも中百舌鳥の栄総合タクシーの営業所長に入りました。
栄総合で2ヶ月ほど所長を務めた後、新タクシー会社「夢洲交通」の立ち上げに移ります。採用やオペレーション構築を担い、開業は11月29日でした。
15年ぶりの札幌。市場は大阪と似て、求める人は違う
今リードしている札幌の立ち上げには、不破さん自身の縁もありました。新卒1年目の配属先が札幌だったのです。
新卒1年目の時の配属が札幌なんですよね。コールセンターの立ち上げみたいな感じで、新卒12人ぐらいで札幌行って。右も左もわからない社会人人生1年目をここで過ごすみたいな。
当時は1年だけの滞在でした。約15年ぶりに、立ち上げという形で戻ってきたことになります。
札幌のタクシー市場について、不破さんは大阪と似ている面があると話します。車1台あたりの売上は公開されており、その水準は大阪と近いといいます。
一方で、都市の規模は大阪より小さく、平均年収の水準も異なります。同じ売上を上げられれば、より稼げている実感につながる可能性があると見ています。
違うのは、乗務員になろうとする人が求めるものでした。大阪は売上や給与を重視する人が多かった一方、札幌は生活とのバランスを重視する人が目立つといいます。
札幌だとどちらかというと、バランス取りながら私生活もやりながら時間が確保できる、タクシーに興味を持ってますって方が多かったりする。
趣味の時間を確保したいので柔軟な働き方ができるかと聞かれることもあり、土地柄による違いを感じると話しています。
なぜ引っ越しまでするのか。「現場では通用しない」
不破さんはnewmoで拠点経験の数が随一とされ、そのたびに引っ越しを伴うのが特徴です。
別に出張はそんなに嫌いどころか好きなので、それは全然OKなんですけど、ただこのぐらいフィジカル的に拠点も移してやるとは思ってなかったですね。
転機は、大阪でタクシーの営業所長をやると決めた時でした。シフトに入り、現場のリアルを知ろうとすると、出張ベースでは限界があったといいます。
新幹線の時間あるんでとかだと、そんなのは現場だったら通用しない。だったらこのタイミングで引っ越しちゃうか、というので東京から大阪に引っ越しましたね。
所長の公募は全社集会でも呼びかけられ、経験や現実性から不破さんの就任はほぼ既定路線だったといいます。
大阪は実際に住むと働きやすい街だったと不破さんは振り返ります。タクシーの仕事では車での移動が多く、営業所間を車で30分程度で行き来できる利便性があったといいます。
大阪だとみんな1500円2000円で帰れるんで、終電気にせず飲んでこうぜみたいなのができたりする。みんなが変に気遣わず、仕事の話を遅くまでできてみたいなのはすごい良かったですね。
もっとも、話す内容はプライベートよりも仕事が中心だったといいます。大変なことを吐き出し合うようなガス抜きの場でもありました。
タクシー営業所長の一日と、三桁採用の現場
オフィスワークと現場では、時間の使い方がまったく違います。オフィスなら自分で計画を立てられますが、現場は事故やトラブルで予定が崩れます。
本来1とか1.5でちゃんと集中して入れてるミーティングが、何かやりながらの0.5ぐらいになっちゃう。
所長の主な仕事は、乗務員に気持ちよく稼働してもらい、売上を上げてPLを良くすることです。それと並行して、トラブルの抑止と対応が大きな比重を占めます。
採用も所長の重要な仕事でした。夢洲交通の立ち上げ時は不破さんが面接をほぼ担い、採用数は三桁を超えました。
多い日だと6回、7回ぐらい面接、それだけでも1日埋まっちゃうみたいなのもありましたし、三桁以上は全然余裕でやってましたね。
事故については、劇的に改善する特効薬はないと不破さんは語ります。研修やドライブレコーダーの振り返りなど、地道な取り組みしかないといいます。
反省文書かすと終わりとかじゃなくて、自己分析した上で会話したりとかっていうのが、本当に草の根じゃないですけども、ちゃんとやんなきゃいけない。
営業所長の生活は、早番なら朝4時スタート、夜勤なら夜10時スタートと幅がありました。時間帯ごとに違う問題が起きるため、全シフトに入って理解することが強みになったといいます。
乗務員が本当に求めていたのは、安心と信頼
現場に入って最も理解が深まったのは、乗務員が本当に求めているものだったと不破さんは話します。年齢も幅広いなか、根底には共通するものがありました。
そのため、行き当たりばったりではなく、資料やエビデンスをもとに丁寧に説明する姿勢が重要だったといいます。
今は苦しいかもしれないけど、こういう風で最終的には良くしたいと思っているので、ここに協力してください、みたいなコミュニケーションは、ワンバイワンでやってくと大変ですけど、それをやるだけの価値はある。
所長は思っていた以上に人と向き合う仕事だった、とホストの中澤さんは受け止めます。不破さんも、経営視点と現場の声の間を折衷する力が求められると話します。
オフィスワークではKR達成に向けて進める単発のコミュニケーションでも成り立ちますが、現場では毎日顔を合わせるため、一つ一つのやりとりが重く受け止められるといいます。
この人のために頑張れるとかって大事なのかなと思っていて。何々さんが言ってるんだったら、ちょっとこれ大変だけどやってみるか、みたいなところって、現場に行けばいくほど、応じたるかなと思う。
不破さんは、営業所の運行管理者は暇なのが一番いいと考えています。暇であることは、乗務員が自走し、トラブルが起きていない状態を意味するからです。
一方で、飲酒した客が警察沙汰になるようなイレギュラー対応も現場では起こります。ケースバイケースの判断は会社のレピュテーションにも影響するため、悩ましいといいます。
立ち上げは簡単だった。本当にきつかった1月2月
最もきつかった時期を聞かれると、不破さんは今年の1月2月だったと答えます。前提として、立ち上げそのものは意外と難しくないと語ります。
問題が噴き出すのは開業後でした。想定と違う運用や、意図と違って乗務員に伝わった設計が、後からトラブルとして表面化します。
さらに大阪のタクシーは12月が繁忙期にあたる一方、1月2月は最大の閑散期です。開業直後に売上が伸びた反動で落ち込みやすく、給与設計の伝わり方などの課題も重なりました。
どんな問題が起こるか未知のまま進むため、机上の空論でも動き出せる
想定との差や伝達のズレがトラブルとして噴出し、閑散期には売上とPLも打撃を受ける
落ち込んだ日の過ごし方について、不破さんは切り替えの早さを挙げます。一日は食らっても、寝たり、メンバーと吐き出したりして回復するといいます。
自分に向かうマイナスは割り切れる一方、自分たちの判断で乗務員が不利益を被る場合は深く落ち込むと話します。
この仕事は運転が多く、移動時間がいい気分転換になるとも語ります。好きな音楽を聴いたり、一人で考えたりできる時間だといいます。
上の人ほど働いている。尊敬する上司のタフさ
移動の多さについて、不破さんは自分は苦にならないタイプだと話します。枕が変わると眠れない人もいるなか、どこでも寝られるといいます。
この日も朝7時の便で大阪から札幌に来ており、金曜は東京、その後大阪と、移動距離の大きい動き方をしています。
そのうえで印象的なのは、newmoでは上の人ほど働いているという点です。CEOの春菜さんやNaokiさんのスケジュールを例に挙げます。
上の人ほど働いてるからこそ、こんな移動してるぐらいで体力ありますとは言えない。
不破さんは春菜さんへのリスペクトを語ります。移動を伴う仕事も自ら引き受け、翌朝の商談前に飲みに行っても平然と臨む姿を挙げました。
いや、そんなこと私がやりますよみたいなこととかも、私行ってくるからみたいな。県またいだりして行ってくる、その動きを春菜さんするんですか、というのが結構頻繁にある。
普段はほわんとした雰囲気でも、数字の詰めどころで急に経営の顔になる振れ幅も印象的だといいます。ただ、そのスタイルは自分には難しいとも話しています。
野望は模索中。それでも「大変だったと言える仕事」がいい
今後のキャリアについて、不破さんは模索中だと率直に語ります。newmoには目指せる像が複数あるからです。
立ち上げを続けるのも面白い一方、事業責任者として一つの拠点を深く経営するのも魅力だといいます。夢洲では0から1、1から10までは担いましたが、10から100は別物だと感じています。
札幌では、用地探しから立ち上げ、初動を回すところまでをもう一度やれます。夢洲での反省を活かせる点を、不破さんは前向きにとらえています。
仕事観の軸として、5年後10年後に何をして何が大変だったかを言えない仕事は嫌だという考えを挙げます。
ルーティンで回した時に、あれ5年前って何してたっけ、みたいなのが、5年前ってこれで北海道行ってあれやってた時だ、と言えるのが自分のキャリアにとっていい。
つらかった経験ほど記憶に残るとも語ります。newmoのメンバーが苦労話で盛り上がる文化にも、それが表れているといいます。
誰かがこれやってすごいみたいな話ってあんま聞かなくて、みんなもう認め合ってるというか、こんなことこの人数でやってるんだからすごいよね、なんです。苦労話で盛り上がれるみたいなのはいいなと思ってます。
newmoは「知的好奇心が尽きない会社」
最後に、不破さんにとってnewmoがどんな場所かを尋ねました。
新しいエリアや事業を次々に手がけるなかで、オフィスワークでは出会わない条例や要件、人との関わりに触れられる点を理由に挙げます。
たとえば札幌には緑化の条例があり、駐車場を建てるにも一定の緑化が求められるといいます。運輸局や条例が地域ごとに異なることも、興味の対象になっています。
だったらこっちはどうなんだろうか、こっちのエリアはどうなってんだろう、とか思うのは、すごいこの会社だからこそ、今自分が置かせてもらってるポジションだからこそ。
札幌・小樽の営業所は9月末から10月頭の開業を目指して、乗務員や内勤の採用が進んでいます。
まとめ
東京から大阪、そして札幌へ。不破さんの2年は、立ち上げの数だけ拠点を移してきた歩みでした。現場に深く入ったからこそ見えた、乗務員が求める安心と信頼、そして開業後にこそ訪れる本当のきつさが語られた回です。
- newmoでの2年で、不破さんは1拠点から5拠点同時進行への変化のなかを動いてきた
- 現場のリアルを知るため引っ越しを伴って所長を務め、採用は三桁を超えた
- 乗務員が求めるのは安心と信頼で、丁寧なコミュニケーションに価値があると学んだ
- 立ち上げよりも、想定とのズレや閑散期が重なる開業後の1月2月が最もきつかった
- 「大変だったと言える仕事」を志向し、newmoを知的好奇心が尽きない会社だと表現した




