シルバーウィークは「ご当地牛乳」を飲んでほしい理由
今回の配信は9月20日の日曜日、シルバーウィークの真っ最中に届けられました。川上さんはまず、旅行や帰省で出かける人に向けてちょっとしたお願いをします。
その背景にあるのが給食の停止です。長期休みに入ると学校給食が止まり、牛乳の行き先がなくなってしまいます。関東の方がやばいと川上さんは話し、余った牛乳をどうにか消費につなげたいという思いをにじませます。
ぜひ皆さんお出かけしても、ご当地牛乳とかね、各地の牛乳、地元の牛乳飲んで、旅行とか観光に彩りを与えていただけたら。
「こんなところでこんなの飲んだよ」という報告も歓迎とのことで、旅先での一杯が牛乳の消費と旅の楽しみを同時に増やす、という提案でした。
Podyを作った「ケンスーさん」本人からコメントが届いた
ここからが日曜恒例のコメント返しコーナーです。最初に紹介されたのは、川上牧場が文字起こしに使っているアプリ「Pody」の開発者、ケンスーさん本人からのコメントでした。
川上さんによると、ケンスーさんはインフルエンサー ── SNSなどで多くのフォロワーに影響を与える発信者。ここでは30万フォロワー規模の人気発信者として紹介されていますで、フォロワーは30万人ほど。そんな人が「弱小アカウントのよくわからない牧場のおじさん」にもコメントをくれたことに、川上さんは素直に驚いていました。
Podyはポッドキャストの内容を文字起こしし、それをもとに動画にしたり切り取りを作ったりできるアプリです。川上さんはその使い方も発信しているので、配信者はぜひ試してみてほしいと呼びかけました。
生クリームのプロも「知らなかった」乳脂肪と香りの話
続いて紹介されたのは、「ホイップクリームだけのケーキはなぜ美味しくないのか」という記事に届いたコメントです。生クリームと日々向き合っているという方からの声でした。
香りにはそんなに注目していなかったけど、確かにシュガーバターなんかも、食べる前からふわっと香るバターの香りだけで美味しいって思っちゃうもんな。
生クリームを扱う本職の人から「知らないことがまだまだある」と言ってもらえたことを、川上さんは喜んでいました。生産者・消費者・加工者がつながっていく手応えを感じたようです。
日本の牛乳や肉牛に成長ホルモンは使われている?
ここからは、牛乳や牛肉にまつわるデマへの回答が続きます。まずTikTokに届いた「肉牛には成長ホルモンを使っているのか」という質問です。
肉牛にも使いません。成長ホルモンは日本ではもう認可されてないんで使いません。輸入もできません。
続いて「小学生から47年間ほぼ毎日牛乳を飲んでいるが健康体」というコメントも紹介されました。川上さんは、ここから47年間は骨貯金がしっかりしていると話し、骨粗しょう症 ── 骨がもろくなって折れやすくなる病気。カルシウムの蓄積が予防につながるとされ、川上さんは牛乳との関連を配信でも扱っていますになりにくいのではと応じます。
「ちょうど飲みながら見ててビビったけど嘘でよかった」という声もあり、川上さんは成長ホルモンも抗生剤も使っていないことをあらためて伝えました。
水より安い牛乳。「バルクに水を入れた方が高い」という皮肉
次は「1リットルの牛乳の原価はいくらか」という投稿への反応です。「水より安い時がある。信じられない」というコメントが紹介されました。
安売りの牛乳が水より安くなることについて、川上さんはスーパーが赤字覚悟で広告の品として負担している場合があると説明します。そのうえで、地元・鳥取県で聞いた話を紹介しました。
その牧場は、有名なミネラルウォーターを貯水する施設のすぐ近くにあります。そこの酪農家さんが放ったのは、なんとも皮肉な一言でした。
(タンクに)その水を入れた方が高く売れるわって笑ってて。
同じ水でも、牛を通して牛乳になると値段が下がってしまう。「もう本当にどうしたらいいんだろう」という別のコメントには、飲むだけでなくSNSのフォローなどアクションまでつなげてほしいと返しました。
文字起こし動画は「専門用語がわかりやすい」と好評
一昨日配信した内容を、Podyの文字起こしをもとにYouTube用に再構成した動画についてのコメントも届きました。「文字起こしで見て聞きやすく理解しやすい」という声です。
新しいバージョンですね。文字起こしで見て聞きやすく理解しやすいです。なぜならわからない専門用語があるからです。
ただ再生数は苦戦していて、TikTokでは181回ほど。それでも川上さんは、勉強しやすい形として作った意味はあると考え、メンバーシップ限定のYouTubeとして出すことも検討しているそうです。
SNSで見て終わりにせず、音声配信まで聴いてほしい
先週のコメント返し回に届いた、リスナーからの少し鋭いコメントも紹介されました。以前の「自信のつけ方」の話が受け売りだったと知った、というやりとりを踏まえた声です。
誰に向けてって、配信を聞けばリスナーさんからの質問に答えてるってわかるのに、SNSの短文を読むだけじゃなくて、しっかり音声配信を聞いてほしいですよね。
これに対して川上さんは、そもそもポッドキャストの人口が少なく、SNSからYouTubeやポッドキャストへ飛ぶ人はさらに少ないので、こうしたコメントが来るのは仕方ないと受け止めます。
そのうえで理想の流れを語りました。SNSで興味を持ったら音声配信を聴き、noneやデータバンクへ進み、最後は牛乳売り場で一本手に取る。そこまでたどれば、めちゃめちゃ楽しくなるというわけです。
牛は喋らないけど「シグナル」で気持ちを伝えている
ここからはスレッズに大量に届いたコメントへの回答です。「牛も言葉を喋ればもっと早く治療もできるのに」というユーモラスなコメントが紹介されました。
腹減った、乳絞れ、発情来とるぞ、牛が脱走しとるぞの時はよく鳴く。
川上さんは、牛は言葉こそ話さないものの、目つきや耳の向き、毛の逆立ちなどで気持ちを表していると応じます。その考え方をまとめた本があるといいます。
5産以降に完成する牛。崩れる乳器も含めて「これがロマン」
乳牛の効率をめぐる投稿には、酪農家と思われる方からのコメントが届きました。牛の体は5産以降に完成する、という現場の実感です。
体が完成するのが5産以降よね。こんな牛だったんかと感嘆することも多々ですわ。
川上さんも、5産して体のフレームや乳器がしっかりした牛を見ると「すげえよな」と感じるといいます。一方で、次のお産で乳器が崩れてしまうこともあると話します。
期待どおりにいかないこともある。その予測しきれなさこそが、川上さんにとっての酪農の面白さのようです。
血が固まる牛と米。多様性を守るために作ったアプリ
子牛市場の血統が偏っているという投稿には、近親交配を避けることの重要さを指摘するコメントが届きました。人気の種牛ばかり使われて血が固まってきているという問題です。
川上さんは、これを避けるために近交係数 ── 生き物がどれくらい近い血縁どうしで交配されているかを示す数値。高いほど遺伝病などのリスクが上がるとされますを測れるアプリ「和牛交配チェック」を作ったと紹介します。
同じ話題に「お米もコシヒカリの子孫ばかり。コシヒカリをダメにする病気が出たら怖い」というコメントも寄せられました。牛でも米でも、多様性を失うことのリスクは同じだと川上さんは言います。
本当に多様性が大事です。あの飼い方はダメだ、あの農業のやり方はおかしいみたいなね、農家同士でやってますけど、多様なのが一番いいんですから。
自分が育てた牛が屠畜される瞬間を、この目で見た
Instagramでは、牛の屠畜の方法を書いたスライドに怒りの絵文字が届きました。「見たことあるの?」というやりとりに、川上さんは自らの経験で答えます。
以前、そのコメントに「酪農家として、自分が育てた牛が屠畜されるのを見たことがある」と返したところ、相手からは音信不通になってしまったといいます。
一瞬で凍結されて、自分が飼ってた牛が一瞬で崩壊させて逆さまになって首一個になりかけちゃいましたね。今でも覚えております。
乳糖不耐症のコメントには、体調に合わせて飲んでほしいというスタンスを繰り返し、無理に牛乳を飲ませたくはないと話しました。
抗生物質を入れた牛を安楽死させた日を、ずっと覚えていたい
最後に紹介されたのは、「経済動物の命を酪農家はどう判断しているのか」という記事に届いた、牛飼いの嫁さんからのコメントです。この回のいちばん重い話題でした。
安易に抗生物質を入れた牛を安楽死させた日のことを、私はずっと覚えていきたいと思います。
川上さんは、牛を愛玩動物ではなく経済動物 ── 食料生産など人間の経済活動のために飼育される動物。ペットとは区別され、川上さんは牛をこの立場として割り切って飼っていると話しますとして割り切って飼っていると語ります。お肉や牛乳、堆肥、食育など、どれだけ人間の役に立てるかを考えるのが酪農家の使命だといいます。
だからこそ、安楽死や廃農を選ぶときも生産性や役立ち方を基準にする。それでも、その判断が本当に正しかったのかと後悔することはあると、正直に打ち明けます。
その後悔を繰り返さないために、日々牛に向き合って牛乳を搾っている。そういう酪農家が作ったものだよと、頭の片隅に置いて牛乳を飲んでもらえたら、という言葉でコメント返しは締めくくられました。
まとめ
各SNSに届いたコメントに、川上さんが一つひとつ現場の視点で答えた日曜のコメント返し回でした。牛乳のデマから命の判断まで、酪農家がふだん何を考えているのかが伝わる内容です。
- シルバーウィークは給食が止まり牛乳が余るので、旅先ではご当地牛乳を飲んでほしいと呼びかけている
- 日本では成長ホルモンが認可されておらず、乳牛にも肉牛にも使われていない
- 同じ水でも牛を通して牛乳になると値段が下がる、という価格の皮肉が語られた
- 血統の偏りを避けるため、近交係数を測れる「和牛交配チェック」を作った
- 抗生物質を入れた牛を安楽死させた判断を後悔しつつ、繰り返さないために日々牛に向き合っている

