そもそも「副産物」って何のこと?
今回のきっかけは、Instagramのストーリーズに届いた1件の質問でした。酪農関係者と思われる非公開アカウントからのもので、川上さんは「久しぶりに酪農の話ができる」と乗り気で答えていきます。
今日はもうマジで乗り気で、久しぶりに酪農の話できるわって思ってます。
質問は「牛の餌に副産物を使ってますか?」というもの。ただ「副産物」という言葉は、あまり聞き慣れないかもしれません。
川上さんはお酒作りを例に説明します。お酒そのものが「主産物」で、その過程で出てくる酒粕のようなものが「副産物」だというわけです。
川上牧場で使っている副産物のラインナップ
では、川上牧場では実際にどんな副産物を使っているのでしょうか。餌として使うものと、堆肥作りに使うものに分かれています。
まず餌に使うのが、もやし粕、酒粕、醤油粕、そして近くの工場から出る栄養補助食品の食品残渣です。
いっぽう堆肥を作るときの水分調整剤としては、籾殻やカンナクズ、製材所からもらうおがくずを活用しています。
さらにゴルフ場で刈った芝のクズや、出雲名産のしいたけの菌床の廃棄分ももらって、堆肥に混ぜて堆肥化しているそうです。
- 餌用: もやし粕、酒粕、醤油粕、栄養補助食品の食品残渣
- 堆肥の水分調整: 籾殻、カンナクズ、おがくず
- 堆肥化に活用: 芝のクズ、しいたけの菌床の廃棄分
これらはどれも、人間の食材や加工品を作ったあとに余ったもので、普通なら廃棄されてしまうものばかりです。
なぜ地域に酪農があると価値になるのか
廃棄には本来お金がかかります。それを川上牧場が引き取ることで、餌代や堆肥のコストを下げられるというわけです。
川上さんは、これこそが地域に酪農がある存在価値だと話します。
人間が食べられない草や雑草を牛に食べさせて、牛乳やお肉に変えていく。ここに酪農のすごさがあるといいます。
廃棄されるはずのものを、地域と一緒になって食べものに変えていく。それが川上牧場のやり方です。
餌代を下げる副産物、それぞれの中身
ここからは、餌に使っている副産物を一つずつ見ていきます。それぞれに特徴があるのがおもしろいところです。
もやし粕は広島のもやし工場からのもの。もやしは日持ちせず水分が多いので、ビートパルプと混ぜて水分調整し、サイレージ化したものを運んでもらっています。
もやしは大豆からできているのでタンパク質が高く、マメ科牧草のアルファルファに近い栄養価。これで牛のタンパク源、つまり餌代がかなり下がっているそうです。
酒粕は近くの酒造会社から買い取っています。牛が「早くくれよ」と言わんばかりに大好きな餌なんだとか。
牛がちょっとジャンキーになるぐらい、もう早くくれよっていうぐらい、もう大好きな餌になってます。
醤油粕は近くの醤油会社から無料で引き取っています。好き嫌いはあるものの、ミネラル補給や塩の代わりとして少量を餌に混ぜているそうです。
少し変わり種が、ユーグレナ社が出しているクロレラ粉末を固めたもの。粉塵を回収したものを餌に使っています。
このクロレラはタンパク質が60%とアルファルファの2〜3倍。ベータカロテンやミネラルなど微量の栄養素もたっぷりで、乾季に微量ミネラルを補える素晴らしい素材だといいます。
餌代が2〜3倍に爆上げした先の営業活動
もともと川上牧場は、購入したTMR一本でやっていました。そこに醤油粕や酒粕も入れてもらっていたものの、餌代は高かったといいます。
転機はコロナ禍、そしてロシア・ウクライナの問題でした。餌代が2〜3倍に爆上げし、「もう酪農やっていけないよ」と思うほどだったそうです。
そこで川上さんは動きます。いろんな企業に「捨てるもので餌に使えるものはありませんか」とメールを出し、名刺を持って営業にも回りました。その積み重ねで、今のいろんな副産物が使えるようになったのです。
餌代に悩む酪農家に向けて、川上さんは地元で手に入るものを探すことを勧めます。
出雲そばの切れ端、和菓子屋のあんこの絞り粕、カステラやどら焼きの粕、キャンディー、野菜工場の野菜くず、ジュースの搾りかす。何でも飼料に組み替えれば使えるといいます。
循環の工夫で得られたものと、その注意点
こうした工夫に加え、WCS飼料やトウモロコシも増やしてもらった結果、飼料費はかなり安くなったそうです。
川上さんによれば、飼料費はマジでかなり安くなって、50%は切っているとのこと。
ただし、いいことばかりではありません。副産物には注意点もあると川上さんは話します。
- 餌が変動しやすい
- ものによっては栄養価がブレやすい
そこで大事になるのが、牛群検定の結果や牛の様子を見ながら飼料設計していくこと。これが失敗しない方法だといいます。
牛群検定の結果とか、牛を見ながらやっていくのが失敗しない方法じゃないかなと思ったりします。
最後に川上さんは、この質問に「一番生き生きと喋ることができます」と、うれしそうに答えていました。
まとめ
リスナーの「副産物、使ってますか?」という一言から、川上牧場が実践する酪農の循環の工夫が丸ごと見えてきた回でした。餌代を下げるだけでなく、廃棄されるものを食べものに変えていく——酪農が地域にある意味が伝わってきます。
- 副産物とは、お酒に対する酒粕のように、主産物を作る過程で出る産物のこと
- 川上牧場ではもやし粕・酒粕・醤油粕・クロレラなどを餌に、籾殻や芝のクズなどを堆肥に活用している
- 人間が食べられない草を牛乳やお肉に変えるのが酪農の価値であり、地域との循環につながる
- 餌代が2〜3倍に高騰したのを機に、地元企業への営業で使える副産物を開拓した
- 副産物は栄養価がブレやすいため、牛群検定の結果や牛の様子を見ながら飼料設計するのがコツ

