人のストレスと牛のストレスは同じもの?
この日の配信のテーマは、AWAというアプリのリスナー、山さんから届いた1つの質問でした。
人は適度なストレスを与えると色々な能力が伸びますが、牛はどうですか?
人の場合、適度なプレッシャーや負荷がかかると「頑張ろう」という気持ちになって、今まで出ていなかった力が芽生えることがありますよね。
でも川上さんによると、人間のいうストレスと、牛に与えるストレスは意味合いが違うとのこと。
人にとってのストレスは適度なプレッシャーや負荷が集中力や成長につながることがありますけど、牛にとってのストレスは基本的にマイナス要因とされてますね。
牛にとってのストレスとは、環境の変化や大きな音、餌の変化、人との関わり方の変化などを指します。
たとえば乳搾りをする人や餌やりをする人が変わるだけでも、牛にはストレスになるそうです。
「ストレス」と「刺激」はどう違う?
ただし、牛にとってすべてが悪いわけではありません。ここで川上さんが区別するのが「ストレス」と「刺激」です。
子牛の時期に人が毎日触れたり、声をかけたりする適度な刺激は、成長後の落ち着きや搾乳作業のしやすさにつながります。これは「いい経験の積み重ね」としてプラスに働くそうです。
具体的には、搾乳室のパーラーに入るのを子牛や育成牛のうちから慣らしておいたり、餌を与えるときに人の声を聞かせたり、新しい環境に少しずつ慣れさせたり。
こうした学習としての刺激は、牛の順応する能力を高めると言えるとのことです。
環境の急な変化や強い負荷。免疫低下や乳量低下など、基本的にマイナス要因になる
子牛の頃からの声かけや慣らし。落ち着きや搾乳のしやすさにつながる学習になる
牛の成長の鍵は「安心感」だった
大事なのは、牛にとってのストレスは基本的に病気や乳量低下のリスクになるということ。強いストレスは免疫低下や繁殖障害、乳質の悪化に直結します。
だからこそ、酪農の現場ではいかにストレスを減らすかが最重要のテーマになっているそうです。
人は適度なストレスが成長につながるけれど、牛はそうではない。牛にとって大事なのはストレスではなく、安心感といい経験の積み重ねだという結論でした。
現場でいちばん減らしたいストレスは?
では実際の牧場で、川上さんがいちばん気にしているストレスは何なのでしょうか。答えは「暑さ」でした。
なんといっても一番のストレスは暑さのストレスですね。遮熱ストレスですね。これを本当に防がないといけないなと、毎年毎年思ってますけど。
毎年いろいろな取り組みをしているものの、「いやー、限界ですよ」と川上さん。人でも倒れるくらいの暑さの中で、餌を食べて乳を出して出産する牛の負担は相当なものです。
近年はアニマルウェルフェアの観点から、牛が快適に過ごせる環境づくりが求められています。人や餌の時間が変わることは避けきれないものの、その影響を最小限にするよう心がけているそうです。
搾乳のとき「幸せホルモン」が止まる理由
リスナーからは「乳首を触ってくる人が変わるとストレスになりますね」というコメントも。川上さんも、自分がいつも触っている牛を別の人が触ると、怒ったりソワソワしたりすることがあると話します。
搾乳のときにストレスを与えてしまうと、大事なホルモンの働きが止まってしまうそうです。
初めて搾乳する牛はすごい緊張してるので、人間が乳を触るなんて初めてなんで、やっぱりビクビクおどおどしてあんまりお乳を出さないみたいなことがあったりするんです。
そこで役立つのが、やっぱり育成時期の「いい刺激」です。ブラッシングのときに乳房を触ってあげたり、タオルで軽くこすったり。こうして慣らしておくと、ストレスが軽くなるといいます。
子牛の時期には、ちょっと大きめの牛を隣にすると、それを真似てバクバク食べるようになる、という飼い方もあるそうです。
まとめ
人にとっては成長のもとにもなるストレスも、牛にとっては基本的にマイナス要因。牛を伸ばすのはストレス耐性ではなく、安心感といい経験の積み重ねだというお話でした。
- 人のストレスと牛のストレスは意味合いが違い、牛にとっては基本的にマイナス要因になる
- 子牛の頃からの声かけや慣らしといった「いい刺激」は、落ち着きや搾乳のしやすさにつながる
- 強いストレスは免疫低下や乳量低下に直結するため、現場ではいかに減らすかが最重要テーマ
- 牛のいちばんのストレスは暑さで、遮熱対策が毎年の課題になっている
- 育成時期に乳房を触って慣らすと、搾乳時の緊張がやわらぎホルモンの働きも安定する

