牧場で働くってどんな働き方?
今回のテーマは「酪農家、牧場で働くということ」。研修生さんが聞き手になって、川上さんに現場のリアルを聞いていきます。
まず川上さんが話したのは、従業員として働く場合の労働環境。各牧場が労働基準法に準じていて、普通の会社と同じような形になっているそうです。
勤務時間は7時間半ほど。休日は週2回のところ、週1回のところ、隔日のところと、牧場によってバラバラだといいます。
求人票には「農繁期は休みがない時があります」と注意書きがある牧場もあるとのこと。この農繁期トウモロコシや牧草など、農作業が集中して忙しくなる時期のこと。収穫時期には1日中畑に出ることもある。という言葉に、研修生さんは聞き返します。
川上牧場は餌を購入しているので農繁期はないそうですが、トウモロコシや牧草を自分たちで作っている牧場では、収穫時期に1日中畑に出ることもあると話します。
一方で大きい牧場だと、収穫だけを請け負うコントラクター飼料作物の収穫などの作業を専門に引き受ける会社。大きな牧場ではここに頼むことで、農繁期の負担をなくしているところもある。に頼んで、農繁期がないところもあるそうです。
搾乳が終わればすぐ帰れる?現場の残業事情
労働基準法に準じているとはいえ、「勤務中でも搾乳が止まったら、終わったからすぐ帰っていい」とはいかないのが現場のリアル。
従業員がたくさんいて余裕のある牧場なら大丈夫でも、従業員2〜3人で搾乳頭数100〜200頭くらいの規模だと、仕事が終わったら終わり、とはなかなかいかないといいます。
そういう時間は残業手当になる場合もあるとのこと。ボーナスがある牧場や、社会保険がしっかりしている牧場もあり、そのあたりは普通の会社と同じように整えられているところもあります。
就職先を選ぶときに見るべきポイント
川上さんのところに来た研修生の進路はさまざま。北海道で放牧の新規就農を目指した人もいれば、共進会や牛の品種改良に力を入れる京都の大きい牧場に進んだ高校生もいたそうです。
では、牧場を選ぶときに何を見ればいいのか。川上さんがまず強く言っているのが、牧場主との考え方や、牛に対する考え方の擦り合わせです。
それに加えて、川上さんが「見た方がいい」と挙げたのが、牛や牛舎が綺麗かどうか。理由もはっきりしています。
その牛をちゃんと育てないと経営が回らない仕事じゃないですか。それなのに牛が酷い状況になってるってことは、何かあるんだろうなって思うので。
そしてオンラインで話を聞いていいなと思っても、一度は必ず見に行った方がいい、と川上さんは繰り返します。
いいところだよって言われて、いいところの基準って本当に人それぞれなので、絶対信用しちゃダメだし。
牛だけじゃない。移住先の環境という落とし穴
川上さんが特に力を込めて話したのが、牧場そのものだけでなく、その周りの環境も見るべきだということ。
「牛さえいれば幸せ」と思って移住しても、環境が変わればそうはいかない。頼れる人がいない、遊びに行く人もいない、そんな孤独が待っていることもあります。
たとえば体調が悪くなったとき、牧場主がいい人なら病院に連れて行ってくれるかもしれないけれど、そうでなければ一人で耐えるしかなく、とてもきついといいます。
酪農や牧場が好きな人ほど、盲目になりがちだと川上さんは指摘します。
スーパーが近いか、遊ぶところがあるか、自分がリラックスできる場所があるか。そういう周りの環境も、絶対にちゃんと見た方がいいと話します。
ちなみに川上さん自身の休日は、2週間に1回で8時間。酪農ヘルパー酪農家が休みを取る際に、代わりに搾乳などの作業をしてくれる人。勤務時間は8時間で、川上さんの休みもこれに合わせている。を頼むと、その勤務時間が8時間なので、それに合わせているそうです。
気になる給料の相場は?
続いて研修生さんが聞いたのは、給料の相場。完全週休2日ではないところも多いなかで、どのくらいもらえるのでしょうか。
川上さんによると、インターネットで農業の従業員の平均年収を検索すると、だいたい300万〜400万くらいと出てくるとのこと。
大きい牧場で牧場長クラスになると800万や1000万を出せるところも最近は出てきたそうですが、基本は300万〜400万で考えておいた方がいいといいます。
だいたい300万〜400万。まずはこの水準で考えておくのが現実的。
800万や1000万を出せるところも最近は出てきた。
そのうえで川上さんは、従業員として働くなら、一軒家やいい車といった夢は難しくなると正直に話します。
従業員で一生誰かの下で定年まで働きますってなった場合は、300万400万の平均で考えて、それでライフプランをやって、自分の幸せを得られる生活をやっていけば、別にそれは幸せだと。
ただし、従業員から新規就農を目指すなら話は別。やりようによっては何千万という収入も、頑張れば可能だといいます。
酪農に関わる仕事は牧場だけじゃない
牛と関わるうちにやりたいことが見えてくる人もいる、という研修生さんの言葉から、話題は酪農に関わるさまざまな仕事へ。
川上さんが挙げたのは、酪農ヘルパー、獣医、ミルクを回収する集乳車の運転手、餌を運ぶ人など、じつに多彩です。
なかでも研修生さんが気になったのが、役所で働く普及員県の職員(公務員)。牧場の調子が悪いときに牛の体調や牛群検定の結果を見てアドバイスしたり、新しい技術を農家に導入する研究をしたりする。さんと、ミルクを回収する検定員牛群検定のための記録を取り、ミルクを回収する人。県職ではなく、牛群検定組合から委託を受けている。スーパーで働く人や酪農家の娘さんが担うこともある。さん。
普及員さんは県の職員なので、公務員試験を受ける必要があるそうです。研修生さんが試験問題を見て「専門的だった」と話すと、川上さんは酪農の普及員と農業の普及員では専門職が違うと補足します。
酪農家さんに相談に行って、どうしましょうかって相談して、私はこう思いますって言って、失敗しようが成功しようが別に給料は一緒なんで。
一方の検定員さんは県職ではなく、牛群検定組合から委託を受けている立場。スーパーで働く人が副業でやっていたり、北海道ではパートのおばちゃんや酪農家の娘さんが担っていたりと、いろいろな人がいるそうです。
酪農家が休むときに代わりに搾乳などをする。
牛の診療を行う。
牧場を回ってミルクを回収する。
県の職員。牧場へのアドバイスや技術普及の研究を行う。
牛群検定の記録を取り、ミルクを回収する。組合からの委託。
それでも一番は「牧場で働くこと」
いろいろな職種がある一方で、牛に直接関わりたいなら、やはり牧場で働くのが一番だと川上さんは言います。
ただしそこには条件がついていて、社長と牛に対する感覚が本当に合っていれば楽だけれど、違うところは本当に嫌だ、と自身の本音も語ります。
川上さん自身は正社員で働いた経験はなく、アルバイト経験のみ。だからこそ、合う牧場を探すよりも、社長の考え方に自分を合わせた方が早い、という実感も口にしていました。
最後に研修生さんは、正社員を目指す人に向けてこの配信を届けたいと話します。求人サイト自体はたくさんあるものの、会社員と違って一般的ではないぶん、実際どんな感じなのか探し始めたときに参考になれば、という思いからです。
川上さんも「参考にしてもらって、何かあればコメントしてもらえれば答えます」と応じ、この回を締めくくりました。
まとめ
今回は、酪農の現場で働くというテーマを、給料・休日・関わる職種のリアルから掘り下げた回でした。牛が好きという気持ちだけでなく、生活そのものを見て選ぶことの大切さが伝わってきますね。
- 牧場の労働環境は労働基準法に準じるが、休日や残業のあり方は牧場ごとにかなり違う。
- 就職先を選ぶときは、牧場主との考え方の擦り合わせ、牛や牛舎の綺麗さ、そして一度は必ず見に行くことが大事。
- 牛だけでなく、スーパーや遊ぶ場所、頼れる人がいるかといった移住先の環境も見るべき。
- 従業員の年収はだいたい300万〜400万が目安。夢を広げるなら新規就農という道もある。
- 酪農に関わる仕事は牧場のほかに、ヘルパー・獣医・普及員・検定員などさまざまある。

