研修生が挙げた「搾乳のつけ方がめっちゃ早い」の理由
リスナーの山さんから届いたのは、「川上さんの尊敬できるところを教えてほしい」という質問です。研修生がまず答えたのは、搾乳機をつけるスピードでした。
搾乳機つけるのがめっちゃ早い。超早い。ツツツツってしてるから、やばいなと思って。尊敬してます。
川上さんはもともと酪農ヘルパーとして、いろんな牧場をまわってきた経験があるそうです。
いつもは3人でやる作業を2人でこなす牧場もあり、その酪農家さんの普段のやり方に合わせる必要があったといいます。
普段の仕事と時間帯と変わったことをすると、やっぱり牛がストレスになって乳量が下がったりする。そういうところでやってたから早い。
もうひとつの理由が、川上さん自身の意外な本音でした。
搾乳がめちゃめちゃ嫌いっていうのがあるから。搾乳をめちゃめちゃ早く終わらせたい。
一方で研修生は「早くやらないと」と焦ってしまうそうですが、川上さんは丁寧にゆっくりでいいと話します。
思わないでいいです。全く思わないで。(丁寧にゆっくりが)一番それが大事です。
海外の搾乳現場と、24時間止まらない大規模牧場
搾乳のスピードといえば、海外の現場はさらに桁違いだそうです。川上さんはニュージーランドなどの例を挙げます。
昔のニュージーランドでは、乳を拭いたり前しぼりをしない牧場もあったといいます。加工向けが多く、工場で殺菌するため、衛生面の概念があまりなかったからです。
大きな牧場では、そもそも搾乳を止めないのが当たり前だといいます。
24時間搾乳機を止めない。この機械が高いじゃないですか。何千万とかする。動かしてた方が回収できるから、止めないっていうのが大きい牧場では当たり前。
そうした牧場では、24時間を3交代・8時間ずつで回すところもあるそうです。頭数が違えば、働き方もまるで変わってきます。
24時間搾る牧場で、牛はどんな1日を送っている?
24時間搾ってたら、牛さんのスケジュールはどうなるんですか?
大規模な牧場では牛を3つの群に分け、朝・昼・夕でそれぞれ搾乳する時間帯を分けているそうです。
仕組みはこんな流れです。
朝搾る群を搾乳室へ
搾乳と餌やり、噴霧をおこなう
ベッドに戻す
搾乳を終えた群を元の場所へ戻す
次の群を入れる
2番目の群を搾乳室に入れて繰り返す
牛を経済動物として管理する現場ならではの、効率を考えたスケジュールになっているんですね。
「誰でも受け入れる」姿勢に込められた、酪農業界への危機感
研修生が次に挙げた尊敬ポイントは、川上さんがどんな人でも受け入れる姿勢でした。自分の牧場なら合う合わないは必ずあるのに、と話します。
これに対して川上さんは、酪農業界の現状をふまえて答えます。
酪農業界が人が少ないって言ってるのに、拒否する権利ないじゃん。何を偉そうに人を選んでんじゃんって思ってる。
これからもっと人が少なくなるという前提に立ち、その人に合わせたやり方で教えるというスタンスです。
AIや機械化にも取り組む理由と、「リンゴの赤さ」のたとえ
研修生は、川上さんが機械化やAIといった、直接の見返りがない分野にも学びを広げていることに驚いていました。
川上さんはその理由を、あるポッドキャストで聞いた「リンゴのたとえ」で説明します。
赤いリンゴと青リンゴが並んでたら、比較するから赤いリンゴが赤く見える。いろんなものと比較すればするほど、本来の赤リンゴがより鮮明に見える。
同じように、研修生から見た酪農、従業員から見た酪農、餌屋さんから見た酪農、そして昭和・平成から見た酪農。いろんな角度から見るほど、酪農の構造がくっきり見えてくるといいます。
多くの後継者は先代のやり方を続ける構造の中にいるため、こうした発想になりにくいと川上さんは指摘します。決してその人が悪いのではなく、環境の問題だと言い添えます。
「稲は好きだけど収穫は嫌い」酪農への向き合い方
搾乳が嫌いなのに酪農は好き、という川上さんの本音を、研修生はお米にたとえてツッコみます。
稲がどんな稲ができるのかが楽しいだけなんで、米はどうでもいいんですよ。
そんなことはない。売り上げは上げたいし。
川上さんが夢中になるのは、どんな牛になるかを考える過程だといいます。収穫という「作業」そのものへの興味は薄いのだそうです。
どういう牛になるかなっていうのを(考えるのが好き)。
研修生からは「研究者ですね」という言葉も出ましたが、川上さん自身は牛を飼いたい気持ちが根っこにあると話していました。
搾乳ロボットへの憧れと、消費者を先につかむ戦略
搾乳が嫌いな川上さんが早く導入したいと語るのが、搾乳ロボットです。牛が自分のタイミングでロボットに向かい、餌を目当てに搾乳される仕組みだといいます。
もう導入したいですね。もうずっと前から言い続けてますけど。
ただ、気になるのはそのお値段です。
今だったら3000万か4000万ぐらい、1台ね。2台からスタートなんで、税込1億ぐらいじゃない?
最後に川上さんは、これからの酪農の考え方を語ります。消費者が減っていくなかで、搾ったら飲んでもらえない状況を避けるための工夫です。
配信で興味や応援を集めてから規模を拡大する。消費者を先につかんでから大きくするという順番が、川上牧場の描く新しい酪農のかたちです。
まとめ
研修生の素朴な質問から、川上さんの酪農への向き合い方がじわじわ見えてくる回でした。搾乳が嫌いという本音の裏に、牛を育てる過程への深い興味と、業界の未来への危機感が詰まっていましたね。
- 搾乳が早いのは酪農ヘルパー時代の経験と、搾乳が嫌いで早く終わらせたい気持ちから
- いろんな立場や時代から酪農を見ることで、その構造がより鮮明に見えてくる
- 川上さんが夢中なのは「どんな牛になるか」の過程で、作業そのものへの興味は薄い
- 搾乳ロボットは税込1億ほどと高額だが、ずっと導入したいと語っている
- 消費者を先につかんでから規模を拡大する、という新しい酪農戦略を構想している




