リスナーからの質問「JAの業務をAIで効率化するなら?」
この回のきっかけは、Spoonのリスナー、みずみずしいさんから届いた質問です。以前、川上さんがJAの方と話したとき、機密情報の学習への懸念からAIの普及が進んでいないと聞いた、という話に続くものでした。
学習されてしまうなどのリスクを一旦度外視するとして、川上さんがJAの職員だったらどんな業務をAIで効率化しますか?
この質問はメタグリ研究所で配信している別の放送がきっかけになっていると、川上さんは補足します。AIハッカソンで作った牛乳の受給調整システムをJAの職員さんに紹介したものの、あまり刺さらなかったのだそうです。
そこで川上さんは、もし自分がJAの業務をAIに置き換えたらというシミュレーションをAI自身に作らせ、それを読み上げていきます。
購買・販売業務がAI化したら何が起きる?
まず取り上げたのが、資材や飼料の購買と、牛乳や牛肉の販売業務です。JAの業務は購買、販売、金融、保険、営農指導、営農相談などに分かれていると川上さんは説明します。
今は職員に注文して倉庫から配送される仕組みですが、AIが在庫データと牛の給餌記録を自動で分析する未来が想定されます。
この牧場はあと2日で配合飼料が切れるから、今夜のうちに配送を予約しておこう、といった具合に、自動発注、自動配送が行われる未来が考えられます。
販売も同じで、農家が出荷した牛乳や牛肉の品質データをAIが判定し、最適な市場や消費者にリアルタイムで自動マッチングして、需給の調整までやってくれるイメージです。
金融・保険や営農指導はどう変わる?
続いて金融や保険の分野です。AIが農家の収支や牛群データを分析し、収益が低下している月には低利ローンやつなぎローンを提案する、といった判断を瞬時に行う未来が描かれます。
損害リスクが高い牧場には保険料を自動調整するといった動きも想定され、農家は窓口で待つ必要がなくなります。アプリを開けば数秒で資金繰りが決まる世界です。
一番農家に近い営農指導では、AIカメラとセンサーが牧場を常時モニタリングします。
- 歩様に異常のある牛を検知し、蹄病の可能性を割合で示す
- 土壌のリン欠乏の兆候を捉え、肥料の補給時期を知らせる
- ChatAIが24時間対応で質問に答える
そのうえで、最終的な判断だけを人間の専門家に任せる、という役割分担が想定されています。
農協は「処理する組織」から「人を繋ぐ組織」へ
すべての業務がAI化した世界では、農家はアプリ一つで資材購入から金融、出荷、相談まで完結できます。JA職員はAIの提案をチェックする監督役になり、人間だからこそできる支援に集中できる、というのがシミュレーションの結論です。
地域社会では、農家同士や消費者との交流イベントなど、AIでは代替できない繋がりの部分に力を注げるようになります。
もちろんリスクもある、と川上さんは付け加えます。情報流出、判断ミス、地域での信頼関係の希薄化などです。それでも効率化で生まれた時間を対話に使えれば、むしろ農協は強くなるかもしれないと締めくくられました。
川上さん個人の見立て「やるかやらないかだけ」
AIのシミュレーションを読み終えたあと、川上さん個人の所感も語られます。パソコンを使っている業務は、ほぼAILでできるという見立てです。
パソコンを使っている業務はほぼもうAIでできると思います。事務仕事をしている職員さんは全てAIに置き換えることができると思いますね。
流通の需給調整も、直近1年から10年分ほどのデータを入れればある程度のシミュレーションができ、最終決定だけ人が担えばいい、と川上さんは話します。酪農でも牛乳の出荷や品質管理のデータはすでに集まっているため、ビッグデータとして分析すれば先ほどのシミュレーションはほぼ実現できるとのことです。
今の直近でね、やるかやらないかだと思ってますんで。できると思ってますね。
雇用と地域を支えるJA、それでも早めに動くべき理由
一方で、これを実行するとJA職員が本当にいなくなってしまう、という難しさも川上さんは指摘します。JAはその仕事がないところに雇用を生み、地域を支える組織でもあるため、ものすごい反発があるだろうと話します。
それでも、若手が減り、定年前の職員がいなくなっていくと、JAの業務が回らず、ひいては農業も地域も回らなくなるといいます。
だからこそ、何か問題があってから動くのではなく、早め早めにシステムを取り入れてほしいというのが川上さんの願いです。
川上さんは、酪農以外の農産物にも応用できる需給システムや、川上牧場のデータを学習させた営農相談の仕組み「ファームエコ」の基盤はすでに作ったと話します。あとは実践に入れていくだけで、興味があればDMで問い合わせてほしいと呼びかけました。
「電話とFAXとメールも統一できないのに」というコメントに
配信中には、現実とのギャップを指摘するコメントも届きました。
情報の伝達に電話とFAXとメールも統一できないというのに夢物語かな。
でもそこをなんとかしていきましょうよ。よろしくお願いします。頑張っていこう。
JAは各地域で別組織で、名前は同じでも業態は違うと川上さんは説明します。米が有名な地域なら米農家向け、酪農や果樹、花が多い地域ならそれぞれに向いたJAの形になります。
だからこそ、地域ごとの特性に合わせたAI分析ができるシステムになっている、と川上さんは話します。要望がないとJAは動かないため、組合員である農家自身が部会などで声を上げてほしい、というのがこの回のメッセージでした。
まとめ
リスナーの質問をきっかけに、JAの購買・販売・金融・営農指導といった業務をAIで置き換えたらどうなるかを、シミュレーションと川上さん自身の考えでたどった回でした。技術的には多くが可能で、あとは「やるかやらないか」だと語られています。
- JAの各業務は、在庫・給餌・品質などのデータ分析で自動化できる可能性がある
- 川上さんはパソコンを使う事務業務はほぼAIに置き換えられると見ている
- AI化の先に描かれるのは、JAが「人と人を繋ぐ組織」へと進化する姿
- 雇用や反発という課題はあるが、人手不足に備えて早めに動くべきだと訴える
- 需給システムや営農相談の仕組み「ファームエコ」の基盤はすでに完成している


