友達より先にAIに恋愛相談する罪悪感というお便り
今回の本質ラジオは、久しぶりのお便り回です。らららさんという相談者から、友達よりもAIに恋愛相談することが増えて罪悪感がある、という悩みが寄せられました。
相談者には付き合って1年ほどの彼氏がいますが、最近すれ違いが多く、このまま付き合い続けるべきか悩んでいるといいます。以前は仲のいい女友達に相談していました。
ただ、その友達はもともと彼氏をよく思っておらず、相談すると「別れた方がいい」と言われることが多くなったそうです。
そこで相談者は、彼氏とのLINEをほぼ全部AIに見せ、これまでの出来事や自分の気持ちも説明して相談してみたといいます。
するとAIからも「この関係はあなたが我慢しすぎている、一度距離を置いた方がいい」と言われました。
興味深いのは、友達に言われた時は素直に受け入れられなかったのに、AIに同じことを言われると妙に納得できてしまった、という点です。
利害関係がなく、私を傷つけない言葉を選びながら話を整理してくれるので、今では何かあると友達より先にAIに相談してしまいます。
そのうえで相談者は、2つの問いを投げかけます。友達ではなくAIを頼るのは友達への裏切りなのか。そして、彼氏よりAIに心を開き特別な感情を持つようになったら、それは浮気なのか、というものです。
めちゃくちゃでも現代的な(相談だね)。
AIに壁打ちしがち。いなけんさん自身も共感するワケ
相談を受けて、いなけんさんはまず自分にも似た傾向があると打ち明けます。恋愛に限らず、相談や壁打ち、フラットな調べ物からの連想的な質問を、AIにしがちだといいます。
理由は、人に話す場合はすぐにレスポンスが返ってこないからです。友達にカフェで相談するには、移動の距離や時間の調整というハードルがあります。
(友達に)カフェで話すとかって、そういう機会を設けるのも物理的な移動の距離とか、時間を設定するとかがあるだろうけど。
(でも)AIに聞くはそこをショートカットしてすぐにシュッと聞けるし、芯食った答えも割と返ってくるから。
一方でしもちゃんは、相談文の一部に引っかかりを覚えます。「AIが責任を取ってくれるわけではない」という点についてです。
もしAIに「別れた方がいい」と言われて別れて後悔したとしても、AIが責任を取ってくれるわけではありません。(でも)友達も彼氏も誰だってそうな気がして。
つまり、責任を取ってくれないのはAIに限った話ではない、というわけです。しもちゃんは、この点はAIを使う上での減点にはならないと話します。
「どうしたらいいですか」は思考放棄。最終責任は誰に残るのか
いなけんさんは、この責任の話を仕事の場面にも広げます。AIと壁打ちして資料や意思決定用のドキュメントを作ったとしても、意思決定を行うのは人間だからです。
「AIがA案とB案でA案がいいって言ってたんです」って言ったら、「いや知らんがな」というか。
「ケツお前で拭けよ」じゃないけど、ってなるのは当たり前のことだなと思ってて。
最終責任はどこまでいってもその人本人にある。それはAIを使ううえでの絶対条件だと、いなけんさんは整理します。
そのうえでしもちゃんは、AIへの相談は聞き方が大事だと指摘します。AIに手綱を握らせない聞き方のほうがいい、という考えです。
たとえば「付き合い続けるメリットとデメリットを整理したい」と依頼するのはよいけれど、「どうしたらいいですか」という聞き方は避けたほうがいい、といいます。
しもちゃん自身、最近は一周回ってAIを使わなくなり、チャット型のほうに回帰し始めたと話します。ここでのチャット型とは、自動で作業を進めるエージェントではなく、対話しながら使うタイプを指します。
結局自分の頭で判断するしかないって、身に染めてめちゃめちゃ分かってから(チャット型に戻った)。
AIが出してきたもののうち、納得感がある部分だけを抜粋して次の会話につなげていく。相談者も全部任せるのではなく、部分的に使うのがよさそうだ、というのがしもちゃんの見方です。
AIを頼るのは友達への裏切りになるのか
ここで話は、相談の1つ目の問いに戻ります。友達ではなくAIを相談相手に選ぶことは、友達への裏切りになるのか、という問いです。
いなけんさんの結論は、裏切りではないだろう、というものです。いなけんさんにとって裏切りという言葉はかなり重く、恋愛相談の頻度が薄まった程度では当てはまらないと考えています。
恋愛相談の頻度は薄まったぐらいの話で、コミュニケーション全体(という)友人関係の部分の一個でしかないわけで。
いなけんさんにとって恋愛相談は、他愛もない話や一緒に遊ぶこと、旅行やゲームなどと並ぶ、友人関係の要素のひとつにすぎません。その一個がなくなったから裏切り、というのは重要度が高すぎるのでは、と話します。
これに対してしもちゃんは、恋愛相談だけでつながっていた友達かもしれない、という可能性を投げかけます。
ただいなけんさんは、恋愛相談だけでつながった友達という関係自体にしっくりこないといいます。相手の人間性や人となりを知っているからこそ、深い恋愛相談ができるパートナーになるはずだ、という考えからです。
恋愛相談だけの関係性って、もはや占い師的な相談相手とか、恋愛コンサルタントみたいな位置付けじゃん。
そうであれば、その役割はAIに代替されても不思議ではない、というのがいなけんさんの見立てです。恋愛以外のことも知っているからこそ深掘りできる相手と、恋愛単体の相談相手を、別のものとして捉えているわけです。
女子高生ならどう使う。恋愛データ最適化という大喜利
話は、AIは恋愛相談相手になり得るのか、という問いに移ります。いなけんさんの答えは歯切れが悪く、使い方次第だといいます。
(AIも)包丁も料理に使うのか、人を殺す道具にするのかで全然違うわけじゃん。
AIがどういうツールかを理解したうえで建設的に使うのがいい。そこでしもちゃんは、いなけんさんが女子高生だったらどう使うか、と話を振ります。
いなけんさんはまず、サービス設計者の意図を理解することが大事だと話します。ChatGPTのようなAIサービスは、究極的にはユーザーに使い続けてほしいという前提で作られている、という指摘です。
SNSと同じで、滞在時間が伸びるほど運営側の収益につながります。だからこそ、人間を否定するよりよいしょする回答が出てきやすい、という前提を踏まえるべきだといいます。
よいしょされる回答が出てきやすいという、まず前提を踏まえた方がいいんじゃないかな(というのが出発点)。
そのため、「自分はこうしたいと思うけどどう思う?」という聞き方をすると、それを肯定する回答が返ってきやすい。そうならない使い方をできたほうがいい、といなけんさんは話します。
ここでしもちゃんが、具体的な大喜利を持ち出します。女子高生が隣のクラスのタカシくんを好きになったら、という設定です。
しもちゃんの案は、まずタカシくんの生年月日と生まれた場所を聞き、AIに入れて性格の傾向を出す、というものでした。さらに自分の情報や近況、共通の知り合いなどの情報を入れ、アプローチの選択肢を出させます。
しかもアプローチはできる限りオフラインではなくオンラインで行う、という点がポイントです。オフラインは変数が多くズレが生じやすいため、LINEなど非同期のやり取りで関係を温めていく、という発想です。
これに対していなけんさんは、より突飛な発展版を返します。24時間文字起こしできるツールをタカシくんの身の回りに気づかれないように付属させ、言動を観察するという案です。
日常のログや会話履歴を大量に蓄積してAIに学習させ、自分の強みと掛け合わせて最適なアプローチを解析させる。ただし、バレたら刑務所送りだと本人も認めています。
法律スレスレやな。
2つの案に共通するのは、データをできる限り入れて傾向を読み解く、という発想でした。ここまでは、あくまで大喜利としての盛り上がりです。
恋愛はパッションか論理か。AIに最適化した先に答えはあるか
ここでいなけんさんが、話を広げます。データを大量に入れて最適化するアプローチは、ビジネスの文脈なら成功確度を上げられる、という指摘です。
たとえばある企業に商品を買ってもらいたい場合、相手の会社や決裁者のパーソナリティをデータとして持てば、芯を食ったアプローチができます。投資対効果が合うというロジックさえ導ければ、お互いに納得できる関係になるからです。
一方で、恋愛のような一対一のコミュニケーションでは事情が違う、といなけんさんは考えます。AIが最適な告白フレーズをサジェストしても、トーンや抑揚、シチュエーション、お互いのコンディションなど変数が多く、そのフレーズだけが最適解とは限らないからです。
これに対してしもちゃんは、そうとも言えるが言葉の出し方も大事だと反論します。感情と論理は自転車の車輪と同じで、どちらか一方が欠けてもいけない、という考えです。
車のも、車輪と一緒やん。欠けたらダメでしょ。どっちかが。
いなけんさんも、どちらも欠けてはいけない点には同意します。そのうえで、仕事は論理とパッションの両輪である程度うまくいく再現性を持てるが、恋愛のような生々しいコミュニケーションでは最後にパッションのウェイトが勝つのでは、と投げかけます。
結局、AIが確からしい答えを示してくれても、それを実行するのも、本当にいいのかを判断するのも自分です。AIに取られない機微や体温、空気感を読む力が大事なのかもしれない、と話は展開していきます。
AIに頼りすぎると空っぽになる。逆張りできる審美眼を磨く
話題は、AIとの距離の取り方そのものへと移ります。しもちゃんは、結局は自分の頭で考えるしかなく、AIに頼りすぎるのは良くないと最近強く感じているといいます。
結局自分の頭で考えてやるしかないから、あんまAIに頼りすぎるとほんまに良くないと思うんですよね、最近マジで。
しもちゃんは、このままだと30代40代で、AIがなくなったら何もできない人間が結構生まれそうだと危惧します。いなけんさん自身も、その反省はあると認めます。
一方でいなけんさんは、そこに早く気づいて逆張りできることも大事だと捉えます。AIが出す最適解には、大なり小なり誰でもたどり着けるからです。
だからこそ、その最適解にさらに自分のパッションやセンスを乗せられるかが差になる。そうした審美眼は一朝一夕では身につかないため、意図的にAIと離れて磨いていくことが大事だ、と話します。
しもちゃんは、AIは対話相手や思考整理には使えるが、そこに答えを求めるスタンスで使うと空っぽになりそうだといいます。
いなけんさんは、これを刀の比喩でまとめます。刀を機械側に持たせるのではなく、あくまで自分でハンドリングし、自分の思考力の増幅装置とすべきだ、という考えです。
刀を向こうの機械側に持たせちゃダメというか。あくまでもハンドリングして、自分の(思考の)増幅装置とさせるべき。
AIへの恋は浮気か。身体を持つ人型AIと恋愛規範の未来
最後に、相談の2つ目の問いに向き合います。彼氏よりAIに心を開き特別な感情を持つようになったら、それは浮気なのか、という哲学的な問いです。
いなけんさんは、AIに恋心を抱く人が実在することに触れます。少し前に話題になった、ChatGPTのモデル更新をめぐる出来事です。
(4oは)すごい人間らしさを持ってたけど、アップデート版は逆に冷たく感じるから。
しもちゃんは、そもそもAIに浮ついて何を求めているのか気になる、と率直な疑問を口にします。浮気だと思うのは自由だが、その先に何を求めているのか、というわけです。
いなけんさんは、これをパラダイムシフトとして捉えます。一人のパートナーとしか付き合ってはいけないという社会規範は、数千年単位で見れば当たり前ではなく、一夫多妻制の国も存在するという指摘です。
AIによって、浮気や不倫という概念、さらには資本主義のような社会のOS自体すら上書きされるかもしれない。そうなれば人間関係、ひいては恋愛やパートナーシップの形も変わりうる、といなけんさんは考えます。
その例として、いなけんさんはSNSで会ったことのない人と付き合うケースを挙げます。文字ベースで関係を育む点では、チャットAIと対話して恋愛感情を持つのと構造はほぼ同じではないか、という見立てです。
これに対してしもちゃんは、人間関係を育んでいるという前提そのものに疑問を呈します。AIは人間ではないからです。
人間関係を育んでるってところにまず疑問を呈したいですね。だって人間じゃないから。
人という対象をホモサピエンスとするなら、いまのAIは人格を持っていない。だから事象としては近くても、前提が人ではない以上そこまで話は立たない、と2人は整理します。
文字ベースで関係を育む点は近いが、相手は人格を持つ人間
構造は似ているが、相手はホモサピエンスではなく人格を持たない
そのうえでしもちゃんは、AIに特別な感情を抱きそうな人は、とりあえず友達や人に会いまくってみたらいい、と勧めます。生身の人間かAIかで言えば、生身の人間とのコミュニケーションを取ったほうがいい、という立場です。
ただしいなけんさんは、100年後の未来では話が変わりうると付け加えます。ドラえもんのようなヒューマノイドAIが目の前に現れ、人以上に自分を分かってくれる存在になったとき、恋愛感情を抱かないとは言い切れない、というのです。
しもちゃんは、これを脳内物質の話に引き寄せます。人型に近づくほどセロトニンやオキシトシンといったホルモンが出やすくなり、得られる体験としての境目がなくなっていくのでは、という見立てです。
だからこそ、AIが物理的に人型へ近づいていくなら恋愛も十分あり得る。ただ、いまのチャットの段階でAI自体に恋する人は、おそらく人間関係に悩んでいる人ではないか、と2人は見ています。
まとめ
相談への答えとしては、AIに相談することは友達への裏切りではなく、いまのAIに心を開くことも浮気とは言えない、というのが2人の見立てでした。話は自然と、AIに頼りすぎず自分の判断力を手放さないための距離の取り方へと広がっていきます。
- 友達ではなくAIに相談することは、友達関係の一要素が薄まった程度で、裏切りとは言えないという見方
- 「どうしたらいいですか」は思考放棄で、最終責任も判断も自分に残るという前提
- AIはよいしょする回答を返しやすいため、手綱を握らせない聞き方が大事
- 恋愛のような一対一のコミュニケーションでは、最後にパッションや空気感を読む力が効いてくる
- いまのAIは人格を持たないため浮気とは言えないが、人型に近づく未来では恋愛規範も変わりうるという展望






