もちもちの正体は「でんぷんのアルファ化」
餃子の皮の主な材料は小麦粉と水で、小麦粉の約7割はでんぷんです。生のでんぷんは分子がかっちり並んだ結晶の形をしていて、硬くて消化もしにくいと小野寺さんは説明します。
そこに水と熱を加えると、でんぷんが水を吸い込み、緩い網目構造へと変わります。これがアルファ化生のでんぷんに水と熱が加わり、糊状のやわらかい状態に変化すること。炊き立てのご飯がもちもちなのも同じ現象。で、炊き立てのご飯がもちもちなのと同じ現象です。
焼き餃子で最初に4〜5分ほど茹で蒸しをするのは、皮のでんぷんに水蒸気を吸わせてアルファ化させるための時間だといいます。
このもちもちというのは、別な表現をすると、でんぷんが水を抱えた状態っていう現象なんですね。
まんじゅうはふわふわ、餃子の皮はもちもち──発酵の違い
同じく小麦粉を蒸す料理でも、まんじゅうはふわふわです。その違いは「発酵しているかどうか」にあると小野寺さんは指摘します。
発酵させると、酵母が出す炭酸ガスの泡で生地の中に無数の気泡ができます。スポンジのような構造になり、空気を食べているようなふわふわとした食感になります。
一方、餃子の皮は発酵させないため、泡や空気が入りません。でんぷんとグルテンがみっちり詰まった状態になり、ぎゅっと詰まったもちもち感が生まれます。
気泡でスポンジ状になり、空気を食べるようなふわふわに
でんぷんとグルテンが詰まり、ぎゅっとしたもちもちに
ベーグルは焼き餃子の親戚?茹でと蒸しの違い
輪っかになったもちもちのベーグルは、発酵が控えめで、しかも焼く前にお湯で茹でるのだといいます。表面のでんぷんが少しアルファ化した状態から焼くため、もちっとした食感の上にパリッとした食感ができます。
なんでベーグルは焼き餃子の親戚なのかもしれないっていうぐらいですね。
小麦粉を使った料理を見るときは、発酵させているか、そして茹でているか蒸しているかで食感が変わってくると小野寺さんは話します。茹でる料理の例が水餃子です。
焼き餃子の皮は蒸してもっちり、水餃子の皮は茹でてつるんとした食感になります。どちらもアルファ化していますが、食感が違うのはなぜでしょうか。
茹でる水餃子は、でんぷんが限界まで水を吸ってぷるんと柔らかくなります。ただし皮の成分が一部お湯に溶け込みやすく、茹ですぎると伸びやすいという特徴があります。
一方、蒸し餃子や焼き餃子は、皮に触れる水が表面の水滴分ほどで量が控えめです。そのため小麦粉の旨味が溶け出しにくく、輪郭のはっきりしたもっちりとした食感になります。
米粉でももちもちになるのか──アミロースとアミロペクチン
餃子の皮には米粉が使われることもあります。米粉でももちもちになるのか。小野寺さんは「むしろ米は小麦粉よりもちもちのエリート」だと語ります。
いわゆるもちもちって、このもちは餅なわけですよ。餅って米でできてるんで、もちもちって本来は米のことなんですね。
でんぷんには、まっすぐな鎖のアミロースでんぷんを構成する成分の一つ。直鎖状の構造で、粘りは少ない。と、枝分かれしたアミロペクチンでんぷんを構成する成分の一つ。枝分かれ構造で、粘りやもちもち感を生む。もち米はほぼ100%これでできている。という種類があります。粘りともちもちを生むのは枝分かれしたアミロペクチンで、もち米はほぼ100%がアミロペクチンです。だからお餅はあんなにもちもちします。
では米粉の皮に足りないものは何か。それはグルテンだと小野寺さんは言います。グルテンは、薄く伸ばしても破れない粘り強さや、包むときの弾力を担っています。
米粉の皮はグルテンがないため粘り強さや弾力が弱く、破れやすくて扱いが難しいそうです。世の中の米粉餃子は、グルテンフリーでありながらうまく餡を包んでおり、非常に高い技術が使われていると話します。
みんな米粉の皮を使った餃子を開発されてますけど、あまりメジャーにならない。大変な苦労をされているというふうに伺っています。
もちもちの大敵は冷蔵庫──でんぷんの老化(ベータ化)
生まれたもちもちは、ずっとは続きません。冷めるとでんぷんが抱えていた水を手放し、結晶に戻っていきます。これがベータ化アルファ化したでんぷんが冷めて水を手放し、硬い結晶構造に戻る現象。でんぷんの老化とも呼ばれる。、でんぷんの老化です。
冷めた餃子の皮が硬くボソボソするのは、このベータ化が理由です。そして老化のスピードは温度で変わり、一番早く進むのは0度付近、つまり冷蔵庫に入れた状態だといいます。
そのため、総菜の餃子を買ってすぐ食べないとき、冷蔵庫に入れると硬くなってしまいます。その日中に食べるなら、冷蔵庫より常温に置いたほうがよいとのことです。
その日のうちに食べられない餃子は、冷蔵せず冷凍が正解です。冷凍すると水の分子が動けなくなり、老化がほぼ止まります。できれば急速冷凍がベストで、0度付近を一気に抜けさせるのが理想だといいます。
即席麺はなぜ3分でもちもちに戻るのか
8月25日は即席ラーメン記念日1958年8月25日にチキンラーメンが発売されたことにちなむ記念日。です。これにちなみ、チキンラーメンの麺がなぜもちもちなのかも語られました。
チキンラーメンを発明した安藤百福さんは、アルファ化とベータ化をうまく活かしたと小野寺さんは説明します。麺をまず蒸してでんぷんをアルファ化させ、その後に高温の油で一気に揚げて水分を飛ばします。
これが瞬間油熱乾燥法麺を高温の油で揚げ、でんぷんが老化する前に水分だけを素早く抜く技術。アルファ化した状態を乾燥のまま固定する。で、老化が始まる前に水だけを素早く抜き、アルファ化した網目を乾燥状態のまま固定する技術です。
揚げたときに水分が抜けた跡が無数の穴になり、スポンジのようになります。そこにお湯を注ぐと、穴からお湯が入り込んで乾いた網目が水を取り戻し、3分でもちもちが復元します。レンジでチンするパックご飯も同じ仕組みです。
即席餃子は作れるか──立ちはだかる「油」の壁
同じ方法で即席餃子は作れないのか。皮は即席麺と同じ原理でいけそうですが、問題は餡だと小野寺さんは指摘します。
餡についても、即席麺のかやくのように乾燥した肉や野菜を使えばよさそうに思えます。かやくには、野菜に多い熱風乾燥と、肉などタンパク質の多い具に使うフリーズドライの2種類があるそうです。
ここで難しいのが油だといいます。フリーズドライ食品は穴だらけで表面積が大きいため、油の酸化が早いのです。
油の多い料理はフリーズドライにあまり適していないと言われてまして。実際、カップラーメンでも油は後で入れるじゃないですか。
餃子の餡は肉だけでなく、肉と油の塊です。ジューシーさは油によるもので、餃子の美味しさは油の旨さでも決まります。フリーズドライにすると形は守れても、噛んだ瞬間のじゅわっとくる肉汁的なジューシー感は戻りにくいのです。
さらにお湯で戻す前提では、焼き面のパリパリも再現できません。油もパリパリもない水餃子、スープ用の具ならいけるかもしれないが、焼き餃子のフリーズドライは難しい、というのが結論です。
そのため餃子は、現状は冷凍食品として流通させるのがベストだと小野寺さんは話します。今後の科学技術の進化に期待したいとも語りました。
今週のお取り寄せ餃子:フリーズドライの「GYOLAXY」
難しいとされたフリーズドライ餃子ですが、実はすでに作られ販売されています。手がけるのは岐阜夢餃子製作所で、鈴木さんという方が作っているそうです。
特殊な機械で餃子をマイナス35度まで急速凍結し、その後3日間かけて真空状態で乾燥させフリーズドライにしています。ただしそのままではパリパリになりすぎ、何度もひび割れして食べるときに硬くなってしまうといいます。
そこで、ある粉を加えて硬めの生地で膨らむように仕上げ、皮に小さな気泡を入れるなど研究を重ねました。水分量を減らすため大豆ミートを加えたり、臭いが強いニラやニンニクを具材から抜くなど、宇宙食としての課題を一つずつクリアしてきたそうです。
商品名は銀河系焼き餃子「GYOLAXY(ギョーラクシー)」です。小野寺さんは水に戻さずそのまま食べてみたそうで、お菓子のような、まさに宇宙食のような味だったと語ります。
いつもの美味しい焼き餃子とは違うんですけども、こういったチャレンジをしてるっていうのはすごいなと思います。応援したいなと思ってます。
まとめ
餃子のもちもちは、でんぷんが水と熱でアルファ化し、水を抱えた状態から生まれます。発酵の有無、茹でと蒸しの違い、でんぷんの種類やグルテンの役割まで、身近な食べ物と比べることで皮の食感の正体が見えてきました。
- もちもちの正体は、でんぷんが水を抱えたアルファ化の状態
- 発酵させるとふわふわ、させないともちもち。餃子の皮は後者
- もちもちのエリートは米で、粘りを生むのはアミロペクチン
- もちもちの大敵は冷蔵庫の0度付近。すぐ食べないなら冷凍が正解
- 即席餃子が難しいのは油。餡のジューシーさがフリーズドライで失われる

