ある記事への「物申す」
小野寺さんが今回取り上げたのは、女子SPA!に掲載された「餃子の王将がまさかの減益」という記事です。
この記事の内容に引っかかった部分があるとして、決算データをもとに読み解いていきます。
話の前提として、まず2つの「王将」を区別しておく必要があります。
京都が本社の餃子の王将。正式名称は王将フードサービス。今回の記事の主役
大阪発祥の王将。イートアンドホールディングスというグループの一員
「客数の鈍化」は本当か
今回話題にする決算は、京都王将こと王将フードサービスの2026年3月期決算です。
売上は前年に比べて5.2%増えて、4年連続で過去最高という絶好調ぶりです。
ただし営業利益のほうは前年に比べて減っており、具体的には4.5%の減益となっています。
女子SPA!の記事は、ここまでは正しいと小野寺さんは言います。問題はその先の記述です。
記事には「2026年に入ると売上や客数の鈍化が目立つ」とありましたが、その客数鈍化の根拠が探しても見つからなかったといいます。
実際のデータはむしろ逆の傾向を示していました。
これらを見ると、客が減ったわけではないと考えられます。
営業利益の伸び率は前の年の8%台から4%台へ半分ほどに減りましたが、利益がなくなったわけではなく、伸びが緩やかになっただけだと小野寺さんは指摘します。
利益が減った理由はコスト
では、なぜ利益が減ったのか。理由はコストだと小野寺さんは言います。
売上も粗利も増えているのに、それ以上にコストが増えている状態です。コストが膨らんだ理由は2つあります。
原材料の高騰
原価率や光熱費が上がってきている
人件費の上昇
大幅な賃上げを実施した
結果
売上・粗利は増えたが、コスト増が上回り減益に
京都王将は今年、一人当たり平均8.2%という大幅な賃上げを行いました。大卒初任給も30万円に引き上げられ、外食業界の中でもかなり高い水準です。
ライバルの大阪王将も同じ状況です。イートアンドグループの外食部門は、売上が増えているものの利益は16.9%の減益となっています。
その背景には調理ロボットの導入などがあり、コスト増やDX投資は京都王将だけの話ではないというわけです。
外食から内食へ、長い時間をかけたシフト
女子SPA!の記事は、客足が遠のいた理由を冷凍餃子に求めていました。これは全く間違いとは言い切れない、と小野寺さんは言います。
ただし、冷凍餃子へのシフトは去年から今年という単位ではなく、かなり長い時間をかけて進んできた変化です。
コロナ時期から外食から内食への傾向があり、コロナが終わってからもその傾向は続いています。特に餃子は内食シフトが進んでいると考えられます。
冷凍餃子は生産量が増えているだけでなく、質も上がってきています。
水なし、油なし、蓋もいらず、フライパンに並べて焼くだけで、誰でもパリパリの羽根つき餃子が仕上がる商品がスーパーでよく売れています。
しかも値段は安く、12個入りでもワンコイン。外食の焼きたて餃子も美味しいですが、それに引けを取らないほど家で焼く冷凍餃子も美味しくなっているといいます。
餃子日本一の正体は大阪王将の冷凍餃子
エピソードのタイトル「王将を脅かすのは王将だった」、そして餃子日本一の正体こそ、大阪王将の冷凍餃子です。
外食部門の大阪王将はコスト増で減益していますが、イートアンドホールディングスという会社全体で見るとしっかり増益しています。その理由が冷凍餃子の躍進です。
一方、京都王将は冷凍餃子を作っていないため、外食という一本足です。
ただし外食の売上で言えば、京都王将は大阪王将のおよそ7倍あります。冷凍と外食を足したイートアンド全体で見ても、京都王将のほうが3倍強いといいます。
つまり日本一の王将といえば京都王将だ、と小野寺さんはまとめます。
25年で見えてくる、外食から冷凍への流れ
小野寺さんが伝えたかったのは、京都王将が負けているという話ではありません。
餃子を食べる場所が、25年かけて変わってきているということです。
年間支出はほぼ横ばい
年間支出は約2.6倍に増加
家計調査を見る限り、外食から冷凍調理食品へのシフトが進んでいると言えます。
その中で、京都王将のポジションを脅かす存在として大阪王将が来ている、というのが小野寺さんの主張です。
投資の結果としての減益と、店ならではの価値
改めて小野寺さんは、京都王将の減益を前向きな投資の結果だと捉えています。DX投資や人件費への投資が大きいと考えられます。
規模はそれなりに大きく、冷凍餃子に奪われていると言っても売上は過去最高です。この点をきちんと理解してほしい、と語ります。
長い目で見れば、食品業界全体で外食から内食へ変わってきており、そのキープレーヤーが冷凍餃子だという話です。
2018年に立ち上がった焼き餃子協会も、家で美味しく焼けることにフォーカスし、多少の貢献をしているのかもしれないといいます。
一方で、店には店でないと体験できない価値があります。
大阪王将は神保町にできた新業態でいろんなフレーバーを楽しめる形にし、餃子の王将は持ち帰り専門店を作るなど、各社チャレンジをしています。
焼きたての音や湯気、餃子以外のメニュー、つまみながらお酒を飲める楽しさ。そうした体験価値はこれからも残り続けるのではないか、と小野寺さんは話します。
AIは味の審査員になれるか
今週の一言本音として、小野寺さんはジャパン餃子大賞の審査を通して考えたことを語ります。
書類審査は、ルールさえ決めればAIでかなり審査できると感じたといいます。今年は一つずつ目視し、足りない部分は問い合わせをして進めましたが、エントリーが増えれば機械的な審査も必要になるかもしれません。
さらに、人間の舌の代わりに機械やAIで味の審査もできてくるのではないかと考えています。
将来的には、機械を使って何度も味を試し、AIが美味しいと反応するまでトライアンドエラーを重ねることを、メーカーが行うのではないかと小野寺さんは見ています。
そうした時代を迎えるにあたって、今すべきことは、体を張ってAIが審査する基準を作ることではないかと小野寺さんは考えます。
ジャパン餃子大賞は味覚評価と付加価値・体験価値を審査基準にしており、心に響くか、舌に響くか、五感で感じる審査基準を作っています。
紙の地図よりGoogleマップのほうが信用される時代のように、味の世界でもデジタルのほうが信用される時代が来るかもしれない、と小野寺さんは話します。
産業革命の頃のように人間の仕事は減っていく。だからこそ、AIが発展し始めた今しかできない仕事が一番面白いと語り、仕事の依頼を待っていると締めくくりました。
まとめ
「餃子の王将が減益」というニュースは、客離れではなく投資とコスト増の結果でした。その裏では、外食から冷凍餃子へという長い時間をかけたシフトが進んでいます。
- 京都王将の減益は客数減ではなく、原材料高騰と賃上げなどコスト増が原因
- 売上は5.2%増で4年連続過去最高、既存店も伸びており客足は鈍化していない
- 餃子日本一の正体は大阪王将の冷凍餃子で、味の素を抜きシェア1位になった
- 家計調査では25年で外食が横ばい、冷凍調理食品は約2.6倍に増加している
- 店には焼きたての音や体験価値があり、家の冷凍餃子とは異なる価値が残る


