経営者は普段、何を勉強しているのか
この回のテーマは、経営者が普段どんな学びをしているのかを2人がシェアし合うというものです。冒頭では宇尾野さんが、家の近くの池尻の小学校で開かれたポッドキャストEXPOに行ってきた話から始まります。
宇尾野さんは、ポッドキャストEXPOをポッドキャストの祭典やフェスのような場だと説明します。ビジネス色の強い人がそれほど多くなく、配信者同士がコラボの話をしている様子が印象に残ったと話されています。
(ポッドキャストEXPOは)こんな感じで、スピーカーの方は基本的にポッドキャスト配信者だったりとか。
この場に顔を出すこと自体も、宇尾野さんにとっては学びの一つだといいます。話は自然に、経営者が普段何を勉強しているのかというテーマへと入っていきます。
私たち経営者が具体的にどういうツールで何を学んでいるのかっていうのをいろいろシェアするっていうのはめちゃくちゃいい会ですよね。
経験を意図的に作る宇尾野、eラーニングで学ぶ池原
宇尾野さんは、自分の学びのテーマは経験学習だと話します。何を経験し、何を学び、どう内省するかを大事にしていて、本でインプットしつつ、どんな経験を意図的に作るかも意識しているといいます。
もう一個テーマは、面白い人に誘われたら行ってみるみたいな。偶発性を楽しむみたいなのは結構意図的にやってたりするんで。
宇尾野さんは、先週は宮崎、先々週は京都、その前は兵庫と、あちこちに足を運んでいるといいます。疲れはあるものの、その分だけ身体感覚を研ぎ澄ます時間が増えていると話されています。
一方の池原さんは、本を読むことに加えて、定期的にeラーニングや集中コースにプライベートで通うスタイルです。年に1回はそうした勉強をすると決めているといいます。
今はEduXっていう海外のオンラインコースが取れるもので、実はハーバード大学の医学部のちっちゃいコースを今ちょこちょこ受けてます。
池原さんが選ぶテーマには共通点があります。モヤモヤしていることや、うまくいっていないことを言葉にして、枠組みとして理解したいという欲求が強いのだといいます。
他者や経験、身体から学ぶ。面白い人に誘われたら行き、偶発性を楽しむ
本やeラーニング、集中コースで、モヤモヤを枠組みとして言語化する
eラーニングが合う人、合わない人
宇尾野さんは、eラーニングが自分には全然できないと打ち明けます。クリエイティブディレクションの講座をオンラインで受けたものの、一人だと集中できなかったといいます。
やっぱ誰かが一緒にいる場所とかに行かないと、巻き込まれないと、なんか結構すっと入れなくてですね。
反対に池原さんは、eラーニングの方が自分のペースを掴みやすいと感じています。朝10分だけ、移動中にスマホで、といった細切れの時間に合うのだといいます。
2人の違いから見えてくるのは、学びが続くかどうかは、そのスタイルが自分の日常にどうフィットするかにかかっているという点です。オフラインが向く場面もあれば、eラーニングの細切れが向くフェーズもあると池原さんは話します。
馬と対話する研修と、演劇から学ぶ人材育成
宇尾野さんの学び方の極致として挙がったのが、北海道で体験したホースローグです。半年ほど前に、2泊3日ずっと馬と過ごしたといいます。
馬は喋んないんですけど、馬と一緒にそういう対話をするような設計を、それを通じて自分が今どう感じたかとか、普段の日常の人との関係とも少し重ね合わせながら、どういうことを今捉え直したかみたいなのを振り返ったり。
これを受けて池原さんは、宇尾野さんが自分の学びのスタイルをきちんと言語化して持っている点を評価します。何を学ぶかと同時に、何のコンセプトで学ぶのかという土台がないと、学びは続かないというのです。
池原さん自身も、過去には体験学習的なワークショップや、キャンプで学ぶ場、演劇から学ぶ場に足を運んでいたと振り返ります。人事の領域で、演劇を通した人材育成を体験したこともあるといいます。
上司役、部下役に分かれてロールプレイをして、姿勢一つで人の気持ちがどう変わるかとか、声の出し方とか、息継ぎの仕方で、その場のプレゼンテーションがどう変わるかとかっていうのを、人事の文脈でやったことあるんですね。
学びのスタイルは、いまの自分を映すメタ認知
宇尾野さんは、最近は本を読むときの集中力が落ちてきた感覚もあると言います。今この瞬間に深掘りたいテーマが分散してきた自分に気づき、去年ごろから一つに深掘るより、いろいろ聞こうというモードに変わってきたといいます。
池原さんは、自分がどういうスタイルを好むのかを見ることは、いまの自分の状態を知るメタ認知だと話します。池原さんの直近のテーマは、曖昧なものを構造化することだといいます。
わからないことが多すぎて、混乱することが多すぎて、それをどういうフレームで言葉にして理解すればいいかっていうのが多分私の欲求なので、今はこういうフェーズなんだなと。
自分がなぜ今そのスタイルを好むのかを問うことで、いまの自分がどんなフェーズにいるのかが見えてくるというのが、2人に共通する視点です。
学びを組織に循環させる仕組みづくり
話題は、個人の学びをどうチームに広げるかへ移ります。池原さんの会社ではリモートワークが多いため、オンライン上に参考シェアチャンネルを作っているといいます。
ちょっとでも面白いなと思った、例えばTwitterの投稿とかYouTubeとか記事とか、そういうのを誰もがどんどんシェアしていくっていうのを今やっています。
宇尾野さんの会社でも、構図は近いといいます。事業に専念する人と、複数の会社を越境して関わる人が混在しているため、その特徴を生かしてナレッジが循環するSlackチャンネルや勉強会の文化を作っているそうです。
池原さんがもう一つ意識しているのが、社外の研修に社員を送り出すことです。予算にもよるものの、良さそうな研修があれば行ってもらい、その学びを社内で自分の言葉でシェアする時間を作るといいます。
個人の関心だけでは学びが自分の興味の範囲にとどまってしまいます。そこを経営側が一歩引いて広げ、送り出し、社内に循環させることが大事だと池原さんは話します。
送り出す
良さそうな社外研修に社員を送り出す
持ち帰る
学んだことを自分の言葉で社内にシェアする
循環させる
他のメンバーの学びや転用につなげる
忙しい経営者は、いつ学んでいるのか
池原さんは、経営者はとても忙しいのに、みんな勉強家だと感じるといいます。どういうスケジュールで学んでいるのか、自分も含めて気になると話します。
宇尾野さんの場合は、隙間時間に加えて、どこでも何かを学ぼうとアンテナを張っているといいます。風呂に入っているときや飛行機の中でも、何かをインプットする機会を設けていると話されています。
池原さんは、成果を出すハイパフォーマンスマネージャーの特徴をまとめた論文を読んだことがあると紹介します。その第一の特徴が、振り返りと内省の頻度の多さだったといいます。
何をしていても学びを引き出す宇尾野さんの姿を、池原さんはハイパフォーマーの象徴かもしれないと語ります。宇尾野さん自身も、一つひとつを意味付けする力は比較的強く、この話とあの話が繋がると考える意識が強いと話します。
学び続ける組織と、2:6:2の法則
宇尾野さんが探求し続けているテーマの一つが、みんなが学び続ける組織を作ることだといいます。全員が同じように意味付けできるわけではない点が、悩みのポイントでもあると話します。
みんなが学び続ける組織を作るっていうのが、結構個人的には、ずっと探求してるテーマの一個って感じですね。
これに関連して池原さんが挙げたのが、組織学者エドガー・シャインの本にあった話です。組織の中で積極的に学ぶ人はおよそ2割で、いわゆる2:6:2に対応するといいます。
池原さんによれば、真ん中の6割はインセンティブがあれば学び、残りの2割は学習拒否者で、昇格に関わるといった罰があれば学び出すといいます。良し悪しではなく、意欲に応じて仕組みを設計できるのではないかと話します。
宇尾野さんは、勉強会のあとに必ずアンケートを送り、回答に応じて次のセッションを設計するなど、体験を連鎖させることを意識しているといいます。仕組みとしてはインセンティブや昇格要件も必要だとしつつ、それがなくても自分から学びに来る人を増やしたいという思いを語ります。
学びは新しい「眼鏡」を手に入れること
池原さんは、日本の大人が学ばない現状にも危機感を示します。OECDで日本の成人学習率が最下位とよく言われることに触れ、大人になってからの学びは全てが現場に生きてくると話します。
宇尾野さんは、勉強や学びという言葉自体が苦痛と捉えられがちだと指摘します。自分にとっては新天地や他者から経験を学ぶことが楽しい領域で、このPodcastで池原さんの話を聞くことも一つの学びだといいます。
最後に池原さんが語ったのが、学びとは新しい眼鏡を手に入れることだという捉え方です。新しいものの見方を得ると、これまでの解釈が変わり、行動が変わり、結果まで変わっていくといいます。
この捉え方に立つと、学びは苦痛ではなく楽しいものになります。2人は、学びは一度手に入れると元に戻れない不可逆な眼鏡だという視点を共有して、聞き手にも今何を学びたいか、どんなスタイルが合うかを探ってみてほしいと呼びかけます。
2人が今後してみたい学び
締めくくりに、2人が今後どんな学びをしたいかを語り合います。池原さんは、海外の学びにいつも刺激を受けてきたといいます。
いつかもう一度海外で何かこう自分がやってきたことを、それこそ言語化するような学びがしてみたいなと思います。
宇尾野さんが挙げたのは、作品作りやクラフトマンシップという領域です。自分の手を使って何かを作る体験や、そうした人たちと過ごす時間を増やしたいといいます。
建築家とかデザイナーとか、それこそ農業とか、そういう何かを生み出そうとしてる人たちの近くで、なるべく一緒に何か作業するみたいなことはやっていきたいなっていうのは思って。
まとめ
この回では、他者や経験から学ぶ宇尾野さんと、モヤモヤを言語化するために学ぶ池原さんが、それぞれの学び方のスタイルと、それを組織に広げる工夫を語り合いました。学びは苦痛ではなく、新しい眼鏡を手に入れる楽しい営みだという視点が共有されました。
- 学びは、内容だけでなく、そのスタイルが自分の日常にフィットするかが続く鍵になる
- 自分がなぜ今そのスタイルを好むのかを問うと、いまの自分のフェーズが見えてくる
- 社外研修に送り出し、社内で自分の言葉でシェアすることで、学びが組織に循環する
- 組織の学習者は2:6:2に分かれ、意欲に応じてインセンティブや要件を設計できる
- 学びは不可逆な新しい眼鏡であり、見方が変われば行動と結果まで変わっていく






