地方の田舎で育った父が、東京で見た「別の世界」
この回で語り手となるハイエナさんは、現在は東京在住ですが、地元は田舎だと話します。まずは自分がどこに立っているかを整理するところから始まります。
ハイエナさんによれば、田舎では私立は公立の滑り止めとして存在しているそうです。多くの学生が初めて受験を経験するのは高校からで、公立高校に行けなかった人が滑り止めの私立に進むのがほとんどのパターンだといいます。
その環境で育ったハイエナさんは、メーカー勤務のときはあまり感じなかったものの、コンサルティングファームに転職して初めて中高一貫私立 ── 中学と高校が接続された私立校。高校受験がなく、6年間一貫したカリキュラムで学べる。難関大進学に強いとされる学校が多いの存在感を突きつけられたと振り返ります。
初めての案件であっても、コンサルファーム内で「あ、どこどこの人だよね」みたいな感じで、縦横先輩同士が繋がっていたりして。
同じ開成、同じ筑駒だったよね、というように、大学が違っても名門校同士でつながっている。そうした人たちがそのままファームに入り、通っていた塾の人間関係がファームまで続いているとハイエナさんは語ります。
その先、MBAとか取りに行ったら、結局また同じようなメンバーだったみたいな笑い話とかを聞いたりして。
ハイエナさん自身は地元のそこそこの進学校から国立大学に入り、就職活動で関東に出てきた人間です。当時のコンサルファームは狭き門で、身近に経験者もいない中、ケース面接を見よう見まねで対策したと話します。
東大にも存在する「インナーサークル」への衝撃
ハイエナさんは、面接を通ってファームに入った時点では鼻高々だったといいます。ところが入ってみると、先輩後輩が昔からつながっている別の世界が広がっていて衝撃を受けたと振り返ります。
この感覚について、ハイエナさんは最近ネットで話題になった記事を引き合いに出します。地方から頑張って東大に進学したら内部組がいて、人間関係に入れずつらかった、という内容の記事です。
ハイエナさんによれば、東京には学年の半数以上が東大に進学するような中高一貫校が結構あり、そうした人たちは中高で仲良くなったメンバーとそのまま東大でもつるんでいくといいます。
(東大は)クラスとかゼミとかサークルによっては、もう本当にそのインナーサークルで閉じてるような空間が一部あって。
地元では優秀とされ、東大合格で鼻高々だったのに、そこが通過点にすぎない環境に面食らう。ハイエナさんは、自分もそれに近い経験をしたと語ります。
ハイエナさんは妻もお受験を頑張る家庭文化ではなかったため、夫婦ともに東京のお受験には疎い状態だと話します。しかし当面は東京でバリバリ働くつもりなので、子どものために習い事やお受験を考え始めているといいます。
児童館とか保育園探しに行ってる時は、(ママ同士の会話に)耳をそばだてながら、今この習い事を習わせたいみたいな話を色々と聞いていて。
情報が入ってこない中でノーガードのまま東京の教育・育児に突っ込むと大変そうだ。そう考えたハイエナさんは、まずお勉強してみようと本を読み始めたと話します。
読んでいるのは『科学的根拠で子育て』という一冊
ハイエナさんが読んでいるのは、中室牧子 ── 慶應義塾大学の教授で、教育経済学を専門とする研究者。データに基づいて教育政策や子育てを論じる著作で知られるさんの『科学的根拠(エビデンス)で子育て 教育経済学の最前線』です。
ハイエナさんは、著者が慶應義塾大学卒業で教授も務め、博士課程を出て日銀やデジタル庁にも関わってきた経歴を紹介します。科学的エビデンスに基づいて書かれていて読みやすく、データがあるのがいいと評価します。
(この本は)非常に科学的エビデンスに基づいて書かれていて、とても読みやすいですし、やっぱりデータがあるってすごいいいんですよね。
この本は2024年12月10日発行の比較的新しい一冊です。ハイエナさんは、良いと感じた理由をいくつか挙げていきます。
「成功者のアドバイス」が当てにならない理由
ハイエナさんがまず良いと感じたのは、この本が冒頭で「子育てに成功した人のアドバイスは基本当てにならない」と書いている点です。
ハイエナさんによれば、東大に受かった人の親が「うちはこうしていた」と語る一方で、同じことをやって届かなかった人の話は表に出てきません。これを生存者バイアス ── 生き残った・成功した事例だけを見て判断し、失敗して残らなかった事例を見落とすことで、誤った結論を導いてしまう思考の偏りと呼ぶそうです。
ハイエナさんは、この考え方を大事故の例で説明します。事故の生存者に話を聞いても、彼らはみんな生き残った人です。本当に対策をするなら、亡くなった人がどこでどう死んだのかを聞けたほうがいいけれど、それはできない、という理屈です。
育児や教育も同じで、育児に失敗したと感じる人はYouTubeであまり語らないため、そうした情報はなかなか出てこないとハイエナさんは指摘します。
そろばんをやった子が全員東大に受かるわけではないのに、「うちは小さい頃からそろばんやらせてました、東大受かりました」って言ったら、もうそれが絶対的な情報だと思ってしまう。
巷で言われていることや、特定の思想を持った親の成功談ではない。ハイエナさんは、そこがこの本の良かった点だと話します。
この本が「成功」を子どもの収入と定義していること
ハイエナさんが2つ目に良いと感じたのは、この本が成功をはっきり定義している点です。多くの教育本は効果測定を避け、その子のいいところを見つけて褒めよう、といったふわっとした話にとどまりがちだと指摘します。
これに対してこの本は、第1章で成功を定義しているとハイエナさんは言います。それは子供の将来の収入を上げることを成功条件に据えるというものです。
ハイエナさんは、本に引かれた福沢諭吉の言葉も紹介します。慶應義塾の創設者である福沢諭吉が「金銭は独立の基本なり、これを卑しむべからず」と残していることに触れ、稼ぐ力を身につけて経済的に独立することの大切さが説かれているといいます。
ハイエナさんは、育児のために仕事をセーブしている今、育児そのものがとても楽しいと感じているそうです。本当はみんな楽しいことをやりたいのに、食べていくために仕事を優先せざるを得ない、という現実にも触れます。
一生食うに困らないお金は「面白いことをやるためのチケット」
ハイエナさんは、もしFIREできているなら、育児のためにまとまった時間を向き合ってみるのは全然いいと考えていると話します。福沢諭吉の言葉にも納得したといいます。
ハイエナさんは、以前noteで紹介した『サードドア』という書籍の一文も引きます。一生食うに困らないお金は、もっと面白いことをやるためのチケットだ、という考え方に共感していると語ります。
今はAIも含めて面白いことが目の前にたくさんある。だからこそ、FIREできていたらもっとできるのに、と思う瞬間があるとハイエナさんは話します。
ハイエナさん自身はもうすぐアラフォーで、まだFIREできていないといいます。それでも子どもには、もしできるなら、お金の悩みに早く片をつけて、30代以降は別のことに使ってほしいと願っていると語ります。
だからこそハイエナさんは、この本の最初に置かれた「子供の収入を上げるのを目的とします」という姿勢を、非常にいいと評価しています。
収入に効くとされる3つの要素
ハイエナさんによれば、この本では収入を上げるために効くとされる要素が3つほど書かれています。順に紹介していきます。
1つ目はスポーツです。ハイエナさんは、採用する側がスポーツ経験者を取りたがる傾向が日本に限らないとされ、本ではノルウェーの研究も紹介されていると話します。スポーツをやると欠席が減り、自尊心が上がるという結果もあるそうです。
ここでハイエナさんが一番おもしろいと感じたのは、効いているのは能力が身についているかどうかではない、という点です。身についていると面接で見られることが効いているらしいと語ります。
身についているかではないんですね。身についてると見られる、面接の時に見られるという点がいいっぽいです。
ハイエナさんによれば、忍耐力や責任感、社会性が強そうに見えるところも良さそうだといいます。
2つ目はリーダー経験を積むことです。ハイエナさんは、無理していい学校に入るよりも、自分の背の丈に合ったところで頑張り、トップ集団にいるほうがいいっぽい、という趣旨が本の途中にあると紹介します。
3つ目は非認知能力 ── テストで測れる学力(認知能力)に対して、自分を律する力、感情を扱う力、他人の感情を読み取る力、社会性など、数値化しにくい力の総称です。ハイエナさんは、これが中年以降にとても効き、年収との相関があるとされていると話します。
小さいうちは時間、大きくなったらお金
ハイエナさんは今、リーダー経験や非認知能力の伸ばし方が書かれた部分を読んでいるところだといいます。逆に言えば、それ以外の習い事には大きなエビデンスがなかった、というのが本の趣旨だと受け止めています。
ハイエナさんが紹介する本の考え方は、順序に特徴があります。子どもが小さいうちは親が時間を使い、ある程度大きくなって向き不向きややりたいことが見えてきたら、お金を使ってプロに教育してもらうのが適切だ、というものです。
子どもが小さいうち
親が時間を使って関わる
大きくなってきたら
向き不向きややりたいことを見極める
方向が見えたら
お金を使ってプロフェッショナルに教育してもらう
生成AIの時代に、何を習わせればいいのか
ハイエナさんは、自分が東京で少年期を過ごしていないため、東京の子育てがどういう感じなのか本当にわからないのが怖いと打ち明けます。基本の型を持っていない状態だといいます。
さらにハイエナさんは、そこに生成AIが出てきたことを挙げます。生成AIは、これまでの詰め込み型の教育や論理的思考能力を完全否定するようなテクノロジーだと考えているそうです。
生成AIが来る時代において、どういう教育、子供に何をさせるのかっていうのが全くわからない状態にいます。
ハイエナさんは、同じように悩んでいるパパママも多いのではないかと話します。この本を読みながら、自分の考えを発信していきたいと締めくくりました。
まとめ
地方公立育ちで東京のお受験に疎いというハイエナさんが、教育経済学の本を手がかりに、習い事や「子育ての成功」をエビデンスから考え直す読書メモの回でした。読みかけのまま、自分の立ち位置と本の要点が率直に語られています。
- 成功者のアドバイスは生存者バイアスがかかりやすく、そのままは当てにならない
- この本は第1章で「子どもの将来の収入を上げること」を成功と定義している
- 収入に効くとされるのはスポーツ・リーダー経験・非認知能力の3つ
- スポーツは能力が身についているかより「身についていると見られること」が効くとされる
- 小さいうちは親が時間を使い、大きくなったらお金を使うという順序が示されている



