新番組「おいしい組織」はどんな二人で始まったのか
この回は、新しいポッドキャスト「おいしい組織」の初回として、パーソナリティ2人の自己紹介から始まります。
まず宇尾野彰大さんが、株式会社事業人の共同代表として番組の趣旨を説明します。この番組では、組織や経営の現場を見てきた2人が、採用、育成、マネジメントなどをテーマに語っていくとのことです。
もう一人のパーソナリティとして、Mentor For代表の池原真佐子さんが紹介されます。2人とも、これまでポッドキャストは聴く側だったと話します。
今までポッドキャストってずっと聞く側だったので、自分が喋る側に回ってるっていうのがちょっと不思議な感覚がします。
全く私も同じ感覚です。
宇尾野さんは、この番組をやりたいと言ったのは自分たちだとしつつ、いざ始めるとかなり緊張すると打ち明けます。どんな掛け合いになるのかを楽しみにしていると話します。
事業人と Mentor For、二人の経歴と仕事
自己紹介では、それぞれの会社と仕事内容が語られます。
宇尾野さんの事業人は、2019年に複数のメンバーで共同設立された会社です。共同代表は全員が副業という形で始まった、少しユニークなチームだといいます。宇尾野さん自身は2022年に前職を独立し、フルコミットになりました。
事業人は成長企業の組織づくり全般を支援していて、現在おおよそ200社ほどと付き合いがあるとのことです。最近ではスクール事業も始めているといいます。
宇尾野さんは過去にリクルートやユーザベースで人事を担当したこともありますが、基本的には事業側のメンバーとして働いてきました。事業と人事の両方の経験があることが、社名の「事業人」に込められています。
一方の池原さんは、大学と大学院で成人教育、つまり大人の学びを研究したのち、PR会社に就職しました。その後、NPO、コンサル会社での人材開発の仕事を経てMentor Forを起業しています。
Mentor Forは大きく分けて2つの事業を行っています。1つはメンターを育てるスクール、もう1つはそのスクールを出た人をプロの社外メンターとして企業の従業員にマッチングする事業です。
池原さんは在職中に、インシアードの大学院で組織の心理学や対話を通じた人材開発を学んでいて、この番組のテーマに強い関心があると話します。
「おいしい組織」というタイトルに込めた二つの意味
池原さんが、そもそも番組名「おいしい組織」にどんな意味があるのかを尋ねます。宇尾野さんは、タイトルに2つの思いを込めたと答えます。
1つ目は、組織づくりをもっと柔らかく、楽しいものとして捉えてほしいという思いです。宇尾野さんは、組織づくりは高尚で難易度の高いテーマだと感じつつも、料理のように取り組めるものにしたいと話します。
料理って子供から高齢者、いろんな方々がやれるものですし、もっと楽しいものっていうふうに捉えていただけるような場になりたい。
2つ目は、組織づくりがカレー作りに似ているという実感です。宇尾野さんは、番組のコンテンツを議論する中で、最近この例えをよく使っていると話します。
美味しいカレーって作り方とかシチュエーションとか食材とかって結構いろんなパターンがあるじゃないですか。組織作り自体も結構それに似てて。
どんな人がいるか、事業環境はどうか、その日の人の感情はどうか。そうしたいろいろな要素を捕まえて、最終的にこういうものを作ろうと決めていくプロセスが、カレー作りと組織づくりで近いと宇尾野さんは言います。
池原さんは、この例えをわかりやすいと受け止めます。同じカレーでも仕上がりが大きく変わる点が、組織づくりそのものだと共感します。
一流のホテルで食べる洗練されたカレーもあれば、みんなでバーベキューしながら食べるカレーも美味しかったりする。ルーの配合とか入れる食材によって全然仕上がりが違う。
なぜ今、人事視点が経営に必要なのか
初回のテーマは「なぜ今人事視点が経営に必要なのか」です。宇尾野さんが、このテーマについて感じることを池原さんに尋ねます。
池原さんは、経営者の端にいる身として、このテーマは非常に重要だと答えます。多くの経営者に聞くと、さまざまな困難が「人事」の二文字に埋もれていると感じるといいます。
宇尾野さんは、自身の仕事のテーマが人事や組織づくりであることから、このテーマを選んだと説明します。多くの経営者が、人事というテーマを難しく感じ、うまく扱えずに悩んでいると話します。
一方で、新しいサービスや事業を作ろうとしたときに、実行する人が採れない、採ってもすぐ辞めてしまう、入っても思うように活躍してくれない、といった問題が起きます。宇尾野さんは、こうした人にまつわるテーマが足かせになり、やりたいことができなくなる状況を間近で見てきたといいます。
池原さんは、人事は会社が大きくならないと関係ない、と思われがちだと指摘します。しかし起業家支援の現場では、初めて人を雇うタイミングを問う質問が多く、2名、3名と増えるほど人の悩みも増えていくと話します。
宇尾野さんも、多くの人は学校でも職場でも、人を育てる方法や人を招く方法をあまり学んでこないと指摘します。それなのに、経営ではいきなりそれを求められるといいます。
学んでてもできないんですよ、なかなか。お恥ずかしいところで。
採用も適正人数も「わからない」まま進む経営の現場
池原さんが、いま現場では人事というキーワードにおいて何が起きているのかを尋ねます。
宇尾野さんは、採用費や人件費というコストの考え方が会社によって様々で、何を採れば正解なのかを多くの経営者が悩んでいると話します。さらに、そのビジネスにどれくらいの人が必要かという適正なサイズもわからないといいます。
宇尾野さんは、1人で10人分活躍するケースもあれば、3人集まっても1人分の期待値に満たないこともあると例を挙げます。この辺りを科学したくても、なかなか手が届かないのが経営者の実情だと話します。
働く人の側にも変化があります。副業や自分で会社を経営する選択肢が広がる中で、個人にとって最適な働き方も変わってきました。宇尾野さんは、終身雇用で一社に尽くす時代から働き方が多様化した結果、ミスマッチが起きやすくなっていると指摘します。
経営者がメンバーのバックグラウンドを把握できていない
池原さんは、選択肢が増え続ける個人に仲間になってもらい、一緒に事業をすることが経営の大命題だとしつつ、人事視点が経営に入りにくい理由を尋ねます。
宇尾野さんは、経営者自身のキャリアの前提が理由の1つだと答えます。新卒で一社に入り、その会社で成り上がって社長になった人には、そうしたロールモデルがあります。
しかし今、自分の会社にいるメンバーは、いろいろな会社出身の中途採用や、多様な働き方の人たちです。宇尾野さんは、実は一番活躍しているのが業務委託の人だった、というケースを例に挙げます。
この業務委託の人ってどういうバックグラウンドなんだっけ?って知らないまま仕事は託せてるみたいな。
宇尾野さんは、そうした人をどう採用すればいいか、どうすればパフォーマンスを出せるかを経営者自身が想像できないまま、経営が成立してしまっている点を問題視します。それを拡大したり再現したりするのは、経営者個人やチームだけでは難しいといいます。
池原さんもこれに強く共感します。多くの経営者は自分が事業のプレーヤーでもあるため、マネジメントに加えて採用や労務など、さまざまな人事の視点まで考えが及びにくいと話します。
組織づくりには「不可逆性」がある
話は再びカレーの例えに戻ります。宇尾野さんは、美味しいカレーを食べた経験から、なぜこのカレーができたのかを考えるのが組織づくりに近いといいます。
池原さんは「どこで間違えたんだろう」という視点を持ち出します。宇尾野さんは、油の入れ方一つでも味が変わると応じます。
ただし、料理と組織には決定的な違いがあると宇尾野さんは指摘します。料理なら失敗を一度体験すれば学べますが、組織にはやや不可逆性があるというのです。
組織ってやや不可逆性というか、一回作ってもそのカレーを煮込み続けなきゃいけないみたいな。
途中でやめたって言って、レトルト温めるわけにもいかないですもんね。
宇尾野さんは、別の皿で作り始めるようなこともできないため、組織づくりは学習がしづらいテーマだと話します。
失敗を一度体験すれば、次に活かして作り直せる
不可逆性があり、一度作ったら煮込み続けるしかなく学習しづらい
経営者のタイプに合わせた組織づくりの支援
池原さんが、聴いている経営者に普段どんなアドバイスをするのかを尋ねます。
宇尾野さんは、美味しいカレー1つとっても、経営者によって作り方や望むプロセスが違うと答えます。過去のレシピをたくさん見てからうまくかいつまんで作りたい人もいれば、一緒に実演してプロセスに入り、試行錯誤したい人もいるといいます。
そのため、経営者の考えを起点に一緒に作るケースもあります。一方で、そもそもカレーを作りたいのかどうかがわからない、という本音を抱える経営者もいるといいます。
コーチング的に入っていって、本当は何作りたいんだっけ?みたいな話をしていく。
宇尾野さんは、一度作り始めると止められないのが経営の醍醐味であり難しさでもあると話します。
「気づけばよくわからない煮込みに」池原さんの起業体験
ここで池原さんが自身の経験を語ります。池原さんは、経営者になろうとしてなったわけではなく、やりたい事業と変えたい社会があって始めたといいます。
しかし、しばらくすると1人では回らないというキャパシティの限界が来ます。池原さんは、いくら睡眠を削っても終わらない仕事量になったと振り返ります。
そこから人に手伝ってもらうようになりますが、いきなり社員を採るのはためらい、ボランティアやプロボノなど、いろいろな形で手伝ってもらったといいます。
カレー作りは全く習ってないので、しかも自分もカレーを作ろうと思って走ってるわけでもないので、気づけばよくわからない煮込みになってるみたいな。
池原さんは、その煮込みに巻き込まれた側も大惨事だったのではないかと振り返り、当時は本当に辛かったと話します。
それでも、事業をやるにはカレー作りを学ぶのだと気持ちを切り替えると、人事目線を勉強しようと思えるようになったといいます。池原さんは、成功例はわからないけれど、失敗のパターンには再現性があるのではないかと考えるようになったと話します。
Mentor Forは今、メンバーが30名弱まで成長し、いわゆる30人の壁の手前にいるとのことです。池原さんは、さまざまな失敗を経てここまで来たとして、このテーマは永遠の課題だと語ります。
AIも救世主にならない、試行錯誤しても前に進まない経営者へ
宇尾野さんは、100人、1000人規模を乗り越えた経営者も、みな試行錯誤を経て今に至っていると話します。池原さんは、前日に会った自分より大きな規模の社長が「毎日振り向けばハードシングス」と話していたと紹介し、人の悩みは尽きないと語ります。
宇尾野さんは、人は社会の縮図だと考えていると話します。海外にいた経験から、隣の人たちの盛り上がりの影響は必ず自分たちにも来ると感じ、それに引っ張られて自分たちの組織を作ってしまう経営者もいると指摘します。
さらに、AIをどう活用して組織を作るかという課題も出てきました。ただ、まだ最適解がない中で、人が採れない経営者がAIに救世主的な役割を期待しても、そのAIもまだ答えを持っていないといいます。
宇尾野さんは、そうした経営者が一歩でも半歩でも前に進めるような内容を、この番組で届けたいと話します。
外に出にくい組織の話を、パターンとして知る
池原さんは、組織の話はあまり外に出ないことが多いと指摘します。宇尾野さんのように、横断的にいろいろな組織の人事へ直接入って見ている人は日本でも多くないため、そこから得られた成功例や失敗例をレシピのように知りたいと話します。
宇尾野さんは、個別に見れば本当に多様で絶対的なものはないとしつつ、集合すればパターンは一定あると答えます。そのパターンの中で、今の自分やチームがどこにいるのかをある程度絞り込むことはできるといいます。
初回は「なぜ今人事視点が経営に必要なのか」の一部を語る回として締めくくられます。池原さんは、これからどんな話が出てくるかを楽しみにしていると話します。
まとめ
初回は、組織づくりをカレー作りにたとえながら、なぜ今の経営に人事視点が必要かを2人が語り合いました。人にまつわる悩みは会社の規模を問わず、事業に関わる全ての人に関わるテーマだと確認されました。
- 組織づくりはカレー作りに似ていて、人や事業環境などの組み合わせで持ち味が変わる
- 採用が難しい、採っても辞める、活躍しないといった人の問題が、経営の足かせになりやすい
- 人事は大企業だけのテーマではなく、事業に関わる全ての人に関わる視点である
- 経営者はメンバーのバックグラウンドを把握できないまま経営が成立してしまうことがある
- 組織には不可逆性があり学習しづらいため、失敗のパターンを知ることに価値がある





