学びを意識するようになったきっかけ
この番組は前半でゲストの生い立ちやキャリアを、後半でゲストならではのトピックを扱います。後編は坂本さんと同じコミスマでCOOを務める福西さんを再びゲストに迎えました。
同じ会社の話を深掘りすると外に言えない話になりかねないため、今回はエンタメの話題ではなく、番組の目的の一つでもある「学び」をテーマに据えています。
2人が仲良くなったきっかけは、ICCというカンファレンスイベントのボランティアスタッフを長く一緒にやってきたことでした。
坂本さんは、福西さんを知的欲求や経営者としてのアップデートに貪欲な人だと見ています。ただ本人の答えは意外なものでした。
いや、全然ない方な気はします。逆に。
福西さんは、10代20代はお金を稼ぎたくてバイトもしていて、学ぶというより実践的にやりたいことをやる方が圧倒的に多かったと振り返ります。
学びを意識するようになった時期を振り返ると、きっかけはICCあたりかもしれないと話します。
自社以外の人たちと関わる機会が増えれば増えるほど、自分が持っていたものが大体どれぐらいのサイズや範囲や深さだったのか、情報の質と量を客観的に理解できるようになってきて。
そこから足りない部分を取りに行くこともやり始めた気がします。
それ以前は「考える余裕がなかった」のが半分、「考えたこともなかった」のが半分だと言います。社内評価や目標達成だけを見ていれば満たされていたからです。
事業のためから知的好奇心ドリブンへ
以前の学びは目的がはっきりしていました。クライアントを理解するために新聞や決算書を読むのも、取引を大きくするという顧客のための行動でした。
一方で今のスタンスは、それとは違うと福西さんは言います。
知的好奇心の方が強いと思います。
知的好奇心ドリブンに変わったのは、この5年ほど。やはりICCがきっかけだと話します。
最初の動機は貧乏性でした。スタッフはセッションを後からビデオで見られるため、見られるのに見ないのはもったいないと感じて見始めたそうです。
ICCの動画だから見てみたいと思ったのはあります。セッションをセッションとして見てみたい。
スタッフとして見られるのは自分が担当した会場の一部だけです。ほかの会場で行われた「撮れ高」のあるセッションを見逃すのはもったいない、という好奇心から視聴が広がっていきました。
見ていくうちに、自分の知らない社会課題や経営者の悩みを知れるようになったと言います。
自分の人生一つ体一つだと、どう考えても接点を持てる社会の課題って限界があるじゃないですか。それを間接的に人を通じて知ることができて。
福西さんは自分を後継ぎでも社会起業家でもないと言いますが、そうした人たちを見ることで、自分とは違う経験値を少しずつ吸収できていると感じました。
これはもっと積極的に取りに行った方がいいんだという風に能動的になった感じですかね。
断らない姿勢とPTA役員
外に学びを取りに行くようになってから、福西さんは誘いを断らない姿勢を強めました。やったことがなければ、それだけで自分には価値があるからです。
よくわかんないからめんどくさいなとかは思わなくなりました。
その一例が、今年引き受けた小学校のPTA役員です。クラスの抽選で当たり、やるかどうかの選択権もあったものの、引き受けました。
今は大変でヒーヒー言っているそうですが、そこにも発見があるかもしれないと前向きに捉えています。
一回やってみて、まあまあいいんじゃない?と思えば、もう続けなきゃいいだけなので。その時間と体を違うところにまた投資していくだけですね。
限られた時間をどう配分するか
学びを得るための具体的な行動について、福西さんは2本の柱を挙げます。1本は事業、もう1本はICCコミュニティです。
事業では、自分のロールが限定されていないこともあり、制作・編集・ファイナンス・リーガル・人事などを少しずつ広げて学びます。ただし深くいかないとよくわからないまま終わるため、解像度を上げられる範囲までは上げると言います。
もう一本の柱であるICCコミュニティは、接点を持っていると自動で広がっていくエネルギーがあるため、優先的に時間を投資すると決めています。
一方で坂本さんは、全部に手を出すと時間が足りず、専門性が中途半端になる懸念もあると指摘します。福西さんは、そこは優先順位で選んでいると答えます。
第1優先は家族と事業とICC。PTAは家族に付帯するサブとして、ICC関連の人との食事なども付帯するものとして、いずれも大きな「1」の中に位置づけています。
ゴルフや勉強会でも優先度は低く、断ることもある
食事なども含めて優先度が高い「1」の部類に入る
この基準に張っておけば、なんとなく面白いものが出てくるという感覚があるようです。
好きなポッドキャストと「3時間の価値」
学びの手段として、2人はポッドキャストの好みが近いという話にもなりました。福西さんは運転しながら、運動しながらの「ながら聞き」が中心です。
ただし東京と大阪を往復する移動中はずっと仕事をしていて、手が塞がらず耳が空くときにポッドキャストを聞いているそうです。
福西さんが今一番好きなのは、深井さんとケンスーさんの「幻会議」です。コテンラジオでは見せない深井さんのスタンスが知れる点や、テーマごとの切り口の面白さを挙げます。
「幻会議」は配信が消えてしまうため、坂本さんは必ず「次に聞く」に設定していると語ります。
もう一つ話題に上ったのが「伝説ラジオ」です。1回3時間ほどのインタビューで、最後の1時間あたりに人間性や他では言っていないことが出てくる点に価値を感じています。
コスパ・タイパの時代に対して、3時間かかって出てくるものの価値を感じてはいますね。
坂本さんもこの考えに共感します。一言でズバッと言うのは気持ちいいものの、大事なことは複数の視点から見て初めて本質がわかると感じているからです。
例えば「なぜフランスは漫画市場が大きいのか」という問いも、ドラゴンボールの人気で一言に片づくのではなく、テレビ局の民営化や出版社の起業のタイミングなど、複数の要素が組み合わさっていると説明します。
本当のことって、いろんな視点で一つの物事を見た時に初めて本質がわかるみたいなのが結構ある気がしてて。
現場と「登場人物」を見る学び方
最後の話題は現場主義です。この収録はラスベガスへの移動中に行われており、坂本さんは現場を見ることの学びを改めて感じていると語ります。
坂本さんは、福西さんが海外の現場に来てくれることを高く評価しています。英語が得意なわけではないながら、ジャパンエクスポやアニメエクスポなど各地に足を運んでいるからです。
現場を見ていることで、福西さんの中に各市場や取引先のイメージがインストールされ、坂本さんの説明が伝わりやすく、意思決定もミスしにくくなっていると言います。
福西さんは、ウェブサービスは人の顔が見えないと話します。以前のBtoBのデジタルマーケティングでは登場人物の顔がよく見えたため、それを見ないと判断に自信を持てないタイプなのだそうです。
その登場人物を見ないと割と判断できないというか、自信を持てないタイプなんですね。
現場で登場人物の顔がわかると、業界の山も谷も知っている人か、外から来たプレーヤーかが見えてきて、自分の仮説に自信がつくと言います。
その観察はかなり細部に及びます。坂本さんが話している間に、相手の服やしぐさ、メガネや指輪、ペンのブランドまで見ているそうです。
いろいろ見ちゃうんです。タツさんが喋ってる間に、その人の着てる服から、しぐさから、ブランドとか。
朝のランニングでは他の参加者の靴を全部見ていたと言います。市場のデータとリアルが一致していて、ナイキがほぼゼロだった点が印象的だったそうです。
こうした観察も、明確な結論を求めるというより、ぼんやりした仮説を持ち続けること自体が楽しいのだと福西さんは話します。
そこから何かにたどり着きたいというよりは、こうかもしれないなみたいな、ぼんやりした仮説をずっと自分の中で持ってるだけで、楽しいだけです。
2人は海外に行くと必ず現地のエンタメを体験しています。フランスで見たチャンピオンズリーグはブルーカラー中心の客層で、坂本さんも福西さんも意外に感じたと振り返ります。
一方ニューヨークで見たアイスホッケーとバスケットボールは客層が全く違い、同じスポーツというカテゴリーでも誰に何を提供しているのかが大きく異なると感じたそうです。テレビの映像では観客まで映らないため、現場でしかわからない違いです。
この日はこれからラスベガスのスフィアへ向かうと話し、行かないとどんな感じかわからない最新エンタメを体験すると締めくくりました。
番組の最後には、学びの源泉になるかもしれないICC運営スタッフの募集が告知されました。開催は9月で、それに向けた新戦力として20代30代を中心に募集しているとのことです。
まとめ
事業のための学びから知的好奇心ドリブンの学びへと変わっていった福西さんの姿勢と、人や現場を細部まで見る独自のスタンスが語られた回でした。
- 福西さんの学びは、社外の人と関わり自分の情報の質と量を客観視したことをきっかけに変わっていった
- 今の学びは取引を大きくするためではなく、この5年ほどで強まった知的好奇心が原動力になっている
- 限られた時間は家族・事業・ICCを第1優先に置き、関係の近い誘いを優先して配分している
- 3時間のインタビューや複数の視点から本質を見ようとする、時間をかけた理解の価値を重視している
- 現場で登場人物の服やしぐさ、靴のブランドまで観察し、データだけでは得られない仮説の自信につなげている







