ボディビル大会に出るために5ヶ月で15kg減量した森下さん
番外編のMC回として、普段はゲストを招く『エととと』を、HARS Globalの森下明さんとコミスマの坂本達夫さんが二人で回しています。
坂本さんが切り出したのは、森下さんが画面越しにもわかるほど頬がこけて痩せていることでした。
どうしたんですか?胃の摘出とかしたんですか?
胃の摘出はしてなくて、普通に鶏胸肉とサラダと味噌汁だけを食べるというクレイジーな生活をしているというところですね。
痩せた理由は健康目的のダイエットではなく、10月24日にシンガポールで開催される大会への出場でした。
WNBFっていう[[WNBF::World Natural Bodybuilding Federation。ドーピングを禁止した「ナチュラル」なボディビルの国際団体。]]シンガポールの大会にボディビルのカテゴリで出るっていうところで、多分唯一日本人私のみで、自称日本を代表して戦ってこようかなと思っているマッチョですっていう。
ボディビルで見られる「筋肉量」と「体脂肪率」のバランス
そもそもボディビルとは何を競うのか。森下さんは評価基準を大きく2つに整理して説明します。
1つは、いかに筋肉がついているか。もう1つは、それを残したまま、いかに体脂肪を極限まで削ぎ落とせるかです。
いかに筋肉がついているかっていう状態と、それを残したままいかに体脂肪率を落とす、つまり削ぎ落として、美しく見えるか。
体脂肪が筋肉と皮膚の間に乗っていると、筋繊維やカットが見えなくなります。この筋肉量と体脂肪率のバランスが取れて初めて、足のセパレートなどが浮かび上がるといいます。
これに対して坂本さんは、自身をバランスが取れていない例として挙げました。身長167cmほどで体重が85kgあり、筋トレで筋肉はあるものの、その上に脂肪が乗って「ただただ重い」状態だと語ります。
4月から15kg超、一般的な理想の倍のペースで落とす苦しい設定
森下さんの体重推移は具体的です。減量を始めた4月4日時点で86kgあった体重を、収録時点で69kgまで落としていました。
つまり15kg強を落とした計算です。全日本ボディビル選手権のトップ選手を指導するトレーナーのもとで、食事を完全にコントロールしているといいます。
その人曰く、9月末までに森下さん66キロ台にタッチしてくださいって言われていて。
9月末に66kg台を通過点とし、大会当日の10月24日には64〜63kgまで落とす見立てです。しかも筋肉はなるべく落とさずに、です。
一般的に理想とされる減量幅は1ヶ月2kgほど。ところが森下さんは1ヶ月3.5〜4kg落としており、理想の倍のペースで落とす苦しい期間設定でした。
私みたいにタイムラインがないと、もう小出しのカードの切り方で一回ミスったらスケジュールから逆算して狂うから、もうやるしかないこのカードズボンみたいな切り方をしないといけないんですよね。
消費カロリーの鍵は運動より食事、そしてPFCバランス
減量の原理を、森下さんはビジネスの言葉に置き換えて説明します。カロリーの入りと出の差分が、落ちる量になるという考え方です。
売上のトップラインを伸ばすかコストを落とすかっていうような形で、コストっていうのが食事、売上のトップラインっていうのは運動量みたいな話なんですけど。
ここで森下さんが強調したのは、感度分析的に見ると運動をいくら上げてもアンダーカロリーへの影響は小さく、影響のほとんどは食事の入りのカロリーで決まるという点です。
その上で登場するのがPFCバランスです。
森下さんによれば、脂肪を1kg落とすには約7200kcalの差分を埋める必要があり、そこからPFCの量を調整することで、筋肉を維持したまま脂肪だけを削ぎ落とせるといいます。
自分の「メンテナンスカロリー」を1週間かけて突き止める
坂本さんは、雑誌でよく見る「筋肉をつけて基礎代謝を上げましょう」を実践した結果、体重は増えたが脂肪が減らず「重たいだけの人」になったと打ち明けます。
今森下さんの今の体に15キロ分お腹と背中に米背負って走ってるようなもんなんで。
森下さんはまず、自分のメンテナンスカロリーを突き止める必要があると答えます。
この基準値がわからなければ差分の設計もできないため、まずは1週間、固定した食事メニューを続けて体重の動きを観察します。
一週間毎日その食事を食べた時に、平均値が体重がプラマイトントンで止まっているのか、マイナスなのかプラスなのかって、どこにメンテナンスカロリーがあるかがわかるんですよ。
体重は筋肉中の水分などで揺らぐため、1週間の平均で判断します。少しずつ下がっていれば、設定より消費が大きいとわかる仕組みです。
なぜ痩せなくなるのか、ホメオスタシスとカードの切り方
計画通りに差分を引けば基本は落ちる、と森下さんは言います。ただし途中で「ホメオスタシス」が働き始めるのが難しいところです。
同じアンダーカロリーの食事を続けているのに減量幅が減衰していく現象が、ダイエットで「最初は落ちるのに、だんだん落ちなくなる」感覚の正体だといいます。
ここで減量期間を長く取るメリットが効いてきます。炭水化物ではなく脂質を先にいじる、といった切るカードを小出しにできるからです。
一方で森下さんのようにタイムラインが短いと、一度カードの切り方を誤るだけで計画が狂います。強引にカードを切ることになり、体へのダメージも大きくなります。
筋肉を落とさない鍵は「体重×2」のタンパク質
坂本さんが「飯減らして朝晩ランニング」のような単純な話ではないのかと問うと、森下さんは違うと答えつつ、最もわかりやすい回答を提示します。
一日160グラムのタンパク質をとってください。そうしたら筋肉量は落ちませんっていうところですね。
原理原則として、タンパク質は筋肉の合成を促す唯一の原材料であり、それが体内で満たされていれば筋肉は基本的に減らない、という考え方です。
目安は自分の体重×2グラム。体重80kgなら1日160gが、激しい運動や筋トレをする人のベースになるといいます。
この160gという数字は、鶏胸肉なら生・皮なしで約650g分に相当します。1食あたり200g強を朝昼晩食べる計算で、坂本さんは「結構多い」と驚きます。
鶏胸肉650gでもカロリーは低い、痩せない原因は脂質過多
量は多く見えても、タンパク質は1gあたり4kcalなので、160gでも640kcalにしかなりません。
仮に1日2000kcalを目標にしても、タンパク質で640kcal、残り約1360kcalを脂質と炭水化物に回せます。森下さんは「結構食っていい」と言います。
脂質はアボカドやサーモンなど良質なものから30〜40gほど、炭水化物は残りのカロリーを白米などで摂れる計算です。
残り900キロカロリー全部炭水化物に振り切れるんですよ。900キロカロリー分の白米バクバク食えるんですよ、極論。これで痩せるんですよ。
それでも痩せない場合、森下さんが挙げる原因はほぼ1つです。
脂質は1gあたり9kcalとハイカロリーで、菓子パンやお菓子、ハンバーガーなどに気づかぬうちに多く含まれます。白米はけっこう食べられるのに、脂質で一発アウトになるという構図です。
森下さん自身は減量の追い込みで1日1000kcalという極端な生活をしていますが、これはコンテスト向けの特殊事情だと補足します。牛丼一杯で「修行」になるレベルです。
一方、坂本さんは減量が「栄養をそのまま食うことに振り切りすぎている」ように感じると率直な感想を述べます。鶏胸肉でタンパク質、白米で炭水化物、オイルはタブレット、という具合です。
素材そのまま食ってんのかお前はみたいな。なんか料理みたいな感じじゃないですよね。
森下さんは、これは自分のスケジュールミスと筋肉量不足ゆえだと認めます。筋肉量が多ければ基礎代謝が高く、もっと食べられる幅が生まれるといいます。
運動と食事はトレードオフ、有酸素の割に合わなさ
坂本さんは、ボディビルを目指さない自分の場合、食事で減らすのと同じ効果を運動で得られないのかと質問します。ランニングの話が減量なのに出てこないのが気になる、というわけです。
森下さんの答えは、両者はトータルできる目標ではないというものでした。同じアンダーカロリーを作るなら、食事の方が圧倒的に簡単だといいます。
具体例として、坂本さんがその場で調べた数字が出てきます。体重70kgの人が時速4kmで1時間歩いても、消費は約200kcalほどです。
50グラム分の鶏胸肉をペロペロってポイってするってことと、一時間のウォーキングをうわってするのとが等価なんですよね。
つまり1時間のウォーキングと、鶏胸肉を50g減らすことがほぼ等価。しかもウォーキングは有酸素運動なので筋肥大には影響しません。
さらに運動と食事は独立した変数ではない、と森下さんは指摘します。体重を落とすほどエネルギーが減り、運動そのものがつらくなっていくからです。
筋トレの目的はカロリー消費ではなく筋肥大
坂本さんは、重いウエイトを数回上げる筋トレはカロリーを燃やしている感じがしない、と疑問を投げます。
森下さんは、筋トレの目的はカロリー消費ではなく筋肥大だと明確に区別します。ボディビルは各パーツの筋肉が肥大しているかを見られる競技だからです。
筋肥大の観点では、坂本さんが挙げた「重いものを数回」のやり方が有効だといいます。
重い重量を数回行うコンパウンド種目は、いろいろな筋肉に刺激を入れられるため、筋肥大には非常に有効だと森下さんは説明します。
栄養不足で続くと回復が追いつかなくなる
森下さんは減量中、トレーナーから筋トレの頻度を制限されています。毎日やっていたのを、場合によっては3日に1回にしないと回復が追いつかないためです。
今まで毎日してたんですけど、本当に場合によってはもう三日に一回にしてくれ。そうじゃないと回復が追いつかなくて、日常生活ができなくなるからみたいな話もあったんですね。
坂本さんは、サッカーの翌日に多少だるさや筋肉痛があっても数日で治るため、「回復させなきゃ」という感覚がピンとこないと語ります。
森下さんによれば、それは日頃カロリーが満たされていて常に回復できている状態だから。アンダーカロリーが続くと、2日で戻っていたものが4日戻らなくなるといいます。
その仕組みとして、まず筋肉中のグリコーゲンが優先的に使われ、枯渇すると肝臓の貯蔵が放出されます。それでも足りなくなったとき、回復にタイムラグが発生します。
ボディビルは「自分を律する訓練」、経営との共通点
最後に森下さんは、なぜこれをやるのか、仕事にどう意味があるのかを語ります。彼にとってボディビルは「自分を律する訓練」でした。
日本ではなく異国の地で、フレキシビリティのある働き方をしている。それは裏返せば強制力がなく、自分を律さないと堕落していくと森下さんは考えています。
特に僕は経営者をやってるんで、律されることがないんですよね。律する訓練って本当にしてないとダメになるなっていうのは思っていて。
食事を厳密に守り、甘い状態でコンテストに出れば軽蔑される。その厳しさの中でやりきることが、仕事にもつながるといいます。
この話を受けて坂本さんは、昨日インスタントラーメンを食べて昼寝をした自分を「全く律していない」と振り返り、知的好奇心だけで楽しいことしかやっていないバランスを少し反省したと語ります。
森下さんは、律する変数は人それぞれ違っていいとフォローし、大会の結果はまた次回のMC回で報告すると約束して雑談回を締めくくりました。
まとめ
減量は気合いだけの世界ではなく、カロリーの差分計算とPFCバランスに基づいたサイエンティフィックな営みでした。運動より食事のコントロールが効き、タンパク質を確保すれば筋肉を残して脂肪だけを削れる、というのが森下さんの語る原理原則です。
- ボディビルは「筋肉量」と「体脂肪率」のバランスを競う。筋肉を残したまま脂肪を極限まで削ぐ
- アンダーカロリーへの影響は運動より食事が圧倒的に大きい。1時間のウォーキングと鶏胸肉50gがほぼ等価
- 筋肉を落とさない鍵はタンパク質。目安は体重×2グラムで、痩せない原因の多くは脂質過多
- 自分のメンテナンスカロリーを1週間の平均体重で突き止め、脂肪1kg減の約7200kcalから差分を逆算する
- 森下さんにとってボディビルは、強制力のない働き方の中で自分を律する訓練でもある






