なぜ一人収録?大型案件を抱えた近況
Webディレクターズトークの第24回は、いつもの吉田さんがお休みで、小野さん一人での収録です。小野さんはプライベートで生活に大きな変化があり、朝に作業を詰めるようになったため、吉田さんと生活リズムが合わなくなっているそうです。
いつもですね、夜中に撮ることが多かったんですけど、もう僕、夜中の22時とか23時にもう起きれなくなっちゃってきてて。
ソロ配信がしばらく続いていますが、小野さんによれば、来週か再来週ごろからは吉田さんと一緒に収録できる見込みとのことです。
小野さんは仕事でも変化があり、かなり大きな案件を担当することになりました。関係者が多く、自分のタスクも、社内や先方、パートナーに依頼するタスクも大量にあります。そのうえ、以前からの案件の対応も続いています。
いや、ネガティブな意味じゃないですよ。めちゃくちゃありがたいですよ。
まだね、(ディレクター歴)4年とかでやらせてもらえる範囲のレベルじゃないので、非常にありがたい。
小野さんは大型案件を任されたことを「バッターボックスに立たせてもらっている」と表現しています。その忙しさの中で、ディレクターとしての自分の価値について新しい視点を持てた出来事があったといいます。
利用経験のないサービスの構成案でパニックに
小野さんは最初に結論を示しています。ディレクターの価値は、ターゲットの心理や行動を細かく言語化し、それをもとに情報設計を考えることそのものにある、という考えです。
この結論にたどり着くきっかけは、大型案件の構成案 ── Webページに載せる情報の種類や順番を整理した設計図。デザインやコーディングに入る前に作り、ページの骨組みを決める役割を持ちますを考える段階にありました。小野さんはその案件のサービスを自分で利用したことがなく、情報をどう落とし込むかに非常に悩んでいたといいます。
小野さんはまず、サービスを提供する会社の情報やヒアリング内容、ターゲットユーザー像をAIに入れ、情報設計 ── ユーザーが必要な情報にたどり着けるよう、情報の分類・優先度・並び順を組み立てる作業。Webサイト制作ではページ構成の土台になりますを出力させました。ところが、出てきた案はしっくりこなかったそうです。
言ってることはまあ合ってるんだけど、この情報をユーザーが見て、本当にサービスを利用したいと思うのかなっていうのを、自分自身自信を持てなかったんですよね。
AIの構成案では、なぜその情報設計にしたのかをクライアントに胸を張って説明できない、と小野さんは感じました。自分でもまとめきれなくなり、上長に相談することにします。
多分僕、(上長に)「構成案ってどうやって作るんですか」って(聞いた)気がするんですよね、パニックすぎて。
小野さんは、上長から「は?」と言われたわけではないと笑いながら補足しています。上長は、小野さんが今何に悩み、何をしなければならないのかを課題と対策に分けて言語化してくれたそうです。
上長の一言「ユーザーになりきる」で何が変わった?
上長からのアドバイスは、自分が一消費者として、そのサービスを使いたいと思ってページに来たユーザーになりきって情報設計を考えるべきだ、というものでした。
小野さんは、このアドバイスを当然のことだと受け止めています。言葉としては理解し、そうあるべきだと認識もしていたものの、このタイミングで言われて初めて腑に落ちたといいます。
小野さんの手元には、クライアントから聞いた情報、自分で調べた情報、ターゲットが欲しがりそうな情報を箇条書きにしたものなど、材料はたくさんありました。足りなかったのは、その材料をどう組み立てるかのイメージです。
小野さんは、構成案づくりが難しかった原因を振り返っています。ディレクターの立場から「これは入れないといけない」「お客さんはこれに困っているから載せたほうがいい」と考え、ユーザーにそもそも必要な情報なのかを問わずに入れていたそうです。
改めて1ページ構成案作りました。読んでいくと、全然サービス利用したいと思える情報が並んでないんですよ。
上長のアドバイスを受けたあと、小野さんの考え方は次のように変わりました。
ディレクターの立場で、ヒアリングや調査の内容から「入れるべき情報」を詰め込む
消費者の立場で、悩み・不安・信頼できる情報を細かく言語化し、載せる情報と並べ方を決める
具体的には、ページに来るユーザーが広告経由か自然検索経由か、自然検索ならどんなキーワードで来るのかを考えます。さらに、そのユーザーがどんな生活を送り、なぜその課題を抱えたのかまで想像していきます。
ユーザー像をそこまで言語化すると、構成は自然と決まってくると小野さんは話します。ファーストビュー ── ページを開いたときに、スクロールせずに最初に見える範囲。ユーザーが読み進めるかどうかを判断する重要な場所とされますのキャッチコピーに必要な情報が見え、その次に問題提起がないと、ユーザーは自分の悩みが載っているかわからず離脱してしまう、という判断ができるようになったそうです。
進行管理だけじゃない、ディレクターの役割
小野さんは、ユーザーの気持ちを言語化して構成を組み立てる作業こそ、ディレクターとしての価値だと感じたといいます。それまでの小野さんは、ディレクターの仕事を案件の進行管理やアサインといった、ざっくりしたイメージでしか捉えていませんでした。
小野さんが考えるディレクターの重要な役割は、構成案だけでなくもっと俯瞰して、サイトを見るターゲットユーザーの課題や不安、欲しい情報、どんな生活を送っているか、どんなきっかけでサイトを訪れるかを考えることです。
一方で小野さんは、話しながら、この考え方はディレクターだけのものではないと気づきます。デザイナーも、ユーザーの年齢や生活、課題、訪問のきっかけを考えたうえでデザインしているからです。
確かに。いや、これ(ユーザー理解)ディレクターだけじゃないな。すいません。
テーマ通りではなくなったと苦笑しつつも、小野さんは、ユーザーを言語化する力はディレクターにも必要な価値であり技術だ、と話をまとめています。
アクセス解析にも効く、ユーザー行動の言語化
小野さんは、構成案づくりで気づいたユーザーの悩みや行動を言語化する考え方は、構成案以外でも重要になると考えています。例として挙げたのがアクセス解析 ── Webサイトの訪問者数、流入経路、ページごとの滞在や離脱などのデータを分析すること。サイト改善の根拠として使われますです。
アクセス解析であっても、ユーザーの行動を言語化した上で、数値と合わせて改善施策を考えることで、より多分芯を食った施策になると思うんですよね。
ユーザー行動の言語化と数値を組み合わせると、クライアントに「なぜこう考えたのか」と聞かれても自分の言葉で説明できる、と小野さんは話します。小野さんが語った考え方の流れは次のとおりです。
数値を見る
検索の[[クエリ]]など、どんなキーワードが多いかを確認する
仮説を立てる
こんな悩みを持ち、こんな情報を知りたいユーザーが多い、と言語化する
行動と照らす
仮説をもとに、ページ上でのユーザーの動きや傾向を見る
施策を提案する
根拠を示しながら改善施策を提案する
小野さんは今回の体験を、仕事でレベルアップするための大きな経験値であり、大きな気づきだったと振り返ります。クリエイティブを作ったり課題を解決したりするうえで重要な部分なので、ユーザーの言語化を今後も練習して精度を高めていきたいと話しています。
番組では、ディレクターに限らず、デザイナーやエンジニアなど、それぞれの職種での自分の価値や気づきについてのお便りを、概要欄のXのDM、Googleフォーム、メールで募集しています。
まとめ
小野さんは、利用したことのないサービスの構成案で行き詰まり、上長の「ユーザーになりきる」という助言で突破口を見つけました。その経験から、ターゲットの心理や行動を細かく言語化することが、進行管理にとどまらないディレクターの価値だと考えるようになっています。
- AIが出した構成案は内容として正しくても、なぜその設計なのかを説明できないと自信を持てない
- ディレクター目線で「入れるべき情報」を並べるだけでは、ユーザーが利用したくなるページにならない
- 流入経路、悩み、生活背景まで言語化すると、キャッチコピーや問題提起の配置が自然に決まる
- ユーザー行動の言語化をアクセス解析の数値と組み合わせると、根拠を自分の言葉で語れる改善施策になる





