自分を変えたいのに続かない、という相談
今回のカエルバ★トークは、前回に続いてコーチの浅井元規さんが登場する回です。浅井さんはコーチングスクールCAM JAPANを主宰し、プロコーチの育成やリーダーシップ開発、個人の目標への伴走を行っています。
前回は「人に変わってもらうにはどうすればいいか」という廣橋さんの不安が話題でした。今回はそこから視点を移し、変わりたいと考えている人自身が、どう自分を変えていけばいいのかがテーマになります。
廣橋さんは、生活習慣を改善したいと思ってAIに運動や食事の記録方法を相談しても、なかなか実行に移せないと打ち明けます。
さらに、長年抱えている性格や価値観が原因で、落ち込んだり動揺したりして失敗し、「またやってしまった」と感じる場面もあると話します。
次はこうしようって思っても、それがいざその場面で出てこなかったり、忘れちゃったりするなって思って。
そのうえで廣橋さんは、自分を変えたい人に対して、浅井さんならまず何を伝えるのかをたずねました。
気づきは、なぜゴミ箱に消えてしまうのか
浅井さんはまず、大事なことに気づいた瞬間に脳の中で何が起きているのかから話し始めます。CAM JAPANには脳科学のクラスがあり、そこで扱っている考え方だと言います。
気づいて「腹落ちした」と思っても、そのままだと定着しない、と浅井さんは説明します。頭の中に新しいファイルが作られても、最初は仮の状態にすぎないというイメージです。
なんかパソコンのゴミ箱の中にあるみたいな、30日に消えちゃうというか、ちょっと仮の状態みたいな感じなんですけど。
その仮のファイルを定着させるために大事なのが、フォローアップだと浅井さんは言います。24時間以内にもう一度思い出したり、小さな行動を起こしたりすることです。
変えていくために何やりますかみたいなことまでしなくても、思い出したり、そのためにちょっと小さな習慣を作ってみたり。
いきなり大きく変えようとするのではなく、思い出す・小さく試すという行為を24時間、1週間、1か月と重ねていくことで、最初の気づきが自分の中のフォルダとして確立されていく、という流れです。
性格は変えられない、をほどく「神経の可塑性」
続いて浅井さんは、「自分はこういうタイプだから」「こういう性分だから」という感覚についても、脳の仕組みから捉え直します。ここで出てくるのが神経の可塑性という考え方です。
同じような場面で最初からすぐ考え方を切り替えるのは難しい、と浅井さんは言います。振り返って一度できるようになり、また失敗し、もう一度できるようになる、その繰り返しで頻度が増えていくイメージです。
浅井さんによると、脳科学の研究では、新しい思考回路は21日で生まれ、63日で定着すると言われることがあるそうです。だからこそ、途中でうまくいかなくてもトライ自体に意味があると話します。
浅井さんはこの過程を、マラソンとまでは言わないまでも中距離走のようなものだとたとえます。1か月から3か月、失敗しながらでも向き合い続けることが大切だという見立てです。
「もうダメだ」で落ちてしまう自分への処方箋
廣橋さんは、自分が変わろうとするとき、三日坊主になってはいけないという気持ちが強いと明かします。リマインダーを入れても、できない日が出てくると気持ちが落ちてしまうと言います。
動揺するみたいな話でも、また同じような場面で失敗すると、私って変われないんだなって思ったりしちゃうんですけど。
そのうえで廣橋さんは、浅井さんの話を自分なりに受け取り直します。できない日や同じ失敗があっても、それは回路がまだ定着していないから自然なことで、やめずに続けることが大事だという理解です。
さらに、変化に時間がかかること自体も自然なのだと受け取ったと廣橋さんは確認します。浅井さんはそれで合っていると答えました。
高速道路と獣道でたどる、変化のイメージ
浅井さんは、身についたパターンを「いつも通っている道」にたとえます。ある状況になると感情が生まれ、表情や行動へと一気につながる道が、すでにできあがっているという見立てです。
新しい考え方を試すのは、その通り慣れた道の横に、道なき道を自分で作るようなものだと浅井さんは言います。
高速道路を通るのと、獣道を通るのとの違いみたいな。もう道でもない道を、自分で作ろうとしてるんです。
何度も通れば獣道が踏み固められ、砂利道になり、やがて舗装されていく。8割方はいつもの通りやすい道を通ってしまっても、たまに新しい道を工事しているくらいでいい、と浅井さんはたとえます。
ここで浅井さんが強調するのは、工事した分はなくならないという点です。禁煙で一度吸ってしまっても、ダイエットで一度食べすぎても、それで全部が水の泡になるわけではないと話します。
変化に時間がかかるのは、もともと人の脳がそう設計されているからだと浅井さんは締めくくります。だからこそ、一喜一憂しすぎず地道に続けることが大事だという結論です。
道なき道
新しい考え方を初めて試す段階
獣道
何度か通って少し踏み固められた状態
砂利道・舗装路
反復でさらに通りやすくなった状態
定着した道
自動的にその考え方を選べる状態
その場で動揺してしまう感情は、変えられるのか
廣橋さんは、感情の反応についてさらにたずねます。イベントの仕事でミスや小さな事故が起きると、冷静なつもりでも頭は動揺していて、別の資料やURLを出してしまうことがあると具体例を挙げます。
こうしたその場で起こる感情は、いつ起こるかわからず、毎日起こるわけでもありません。廣橋さんは、こういう変化はどのくらいの期間で、どうイメージすればいいのかと問いかけます。
浅井さんはまず、動揺という感情がひとりでに湧くのではなく、過去の経験から作られたものだと説明します。似た事象が起きたときに、その感情が自動的に出てくるようになっているという捉え方です。
だからこそ、なぜこの感情が生まれるようになったのか、何を恐れ、自分のどんな部分を守ろうとしているのかを探ることが一つの方法だと浅井さんは言います。
同時に、感情が大きくなったときに一度そこから切り離し、客観的に観察する練習も筋トレと同じだと話します。マインドフルな状態や呼吸を挙げつつ、アンガーマネジメントの「6秒待つ」には効かない人もいると、受講生の例を添えました。
6秒待ったんですけどっていう人がいて。人それぞれだなって思いながら。
廣橋さんが挙げた、動揺しやすい場面を自分のパターンとして知り、深呼吸や俯瞰といった対策を用意しておくというアプローチも、よく紹介されるものだと浅井さんは受け止めました。
一人で抱えず、対話しながら変わっていく
廣橋さんは、生活習慣でも感情の反応でも、変化の考え方は基本的に同じなのかを確認します。いきなり定着することはなく、失敗しながらもリマインドして、ファイルをゴミ箱に戻さないようにしていくイメージです。
浅井さんはその理解を肯定したうえで、変化を一人で抱えないことの大切さを付け加えます。自分だけで振り返るより、誰かに聞いてもらうことでより深く理解が進むと言います。
廣橋さんは、誰かと一緒にという方法に加えて、ログや記録を残して自分と対話する形も良いと受け止めます。そして、ゴミ箱から毎日ファイルを出すように続けていきたいと語り、2回にわたる浅井さんの出演を締めくくりました。
まとめ
変わろうと決めても失敗を繰り返すのは意志が弱いからではなく、脳が変化に時間をかけるようにできているからだ、というのがこの回の核でした。失敗を無駄と捉えず、獣道を踏み固めるように続けることが、リバウンドの少ない変化につながります。
- 気づいたことは、24時間以内に思い出したり小さく試したりして初めて定着に向かう
- 新しい思考回路は21日で生まれ63日で定着するとされ、変化には中距離走ほどの時間がかかる
- 一度失敗しても積み上げた分は消えず、そこからまた続ければよい
- その場の動揺は過去の経験から自動で出てくるもので、観察や探求で扱える
- 一人で抱えず、対話や記録で振り返ることが健康的な変化につながる





