グローバルの行き先は、なぜアメリカだけじゃないのか
大場カルロスさんは43歳で起業し、アフリカのベナンやセネガルの農村に通信とデジタルの仕組みを届けるDots forを率いています。このインタビューで一番伝えたいことは「グローバルの行き先はアメリカだけじゃない」ということだそうです。
カルロスさんは、海外やグローバルという言葉が、結局アメリカを指してしまっている状況をもったいないと感じています。
海外、グローバルって言って、結局アメリカのことですよね、じゃない人を増やしたいなと思ってるとこですね。もったいないなと毎回思っていて。
もっと勝ち筋、面白い場所いっぱいあるのに、グローバルといえばアメリカみたいな、なんかあんま考えずに決めてる感じがすごくもったいないんで。
アメリカやインドのように「みんながいい」と言うグローバル像を追うことで、チャンスを逃しているのではないか。カルロスさんの問題意識は、記事全体を通じて繰り返し出てきます。
村にいながら稼げる「3つ目の選択肢」とは
Dots forは、電気や通信が届きにくいアフリカの農村に太陽光で動くデジタルハブを置き、スマートフォンや金融、教育などのサービスを届けています。2026年8月の時点で、ザンビアのフランチャイズを含む3カ国の700の村に広がっています。
カルロスさんが事業で一番嬉しいのは、お客さんから「生活が劇的に変わった」と言われる瞬間です。Dots forのチームも村の出身者で、自分の関与で隣人や兄弟の生活が変わったことを喜んでいるといいます。
でも自分が関与することで、自分の隣人の、または兄弟の生活が変わった。そのコミュニティに変化を起こせたっていうのは、やっぱり嬉しいですね。
Dots forは「アフリカ地方の制約を解放する」ことをパーパスにしています。カルロスさんは、その解放とは収入を上げることだと考えています。
カルロスさんによれば、これまで村の人には2つの選択肢しかありませんでした。Dots forが用意しようとしているのは、その間にある3つ目の道です。
町や他国へ出て、家族と離れ離れになるがお金は稼げる
家族と一緒に生まれ育った村で過ごせるが、貧しい
僕らは三つ目の、村にいながらそれなりにちゃんと稼げるよねっていう手段を提供するっていうのができるようになるといいなと思ってまして。
その手段として、ファイナンスや知識を、物理的にもオンライン的にも孤立していた人に届ける必要がありました。通信とデジタル化をすればスケーラブルにできる、という考え方で今の形に落ち着いたそうです。
デジタル包摂は目的ではなく手段
カルロスさんは最近、Dots forが取り組むデジタル包摂 ── インターネットやデジタル機器、オンラインサービスを、誰もが使える状態にしていくこと。デジタル・インクルージョンとも呼ばれますは目的ではなく手段だと言語化するようになりました。
デジタル包摂は他のなんとか包摂を加速させるから、デジタル包摂をやってるんです。
カルロスさんの言う「なんとか包摂」とは、ファイナンスへのアクセスを広げる金融包摂 ── 銀行口座や融資、送金などの金融サービスを、これまで使えなかった人にも届けること、充電ができるといったエネルギー包摂、教育包摂などです。
これまでアフリカでは、通信がつながらないため、村まで自力で行き、紙や黒板で1対1か1対5ぐらいで伝えるしかありませんでした。カルロスさんは、デジタルならそれが1対Nになると話します。
村まで自力で行き、紙や黒板で1対1、1対5ぐらいで伝える
デジタルで1対N、1対無限大で届けられる
Dots forは、スマートフォンや商売道具の分割販売のほか、日本など村の外の会社の仕事にも村の人をつないでいます。利用者の収入の変化を尋ねると、カルロスさんは平均は取れていないと答えました。
本人いくら上がったかがわかってないっていうのがあるので、それ(平均)は取ってないのが現状ですね。まだ最大値でいうと三百倍ぐらい上がってると思います。
Dots forは、利用者の数や返済、仕事の成果などをインパクトレポートとして公表しています。そこには社会企業のあり方についてのはっきりとした考えがあります。
村長の許可から半日で導入、その手順は?
Dots forが村でサービスを始めるときは、まず村長の許可を取ります。村長は大体家にいるので、アポなしで訪ねて話をするそうです。
村長からは、ほぼ99.9パーセントOKと言われるといいます。理由は、村側の持ち出しがゼロで、使いたい人だけがお金を払えばいい仕組みだからです。
太陽光パネル繋いでスイッチオンってしたら、もうものの数分で(つながる)。導入までは本当にもう半日ぐらいですね。
回収率97パーセントを支える信用スコアとローカル言語
Dots forの融資は回収率97パーセントです。その秘密は独自の信用スコアにあります。
カルロスさんによると、オフラインの世界からいろいろなデータが取れるといいます。Dots forから買ったものの返済履歴などを独自開発のアルゴリズムに入れ、一人一人の信用スコアを出しています。
そのスコアがちゃんと高い人を選んで販売するっていうのを、まず正しい人を選ぶっていうのをそのスコアリングでやってます。
Dots forはさらに、地域の言葉を使った翻訳にも取り組もうとしています。テキスト化されていない村の言葉の音声データを集めてコーパス ── 言語の分析や機械学習に使うため、大量の文章や音声を集めて整理したデータの集まり化し、公用語との相互翻訳を目指しています。
村の人って公用語喋れない人がほとんどなので、それも情報格差のすごい大きな壁ですね。ローカル言語の壁。そこを突き壊すことができる。
村の信頼は「1人目、2人目の成功者」から
村の人たちとの信頼関係について、カルロスさんは「結果を出すこと」だと答えます。村の人は最初は懐疑的で、何十年も生活が変化していない人たちだからです。
カルロスさんが大事にしているのは、各村で1人か2人の成功者を出すことです。収入が上がってバイクを持ち、バイクタクシーの仕事ができるようになった人が出ると、周りも「自分もやってみよう」となるといいます。
1〜2人の成功者が出る
収入が上がり、バイクを所有してバイクタクシーを始める
村の人が動き出す
懐疑的だった人も「自分もやってみよう」となる
周辺の村へ口コミ
周辺の村に住む親戚や家族に話が伝わる
導入の依頼が来る
「うちでもやりたいからやらせてくれ」となる
あ、自分の弟の住んでいる村でやってるdots4だねと。あ、やっとうちに来たんだという感じで、うちでもやりたいからやらせてくれよってなってく。
バラバラな経歴は、なぜ一本につながったのか
カルロスさんの経歴は、リクルートでの飲食店向けレジサービスの欧米展開、タイの子会社の経営、そしてアフリカと、一見バラバラです。本人は、面白そうなことをやってきた結果、後から見るとつながっていると感じています。
たとえば、リクルート時代にはアメリカやヨーロッパのレストランに飛び込み、セットアップを自分でやらせてほしいと交渉していました。その経験が、今の村での通信設備の設置に生きているといいます。
ネットワーク機器をもう厨房のゴキブリのいるとこLANケーブル合わせながらやるみたいなのをやったのが今生きてるんですよね。
番組では、これをスティーブ・ジョブズが語ったことで知られるコネクティングザドッツ ── 点と点をつなぐという意味。スティーブ・ジョブズが2005年のスタンフォード大学の卒業式スピーチで語ったことで知られますの考え方として紹介しています。
カルロスさんの経験には、子どもの頃から一本の筋が通っているそうです。小さい頃から、親の車でいつもと違う道を曲がってもらうなど、知らない道を探す子どもでした。
それが今広がれ広がって、知らない道という名の今はアフリカまで探しに行ってるっていう、なんか全部つながってるんですよね。
地理的な好奇心と知識の深さへの好奇心を追い続けたことが、カルロスさんの「一生旅人」というアイデンティティにつながっているといいます。
社名のDots forにもその思いが込められています。英語では「for」の後に何かを入れるのが自然ですが、あえて空白にし、Dots for アフリカ、Dots for 自分など、何でも入れられる名前にしたそうです。
25歳まで英語が話せなかった人の語学術
カルロスさんは英語、フランス語、スペイン語を学んできましたが、25歳頃までは英語も話せませんでした。母親を亡くして人生をやり直そうとしたとき、たまたま就いたのがインターナショナルな仕事だったことが転機でした。
英語ができるようになると、仕事の幅が広がりました。カルロスさんは語学を「一生終わりのない趣味」と捉え、英語の完成を待たずに次の言語を始めました。
カルロスという名前は、留学の頃にラテンアメリカ系の友人たちの間で使い始めたものです。言葉が話せると、旅人としての世界が一気に広がるといいます。
フランス語圏のアフリカとか中南米はフランス語ができた、スペイン語できるとやれることが一気に増えるんで。
今の学び方について、カルロスさんは時間をかけるしかないとしつつ、ChatGPTの活用を挙げました。フランス語で毎日3文ほど書いて校正してもらい、別の言い回しも尋ねると伸びるそうです。
43歳の起業と、妻との「45歳まで」の約束
海外で挑戦するとき、多くの人が悩むのが家族のことです。カルロスさんは、出会った頃から妻に「こういう人だ」と伝えていたといいます。
アメリカ、ヨーロッパに出張って月の半分いません。もう妻的には、日本にはいないんだろうなってのはずっと思ってた。結婚したとしても。ただ、アフリカとは思ってなかった。
帰国後、カルロスさんはリクルートやタイの子会社の経営を経て、2020年にアフリカのタンザニアの農村で新規事業を立ち上げる仕事に就きました。そこで、この世界で生きていくと決めたそうです。
起業について、妻の説得は必要ありませんでした。結婚する頃から、45歳までは好きなことをしていいと言われていたからです。
今転職すると多分そのリミットの四十五を超えるから、今やらないと多分後悔すると。
そして2021年、カルロスさんはタンザニア時代の同僚とDots forを立ち上げます。起業の地は、一度も行ったことのなかった西アフリカのベナンでした。
家族がベナンへ移ったのは2023年です。下の子が生まれたばかりだったため、1歳になるまでは日本からリモートで事業を進めたといいます。
それでも、カルロスさんは現地に住まずに事業を続けるのは難しいと考えています。現地の理解、チームのコントロール、信用の面で、なるべく現地にいた方がいいそうです。
家族と事業、夏の2ヶ月のジレンマ
家族も現地で暮らすべきかについて、カルロスさんは「奥さん次第」と答え、単身赴任でもいいとしています。そのうえで、自身が抱えるジレンマを語りました。
毎年夏休みは家族が日本に一時帰国し、カルロスさんは2〜3ヶ月アフリカを一人で動き回る生活を3年続けています。その間は自由に動ける一方、子どもとの時間を失っています。
一、二ヶ月後に子供に会いに行くと、ちょっと別な人になってるんですよね。
下の子の誕生日、私一回も一緒にいたことないんですよ。
家族と過ごす残りの10ヶ月ほどは、家族中心の生活になり、出張の日数も相談しながら決めているそうです。カルロスさんは、一緒にいたいけれど、一緒にいると事業に集中できないという葛藤を抱え続けています。
辞めたいと思った3回と、続ける理由
Dots forを立ち上げておよそ5年。大変な時期について、カルロスさんは数をこなすしかないと話します。
もう試行回数と数で、なんとか打開策を見るみたいなことで、なんとか生き延びてる感じです。落ち込みはしてます、ちょいちょい。
辞めようと思ったことは、5年で3回ほどあったそうです。理解されないと感じるときや、資金調達の厳しさが理由でした。
それでも続けられているのは、旅人として知らない世界を見つけることや、生活が変わった人を見ることが楽しいからです。家族を巻き込んでいるので、家族の手前まだやれる、という思いもあるといいます。
落ち込んだときの立ち直り方は3つあります。
- 20年ほど続けるブラジリアン柔術や、子どもと始めたカポエイラなどの運動
- どうしようもないときは何をかなぐり捨てても寝る
- ネットもつながらない長距離移動で頭を整理する
飛行機の中でも、もうひたすらボーッと窓の外を眺めながら思考を巡らすみたいのがやっぱ好きで。
体力の保ち方を聞かれると、カルロスさんは「慣れ」だと答えました。ベナンで体調を崩したときも、日本へ向かう25〜26時間の飛行機を体力回復の場所と考えて乗ってきたそうです。
現地チームの核は「国に戻りたい」1人
ここからはアフリカで事業を進める実務の話です。採用には現地人と日本人の2軸があり、現地人の人材はピンキリなので、自分の事業に合う人を見つけることが大事だといいます。
Dots forが最初に採用したのは、日本政府の奨学金で日本の大学院に留学していたベナン人でした。ABEイニシアティブ ── アフリカの若者が日本の大学院で学び、日本企業でインターンをする日本政府の人材育成プログラム。正式名称は「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ」ですの留学生で、彼を核にローカルチームを作っていきました。
カルロスさんはまだベナンに行ったことがないまま、人づてに彼を紹介してもらいました。彼からベナンの状況を聞き、卒業して帰国した1ヶ月後に現地を訪ねる形で始めたそうです。
彼が協力してくれた理由について、カルロスさんは「自分の国をどうにかしたい」という思いで日本に来ていたからだと話します。
(留学生も)そのまま日本でいい暮らしをしたいっていう人と、ここで学んだものを自分の地元に戻って、なんとか国を変えたいっていう二パターンいる。
僕らは外国人なんで、変な人いつでも逃げられる状況で、彼らもちょっとほんのり思ってるんですよ、僕らのこと。
だからこそ、当事者として市場に張る現地の人を、日本人が最大限サポートする形が大事だとカルロスさんは考えています。
ただし、核になる人に任せて日本からリモートで進めるのはうまくいかないといいます。カルロスさん自身、ベナンからセネガルの立ち上げをリモートで進めようとして、やりたいことが伝わらない経験をしました。
一番最初、自分もいて、二人三脚でドライブするってやらないとなかなか動かないなって経験をしました。
現地トップは現地人であるべき理由
現地のトップについて、カルロスさんはアフリカでは現地人であるべきだと考えています。農村ではフランス語ができてもお客さんと話せず、ローカル言語のネイティブが欠かせないからです。
ローカル言語のネイティブの人を絶対に雇わないと何もできないっていうのが我々のビジネスの根源なので。
この考えには、タイの子会社を経営した経験も生きています。日本人一人でトップを務めたものの、タイ語がわからず、タイ人に任せないとスケールしないと感じたそうです。
タイでは右腕と左腕のタイ人がそれぞれいて、ローカルチームからお客さんまでを担い、3人1組で判断していたといいます。
面接ではわからない。採用と評価、ビザの実務
面接について、カルロスさんは「面接ではわからない」と割り切っています。互いに母語でないフランス語や英語で話しても、相手がいいかどうかは見えにくいからです。
そのためDots forでは、働いてもらって判断する方針をとっています。一定期間内なら解雇が比較的認められる法律のもと、3ヶ月ごとに継続を判断し、正社員化していくそうです。
評価は、成果とカルチャーの2つで見ています。特に重視しているのはカルチャーです。
今は追うものが半年の間にも変わるため、半年ごとの成果を評価してもしょうがないといいます。代わりに、7つのコアバリューに沿った正しい行動をしたかを、ローカルのリーダーが判断しています。
カルロスさんとリーダーは、なぜその行動がそのコアバリューに紐づくのかを話し合ってすり合わせ、半年に1回評価を決めています。
ビザについては、各国でワークパーミット ── 外国人が現地で働くために必要な就労許可。国によって申請書類や更新期間が異なりますを取得しています。ただ、カルロスさんが入国した当初は、必要書類を誰も知らない状況でした。
イミグレ行って、オフィサーに「何と何と何と何があったら通るんだ」って言われて、出したら、「いや、これとこれもないとダメだ」って突き返されるってのを八ヶ月ぐらいやって。
その後は1年更新を経て、今は3年ビザまで取れたそうです。制度が頻繁に変わり、オンライン化した申請も印刷して紙で出さないと受理されないなど、誰も教えてくれない苦労があったといいます。
なぜ都市部ではなく農村、英語圏ではなくフランス語圏なのか
アフリカでビジネスをする魅力について、カルロスさんは都市部はすでに競争が激しいと見ています。アフリカは「ラストフロンティア」と言われて20年ほど経ち、消費財やスタートアップが群雄割拠だからです。
今一番ブルー、誰も気づいてないアンノウンノウンなマーケットが農村だと私は思っていて。
農村には、そこそこお金を持っていて、サービスがあれば払える人が一定数いるのに、みんなが過小評価している。それがカルロスさんの見る勝ち筋です。
Dots forがフランス語圏を選んでいるのも、競争を避けるためです。多くの人は英語が通じるという理由で、ナイロビやタンザニア、ウガンダから入るといいます。
衛星通信のスペースXが競合にならないかという問いに、カルロスさんは「なっていない」と答えます。デジタルディバイドには種類があり、取り組んでいる領域が違うからです。
通信がつながらない状態。衛星などでつなげることで解決し、スペースXが取り組む
つながっていても、デバイスがない、充電できない、通信するお金がない、使いたいサービスがない状態。Dots forが取り組む
そのためDots forは、Starlinkを提供するスペースXと競合ではなく協業していると話しています。
入りやすさより勝てる場所、国はどう選ぶ?
他社が農村に入ってこない理由として、カルロスさんはまず「遠さ」を挙げます。街から車で3〜4時間、そこからバイクに乗り換えて1時間かかる場所もあるといいます。
経済合理性で考えれば、お金を持った人が密集する都市部のほうが効率はいい。それでも、都市部で高いシェアを取れるとは限らない、というのがカルロスさんの考えです。
カルロスさんは、1000人のうちシェア1パーセントで10人より、100人の農村でシェア100パーセントで100人のほうがいい、という例で説明しました。
英語で入りやすいけど、入ったとこであなたは勝てるんですかってのはまた別の話の中で、農村は入りにくいけど勝ちやすい。
国の選び方についても、答えは同じでした。入りやすさではなく勝ち筋で選ぶべきで、その結果アフリカではない可能性もあるといいます。
村のニーズは「聞かずに見る」
Dots forのマーケティングは基本的に口コミです。あとは店の前に、印刷やコピーができると伝える物理的な看板を出しているそうです。
ユーザーのニーズは、実際にやって確かめるしかないとカルロスさんは話します。それらしいサービスを使ってもらい、フィードバックや行動を見るのです。
陥りがちなのは聞いちゃうっていうのはやっぱダメだなと思いますね。
その例が、ブラザー工業と一緒に進める印刷・コピーのサービスです。村では、先生から配られたプリントを生徒の一人が町まで片道1時間かけてコピーしに行き、交通費も払っていました。
村にプリンターがないことが原因だとわかり、試しにプリンターを置くと、多くの人が来るようになりました。カルロスさんは、そこで事業性があると判断したそうです。
アフリカでの事業は、何が大変なのか
ベナンやセネガルで事業を進める大変さとして、カルロスさんはあらゆることに時間がかかる点を挙げます。2〜3時間待つのは珍しくないそうです。
町から町へ移動するときも、乗り合いバスは満席になるまで出発しません。出発しても途中でパンクして、修理の人を1時間ほど待つこともあるといいます。
何一つ進まないってのは前提ですね。それは大変だけど、まあそれもそれで、そういうアドベンチャーだと思えば楽しいかなと思ってますね。
ほかに大変なことを聞かれても、カルロスさんは「あんまりない」と答えます。バックパックの旅を重ねてきた経験から、指も目も足も無事なら大変ではない、と毎回思うそうです。
世界の30億人は、なぜ誰にも見られていないのか
2026年の春、Dots forはスペインのバルセロナで開かれた世界最大級のモバイルのイベントMWC ── 毎年スペインのバルセロナで開かれる、通信・モバイル業界の世界最大級の展示会。旧称はモバイル・ワールド・コングレスで賞を受けました。
カルロスさんが見ているのは、アフリカの先にある世界の農村です。世界の半分、30億人ほどがデジタルディバイドの状況にあるのに、誰も見ていないと感じています。
三月にMWCってモバイルのとこ行くと、そこで思ったのは、世界の半分を無視してパーティーやってるって感じがしたんですよ。
一方、スイスのジュネーブで開かれた国連関連のAI for Goodサミットでは、アフリカのデジタルディバイドをどうにかしなければと議論されていました。ただ、カルロスさんには先進国の上の方で話しているだけに見えたそうです。
アフリカのデジタルディバイドをどうにかしなきゃいけないって言ってるんだけど、なんか先進国の上の方でごちゃごちゃ喋ってるんですよ。もっと動けよって思う。
カルロスさんは、アフリカでの事業はむしろ簡単だと考えています。日本では、ニッチな課題を探しても大きくならないことがある一方、アフリカなどでは何十億人が同じ課題に苦しんでいるからです。
日本人がアフリカで勝てる理由
Dots forを始める前の自分に声をかけるなら、カルロスさんは「楽しいよ、ただ大変だよね」と言うそうです。さらに、日本にこだわらなくていいとも伝えたいといいます。
日本とアフリカは距離が遠く、日本人向けにアフリカを売り込むのはコストが高いと感じているからです。最初からヨーロッパを相手にしてもいいのではないか、とも考えています。
日本人として日本の人たちにこの素晴らしいアフリカって場所にぜひ本当は行ってもらいたいっていうのも本音なので、そこはできれば諦めたくないなと思います。
アフリカでの起業は「おすすめ」だと、カルロスさんは即答します。日本人の強みである要約力とオペレーション力が、まだ整っていない市場で圧倒的な差別化になると考えているからです。
アメリカとか東南アジアとかもある程度現地人がそれができるようになってるんですけど、現地人がそこまでできないのが今のアフリカ。
これから挑戦する人へ。まず来て、事業性を先に
これからアフリカで起業する人には、2つのことを伝えたいといいます。1つは、考えすぎずに早く来てやることです。
もう1つは、事業性を先に考えることです。カルロスさんは、開発関係者の中に「いいことをしていれば儲からなくてもいい」という雰囲気があると指摘し、事業性の先に社会性があると強調しました。
海外で挑戦する人全体に向けては、「むずい」と率直に話します。外国人としてマーケットに関わる以上、現地の人が本当に何を求めているのかは、どこまで行ってもわからないからです。
さっきのローカルの人をちゃんと右腕左腕にして、彼らが正しく僕らにこうだからっていうのを言ってくれる状況を作るっていうのは大事だなって思います。
まとめ
大場カルロスさんの話に一貫していたのは、みんなが選ぶ場所ではなく、自分が勝てる場所を選ぶという考え方です。アフリカの農村での実務も、家族との葛藤も、その選択を本気で続けるための現実として語られました。
- グローバルの行き先をアメリカに限らず、勝ち筋で場所を選ぶ
- Dots forは通信とデジタルを手段に、村にいながら稼げる3つ目の選択肢をつくっている
- 信頼は1〜2人の成功者から生まれ、口コミで周辺の村へ広がる
- 現地のトップは現地人に任せつつ、立ち上げは自分も現地で二人三脚で進める
- いいことをするだけでなく、事業性の先に社会性があると考える



