厚利少売に「勇気」はいらない?
厚利少売ラジオの前回のテーマは「厚利少売をする勇気」でした。今回の冒頭で川原さんは、その結論を「厚利少売に勇気を持ち込んでいる時点でアウト」だったと振り返ります。
すがけんさんは、厚利少売はそんなに大げさなことではないと念を押します。お酒もタバコも、街を歩くことさえリスクはあり、いちいち勇気と呼んでいたら何もできないという例えです。
だからそういう意味では、この本読んで、このラジオ聴いて、免許取ってくださいって話ですよね。そしたらできるから。
川原さんはこの例えを受けて、本やラジオは自動車教習所の学科のようなもので、学んだあとはビジネスの中で実際に運転してみればいいと整理します。最初は車も少し怖いものの、慣れてしまえば何てことはない、という見方です。
別に100キロ出そうと思うから難しいだけで。30キロでいいんですよ。法定速度を守ってください、ちゃんと。
川原さんが「厚利少売の法定速度」と返すと、すがけんさんは「ちょっと昭和感出ちゃったね」と笑い、二人の掛け合いのまま本題へ移ります。
目標とは「行き先」である
今回のトークテーマは「厚利少売の目標設定」です。川原さんは、すがけんさんが単価を100万円から10億円に上げた回でも、まず「売上100億円」という目標があり、その手段として単価を上げたという話があったことを踏まえて問いかけます。
すがけんさんによると、多くの人はやみくもにいろいろなことをやらなければと思い込んでいます。そこで企業へのアドバイスでも個人の相談でも、すがけんさんは「来年いくらの売上、なんなら利益にしたいの?」という問いから始めるといいます。
今年収500万なんですけど、600万にしたくて、なのか、1000万にしたくてなのかは全然やることが違うし、年商5億の会社が8億にしたいって話なのか、50億にしたいっていう話なのかで全然やること違うんですよ。
すがけんさんは目標を「行き先」と言い換えます。赤坂に行きたいのか、渋谷か、六本木かも決まっていないのに、プランやタスクといった「行き方」の話ばかりしているから、地に足がついたやり方にならないという指摘です。
来年いくらの売上・利益にしたいか。年収600万円か1000万円か、年商8億円か50億円か
どうやればいいか、プランは、タスクは、という手段の話。行き先が決まってから選ぶもの
すがけんさん自身は、ほぼゼロから売上を100億円にするという無理のある目標だったため、徒歩でも自転車でも間に合わず「新幹線」に乗るように単価10億円で進むやり方を選んだと説明します。
一方で、誰もが同じ速さを選ぶ必要はないとも話します。3000円のアクセサリーでは無理だから3万円にする、今の年収では生活が安定しないから1000万円を目指す、といった自分の計画をまず作ることが先だという考えです。
売上100億円への挑戦は「こっそり」始まった
川原さんは、ほぼゼロの状態から100億円を目指そうと思えたこと自体が「異常」であり、さらにチームがそれを受け入れたことも異常だと驚き、どうやって作り上げたのかを尋ねます。
変な話でチーム(は)300人ぐらいいたんですけど、みんな信じてくんないからこっそりやるんですよ。
すがけんさんの説明では、単価100万円なら100億円に届くまで1万回売る必要があり、全員の力を合わせないとできません。けれど単価10億円なら、10回売れば一人で達成できる計算になります。
提案
30回ぐらい提案する
受注
勝率3割で10回決まる
一人あたり
10億円×10回で一人10億円
チーム全体
10人いれば100億円になる
すがけんさんはここから、厚利少売は小さな組織で大きなことができるやり方でもあると話します。薄利多売では売る人・作る人・管理するスタッフが必要になり、組織が大きくなるほどやりたいことができなくなるという対比です。
では、なぜ100億円という目標を自分の中で設定したのか。すがけんさんの答えは「責任を果たしたかった」というものでした。KDDIグループが10億円以上で会社を買ってくれた以上、その分の利益を生み出したかったといいます。
でもやっぱお金泥棒って思われたら嫌だし、なんならそのスタートアップコミュニティに迷惑がかかる。
売り逃げだと思われれば、大企業がスタートアップを買わなくなる流れを作ってしまうかもしれない。すがけんさんはそれを避けたいと考え、最初は一人で無謀なチャレンジを始めました。成果が出始めると、周りも信じ始めたといいます。
単価10億円の受注で社内はどうなった?
川原さんは、こっそり始めた100億円プロジェクトで提案が何度か断られ、宿題を解決して受注に至ったとき、チームや社員がどんな反応だったのかをどうしても聞きたいと切り出します。
いやいや、ビビり散らかしますよね、やっぱ。
いやいや、100万円で売ってましたよ、うち。え?10億円が突然決まる?え?何?みたいになりましたし。
さらに面白い話として、すがけんさんは黒字倒産しかけたエピソードを語ります。広告の予算は3月に予算消化で一気に増えるため、10億円以上の広告枠を1か月で買うことになり、入金より先にメディアへ支払う必要が出たのです。
お金が入ってくるよりメディアに先に払わなきゃいけないんで、経理がビビって走ってきて、「あの10億円とかないです」って。
すがけんさんはきちんとした格好でKDDIの社長に会いに行き、「すいません、売り上げがすごすぎて」と頭を下げて10億円を借りてきたといいます。結果として、めちゃくちゃ怒られたそうです。
川原さんは「貢献しすぎて怒られるケースがあるんですね」と笑います。すがけんさんは、100万円で売っていた会社が急に変わったため、全員にとって未曾有の経験だったと振り返ります。契約が取れた瞬間だけでなく、実行の段階でもこうしたことが起きるという話でした。
満足なら何もしなくていい、それでも変わりたいなら
話を目標設計に戻した川原さんは「目的地にどこに行くかを決めることから始まる」とまとめます。すがけんさんはそこに、究極的な前提を付け加えます。
本当にこれを聞いてる皆さんが今の人生100点で満足で、死ぬ時後悔しなくて、うわぁ楽しかった、やりきれたって言うんだったら、厚利少売なんかする必要ないし、追加で何もする必要ないんですよ。
すがけんさんは、何かを疑っていて変わらなければと思うならやったほうがいい、と続けます。アクセルもブレーキもハンドルもみんな持っているので、やりたいならゆっくりアクセルを踏めばよく、ちゃんと計画すれば大丈夫だという考えです。
月に行くほど大胆な目標が、リミッターを外す
川原さんは「身の丈」の話として、当時のすがけんさんは100億円をいけると思えていたのかを尋ねます。すがけんさんは、周りにやっている人もおらず、上場企業でも売上10億円程度の会社がある中で、1年で100億円は基本的に無理だったと答えます。
「めちゃくちゃバカなんですか?」という川原さんの問いに、すがけんさんは「めちゃくちゃバカなんすよ」と返しつつ、仮に50億円でもすごいのだと話します。
すがけんさんの会社名Moonshot ── すがけんさんが代表取締役CEOを務める会社。ムーンショットは、もともと月へ人を送るような、困難だが大胆な挑戦を指す言葉ですは「月に行くほどの大胆な計画」という意味です。人に「10倍にしてみたら」と勧めると、5倍で終わって「ダメでした」と謝られることがあるものの、それでも十分すごいといいます。
その具体例が、すがけんさんが買収した動画広告の会社の、20代の営業担当者の話です。その営業担当者は80万円ほどで提案に行き、値切られて50万円になる営業を続けていました。
すがけんさんが、すごい金額で動画広告を使えば何人に届くのかを聞くと、2000万人ほどだという答えでした。テレビ局1局分に近い規模だと考え、「マックスリーチ」と名付けて2000万円で売ってみようと提案します。
(営業の子が)すいません。2000万円が値切られて700万円になりましたって言って。お前700万ってすごいぞって。
80万円ほどで提案し、値切られて50万円で受注していた
2000万円の「マックスリーチ」を提案し、値切られても700万円で受注。それでも本人は悔しがっていた
すがけんさんは、本人が自分を50万円の実力だと思っていたことを忘れて悔しがっていた点に注目します。2000万円が700万円になっても、50万円と比べれば10倍以上の成果です。
リミッター外してくれるんすね、それがね。
ただ、目の前で悔しがっている相手に「よくやった」と喜ぶと芽を摘んでしまうため、反応が難しいと二人は笑います。すがけんさんは、目標設計はセンスであり、キリがよく、できなさそうだけど少しやってみたいと思える数字があると話します。
川原さんはここから、すがけんさんが列をなす人たちに次々と目標を与える企画を思いつき、11月24日のイベントでベータ版として試したいと盛り上がります。ラジオの中で変なサービスができあがった、と笑いながら次のコーナーへ移ります。
数値化しにくい努力にモチベーションが湧かないときは
お悩み相談のコーナーでは、リスナーのルリルリさんからのお便りを川原さんが読み上げます。
アパレルの販売をしています。お店の空気感や雰囲気を変える努力をしていますが、それが売り上げに直接つながっているかわかりません。目に見えた結果が出ないようなことへのアプローチや施策も無駄だとは思えないものの、モチベーションにつながりません。こういったことはスガケンさん、川原さんにご経験はございませんか?
すがけんさんは、この相談には「モチベーションがないと仕事ができない」という話と、「結果を数字化するのは難しい」という話の2つがあると整理します。今日やって明日結果が出るわけではないものは多い、という前提です。
そのうえで、言われてやっているのか、自分で思ってやっているのに信じられないのかで意味が全然違うと指摘します。言われてやっている場合は、指示した人と話したほうがいいといいます。
僕はだから何でも最初疑った方がいいと思ってるんで。だって全部信じてたら人生終わっちゃいますよ。やることだらけで。
すがけんさんはToDoやタスクを定期的に消し、怒られたり催促されたりしたものだけを本当のToDoとして扱うといいます。川原さんも「俺もやってるそれ」と同意します。
時間を「投資」として使うという考え方
すがけんさんは、一旦なかったことにする努力が大事だと話します。やらないとどうなるのか、その作業にかかる時間を他のことに使えないかを考えるためです。
その例として、すがけんさんは自分のお金の使い方を挙げます。クライアントからもらったお金を、大企業の人が知りたいであろうスタートアップへのエンジェル投資に回し、そこで得た経験で大企業へのアドバイスの質を高めているといいます。
それも短期では返ってこないけど、いつか返ってくると信じてやってるわけですよ。
ルリルリさんについても、すがけんさんはお金がなくても自分の時間は投資できると話します。より良いと思えることには時間を使い、サボったりNetflixを見たりする浪費は避けたほうがいいという考えです。
お客様のためにもっとこういうことができる、と思える先に時間を使う。短期で返らなくても、いつか返ると信じる
これをやらずにサボりたい、Netflixを見ていたい、という使い方
すがけんさんは、お客様のためのより良い投資先を探し、信じられるものをモチベーションにすればいいとまとめます。
「今月はお役に立ちましたか?」と聞く
川原さんは、アパレルの販売員でありながら売り上げにつながることをしたいと考え、ラジオを聴いて質問を送っていること自体に感動したと話します。店の空気感を良くしようとしていると社長や店長が知ったら、きっと喜ぶはずだという見方です。
いや、まさにだから今月はお役に立ちましたか?ですよ。
川原さんはさらに、取り組む前に「これって合ってますかね?」と答えを聞きに行くことを勧めます。すがけんさんも、無駄なことが嫌いなので、やる前にお客さんに「これでいいんですか?」と聞くようにしているといいます。
これやっていいですか?これでいいんですか?違うって言われたいもん。
すがけんさんは最後に、ルリルリさんの取り組みは絶対に将来の結果につながると励まします。早く結果につなげたいなら、上司や社長に役に立ったかを聞き、本当に役に立つことを見つけてやるのが大事だという結論です。
まとめ
今回の厚利少売ラジオでは、目標を「行き先」として先に決めることで、取るべき単価や行動の大きさが決まるという考え方が語られました。大胆な目標は人のリミッターを外し、数値化しにくい努力も、相手に役立つかを確かめながら投資として続けることが勧められています。
- 目標は「行き先」。行き方(戦略やタスク)より先に、いくらの売上・利益にしたいかを決める
- 単価10億円なら10回の受注で一人10億円になり、厚利少売は小さな組織で大きな成果を狙える
- 月に行くほど大胆な目標は、届かなくても50万円が700万円になるような変化を生む
- ToDoは一度疑い、時間は浪費ではなく投資として使う
- 数値化しにくい努力は「今月はお役に立ちましたか?」と聞いて、本当に役立つものに絞る

