運動の目的を4つに分けると何が見えてくるか
今回はリスナー「モグリさん」からのお便りが出発点です。パーソナルトレーナーをしているモグリさんは、トレーニングの効果を上げるには重量を増やす方法と、重さを変えずにやり方を工夫して質を高める方法の2つがあると話しています。
この「負荷を下げて質を高める工夫」の経験について問われ、田中さんはまず自分の運動目的を整理するところから答え始めます。
僕の場合は結構目的がいろいろあって、一番の目的はもう燃やすこと。
普通の人は多分強くなるための運動があって。あとはそもそも運動のモチベーションをどう続かせるか。あとは時間に制約があるから時短でやるか、いろいろ目的があると思うので。
田中さんによると、脂肪を燃やす運動は体重と距離で消費が決まるため、時間を短くするには強度を上げるしかないと言います。強くなる運動も、基本は負荷を上げていく王道になると整理します。
体重と距離で決まるので、時短にするには強度を上げるしかない
負荷を上げるのが王道。ただし続けるには仕組みが必要
ジムをやめて自重3種目に行き着いた理由
話は「続けられなさ」に移ります。田中さんはかつてジムに通っていましたが、行くのが面倒で、重りがないとできない運動は続かなくなったと振り返ります。
そこで田中さんは、今ここで一人でできる運動に振り切り、言い訳の余地をなくす方向に舵を切りました。
とにかく言い訳ができない。今ここでできるよね、一人で。というのに最初からさせていく。
最終的に落ち着いたのが、逆立ち・懸垂・スクワットの3種目です。田中さんはこれが一番短い時間で限界まで追い込めると話します。
もう5分とかで、オールアウトで完全に動けなくなるまで倒れて、しばらく動けなくなるぐらいまでいける。
これを受けてけんすうさんは、環境の変数を固定する発想だと整理します。どこでもできて時間が短ければ、言い訳が効かなくなるという理屈です。
「正しさ」を人ではなく道具に教わる
田中さんから学習の工夫を問われ、けんすうさんは「プロセスが楽しくないと続かない」と答えます。英語学習では、漫画を英語で読めるアプリ「Langaku」で多読をしていると言います。
けんすうさんによると、アメリカの小学3年生が1年で読む量は10万語ほど。1話約1000語の漫画なら、100日ほどでその水準に届く計算になると話します。
続きが気になるから読んじゃう効果もあるので、そういうことでやるのはすごくやってますね。
トレーニングでも同じで、けんすうさんは「高速にフィードバックが返ってくるほど良い」という理論を紹介します。トレーナーに「お尻を突き出して」と言われてもわからない、というのが出発点です。
そこで使うのが、半円状のグラグラ揺れる台と、水の入った棒状の体幹ストリームです。体幹を固定しないと落ちるため、0.1秒ごとにずれが返ってくると言います。
安定するところを見つけてスクワットすると、ずっと0.1秒ごとにフィードバックが返ってくるので、正確な体勢でできる。
田中さんは、パーソナルトレーナーの言う「正しいフォーム」が自分にはわからず混乱すると打ち明け、センサーで正しさをカバーする考え方に共感します。
この発想はスタンディングデスクにも応用されていて、けんすうさんは足元にグラグラ揺れる台を置き、立っているだけで体幹トレーニングになるようにしていると話します。
40代からの関節は「消耗品」という共通認識
目的の話は「筋肉より体がちゃんと動くこと」へと進みます。けんすうさんは、普段の生活では動かさない股関節の滑りを良くするトレーニングを挙げます。
これに田中さんが強く反応します。水泳で腕は自然に回るものの、足は走っても自転車でも前にしか回らないため、開脚の限界まで意識的に動かしていると言います。
40代以上でアスリートになった人たち、みんな本当に言うんですけど、関節と、関節と筋肉の間の膜みたいなやつは本当に消耗品で、もう治らないから絶対メンテしろと言われて。
20代30代はなんとかなっても、40代以降は戻せない。だから関節はメンテすべきだという点で、二人の認識は一致します。
目を動かすだけで前屈が10cm伸びる話
続いてけんすうさんは、トレーナーに教わった目のトレーニングを紹介します。顔を動かさず、目だけで指を追う動きです。
現代人はスクリーンばかり見て3Dの把握能力が落ち、三半規管がバグって生産性まで落ちるといいます。そこで1日3分ほど目を動かすトレーニングをすると良くなると話します。
三半規管が良くなると、前屈とかの曲げるのもすごく10cmぐらい変わるんですよ。
田中さんは、自転車で人が来たときの認知スピードが落ちている感覚があると共感します。けんすうさんは、センサーが壊れているから歩くだけで疲れることも起きると説明します。
実際に目のトレーニングの後は、目をつぶって平均台を歩いても割とまっすぐ進めるようになると、けんすうさんは体感を語ります。
横隔膜を下げる「2階下」の意識
田中さんが、体の使い方で出力を変える意識はあるかと尋ねると、けんすうさんは横隔膜の位置を挙げます。
けんすうさんによると、「自分が2階下の階にいる」と意識すると横隔膜が下がってくるといいます。日本語で言う「腹が据わる」は、重心が下にある状態を指すのだと説明します。
自分が2階下の階にいるような意識にすると、横隔膜がだんだん下がってくる。腹が据わっているというのは、重心が下にある方が安定するので、そういう人のことを指す。
横隔膜が下がると肺が膨らみやすくなり、酸素を取り込みやすくなると言います。柔らかくするには、砂の入った硬いボールにお腹を乗せてうつ伏せになる方法も紹介されました。
さらにけんすうさんは、喋る仕事の人ほど胸式呼吸になりがちで、講演家は胸板が厚くなると話します。だからこそ喋っていない時間に横隔膜を下げるとよいという指摘です。
最後の1分の全力疾走がタイパ最強な理由
田中さんは、25キロほどを一定ペースで走った最後に、1〜2分だけ全力で走り切る「ビルドアップ」を取り入れていると話します。
死ぬほど全力でダッシュする、その1分が、有酸素の30分とか40分に匹敵するみたいな。
消費カロリーが同じになるわけではないものの、心肺機能や筋肉の活性化、ミトコンドリアにも良いといいます。田中さんは、これを大人はまずやらない領域だと指摘します。
いきなり全力で走ると肉離れのリスクがあるため注意が必要ですが、有酸素運動の後でなくても、どこに入れても良いといいます。けんすうさんは逆立ちの追い込みと近いと受け止めます。
話はマラソンの設計にも及びます。田中さんは、走力と持久力がトレードオフだからこそ、レースに合わせてメニューを組む面白さがあると語ります。飽きた後はトレイルランに移り、山ごとに戦略を立てるようになったといいます。
絶対に故障する前提で運動を組む
別のリスナー「ジンシーシャンさん」からは、1日平均20キロ走るうちに足に肉割れができ、皮が分厚くなって痛む日が増えた、という相談が届きました。水泳や自転車で軽減すべきかという質問です。
田中さんの答えは明確で、まず痛んだら走るのを一度止めるべきだと言います。ランナーは無理をしがちですが、代わりにクロストレーニングを入れるよう勧めます。
基本的にはもう絶対どこかで故障するので、故障したらまず休んでください。走るのは一回止めてください。
水泳や自転車を組み込むと、偏った筋肉の付き方が整い、回復後にはむしろ力の抜けた走りができるようになると田中さんは説明します。だからこそ代替の運動を最初から想定しておくべきだと言います。
さらに田中さんは、1〜2週間休んでもマッスルメモリーで戻せると知っておくことが大事だと強調します。マイナスになっている意識があると、二度とやらなくなるからです。
けんすうさんは、習慣化で大事なのはやめないことではなく、やめた後に戻れるかどうかだと受け止めます。
必ず故障する前提
どこかで壊れると最初から想定しておく
休んで代替に切り替え
走らず水泳や自転車などのクロストレーニングに移る
戻れると知っておく
1〜2週間休んでもマッスルメモリーで戻せる
雨・二日酔い・夜更かしでもやると言い訳が消える
田中さんは、調子の良いときにこそ、あえて悪条件でも運動してみることを勧めます。夜更かしで眠い日や飲み過ぎた日、雨や台風の日にもやっておくのです。
人が言い訳を作るのは、特定しやすい外的要因があるときです。だからこそ「それがあってもやった」経験を積み重ねておくと、言い訳が消えると言います。
これがあってもやったをいくつもいくつも作っておくと、どの状況でもやるになるんですよね。
さらに田中さんは、過酷な環境でやったときの気持ち良さを言語化して残すことも勧めます。雨の中は思ったより汗をかかず快適だった、といった発見です。
田中さん自身、深夜1時まで一緒に飲んでいた人たちに、3時間後に走り始める姿を見られ「正気の沙汰と思えない」と言われることが、だんだん気持ち良くなってきたと笑います。
何食わぬ顔で3時間後に走り始めているわけで、正気の沙汰とは思えなかったと言われることに、だんだん気持ちよくなってくる。
けんすうさん自身は、番組を始めてから家にランニングマシンを買ったと明かします。着替えなくても5分でできるため、言い訳がなくなったと言います。
まとめ
この回は、運動を続けるための鍵が「言い訳を消す環境設計」と「壊れる前提でのメンテ」にあることを、二人の実践から浮かび上がらせる内容でした。
- 続けるには、どこでもできて短時間という「環境の変数」を固定して言い訳をなくす
- 正しいフォームは人の口頭指導より、ずれると落ちる道具のフィードバックで身につく
- 40代からの関節と筋膜は消耗品で治らないため、股関節などは意識的にメンテする
- 最後の1〜2分の全力疾走は有酸素30〜40分に匹敵するとされ、タイパが高い
- 必ず故障する前提でクロストレーニングを組み、マッスルメモリーで戻せると知っておく






