コーヒーに「あえて踏み込まない」理由と、10年使うシリコンフィルター
最初のお便りは、ドリップコーヒーを始めたというリスナーから。コーヒー豆や入れ方、アイテムのこだわりについて聞きたいという相談です。
丁寧な暮らしをしていそうな田中さんですが、豆を挽くこと自体は諦めていると話します。その場で挽いてくれるお店を選び、粉の状態で買っているそうです。
田中さんは都電荒川線の都電珈琲や、白金高輪の駅前にあるファーストというコーヒー屋を挙げ、豆の種類が多い中から自分に合うものを探してきたと語ります。
好みには変遷があり、若い頃はイタリアンローストやフレンチローストのような濃い深煎りを飲んでいたそうです。
だんだんだんだんその浅い方が良くなってきて、シティローストとか、中深煎りぐらいの感じになって。
大人になってきたら、むしろあのめちゃくちゃどぎつい濃ゆい黒い液体がもう飲めなくなっちゃって。
一方けんすうさんは、コーヒーは大好きだけれど、ハマっても追いつけないだろうという感覚から、あえて足を踏み入れていない領域だと話します。
ドトール大好きです。
けんすうさんは、青山のドトールは一人用の席が広く電源もあって、仕事場としてよく使っていると語ります。田中さんも、いい豆を扱う店は店内で仕事できないため、空間の良さは外で飲むなら大事だと同意します。
田中さんのアイテムのこだわりは、円錐型ドリッパーに使うフィルターです。ペーパーフィルターだと豆の油分が取れてしまうため、繰り返し使えるシリコン製のものを使っているそうです。
これなんか2000ぐらいで買えるんですけど、それにしてからずっと、もう10年以上それ使ってます。
わが子に「やりたいことをやれ」と勧めない理由
2通目は、大学3年生の子にどんな仕事を勧めるべきか悩む親御さんからの相談です。本人がやりたいことをさせたいが、AIに仕事を代行される時代で判断がつかないといいます。
けんすうさんは、まず「やりたいことをやらせる」はあまり勧めないと答えます。理由は、大学生レベルのやりたいことは知識の範囲が狭く、外す可能性が高いからです。
AI時代に何をすべきかは人類全員がわかっていないと前置きしつつ、けんすうさんは比較的残りそうな力として3つを挙げます。
その中でも、けんすうさんは美意識がちゃんと育っていく仕事を選ぶといいのではと話し、田中さんも強く同意します。
田中さんは、企業勤めをするなら業種ではなくコーポレートカラー、つまり会社の価値観で選ぶといいと補足します。
多少ルール破ってでも営業ゴリゴリやっていいとか、逆にルールを守りすぎて何の攻めもできてないって、どっちも美意識欠けてると思う。
けんすうさんも、業種で選ぶと大学生が銀行に興味を持つことはあまりないが、ルールを守って大事な財産を守るという価値観が好きなら銀行を選ぶのはありだと言います。
仕事を「自分のため」と「他人のため」に二分する
田中さんは、世の中の仕事を真っ二つに分ける方法を提示します。自分のためにする仕事と、他人のためにする仕事です。これだけで選択肢が半分に絞れると話します。
トレーダー、投資、起業など。全部自分で決めて自分で責任を取る型
コンサル、弁護士や会計士などの士業。クライアントのために仕事をする型
田中さんは、コンサルを「自分で決める仕事」と誤解して入る人が多いが、実際はお客さんのために仕事をしていると指摘します。ここをはき違えると不幸になると言います。
知的労働してる風だからってコンサル行って、自分で何も決められなかったって言って、やっぱり不幸になって辞めてく人すごい多い。
けんすうさんも、起業は自由でいいと思って入ると、何も決められていない状態から自分で決めなければならず、そのストレスが大きい人は多いと補足します。
新卒で人生は決まらない、内定の偏りは「向いている」サイン
田中さんは、新卒で入った会社で人生が決まるわけではないと強調します。何度でも転職できるのに、多くの人が命に関わるくらいの気持ちで新卒を捉えていると言います。
行きたい会社に行けるパーセンテージって確か20パーぐらいらしいんですよね。5人に1人ぐらいしか行きたい会社行けない。
田中さんは、行った会社からそのまま転職する方が入りやすいので、不本意な会社に入っても、そこで何を守り抜いたかを大事にすれば道はあると話します。
けんすうさんは、行きたい会社ではなくても、特定の業界だけやたら内定が出ることがあり、その場合は向いている可能性があると付け加えます。
内定の偏り意外と出るんですよね。コンサルの方が難しいのでこっち行きます、みたいな決め方してると結構危ない。
田中さんは、ゴールドマン以外ほぼ全落ちしたが広告業界だけ無双した人などの例を挙げます。けんすうさんも、メーカーだけ、保険の営業だけ受かるケースがあると語り、向いているところを探すのが一つの手だとまとめます。
MBAは必要か、直結しない勉強が頭に入らない理由
3通目は、外資系メーカー営業の35歳から。上司が海外MBAを取得し、評価面談で「お前も数年単位の目標を作れ」と言われたが、共働きで子育て中のためMBAにコミットする時間がないという相談です。
田中さんは、これはMBAを批判しているわけではないと断りつつ、上司がMBA信者だった場合の行き詰まり感は正直あると話します。上司は変えられない問題なので厄介だといいます。
けんすうさんは、直結しない勉強は効率が悪いと考えていると答えます。経営で本当に必要そうな人か、勉強が超好きな人ならありだが、そうでないなら大変だと言います。
田中さんは、よく言われる「一生のネットワークができた」という利点についても言及します。
そのために何かを切り詰めてネットワーク買いに行ってる人って多分1人もいないと思う。目的は副次効果でしかないから。
相談者が挙げていた英語のスコアアップやファイナンスの勉強についても、けんすうさんは使わない時にやっても身につかないと話します。
田中さんは、自身が英語をやり始めたのも「ここからはやらないとこの会社で先はない」と言われたからだと明かします。しかも「スコアアップをしてこい」ではなく「使えるようになってこい」と言われたため、使える英語を身につけざるを得なかったと振り返ります。
どうしても無理な要求には「辞めざるを得ません」のジョーカー
田中さんは、営業という職種でMBAを取っても、経営層に行くことにあまり直結しないとも指摘します。けんすうさんも同意します。
一方でけんすうさんは「目の前の仕事のための勉強だけしていてもダメ」というのは確かだとも認めます。この難しさに対して田中さんが提示するのが、最後の一手です。
結局これ1回ジョーカー切るしかなくて、MBAを取れというなら辞めざるを得ませんって言われた時に、上司に止められるかどうか。
田中さんは、そこで上司が「MBAがなかったらダメだ」という会社なら諦めがつくし、止めてもらえるなら必要とされている証拠だと説明します。要求の本気度を測る手段としてジョーカーを使うという考え方です。
ただしけんすうさんは、上司も深く考えず「俺MBA取るけどお前も何か作ったら?」程度で言っている可能性もあると付け加え、深刻になりすぎないことも大事だと話します。
リモートワークの飽きは「快適にする」のではなく「不便に削る」
4通目は、フリーランスで自宅作業をするリスナーから。自宅は静かでモニターもあり快適だが、同じ環境だと飽きてしまう。かといってカフェに行くとモニターがなく効率が落ちる、という矛盾の相談です。
けんすうさんの答えは、カフェとの環境差で悩むより、いっそ作業そのものを根本から変えてしまうというものです。
PCでやってた作業をスマホだけでやってみるみたいに、結構ガツッと根本から変える。
スマホだけにすると文章を書くくらいしかできなくなるため、逆に集中できると言います。PCがあると複数の仕事を並行してしまい、かえってパフォーマンスが落ちるというのが理由です。
つまり、環境を快適にするのではなく、あえて不便に削ることで深い仕事に向かわせる発想です。けんすうさんは、ノートとペンだけを持って行くのも同じ効果があるかもしれないと提案します。
ノートPCを持ち歩かない男、スマホ1本で働く理由
続いて田中さんが、自身の働き方の変化を語ります。かつて金融機関にいた頃は会社の外で仕事ができず、モニターを3、4枚使う環境に20年近くいたため、そこから動くと使い物にならないロボットのようだったと振り返ります。
コロナ禍で出社できなくなった当初は、自宅なのに快適でなくイライラしたそうです。しかし今は、まったく逆の働き方になっています。
僕実はもうノートPCっていうのを持ち歩く習慣がなくて。仕事したいんだったら、会社か家どっちか。残りはもうスマホ。
田中さんは、40歳ごろになりExcelでモデルを作ったりPowerPointを自分で作業したりしなくなったことも背景にあると説明します。
2人の話をまとめると、中途半端にPCを持ってカフェに行くとパフォーマンスが落ちてストレスも高いので、いっそ不便にした方がいい、という結論になります。
「自分なりの価値」の理想が高すぎる問題
5通目は、45歳の会社員から。自分なりの価値を育てたいと思いながら、考えすぎて行動が止まってしまうという悩みです。まだ評価されていないものを見つけ、その価値を言葉にして伝えることが自分なりの価値になると考えているといいます。
田中さんは、この理想は高すぎるのではないかと率直に指摘します。
まだ評価されていないものを見つけ、その価値を言葉にして伝えることが自分なりの価値って、これ無理っすよ。
田中さんは、基本的にみんな何かしらのパクリをブレンドしているだけで、まだ評価されていない価値を見つけるのはほぼないと話します。そこまでの理想を持つ必要はないという考えです。
田中さんは、自身がやっていることも早起きして走っているだけで、斬新なことは何もないと言います。ただそれが少しずれているから変な人に見えるだけだと語ります。
365日やれば、距離が3キロでも5キロでもちょっと特殊な人になるんですよね。
つまり、特別なことをしないとオンリーワンになれないというのは誤解で、普通の行動でも積み重ねればオリジナリティは出るという考え方です。
まず動く、発信のダメージはゼロ
田中さんは、考えすぎて行動が止まっているのだから、まず行動しなければいけないというマッチョな回答を示します。やり始めれば好きか嫌いか、誰かにすごいと言われるかが出てくるといいます。
どうせ3つくらい掛け算するとオリジナリティ出てくるから、それで良さそう。
けんすうさんは、45歳という年齢を踏まえた注意点を加えます。すでに評価されているならいいが、評価されていない状態で「これが自分の価値だ」と自分で決めるのは危険だと言います。
もし本当にその価値が受けているなら、45歳の時点でXのフォロワーが多いとか、noteが売れているとか、書籍化の話が来ているはずだと指摘します。そうなっていないなら、他者から評価される能力だとは思われていない可能性があるということです。
田中さんは、だからこそまず発信して動いてみて、ネガティブに動くのか、面白いと思ってもらえるのか、ボールを転がしてみることが大事だとまとめます。
けんすうさん自身も、田中さんが会社員を辞めてからXを始めた例を挙げ、ウケなければ誰も見ていないアカウントになるだけでリスクはないと話します。
AI時代の記憶術は「クサビ」だけ打つ
最後の6通目は、AIが何でも知っている時代だからこそ記憶力が大事だと考えるリスナーから。記憶するものとしないものを区別しているか、どう覚えているかという尖った質問です。
けんすうさんは、印刷機のない時代は記憶力が超大事だったが、今は重要視されていない。だからこそ逆に重要視されるのではないかと面白がります。
田中さんは、加齢や飲酒で記憶力が減っている前提で工夫していると話します。その方法が、抽象化した概念だけを覚えるというものです。
あの映画は一見ホラーに見えるけど実はヒューマンストーリーだった、とかを覚えておけば、ディテールはもう全く記憶しなくていい。
長期記憶は抽象だけ、というのが田中さんの方針です。一方、短期記憶は別の使い方をします。プレゼンや大事なことを伝える場面で、細かい数字をわざと仕込むのです。
メッシは618人のワールドカップの選手の中で一番得点できる人。でも8.2キロしか走らなくて、これ618位らしいんですよ。
田中さんは、こうした超ディテールを2日前に覚えて2日後には忘れると明かします。その場で使えればいいという、瞬発的な短期記憶です。けんすうさんはこれを「ハッタリ」と表現します。
抽象化した概念だけを覚える。ディテールは記憶しない
プレゼン直前に細かい数字を仕込む「ハッタリ」。2日で忘れてOK
人の意見は「ベクトル」で覚え、AIに引き出させるフックを2〜3個持つ
田中さんは、人の意見の記憶についても独自の方法を語ります。内容そのものではなく、どっち向きかで覚えるというものです。
あの人が言ってたことが少なくとも右のことか左のことか、上がることか下がることか、そういう方向性で記憶する。
賛否が分かれるお題で、この人はこっち側だという雰囲気を覚えておく。それを間違えると事故るからだと言います。田中さんはこれを「ベクトルで記憶する」と表現します。
けんすうさんは、自身の記憶の特性について、映像で覚えられない分、記憶の断片がいろんな引き出しに雑多に入っていて、話が出ると引き出せると説明します。人の顔と名前の一致は苦手だといいます。
そしてけんすうさんは、AI時代だからこそこの覚え方が効くと語ります。歴史上の出来事なら「その辺でそういうことがあった」くらいの抽象度で覚えておき、そこを起点にAIに調べさせればいいというのです。
そのアバウトなのでも引き出せるっていうのが重要な記憶力っていう。
田中さんも、曲を探す時に「男女で、テンポがこのくらいで、レゲエで、歌詞の一部だけ」といった断片でAIから出せると話します。
つまり、全体を覚えるのではなく、AIに引き出させるためのフックだけを2〜3個持っておく。その意味で記憶は一定は必要だが、全部は覚えなくていい、という結論になります。
まとめ
AI時代のキャリア、勉強、働き方、記憶術という幅広いテーマに、けんすうさんと田中渓さんがそれぞれの経験から具体的に答えた相談回でした。共通していたのは、理想を高くしすぎず、まず動き、必要なものだけに絞るという姿勢です。
- 仕事は「業種」ではなく「美意識・価値観」で選び、AI時代に残る力として始める力・美意識・責任を取るの3つが挙げられた
- 仕事を「自分のため」と「他人のため」に二分すると選択肢が半分に絞れ、内定の偏りは向いているサインになる
- 直結しない勉強は頭に入らない。無理な要求には「辞めざるを得ません」のジョーカーで本気度を測る
- リモートワークの飽きは、快適にするのではなくスマホだけにするなど「不便に削る」ことで深い仕事に向かわせる
- AI時代の記憶術は、長期は抽象だけ・短期はハッタリで仕込み、AIに引き出させるフックを2〜3個持っておく





