なぜボードゲーム作家はリプレイ性にこだわるのか
この回のテーマは「ランダム性はリプレイにつながるのか?」です。Manaさんはまず、ボードゲーム作家として自分の作品を一度きりではなく何度も遊んでほしいという思いがあると話します。
Manaさんが考えるリプレイには、同じボドゲ会でその場で繰り返し遊ばれることに加え、いろいろな人と遊ばれること、いろいろな場所へ持ち込まれること、所有者が何度も遊ぶことが含まれます。
Manaさんによれば、リプレイ性のあるゲームは、面白いから繰り返し遊ばれ、人に紹介され、何度遊んでも飽きない「いいゲーム」だといいます。
リプレイ性の高いゲームは口コミで広がりやすい、というのがManaさんの見立てです。1つの商品が何度も遊ばれることでプレイ経験者が増え、紹介されて遊んだ人が「自分も他の人とやりたい」と思うことで、さらに広がっていきます。
繰り返し遊ばれる
1つの商品が様々な場所・相手と何度も遊ばれる
プレイ経験者が増える
面白かったという体験が人数分たまる
口コミが広がる
遊んだ人が他の人ともやりたくなり、紹介が進む
逆に、一回遊んだら終わりのゲームは、商品をどんどん売っていかないと広がりません。だからこそリプレイ性は重要だとManaさんは話します。
ランダム性を足せば飽きないゲームになる?
では、リプレイ性をどう高めるか。Manaさんは、一回で攻略しきってしまう、内容を網羅的にわかってしまうゲームは一回で終わると指摘します。
飽きずに遊べるようにするには変化が必要ではないか、という発想から出てくるのがランダム性です。Manaさんは、作り手がよく考える仕掛けとして次のようなものを挙げます。
- 初期条件がランダムで変わる
- ボードやマップがシャッフルされ、毎回違うステージになる
- 運の要素が絡み合い、常に違う遊びになる
- 特殊能力を持つキャラや役割ごとに戦略が変わる
こうした幅のある展開を用意すればリプレイ性が高まるのではないか、という考え方です。
その発想が「安易」だといえる理由は?
Manaさんは、ランダム性でリプレイ性を高めるという考えを「ちょっと安易」だと述べます。Manaさん自身も以前は、遊ぶたびに戦略が変わり、別のゲームのような体感が得られるのでよいと考えていたそうです。
それ(リプレイ性)を狙うが故にですね、ランダム性を頑張って作ったとしても、結構リプレイにはつながらないなっていうような、ものがあります。
Manaさんが挙げる理由は、リプレイ向けのランダム要素は、何度も遊ばないと味わえないという点です。役職が100種類あっても、100回遊ばなければ網羅的には楽しめません。
一方で、何の変化もないゲームでもリプレイは起こるとManaさんは言います。分かれ目は、もう一回遊びたい、別の人と遊びたいと思えるかどうかです。
2回、3回と遊ぶかどうか、一回遊んで「もう一回」と言うかどうかは、そもそも面白いかどうかで決まる。せっかく用意した展開が使われないことこそがランダム性に潜む1つ目の罠だとManaさんは整理します。
種類を用意するほどユーザーが迷うという2つ目の罠
Manaさんはもう1つの罠として、多くの種類を用意するとユーザーが迷い、面白さそのものが分散してしまう点を挙げます。
役職が100個あって100通り遊べるとしても、どの役職が一番楽しめるのか、どれがゲームの醍醐味なのかは、100個すべてが同じ楽しさではないはずだとManaさんは指摘します。
何度も遊んだ人が「味変」として楽しむ余地はあるかもしれません。それでも、そのゲームが一番楽しい遊び方は何かと問えば、たくさんの種類は必要ないという答えになるといいます。
Manaさんは、まず1回目、2回目を遊んでもらうために注力すべきだと話します。リプレイ性を目指して種類を増やしたり、あえてランダム性を設けたりすることは、逆にリプレイ性を損なう恐れがあるという考えです。
作り手が「一番楽しい遊び方」を提案するべき理由
Manaさんは、どの遊び方が一番いいのかをボードゲーム作家の側から提案する必要があると述べます。「こういう遊び方が一番楽しいですよ」という形で勝負をかけるべきだという主張です。
例として挙がるのがプレイ人数です。ターゲットを広げるために2人用から6人用など幅広い人数に対応するゲームもありますが、テストプレイを重ねると推奨人数が見えてくるはずだといいます。
推奨以外の人数で遊んで「あれ、ちょっと面白くないかも」となると、ゲームの印象が微妙になり、繰り返し遊んでもらえなくなります。Manaさんは、まず一番面白い形を体感してもらうことが先だと話します。
よかれと思っていろんなバリエーションとかも(1つの箱に)詰め込んでってやると、お得感とかは結構演出できるのかもしれないですけども、
そういったものが増えれば増えるほど、じゃあ何で遊べばいいのさみたいなところになるわけなんです。
メニューの多い店と醤油ラーメン一本の店
Manaさんは、この構造を飲食店にたとえます。メニューが多い店は材料の用意や運営コストがかさみ、料理単品の値段が上がり、調理のこだわりも分散してしまうといいます。
食べ放題のビュッフェのように選択肢が多くても、その単品が本当においしいか、それだけを食べにもう一度行きたいと思えるかは微妙だ、というのがManaさんの見方です。
材料や運営コストがかさみ、こだわりが分散。単品で再訪したくなるかは微妙
1品に勝負をかけ、単品で比べるとおいしい。だから繰り返し通う
ラーメン屋でも、多くの種類をそろえた店の醤油ラーメンより、醤油ラーメン一本で勝負している店のほうがおいしかったりする。だからこそ客は繰り返し通う、とManaさんは話します。
ボードゲームでも同じで、プレイ人数を増やせたりランダム要素を盛り込めたりする場合でも、何が一番面白い体験を与えられるかを考え、あえて絞って提示するのが理想だといいます。
広げられる遊び方は拡張版に逃がす
とはいえ、実際には別の人数でも遊べる、役職の展開もそれはそれで面白い、というケースもあります。Manaさんは、そうした要素は拡張版で十分だと答えます。
(別の人数や役職、マップで)遊びたいっていう人って、もうすでに面白いってわかってるからそれを遊ぶわけなんです。
最初に出す作品では一番面白い遊び方で勝負し、売れて評判がよくなってから拡張版を出す。拡張版は面白さを知っている人が買い、味変として楽しんでもらえるとManaさんは説明します。
拡張版に回す候補として、Manaさんは追加人数パック、追加マップ、バリアントルール ── 基本ルールを一部変更した追加・代替ルールのこと。ボードゲームでは難易度や展開を変える遊び方として同梱・公開されることが多いですを挙げます。
さらに、拡張版をどれくらい作るかを初版の売れ行きを見て調整できる利点もあります。ランダム要素のためにコンポーネントを詰め込み販売価格が上がるなら、絞って安くしたうえで展開するほうがリプレイ性につながるという考えです。
拡張版の時間差リリースで再び遊ばれる理由
Manaさんは、一度に全部遊んでもらうことも微妙だと話します。遊べる時間は限られているため、種類が多くても一気に遊んでそれきりになる可能性があるからです。
初版で満足しきった人やコミュニティにも、拡張版が出たことで「もう一回やろう」というきっかけが生まれる、とManaさんは説明します。
Manaさんはラーメン屋の例に戻り、醤油ラーメン一本の店が季節限定で、ベースのスープを使った冷やしラーメンのような別メニューを出す場面を挙げます。食べ飽きた常連にも「そんなものあるんだ」と思わせ、飽きさせない工夫になるといいます。
リプレイを最初から狙わないという結論
Manaさんの結論は、リピーターやリプレイを初めから狙わないことです。リピートするかどうかは一番初めの面白さで決まり、欲張ることは結果的に良くない方向に進む場合が多いといいます。
こうした罠に陥っている人は多いとManaさんは見ています。わかっている作り手は、拡張版を出したり、あえて分けたりしているそうです。
同時に頒布する場合でも、メインと拡張版を分けて売るのはよい方法だとManaさんは話します。買う人がゲームへの期待度に応じて、両方買うか初版だけ買うかを選べるからです。
作者はルールを考えるうちに「これもできる、あれも面白い」と網羅性でテンションが上がりがちです。Manaさんはそこで一旦落ち着き、一番の楽しみ方は何かを考え直して余計なノイズを除くよう勧めます。
その方向に考えを向けることで、結果的に繰り返し遊ばれるリプレイ性の高いゲームになっていく、とManaさんは締めくくっています。
まとめ
この回でManaさんは、ランダム性やバリエーションを最初から詰め込んでもリプレイ性にはつながりにくく、まず一番面白い遊び方に絞って勝負し、広がりは拡張版で届けるべきだと語りました。
- リプレイ性は口コミを広げるが、その源はランダム性ではなく「そもそも面白いか」にある
- 多くの種類を用意すると使われないうえに、面白さが分散してユーザーが迷う
- 作り手が推奨人数や一番楽しい遊び方を示し、醤油ラーメン一本の店のように勝負する
- 追加人数・追加マップ・バリアントルールは拡張版に回し、時間差で出すと再びリプレイが生まれる


