なんとなく使うカタカナ、本当の意味を意識できていますか
佐伯さんはまず、自分の立ち位置を先に断っています。工学系の大学院まで進み、科学論文も読んできたので一般的な英文法はある程度知っているものの、TOEICで高得点を取っているわけでも英会話が得意なわけでもない、という前提です。
(自分は)そんな奴がなんか言ってんな、ぐらいに捉えてもらえたらなと思っている
この回の出発点になっているのは、佐伯さんが以前話した「言葉のなんとなく消費」というテーマです。日本語でも何でも、一つ一つの言葉の本当の意味を理解せずに、なんとなく使っている自分に満足してしまう人がいる、という問題意識でした。
今回はそのカタカナ語版です。なんとなく使っているカタカナの本当の意味を意識できているか、というのがこの回の問いになっています。
カタカナ語は3種類。混ぜて使うとコミュニケーションがぼやける
佐伯さんは、カタカナ語をざっくり3種類に分けて整理しています。
英語をそのままカタカナ読みしたもの
英語の単語をそのまま音写したもの
カタカナ読みをさらに略したもの
カタカナにした語をさらに短く縮めたもの
和製英語
日本で独自に作られた英語風の言葉
これらを区別せずに混ぜて使うと、LINEやSlackのようなテキストコミュニケーションで行間がぼやけ、伝えたいことを伝えられなくなる、と佐伯さんは指摘します。
もっと言うと、それすらも気づけないみたいな状況が(ある)
結果として、少し物足りないビジネスパーソンになってしまうケースがありそうだ、というのが佐伯さんの見立てです。
「エンタメ」をどこまで遡れるか
具体例として佐伯さんが取り上げたのが「エンタメ」という言葉です。音楽ライブもイベントも、みんなが共通認識としてなんとなくわかっている言葉ですが、これを段階的に分解していきます。
エンタメは英語のEntertainmentを略したものです。さらに遡ると、EntertainmentはEntertainという動詞の名詞形にあたります。
そのEntertainは「楽しませる」という意味の動詞です。佐伯さんは、これが自動詞ではなく他動詞である点を強調しています。自分が何かをするのではなく、人を楽しませるという意味の動詞だということです。
この流れをたどると、エンタメとは「人を楽しませるコンテンツ」だという繋がりが見えてくる、と佐伯さんは言います。
そういう繋がりをちゃんと思っとくのが大事だよね、っていうのが今日言いたいこと
レンタカーとユニクロ。略された言葉を元に戻してみる
佐伯さんは、事前に考えていたという別の例も挙げています。まずレンタカーです。
レンタカーは「レント・ア・カー」の略で、「レントカー」ではない、と佐伯さんは説明します。「ア」という数量を表す単語が挟まっている点がポイントだといいます。
動詞のRentには「借りる」も「貸す」も両方の意味があったはずだ、と佐伯さんは述べ、だからこそ車を借りたり貸したりするサービスとしてレンタカーがある、と繋げています。
もう一つの例がユニクロです。ユニクロはUnique Clothing Warehouseの略で、運営会社のファーストリテイリングがそう名付けているそうだ、と佐伯さんは話しています。
ここで佐伯さんは、さらに一段深い問いを立てます。Clothingが服だとして、では「ユニーク」とはどういう意味なのか、というものです。
「ユニーク」と「面白い」の混同から見える言葉のずれ
日本語で「あなたってユニークだね」と言うとき、ユニークはユーモアがあるという意味で使われがちだ、と佐伯さんは指摘します。しかし英語のuniqueは「独自の」「唯一の」という意味だといいます。
そのうえで佐伯さんは、ファーストリテイリングがユニクロというブランドに込めた理念を推測しています。実際にそう掲げているかは知らないと断りつつ、独自の服屋という意味合いを込めていそうだ、と想像しています。
こうして日々のカタカナ語を想像し、分解していくことが大事だ、というのが佐伯さんの主張です。そのうえで、この回で一番言いたいことへと話が移ります。
単語帳の丸暗記より、日々のカタカナを分解するほうが定着する
佐伯さんは、高校時代に単語帳を徹底的に覚えた経験を明かしています。1000いくつある単語帳の単語を全部覚え、各単語の上下に何が載っているかまで画像として覚えられるほど読み込んでいたそうです。
(単語帳の勉強も)それもいいけど
それでも佐伯さんは、日々使うカタカナを分解して認識していくほうが、きっと記憶には定着すると考えています。
エンタメがEntertainmentであり、他動詞のEntertainから来ている、と捉える。この作業を通じて、動詞なのか名詞なのか形容詞なのかという品詞への意識も高まっていく、と佐伯さんは言います。
「〜ティック」で終わるromanticのような語であれば形容詞だ、といった具合です。そうしたことを日々考えられている人が、きっと英語が得意な人なのだろう、と佐伯さんは話しています。
1000語超の単語帳を繰り返し覚える方法。佐伯さん自身が高校時代に徹底して取り組んだ
日々使うカタカナを語源までたどって理解する方法。記憶に定着しやすく、品詞への意識も高まると佐伯さんは考えている
さらに佐伯さんは、これは英語に限った話ではないと広げます。勉強とは机に向かうことだけでなく、日々の意識を変えることが第一歩になる、というのです。
そのほうがコストパフォーマンスもいい、と佐伯さんは付け加えています。
「美人」の意味は薄まった。言葉が変わることも文化
話は言葉そのものの変化へと派生します。佐伯さんは、ユニークがユーモアと混同されていることについて、それはそれでいいとも考えていると述べます。それも文化だ、という立場です。
例として挙げたのが「美人」という言葉です。江戸や明治のころの美人は、トップオブトップの綺麗な人にしか使わなかったそうだ、と佐伯さんは話しています。
しかし言葉は使われ市民権を得るほど、意味が希薄化していく、と佐伯さんは言います。言語学の分野で語られていそうな話だと前置きしつつの見解です。
もうトップオブトップじゃなくても美人って言うわけじゃないですか、僕らは
こうした意味のずれや薄まりは言語の一つの側面であり、それが集まって今の時代がある、というのが佐伯さんの受け止めです。否定しても仕方がなく、受け入れたうえで過去と未来を考えることも必要だろう、と話しています。
最後に佐伯さんは、この回のテーマを自分で振り返っています。エンタメがEntertainという他動詞から来ていると考えると、英語を勉強しやすいのではないか、という話だったとまとめて締めくくりました。
まとめ
この回は、なんとなく使っているカタカナ語の本当の意味を意識できているか、という問いから始まり、日々のカタカナを語源まで分解して理解することが英語学習の近道になる、という佐伯さんの考えを語った回でした。
- カタカナ語は「そのまま音写」「さらに略したもの」「和製英語」の3種類に分けられ、混ぜて使うと伝わり方がぼやける
- エンタメはEntertainment→Entertain(他動詞・楽しませる)と遡れ、「人を楽しませるコンテンツ」という繋がりが見えてくる
- 単語帳の丸暗記より、日々使うカタカナを分解するほうが記憶に定着し、品詞への意識も高まると佐伯さんは考えている
- 勉強の第一歩は机に向かうことだけでなく、日々の意識を変えること
- ユニークとユーモアの混同や「美人」の意味の希薄化のように、言葉が変わることも文化として受け入れる姿勢を佐伯さんは示している




