青切符をここまで正面から語る回は珍しい
この回は、リスナーから寄せられた質問に答えていく形で進みます。聞き手は自転車技師で声優の岡田昌孝さんです。
そもそも青切符について、オープンに突っ込んで語られている場は多くないと家本さんは言います。
青切符の話をオープンにパブリックに堂々と話してる話って、あんまりインターネットにない気がしていて。メディアの記事は中心でたくさんあるんだけれど、何に怯えてるか知らないけど、あんまないじゃないですか。
だからこそ、リスナーがどんな意見を持っているのか、ドキドキしながら質問を読み進めていきます。
自転車の販売統計は、なぜ取りにくいのか
最初の質問は、日本では販売台数の統計が取られていなかったが、他国ではどうなのか、というものです。あわせて、防犯登録が同じ役割を果たせないのかという問いも寄せられました。
まず販売統計について、家本さんは意外な事実を挙げます。世界の主要国でも、きちんとした自転車の販売統計はほとんど見当たらないというのです。
むしろ日本は、ようやくできるようになったけれど、ここは一歩先進的な動きかもしれない。
その理由は、販売のかたちの違いにあります。日本はチェーンストアが発達し、POSの仕組みも整っているため、データを集めやすい土壌があります。
ヨーロッパやアメリカ見てみると、実はそこまでチェーンストアで自転車が売られてるケースってあまりないんですよね。個人店が中心。
家本さんによれば、そうした日本の販売データを、業界の発展のために各社が出し合ってできたのが、今回の販売統計だといいます。
防犯登録は、令和の今も「手入力」だった
では、防犯登録で販売統計を代替できないのか。この問いに、家本さんは明確に「できない」と答えます。
理由は、防犯登録のデータが後ろ側で徹底的にアナログ管理されているからです。
店で書く複写式の登録用紙は、まとめて防犯協会や自転車の組合に送られ、そこで手作業で入力されているといいます。
ただいま令和デジタルの時代でございます。よろしいですか?手で入力でございます。
字が読めないケースもあり、自転車の種別も大雑把にしか登録できないなど、現場の苦労は大きいようです。
さらに、盗難自転車の照会も他の都道府県が相手だと基本は紙のやり取りで、封筒で返ってくるといいます。
令和7年ですけど。
加えて、防犯登録には期限があり、その期限が都道府県ごとにバラバラだという問題もあります。家本さん自身が期限切れの自転車を再登録した経験から、データが二重に蓄積されてしまう構造を指摘します。
更新じゃないから。蓄積だからわかんないわけですよ。
つまり、防犯登録のデータは統計として使うには不向きなのです。統計を取るには、まずデジタル化が欠かせないという結論にたどり着きます。
店舗側でも防犯登録は完全にアナログだと、自転車店勤務の長かった岡田さんも同意します。この話題だけで一回分できそうだと、2人は次回への意欲を見せました。
青切符は「穴」だったのか、それとも想定外だったのか
次の質問は、講習制度の段階でどうすればもっといい状況になったと考えられるか、というものです。かなり難しい問いだと、岡田さんも前置きします。
前提として、青切符導入前は、悪質な違反には赤切符、つまり刑事罰の手続きが取られていました。3年間に2回違反があると講習の対象となるため、そのカウントに従来は赤切符の手続きが使われていた、という話が前回されています。
家本さんは、これを「穴があった」とは捉えていません。
むしろまさかそこまで自転車の違反に関することが世の中で大きく関心を持たれるようになるとは思ってなかった制度だった。
コロナ禍で自転車への注目が高まった時期的な背景もあり、当時は今ほどの関心は想定されていなかったのではないか、という見方です。
そのうえで、あえて自分ならどうしたかと問われると、家本さんは講習のタイミングそのものに疑問を投げかけます。
それって違反を起こしてから講習ですかと、やっぱり僕は思うわけですよ。
違反の前に、交通ルールを学ぶ機会を作るべきだったという考えです。ただし、それには時間がかかるとも言います。
1年とか2年じゃ僕結構難しいので、本当にそれこそ3年とか5年とか、ちゃんと国が予算をつけて、自転車の交通ルールに関する啓発を少し強めにやっておいた上で取り組むんだったら、なんかもうちょっとスムーズだった。
自転車の乗られ方は地域で大きく違います。家本さんは、東京23区内でもブレーキシューの減り方が違うという具体例を挙げます。
渋谷とか目黒とかね、めちゃくちゃブレーキシュー減るわけ。同じ距離乗ってても全然違うわけだし、状況も違う。
だからこそ、地域の実情に合わせて時間をかけた啓発が必要だった、というのが家本さんの見立てです。
150年の日本の自転車の歴史を考えると、ルールだけが一人歩きしてしまった感がある、と2人はまとめます。
電動アシスト自転車は、スピードより「重さ」が怖い
続いての質問は、電動アシスト自転車のスピードについてです。速く走っているイメージがあるが、その区分けは難しいのではないか、という内容でした。
家本さんは、アシスト自転車の話には大きく2つのキーワードがあると整理します。1つ目は、そもそも基準を逸脱した乗り物の問題です。
モペットのような、型式認定を受けてなくて、さらに日本のアシストのルールを逸脱している自転車のような乗り物が街にはびこってる。
家本さんは、こうした乗り物を売った側や輸入した側の責任をもっと問うべきだったと強く語ります。
あれを売った人たちの責任まず問えと僕は思うわけですよ。
この問題はモペットに固有のものとして切り分けたうえで、2つ目のキーワードである一般の電動アシスト自転車の話に移ります。
下り坂ではアシストが効かなくても30キロほど出ることはあります。ただ、家本さんがそれ以上に危険視するのは、スピードよりも重さです。
それより怖いのは自重と体重を含めた重さですよ。
たとえば体重70キロの人が30キロの子乗せ自転車に乗れば、それだけで100キロになります。子どもを乗せれば、さらに重くなります。
家本さんは、110キロや120キロといった質量が動き、急ブレーキで衝突すれば非常に危険だと指摘します。だからこそ、アシスト自転車に乗る人にはヘルメットの意識を強く持ってほしいと訴えます。
岡田さんも、電気の力が加わることで自分の想定以上のスピードや衝撃が発生し得ると同意します。あわせて家本さんは、子どものヘルメット着用が増えてきたことを歓迎しました。
もし仮に放り投げられたりとか、倒れた時のことを考えたら、守るべき頭だから。
自転車教育は、業界にとって大きなビジネスチャンス
次は質問というより感想で、教えてもらっていないルールを守れないのに罰金というのはその通りで、体系的に学べる場所がほしい、という声でした。
家本さんは全面的に同意しつつ、これを自転車業界のチャンスだと捉えます。
一方で、4月に青切符が始まって以降、自転車業界の当事者がメディアにあまり出てこないことを、家本さんは残念がります。
実際自転車に乗っている人で、売ってる人で、ちゃんとビジネス経験されてる方たちが、実はあまり表に出てこないんですよ。
具体案として、家本さんは地域の自転車教室の開講を挙げます。役所の施設を使い、参加費を1000円か2000円ほどもらって、基本的なルールを楽しく学び直す場です。
ビデオを見せられても寝てしまうから、岡田さんに楽しく話してもらう、といったアイデアも飛び出しました。
さらに家本さんは、これを役所が予算をつけて取り組むべき事業だと考えています。
何人やったら補助でいくら出すとかね。やればいいのにって思うんだけど。
来年度の予算は夏頃から検討が始まるため、役所の担当者に向けて、8月や9月の予算検討時にぜひ項目に入れてほしいと具体的に呼びかけました。
知られなければ守りようがない。この前提を、2人は改めて確認します。
子どもたちが変える、未来の交通社会への期待
最後の投稿は、地方の小学校での取り組みの紹介でした。3年生のときに警察が来て、自転車に乗りながらルールを学び、独自の免許をもらうと学区内を子どもだけで走れる、という仕組みです。
投稿者は、自分の子ども時代より教育が進み、ヘルメットもほぼ全員がつけていると伝え、この子たちが大人になれば今より良い社会になるのではと期待を寄せました。
家本さんは、この取り組みを心から歓迎します。子どもが自ら意識すれば、大人の危ない行動にも気づけるようになるといいます。
そして、社会を変えるには長い時間が必要だと語ります。
総括として家本さんは、こうした話題に前向きに関心を持つリスナーが多いことを喜びます。そのうえで、業界へのメッセージを繰り返しました。
こういうタイミングで自分たちが社会の中のどういう役割を担っているかっていうことを、ちょっとアクションとしてちゃんと示してほしい。
渋谷で見かけた大きな看板を例に、民間のプレーヤーが自転車のことを大きく発信している例がほとんどないと指摘します。後ろで不満を言うだけでなく、行動を起こそうと呼びかけて回を締めくくりました。
まとめ
リスナーの質問に答えるこの回は、青切符という話題を入り口に、統計・教育・安全という自転車をめぐる課題を当事者目線で掘り下げるものでした。ルールを急いで入れる前に、学ぶ機会をどう作るかが問われています。
- 自転車の販売統計は世界でも珍しく、日本のチェーンストアとPOSの仕組みが集計を可能にした
- 防犯登録は令和の今も手入力や紙のやり取りが中心で、統計に使うにはデジタル化が必要
- 家本さんは講習を「違反してから」受ける設計を疑問視し、事前の啓発に時間と予算をかけるべきだったと語る
- 電動アシスト自転車はスピード以上に、車体と人を合わせた重さが危険で、ヘルメット意識が重要
- 交通ルール教育は業界のビジネスチャンスであり、役所の予算化と民間のアクションが求められる




