そもそもホワイト大企業の何が魅力なのか
今回のテーマは、ホワイト大企業に勤務する3つのデメリットです。
吉田さんはまず、一般論としてのホワイト企業・大企業の魅力を率直に認めます。就職ランキングで上位に来る代表格であり、自身のキャリアを振り返っても一度は勤めてみたいと話します。
その魅力として挙げられるのは、豪華なオフィスビル、美味しい社食、充実した福利厚生です。有給は当然100パーセント消化で、特別休暇まで使え、昇給はどんどんあり、退職金も手厚い。そんなイメージです。
ただし、そのホワイト大企業にはホワイト大企業なりの悩みがあり、就職することにデメリットもある、というのがこの回の切り口です。
「ダラダラ働けない」職場のリアル
1つ目のデメリットは、会社によりけりとしつつ、ダラダラ働けないという点です。
きちんとしたホワイト大企業では、どのスタッフがその日に何をやるかがきっちり決まっています。仕事量もうまく設計されていて、適度に頑張らないと所定労働時間の8時間で消化できないような量になっているケースが多いといいます。
ここで問題になるのが、要領が悪くて失敗し、その日の仕事が終わらなかった場合です。上司に残業を申請すると、思わぬ反応が返ってきます。
あれ、誰々君、なんで今日時間通りに仕事が終わらなかったんですか、とか言って詰められたりするんですね。
こうしたことが続くと、従業員の心理としては、意地でも定時までに仕事を終わらせなければという空気になっていくと吉田さんは指摘します。
具体例として挙げられたのが、上場審査中の会社です。「なんで残業しているのか」「残業するなら必ず申請を上げてほしい」「これ以上残業するなら上長と面談を」といった具合に、残業をめぐるプロセスが次々に出てくるといいます。
これと対比されるのが、いわゆる「ややブラック」な中小零細企業です。残業しても何も言われない代わりに残業代も出ない、という状態は制度としてはダメだとしつつ、精神的には楽に働ける面があると話します。終わらなければ残ればいいという保険があるからです。
仕事量が緻密に設計され、残業には申請や面談が求められる。定時内に終わらせる強いプレッシャーがある。
残業しても何も言われないが残業代も出ない。制度上は問題だが、精神的な余裕はあると話される。
大企業では「いびつなスキル」の人ができあがる
2つ目のデメリットは、業務の細分化によって社外で通用するスキルが身につきにくい、という点です。
ホワイト大企業では生産性を上げるために、業務が細かく分けられます。例えば営業部門でも、資料作成ばかりの部署、電話をかけ続ける部署、顧客面談ばかりの部署、といった具合に役割が分かれていきます。
そこにずっといると、資料作成のスキルは高いのに、いざ商談に出ると全く話せない、といったいびつなスキルの人が出来上がると吉田さんは言います。
その結果、社内では高く評価されていても、社外に出た転職市場では評価されない、ということが起こります。
吉田さんは中小企業のクライアントで多い相談として、具体的なケースを挙げます。誰もが知る大企業出身の人を運良く採用できたものの、中小企業の仕事に合わずパフォーマンスが出せない、という相談は珍しくないそうです。
その背景には、評価基準の違いがあります。大企業では「自分の仕事はこれ」という境界線が染みついている一方、中小企業では境界線を設けずオールラウンドに働く人が優秀とされがちだといいます。
待遇が良すぎることが招く「役職定年」後の悲劇
3つ目のデメリットは、中高年の待遇が良すぎるという点です。待遇がいいのは良いことに思えますが、そこには悲劇があると吉田さんは指摘します。
大企業では人材登用を活性化するため、55歳で役職定年を設定しているケースが多いといいます。
55歳で役職定年を迎えると、それまで大きな部署のトップとしてバリバリ働いていた人が、単調な作業をひたすらこなす立場になります。それでいて給料はあまり下がりません。
すると、その人たちの悩みは「お金はあるけれど仕事にやりがいがない」というものになります。毎日ただ会社に来て帰るだけ、あとは定年を待つだけ、という心境です。
労働条件の低い職場の人から見れば「いいじゃないか」と思えるかもしれませんが、これに慣れると非常に退屈だと吉田さんは話します。
さらに、この待遇の良さが転職や挑戦を妨げます。老後資金にも困らず、ルーティンワークで多くの給料が入ってくる状態は、今の職場を捨てづらくさせるのです。
対比として挙げられたのが、超ブラック企業のケースです。今のブラック企業にいるより脱サラして一人でやった方が楽だ、という発想になれば起業や新しい挑戦に踏み出しやすくなります。
ところがホワイト大企業で好待遇の中高年になると、これを捨てたら二度と戻れないと考え、新しいことに挑戦するインセンティブがなくなります。
退職金制度が拍車をかける「大人しく定年まで」
挑戦をためらう心理に拍車をかけるのが、退職金制度だと吉田さんは続けます。
大企業の退職金制度は、最後の最後でぐっと上がる設計になっています。例えば65歳定年の場合、64歳での退職と65歳での退職とで、退職金が1000万円ほど違うといった設計も珍しくないそうです。
そうなると、退職金を満額もらえるところまでは大人しくしていよう、という心理が働きます。今まで通りのルーティンワークで定年まで迎える、という形でキャリアを終えることになります。
3つのデメリットをまとめると
吉田さんは最後に、この回で伝えた3つのデメリットを整理します。
ダラダラ働けない
仕事量が緻密に設計され、定時内に終わらせるプレッシャーが強い。
社外で通用しづらい
業務が細分化され、いびつなスキルになりやすく転職市場で評価されにくい。
待遇が良すぎる
中高年の好待遇と退職金制度が、挑戦や転職のインセンティブを奪う。
特に3つ目については、40歳、50歳と定年が近づくほど、チャレンジしづらくなるのがデメリットだと吉田さんは話しています。
まとめ
ホワイト大企業は多くの人にとって理想の職場に見えますが、緻密な仕事設計や業務の細分化、そして中高年の好待遇には、それぞれ見落とされがちな落とし穴があると吉田さんは指摘します。恵まれた環境ほど、キャリアの選択肢を狭める側面があるという視点です。
- 仕事量が緻密に設計されたホワイト大企業では、定時内に終わらせるプレッシャーが強く、ダラダラ働くことが許されにくい。
- 業務の細分化により社内では高評価でも、いびつなスキルになり転職市場では評価されにくくなる。
- 中高年の好待遇は「今を捨てられない」心理を生み、新しい挑戦へのインセンティブを奪う。
- 最後にぐっと上がる退職金制度が、大人しく定年を待つ選択に拍車をかける。



