客先に一人で謝罪、上司が同席しないのはなぜか
この回は、リスナーから寄せられた質問から始まります。番組では、経営者の目線に立って給与や労務の悩みに答えています。
客先に一人で謝りに行かされました。自分のミスだから仕方ないのですが、上司が同席してくれなかったことにモヤモヤしています。
吉田さんはまず、この気持ちに共感します。そのうえで、原則論を確認していきます。
会社でミスが起こったとき、部下と上司がいれば、基本的には上長の責任だと考えられます。吉田さん自身も、部下時代に上司と一緒に謝りに行ったり、上司が一人で対応してくれた経験があると話します。
原則を100%認めると何が起きるか
ただし吉田さんは、この原則を100%正しいものとして認めると、別の問題が起きると指摘します。
もしミスをしても最終的に上司が謝ってくれるとなれば、手を抜いてもいいと考える人が出てくるという懸念です。他責思考で当事者意識を持たずに働く人につながりかねません。
吉田さんは、実際に「上司が謝らないのはおかしい」と言い続けていた人を挙げます。その主張は正しい一方で、その人自身は仕事への当事者意識が薄かったのではないか、と振り返ります。
対照的に、優秀な人ほど「自分でも謝らせてください」と言う場面が多いといいます。
優秀な人っていうのは、上司が謝るのは謝るんですけれども、自分でも謝らせてくださいみたいなことを言うことが多いと思うんですよ。
それは自分の仕事に対する当事者意識や自責の念があるからこそ、自分から謝りたいと思うのだ、と解釈しています。
上司は部下の成長を願っていたのかもしれない
そのうえで吉田さんは、今回のケースについて一つの見方を示します。上司はこの部下に期待していたのかもしれない、というものです。
謝罪という行為は、誰にとっても嫌なものです。前日の夜も憂鬱で、当日の朝も、向かう道の途中も気が重いと吉田さんは言います。
しかし、その苦しい経験をするからこそ「二度とこういう思いをしたくない」「お客さんに迷惑をかけたくない」という気持ちが芽生え、仕事への当事者意識が育つと考えられます。
一人で謝り続けて感じた孤独感
一方で吉田さんは、育成を意図した謝罪が行き過ぎるリスクにも触れます。これは自身の部下時代の実体験に基づく話です。
当初は、自分の担当で自分がミスをしたのだから、謝りに行くのは当たり前だと感じていました。しかし全部を一人で対応し続けたとき、別の思いが湧いてきたといいます。
一人で全部謝ってるんだったら、極端な話、これ独立開業してるのと変わらないよね、と思ったことはあります。
これだけ苦しい状況でも上司は助けてくれないのか、と孤独感を感じました。
その結果、退職を考えたこともあったと明かします。当事者意識を持たせるための謝罪も、行き過ぎれば職場から人が離れるリスクになりかねません。
だからこそ吉田さんは、最終的には上長が謝りに行く覚悟を持ち、大事になったときには謝罪すべきだと考えています。
謝罪にはプラスの面もある
ここから話は、謝罪のプラスの側面に移ります。気が重い謝罪でも、意外な結果につながることがあると吉田さんは振り返ります。
丁重に謝ったところ、逆にお客さんから褒められたケースがあったといいます。
いつも吉田さんにはお世話になってるから、むしろこういうミスが出たことにびっくりしてます、珍しいですね、とフォローしてくれたケースもあります。
素直に受け取れば、普段の自分が評価されていたと分かる瞬間でもあります。さらに、ミスをきっかけに改善提案を出すことで、お客さんとの関係性がよくなったケースもあると話します。
改善提案によって仕事がやりやすくなり、後日お客さんから印象的な言葉をかけられたといいます。
どんなに辛いことがあっても謝罪して解決したっていう実績が残れば、この人はうちの会社から逃げないんだな、っていうのが分かった、と言われました。
吉田さん自身も開業して仕事を依頼する立場になり、いつ逃げるかわからない人には仕事を頼みにくいと実感したといいます。逃げ場所がなく腰を据えている人ほど、仕事を紹介しやすく依頼しやすいと感じています。
気の重い謝罪
嫌だと感じながらも客先へ謝りに行く
評価やフォロー
普段の仕事ぶりが評価され、逆に労われることがある
改善提案
ミスをきっかけに提案を出し、関係性が改善する
信頼の獲得
逃げずに解決した実績が、依頼しやすさにつながる
上司が部下に謝れないと何が起きるか
最後に吉田さんは、謝罪の相手を客先だけでなく、部下にも広げて考えます。上司が部下に謝らないことは意外と多い、という問題提起です。
間違いを認めない上司を部下時代に見たとき、信頼できないと感じ、いざというときに責任を押し付ける人だと思ったと振り返ります。
上司が間違えた時に謝らないっていうのは、絶対に避けた方がいいと思います。
反対に、上司でも間違えたと思ったら謝る人であれば、その後の関係もスムーズになります。部下から見れば「ちゃんと間違えたら謝ってくれる人」だと伝わり、ついていきたいと思えるといいます。
上司が開き直って謝らない態度は、部下に「何かあっても助けてくれない」というメッセージになってしまいます。吉田さんは、上司が判断の誤りを認めて謝罪することは、採用・定着・組織発展といった人事労務の面でも重要だと結んでいます。
まとめ
謝罪をめぐるモヤモヤを、育成・関係性・上司の責任という複数の視点から整理した回でした。上司が同席しなかった背景には、部下の当事者意識を育てたいという期待があったのかもしれない、という見方が示されました。
- ミスの責任は原則として上長にあるが、100%認めると当事者意識が薄れる人も出てくる
- 上司が一人で謝りに行かせたのは、部下の成長を願ってのことかもしれない
- 育成のための謝罪も行き過ぎると孤独感や退職につながるため、最終的には上長が謝る覚悟が必要
- 謝罪は評価の再確認や改善提案のきっかけになり、関係性を深めるプラスの面もある
- 上司自身も間違えたら部下に謝ることが、信頼や定着、組織発展につながる





