リモートワークにこだわる事務所ができるまで
今回のテーマは、士業事務所でリモートワークを成功させる条件です。解説するのは、社会保険労務士法人ONE HEARTを運営する吉田優一さんです。
同事務所は、リモートワークを徹底的に活用しています。ただ、創業当初からそうだったわけではないと吉田さんは振り返ります。
転機になったのは、ある人との出会いです。リモートワークを強く推奨する人物に感化され、自社でも取り入れることを決めたと話されています。
そこからリモートワークの魅力に取り憑かれ、徹底的にこだわる士業事務所を作っていきたいと考えるようになったといいます。
開業から半年ほどで方針が変わり、リモートワークを始めておよそ3年。今回はその3年で見えてきた成功条件の一部を語る回です。
リモートワーク成功の鍵は「取引先の選び方」
リモートワークが成功するために何が一番重要か。吉田さんの答えははっきりしていて、取引先の選び方が重要だというものです。
リモートワークが成功するには何が一番重要かというと、取引先の選び方が重要です。
理由はシンプルです。取引先がリモートワークを理解してくれないと、そもそも契約が成立せず、売上も立たないからだと説明します。
売上が立たなければ会社は続けられません。だからこそ、まず取引先が重要になるという論の立て方です。
「直接会わないと契約は取れない」という思い込み
ここで吉田さんは、自身の昔の考え方を打ち明けます。かつては、どんな契約でも最初は直接会って名刺交換するのが礼儀だと思い込んでいたそうです。
最初は直接お会いしてお話をして名刺交換するのが礼儀だと思ってました。じゃないと契約なんて取れないよねっていうのが、私の常識だったんです。
この常識は、コロナをきっかけに思い込みだったと気づいたと話されています。
実際、今支援している顧客の中には、対面でリアルに会ったことがない人がたくさんいるといいます。
それでも契約は続いており、顧客から感謝の言葉ももらう。最初は「これでいいのか」と思ったものの、むしろこちらの方がいいと考えが変わってきたそうです。
「訪問に価値がある」という発想はどこがブラックなのか
考えが変わる中で吉田さんが気づいたのは、訪問してお話しするという発想自体が、基本的にブラックだということでした。
お伺いしてお話するっていうのは、やっぱり基本発想がブラックなんだってことに気づいたんですよ。
訪問することに価値があると思い込んでいるから、つい「訪問します」と言ってしまう。しかし本当に訪問に価値があるのかを問い直します。
吉田さんは、ビジネスの本質は相手の困りごとを解決することだと整理します。その上で、訪問の価値を考えるために2つのパターンを提示します。
抱えている問題を解決してくれるが、リモートでしかサービスをしない
いつでも会いに来てくれるが、抱えている問題は解決できない
この2択なら答えは前者だと吉田さんは言います。非対面でも、ビジネスの問題を解決してくれる人こそ自分にとって価値があるという結論です。
訪問は「楽」だった。人柄営業からの決別
さらに吉田さんは、いろいろ考えた末に、訪問する方が実は楽だと気づいたと話します。
たとえば暑い中、ネクタイを締めてスーツで訪問すれば、それだけで「暑い中ありがとうございます」と感謝される。お茶を飲んで話を聞いて帰るだけでも、顔を出しているから頑張っていると評価されがちだといいます。
吉田さんはこれを「人柄営業」と呼びます。ひと昔前ならそれで契約が続いたかもしれないが、ビジネスの本質を考えると、顧客への価値提供をしていないため意味がないと指摘します。
(訪問して話を聞くのは)実は楽だなと思いました。暑い中、ネクタイ締めてスーツ着てお客さんとこ訪問したら、それだけで感謝されるんですよ。
そうした人柄や人情で押し切るやり方とは決別し、リモートワークで成果を出して顧客のビジネスに貢献したいと吉田さんは話します。
リモートワークは好きな場所で仕事ができて楽に見える一方、成果が出なければ人柄や人情で営業することはできません。だからこそ、よりハイレベルなものが求められるとし、そこにチャレンジしていきたいと語ります。
理解しない取引先とどう線を引くか
結局のところ、自分たちのビジネスの問題解決力があれば、リモートワークでも十分に商売は成立すると吉田さんは考えています。そのうえで、それを理解してくれる取引先とだけ取引することが重要だと繰り返します。
とはいえ、理解しそうに見えて実はそうではなかった、というケースもあります。そこで、契約関係をあらかじめコントロールしておくと後で困らないと吉田さんは勧めます。
具体的な方法として挙げるのが、契約書やサービス説明資料に「サービスは基本的にオンラインで行う」と明記することです。
また、以前は訪問料を設定していたとも話します。1回訪問するごとにいくら、という料金です。
「会社に来い」を断る訪問料という仕組み
訪問料を設定していたのには理由があります。ときどき「今度会社に来て説明してほしい」と来社を強く求める顧客がいるからです。
「うちの会社に来い」みたいな人いるじゃないですか。あの昭和の社長みたいな人。
そうした要望に対しては、契約書に記載した通り訪問には出張料が必要だと伝える。すると多くの場合「じゃあいいです」となり、ウェブ会議や電話で解決するといいます。
吉田さんによれば、ここで顧客が2つのタイプに分かれます。理解のある人は「来なくても解決できる」と学び、以後は訪問を求めなくなるそうです。
一方でビジネスの理解度が低い人は「訪問しないなら解約」となる。その結果、自社に合う人だけが残っていくと吉田さんは説明します。
来社を要求される
「会社に来て説明してほしい」と求める顧客が現れる
訪問には出張料と伝える
契約書の記載を根拠に訪問料が必要だと説明する
多くはオンラインで解決
「じゃあいいです」となりウェブ会議や電話で解決する
自社に合う人だけ残る
理解のある人は残り、理解度の低い人は離れていく
訪問の非効率と、哲学を明確にする効果
リモートワークの会社を経営してみて、吉田さんは訪問がとても非効率だと感じたといいます。
多くの会社はドアツードアで1時間ほどかかる。行って帰って、さらにサービスまで行えば半日はすぐ潰れてしまう。それでは会社の生産性が上がらず、生き残っていけないという見立てです。
出社を強要する人は、そのままビジネスの効率性を理解していない人だと吉田さんは考えます。効率的にやらなければ成果が上がらず、給料も出せない。給料が出せなければいい人も来ず、いい会社にもなれないという順番です。
効率的にやらないと成果が上がらないから給料も出せないし、給料も出せなかったらいい人も来ないと。いい人も来なければいい会社にもなれないよね。
だからこそ、なぜ訪問しないのかという哲学をはっきりさせることが大切だと吉田さんは言います。それによって、事務所を理解した顧客ばかりが残り、効率的でいい形のサービス提供ができるようになるそうです。
まとめ
士業事務所でリモートワークを成功させる鍵は、取引先の選び方にあるという回でした。ビジネスの本質は相手の問題解決であり、非対面でも成果を出せる力があれば商売は成立します。その考えを理解してくれる取引先とだけ取引するために、契約書への明記や訪問料といった仕組みを使うことが有効だと語られました。
- リモートワーク成功の鍵は、それを理解してくれる取引先を選ぶこと
- ビジネスの本質は相手の問題解決であり、非対面でも成果を出せれば契約は成立する
- 訪問を前提とする発想や人柄営業とは決別し、成果で貢献する姿勢を重視する
- 契約書にオンライン提供を明記し、訪問料を設定することで来社の強要を断りやすくなる
- 哲学を明確にすると、事務所を理解した顧客だけが残り、効率的なサービス提供ができる




