自社をフルリモート寄りに変えた2年間の経験から
吉田さんが社労士になったのは10年以上前で、当時はリモートワークがほとんどなく、出社が当たり前だったといいます。
状況が変わったのは、新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけでした。多くの会社がリモートワークを取り入れ始めたのが、ここ数年の変化だと吉田さんは振り返ります。
吉田さんが経営する社会保険労務士法人ワンハートでも、当初は出社型でした。しかし、リモートワークでうまくいっている会社の話を聞くうちに考えが変わったといいます。
あ、これリモートワークの方が絶対いいじゃんと思って、創業1年ぐらい経った時から基本リモートワーク、週に一回しか出社しないとか
ワンハートでは、スタッフによっては完全なフルリモートで働く人もいます。この2年ほどのリモートワーク運用で得たノウハウを、この回で共有していくという流れです。
リモートで最初に握るべき「期待成果」とは
吉田さんはまず、リモートワークがうまくいくかどうかは会社の仕組みと本人の特性という複数の要素で決まると整理します。会社の仕組みの1つ目として挙げるのが、期待成果を握っておくことです。
対面と違い、リモートワークでは相手が普段何をしているかが見えにくくなります。そのため期待成果を伝えていないと、働きぶりと成果がずれても問題が表面化しにくいと吉田さんは指摘します。
一応1日8時間とか所定労働時間働いたんだからそれでいいじゃないかみたいな話になって、(会社が期待する働きぶりと)実際の働きぶりに大きな違いがあったとしても、一応働いてるから悪くないよね
だからこそ、あなたにはこういう仕事を期待していて、こうなれば成功だという状態を、対面以上にリモートでは明確に伝えたほうがよいと話します。
ワンハートの具体例として、正社員で顧客を担当するフロントメンバーには、担当する売上を1000万以上持ってほしいという話を入社時にするといいます。経営を分析すると、その水準を担当してもらわないと経営がうまくいかないとわかっているためです。
売上以外にも、たとえば先に入っている忙しいスタッフをサポートすることが最初の仕事だといった会社ごとの課題も、入社時に伝えているとのことです。
さらに期待成果は入社後も変わっていくため、定期的に伝え続けたほうがよいと吉田さんは付け加えます。
コミュニケーションが減るリモートで会社が用意すべき仕掛け
会社の仕組みの2つ目として、吉田さんはコミュニケーションを促進する仕掛けの必要性を挙げます。
対面なら、隣の席の人に「ちょっと教えて」と気軽に聞けます。しかしリモートワークでは、そのために打ち合わせの時間を合わせる必要があり、気が引けてしまいがちだといいます。
すいません、ちょっと今ZOOMの打ち合わせできませんかね、誰々さんみたいな話をして、それで時間を合わせてZOOMの打ち合わせをしたりする。それって結構大変なんですよね
そこで吉田さんは、意図的にコミュニケーションを促す仕掛けや時間を用意する必要があるとします。具体例として、毎日決まった時間に打ち合わせをすることや、目的とメンバーを決めた打ち合わせを挙げます。
定期的なワンオンワン面談を会社の仕組みとして予定に組み込むことも勧めています。中小企業では慣れてくると社長と従業員が話さなくなりがちで、そのまま従業員の心が会社から離れてしまうこともあるためです。
他社の事例として、常時ZOOMで接続して常に顔が見える形をとるところや、バーチャルオフィスをうまく使っている会社も紹介されました。
吉田さんが感心したのは、上司が特定の曜日と時間にバーチャルオフィスへ出現すると約束し、その時間を予定としてブロックしておく運用です。話したい人はその時間に行けば上司と話せる、という形になっています。
業種や事業目的に合わせてこうした仕掛けを作ることが、リモートワークをうまくいかせるコツだと吉田さんはまとめます。
リモートワークに向く人の2つの条件
ここから吉田さんは、本人の特性の話に移ります。前提として、家で一人でいるのがつらい人や、みんなでワイワイやるのが好きな人は、そもそも出社型のほうが合うだろうとしています。
そのうえで、事業運営の経験や他社の話から見えてきた、リモートワークに向く人の2つの条件を挙げます。
1つ目は、概念化能力や抽象化能力が高いことです。対面なら先輩の仕事の背中を見て体で覚えられますが、リモートではそれがしにくいためだといいます。
リモートでは、与えられた仕事がうまくいくための要素を自分で分解し、組み立てる力が求められます。ここで役立つのが、これまでの経験から仕事のツボを引き抜く抽象化の力だと吉田さんは説明します。
(形だけ仕事を覚えてきた人は)なんとなく形だけ、形式だけ、表面だけ真似て仕事を覚えていくっていうのができないので、なかなか(リモートでは)活躍できないのかなと思います
2つ目は、いい意味で図々しいことです。対面ではふとしたきっかけで会話が生まれ、業務のヒントがもらえることがあります。浮かない顔をしていれば、気の利く人が声をかけてコツを教えてくれることもあります。
一方でリモートワークには、そうした偶然の声かけがほとんどありません。だからこそ、困ったときに自分から同僚や上司を巻き込み、問題解決のヒントをもらってやりきる素質が重要になると吉田さんは話します。
仕事のツボを自分で引き抜き、要素を分解して組み立てられる。先輩の背中を見て覚える機会が少ないリモートで効いてくる
偶然の声かけがないリモートで、困ったら自分から同僚や上司を巻き込み、ヒントをもらってやりきれる
賛成派と反対派に分かれるのは「変数が多い」から
話は前回のポッドキャストで扱った「リモートワークはサボりだよね」という議論に戻ります。この意見は賛成派と反対派に分かれると吉田さんは言います。
意見が割れる理由について、吉田さんはリモートワークにまつわる変数が多いからではないかと分析します。
期待成果の握り、コミュニケーションを促す仕掛け、いい意味での図々しさ、概念化・抽象化能力など、要素が多いぶん、人によって見ているリモートワークの姿が違うのだといいます。
だからこそ、サボっているから反対だという人もいれば、むしろ生産性が上がっていいという人もいるという形で、意見が分かれるのだと吉田さんはまとめました。
まとめ
吉田さんは、リモートワークがうまくいくかどうかを会社の仕組みと本人の特性の両面から整理し、意見が割れるのは関わる変数が多いためだと結論づけました。
- リモートでは期待成果を入社時に握り、変化に合わせて伝え続けることが土台になる
- 気軽に聞けない環境だからこそ、定期面談やバーチャルオフィスなどコミュニケーションを促す仕掛けを会社が用意する
- 向く人の条件は、概念化・抽象化能力が高いことと、いい意味で図々しいことの2つ
- リモートワークへの賛否が分かれるのは、成果の握りや本人の特性など変数が多く、見ている前提が人によって違うため





