リモートワークの便利さと「見えなさ」が生む賛否
今回のテーマは、「体調不良なのでリモートワークします」という申し出は是か非か、というものです。
吉田さんはまず、リモートワークの光と影を整理します。コロナ以降にリモートワークが広まったことで、日本全国どこでも、場合によっては世界のどこからでも働けるようになった便利さがあると話します。
一方で、オフィスに一緒にいないため、どこで何をしているのか見えにくく、場合によってはサボっている人もいるというマイナス面もあると指摘します。
そのうえで賛否が分かれるのが、「出社はできないが、リモートワークなら働けます」という健康状態のスタッフから申し出があったとき、会社はどうするべきかという論点です。
吉田さんの結論は「小さい会社ならあり」
吉田さんの結論は、ケースバイケースとしつつも明確です。小さい会社であれば認めてもよい、というものです。
「出社できない体調だからリモートワークしてもいいですか」に対して「いいですよ」って回答するのは、小さい会社だったら私はありだと思います。
ここでの「小さい会社」とは、社長が全員の顔がわかり、人柄も知っているような規模を指しています。なぜそう考えるのかを、吉田さんは順番に説明していきます。
体調不良を知りながら働かせる会社側のリスク
その前提として、会社が知っておくべきリスクがあると吉田さんは言います。体調不良だとわかっている人を就業させること自体にリスクがある、という点です。
体調不良の従業員を働かせて症状が大きく悪化したり、場合によっては命に関わったり、重大な障害が残ったりする可能性はゼロではないと話します。
そのとき、会社が体調不良を知りながら働かせていたとなると、安全配慮義務 ── 労働契約法などに基づき、会社が従業員の生命や健康を危険から守るよう配慮する義務。健康に出社した人を健康なまま帰す責任などが含まれる。の違反が問われます。
吉田さんは、健康な体で出社してきた人は健康な体で帰さなければならない義務が会社にはあると説明します。
体調不良の従業員を働かせて、何か大きなことになったら、会社として例えば損害賠償責任とか、そういったことになる可能性がある。
また、体調不良なら休むことに専念するべきで、無理をすれば回復が遅くなる、というシンプルな反対意見も紹介します。それもごもっともだと吉田さんは受け止めています。
それでも「小さい会社なら認めてよい」と考える理由
こうしたリスクを踏まえたうえで、吉田さんはやはり小さい会社なら認めてあげてもよいと考えます。
理由の一つは、出社はできないがリモートワークならできる、という健康状態が現実に存在するからです。
例えば、少し発熱していて他の人にうつしたくない場合や、収録時の1月のような寒さのなか電車で通勤するのは難しいが、家でなら所定労働時間ほどは働ける、という状態があると吉田さんは挙げます。
もう一つの理由は、労働者側の視点です。小さい会社では、1日、2日、3日、場合によっては1週間ほど療養して出社すると、メールやSlackなどの通知がたまり、仕事も山のように積み上がっていることがあります。
それなら、リモートで少しずつでも消化できたほうが本人にとって楽なのではないか、と吉田さんは考えます。
さらに、小さい会社は横のつながりが強く、休むことで他のスタッフに迷惑をかけたくないという気持ちもあると指摘します。
リモートワークだったらできますよっていう人だったら、働いていただくのは十分に話し合った上でOKしてもいいのかなと思ってます。
なぜ「全員の顔がわかる会社」に限定すべきか
吉田さんは、認めるとしても全員の顔がわかる小さな会社に限定すべきだと強調します。
大きな会社で「体調不良でも働いてよい」とルールを明文化すると、社長や管理部門の目が届かないところで、厳しい上司が無理に働かせる事態が起こりうるからです。
(厳しい上司が)本当だったらすぐに病院に行かなきゃいけないような体調でも、「リモートワークだったらできるだろお前」みたいな話をして、無理やり働かせてたなんていうことが起こりうる。
そうなれば、先に述べた安全配慮義務の問題につながり、何かあったときには会社の責任になります。最終責任者がすべてに目を配れない大きな組織では、気づいたら無理な働かせ方をしていた、という事態も起こりかねません。
そのため、部門がたくさんあるような大きな会社では、体調不良だったら必ず休んでくださいというルールにせざるを得ないと吉田さんは結論づけます。
反対派の意見を整理する
この申し出には反対派も多く、吉田さんが聞いてきた反対意見を整理します。
一つ目は、リモートワーク自体をサボりだと思い込んでいるケースです。出社して働くのが大変だから、休むために、あるいはサボりたいからリモートワークしたいという申し出だと勘違いしている人がいると指摘します。
二つ目は、リモートワークならパフォーマンスを落としてもいい、とスタッフが考えてしまうケースです。月曜から木曜まで出社し金曜がリモートだと、木曜で今週は終わりという感覚になり、金曜は気が抜けた状態で働きかねないと例を挙げます。
ただしこれは本来おかしい、と吉田さんは言います。労働契約で決められた内容に基づいて働くのだから、リモートだからパフォーマンスを落としてよいとは、雇用契約書にも就業規則にも書かれていないはずだからです。
三つ目は、体調が悪いなら療養に専念してしっかり治してほしい、というまっとうな意見です。
リモートワークの増加は退職の予兆か
反対意見とは別の論点として、吉田さんはリモートと出社を選べる会社での「退職の予兆」説にも触れます。
先月まで月1回ほどしかリモートワークをしていなかった人が、毎週リモートを入れるようになると、会社から心が離れているサインかもしれない、という見方です。
出社であればランチや仕事終わりの食事などの輪に入る機会があります。そこに入れず、退職を検討しているから出社したくなくてリモートを増やす、というケースもあり得ると話します。
そのため、チームビルディングの観点から、リモートワークをどんどん入れられると組織運営上はマイナスだ、という意見もあると紹介します。
認めるなら「責任を取れる範囲」で基準を作る
最後に吉田さんは、自身の立場を改めてまとめます。会社組織が小さく、会社が責任を取れることが前提だと述べます。
そのうえで、スタッフそれぞれの特性を理解し、この人なら体調不良時にリモートワークをしても大事にはならないという確信があるなら、ちゃんと基準を作ったうえで体調不良時のリモートワークを認めてもよいと締めくくります。
番組の最後には、社労士法人ワンハートが急成長する会社に向けた働き方の設計を提供していること、初回相談は無料であることが案内されています。
まとめ
「体調不良でもリモートなら働ける」という申し出は、会社規模と安全配慮義務を軸に判断が変わります。吉田さんは、社長が全員を把握できる小さな会社なら基準を設けたうえで認めてよい一方、目の届かない大きな会社では必ず休ませるべきだと整理しました。
- 体調不良を知りながら働かせることには、安全配慮義務違反や損害賠償責任のリスクがある
- 出社は無理でもリモートなら働ける健康状態は現実に存在し、通知や仕事の消化で本人が楽になる面もある
- 認めるなら、社長が全員の顔と人柄を把握できる小さな会社に限定するのが吉田さんの考え
- 大きな会社では上司が無理に働かせる事態を防ぐため、体調不良は必ず休ませるルールにせざるを得ない
- 反対意見にはサボり視・パフォーマンス低下・療養優先があり、リモート増加を退職の予兆と見る説もある






