なぜ「事実」と「意見」を分けて話すのか
問題社員と面談するときの前提として、吉田さんはまず準備の重要性を挙げています。会社がどこを問題と考えているのかを、事実として理路整然とまとめた資料を面談前に用意しておくことが必要だと話します。
そのためには、いろいろな人へのヒアリングに加え、チャットのログやウェブ会議の記録などを確認し、何月何日に何が起こったのかを全部記録した状態で面談に臨むことが大切だとされています。
何月何日、どういうことが起こったっていうのは全部記録した状態で面談に臨んでください。ここがすごく準備が重要なので。
そのうえで面談中の話し方のコツとして挙げられたのが、自分が話しているのが事実確認なのか個人的な意見なのかを分け、できるだけ事実確認に寄せて話すという点です。これがこじれないポイントだと説明されています。
いつ・何が起こったかを淡々と確認する。こじれにくい
相手の行動への評価や決めつけ。炎上のもとになりやすい
セクハラ面談で「これは真実ですか」から入る理由
吉田さんはセクハラが疑われる問題社員と話す場面を例に挙げます。男性スタッフが女性スタッフにしつこくLINEを送り、食事の誘いや過激な内容を送っているといった状況を想定しています。
こうしたケースでは、被害を受けた女性側がLINEのスクリーンショットなどを証拠として押さえ、人事部門や労務部門、会社の相談窓口に届いていることが多いといいます。
面談ではまず、その証拠を淡々と確認していきます。吉田さんが挙げる第一声は、相手の行動を評価するものではなく、事実そのものの確認です。
これってあなたが送ったLINEですか?それだけでいいんです。
ここまで事実確認にとどめるのには理由があります。ほぼないケースとしつつも、LINE自体が乗っ取られていた可能性もゼロではないため、まず「これは本当なのか」を確かめるところから入るべきだと説明されています。
一方で、意見のレベルに踏み込むと表現が変わってきます。無視されているのだから恋人関係ではない、脈がないのがわからないのか、といったところまで言ってしまうと、それは個人的な意見だと受け取られ、炎上する可能性があると吉田さんは注意します。
これだけ無視されてるんだから、あなたたち恋人関係ではないですよね。脈がないのわからないんですか?
当の本人からすれば、押し続けることで最後は恋人関係になれると思い込んでいるかもしれません。だからこそ、送ったのは真実か、という事実確認までにとどめるべきだと述べられています。
パワハラ面談でも意見に踏み込まないための線引き
続いて理解を深めるために、パワハラの例が示されます。上司が部下を長時間会議室に閉じ込め、大声で叱責したという事案を想定しています。
事実確認として適切なのは、日時や状況を淡々と確かめる質問だと吉田さんは言います。何月何日午後13時から1時間、会議室に閉じ込めて大声で叱責したのは本当ですか、といった聞き方です。
問題になるのは、事実確認が済んでいないうちに評価まで加えてしまうケースです。「こんなに長時間叱責するんだな、あなたは上司として失格だよ」まで言ってしまうと、それは質問者の意見になってしまうと指摘します。
パワハラをしたと思われている上司にも、その上司なりの考えがあるかもしれません。長時間叱責することで業務への真剣度が増し、業務レベルが上がると信じている人もいるため、こちらの意見は言わない方がよいとされています。
何が事実なのかって、それを淡々と確認していくっていうのがポイントです。できるだけ意見は言わない方がいいと思います。
事実確認の次に「相手の意見」をあえて聞く
事実確認を終えたら、次のステップとして、今度はあえて相手の意見を聞いた方がよいと吉田さんは言います。相手への事実確認と、相手の意見を聞くことは分けて考えられています。
セクハラ事案であれば、LINEを送ったのは事実かを確認したうえで、「差し支えなければどういうお考えなのか教えてもらえませんか」と聞くと、いろいろなものが見えてくると話します。
最初のうちはすごくLINEが返ってきたから、このまま付き合えると思ってましたとかね。
加害者側にも言い分があるため、それを聞いていくことが重要だとされています。パワハラの例でも、会議室で1時間叱責したのは事実かを確認したうえで、なぜそういう行動を取ったのかを聞いてあげることが大切だと述べます。
その背景にはいくつかの可能性があります。部下の方が逆に上司を挑発していたのかもしれず、丁寧に教えてきた上司の我慢の限界が来たのかもしれません。あるいは、丁寧な指導も挑発もない中で、パワハラ癖があってただ叱責していたのかもしれず、どれなのかで話は変わってくるといいます。
ここを何かあえて相手方の意見っていうのは聞いた方が、なんか話はまとまりやすいかなと思います。
「逃げ道を残す」という考え方
もう一つのコツとして、吉田さんは問題社員への向き合い方に触れます。パワハラやセクハラ、横領といった問題行動を許しがたいと感じ、とことんやってやると考える人がいますが、それはすごく危険だと述べています。
問題社員っていうのを許しがたいと、とことんやってやるみたいな感じでやる人がいるんですよ。私、それはすごく危険だなと思ってます。
理由として挙げられるのは、全てを失った人は無敵状態になるという見方です。世の中では、街中で包丁を振り回して無差別殺人を起こす人もいるように、追い込まれた人が自爆的な行動に出る可能性があるといいます。
だからこそ、その人が一番やられたくないことは、あえてしないようにした方がよいと吉田さんは考えています。逃げ道を残しておくことによって、後々話し合いがまとまるという発想です。
セクハラの例では、熱くなった社長が「これ全部扶養家族の妻に言うぞ」と言いたくなるかもしれないと吉田さんは挙げます。しかしそれ自体が脅迫的でリスクがあるうえ、逃げ道をふさぐ行為でもあります。
逆に、事実を認めるなら「このセクハラが起こったことは、私の心の中で墓場まで持っていくよ」と伝えるような対応であれば、話し合いはまとまりやすいと説明されています。
追い込まれて逃げ道がない状態だと、こう自爆行為というか、すべてを捨てて攻撃してくる可能性があるので、あえて逃げ道を残した方がいいと思います。
話がまとまったら「ネクストアクションの記録」で締める
事実確認をし、相手の意見を聞き、逃げ道を残していくと、最初は重苦しい雰囲気でも、話は結構まとまってくると吉田さんは話します。
そのうえで最後にすべきなのが、ネクストアクションの記録を残すことです。ここが面談の締めにあたる段階だとされています。
最後何しなきゃいけないかっていうと、ネクストアクションの記録を残すってところです。
具体例として、二度としないという誓約書を書いてもらう、事実だったと認めた文章に一筆書いてもらう、といった対応が挙げられています。そこから懲戒処分につなげていくこともあります。
問題行動がひどすぎて自社で働き続けるのは難しいと判断される場合には、退職してもらうという考え方もあります。その場合も、ちゃんと合意していく文書を作っていくことが最後の段階になると説明されています。
ただし退職の場合は別途退職合意書が必要になるため、書面は後日提示することになります。面談の場では、いつ退職になるのかといった点まで、ある程度の共通認識を持てるとよいとまとめられています。
まとめ
問題社員との面談は、事前準備で事実を整理したうえで、事実確認から意見の聴取、逃げ道の確保、記録の作成へと段階を踏むことで、こじれにくくなると語られた回でした。感情的な評価を避け、淡々と進めることが一貫したポイントとされています。
- 面談前に、日時と出来事を記録した事実の資料を準備しておく
- 面談では事実確認と個人的な意見を分け、できるだけ事実確認に寄せて話す
- 事実確認のあとに、なぜその行動を取ったのか相手の意見をあえて聞く
- 相手を追い込みすぎず、逃げ道を残すことで話し合いがまとまりやすくなる
- 最後は誓約書や合意文書など、ネクストアクションの記録を残して締める




