Dリーガーの朝は納豆ご飯とバナナから?
『喋場cue』の第26回は、前回に続いてD.LEAGUEのI'moonに所属するMaRinさんへのインタビューです。前回はMaRinさんがダンスを始めてD.LEAGUEに挑戦するまでを聞いており、今回はDリーガーになってからの日々がテーマになります。
MaRinさんは現在、D.LEAGUERとして2シーズン目を経験しています。番組のリスナーには関西の人が多く、D.LEAGUEはまだ身近ではない部分があるため、PUNCHしょーへーさんは「Dリーガーって何してるんやろう」をしっかり聞きたいと話します。
そこで、シーズン中の仮想の一週間を組み立てることになりました。今シーズンの大会は平日開催が多く、曜日は決まっていません。チームがハイプリーグとバイブリーグの2つに分かれて2日開催になったため、例として水曜と木曜に本番がある週を想定します。
MaRinさんの月曜日は、7時15分の起床から始まります。歯を磨き、体がガチガチなのでストレッチをしながら支度をして、朝ごはんは納豆ご飯、できればお味噌汁も付けます。
起きるのは7時15分。
7時15分。微妙な15分刻んできましたけれども、リアルですね。
チームに専属の栄養士はいないものの、シーズン初めに栄養に詳しい人の話を聞く機会があったといいます。実践するかどうかは本人次第で、MaRinさんはその内容をふまえて今の朝食を選んでいます。
もうやるかやらんかは自分次第やけど、こういうのがいいよみたいな。
朝10時から夕方まで、毎日がダンスの「定時勤務」
MaRinさんが朝向かうのは、チーム専用のスタジオです。場所は非公開ですが、ありがたいことに用意してもらっているといいます。持ってきたバナナはスタジオで食べ、食べながらストレッチをするのがメンバーの定番だそうです。
もうみんなバナナ食べてます朝。
I'moonのリハーサルは朝10時スタートです。メンバーはジャズダンス出身が多く、着くのがとても早いため、9時過ぎには最寄り駅に着いていて、すでにスタジオにいる人もいるといいます。
リハーサルでは、本番直前になるとそのラウンドの作品だけに集中します。ただ普段は2作品、ときには3作品を並行して練習していて、時間を区切って次々に取り組みます。
月曜日の練習は16時半から17時ごろまで続きます。MaRinさんはこの生活を「ほんまにサラリーマン」と表現し、PUNCHしょーへーさんも、9時5時がすべてダンスに充てられている、まさにダンサーが職業の生活だと驚きます。
練習後の過ごし方は人それぞれです。消化しきれない振りがあれば「放課後」のようにスタジオに残る人もいれば、レッスンやイベントに向かう人もいます。予定がなければ、MaRinさんは家に帰って早めにご飯を自炊し、早めに寝るそうです。
本番前に一人で全部踊る、超プレッシャーの時間
本番が近づいても、練習の流れはほとんど変わりません。本番の2日前から少し早く切り上がるものの、前日も朝から夕方までの練習が基本です。
大きな違いは、本番の前日か前々日に、出場メンバーが1人ずつ作品を踊る時間があることです。普段は8人でステージに立って成り立つ作品を、メンバー全員が見ている前で、最初から最後まで1人で踊ります。
まあ前日か前々日に、その本番出るメンバーは一人ずつ踊るっていう超プレッシャーな時間があって。
1人ずつ踊ったあとには、ダメ出しも普通にあります。ディレクターに限らず、チームメイト同士でも率直に言い合う関係だといいます。
褒められることもあれば、いや、ちょっとやばいんちゃう?とかいう時もあります。
本番前日は体を休めることが優先です。体のメンテナンスに行くメンバーもいて、MaRinさんはよく銭湯でサウナに入るそうです。納豆ご飯と味噌汁に銭湯という並びに、PUNCHしょーへーさんは「ローカル感がいい」と笑います。
本番当日は始発前に家を出る
本番の水曜日、MaRinさんの朝はさらに早くなります。I'moonは女性だけのチームで、全員がメイクと髪型を仕上げてから会場に入るためです。早いときは始発で、まだ暗いうちに家を出てスタジオでメイクをし、そこから会場に向かいます。
やっぱメイクとか髪型とか結構こだわりを毎ラウンド持ってるからこそ、やっぱリハの前に全部バッチリにしていくっていう感じです。
会場でメイクをするものだと思っていたPUNCHしょーへーさんは意外そうに聞きますが、MaRinさんは、この流れは「I'moon特有かもしれない」と補足します。メイクはスタイリストのような担当の人がしてくれるそうです。
会場には、出番までの待ち時間にもよりますが、早ければ9時半から10時ごろに着きます。お弁当を食べ、リハーサルに向けて体を起こし、衣装に着替えます。審査項目に「シンクロ」があるため、隙間の時間があればみんなでシンクロを揃えるといいます。
ただ、本番前の過ごし方はメンバーによって違います。本番までに疲れてしまう人もいるので、よく寝る人もいれば、たくさん練習する人もいるそうです。
照明もカメラワークも、リハは20分だけ
本番当日の会場リハーサルは、1チーム20分だけです。照明も含めて、その時間ですべてを合わせます。
本番のリハーサルは、こんなん言っていいんかわかんないですけど、20分間だけ。
近年のD.LEAGUEは照明の演出にもこだわるようになり、PUNCHしょーへーさんはアニメーションのような光の演出を挙げます。MaRinさんによると、I'moonの照明やカメラワークは専門家に任せきりではなく、ディレクターの瑞江さんを含めメンバーもアイデアを出し合って作っているそうです。
CSは特にそんな気がします。でももうベースは瑞江さんが天才っていう感じです。
リハーサル後、各チームは控えの場所で出番を待ちます。相手チームとも普通にすれ違って挨拶を交わし、相手の演技を見るかどうかは人によって違うそうです。
MaRinさん自身の本番前のルーティンは「寝る」ことです。朝がとても早いため、一度休んでから好きな音楽でリフレッシュします。そのうえで、その日のラウンドの流れも勝敗に関わるので様子を確認し、リハーサル映像を見て不安な点をつぶしていきます。
MaRinさんの話から、本番当日の流れを整理すると次のようになります。
早朝
始発ごろに家を出て、スタジオでメイクと髪型を仕上げる
会場入り
早ければ9時半〜10時ごろ。食事、着替え、シンクロの確認
リハーサル
照明も含めて20分間ですべてを合わせる
待ち時間
一度寝て音楽でリフレッシュし、リハ映像で不安点を解消する
本番後
ファンのお見送りをして、終電ギリギリで帰宅
本番が終わると、ファンの帰りを見送る「お見送り」があります。そのため帰りは終電があるかないかの時間になります。
本番翌日は応援、そして週休2日
2日開催の2日目となる木曜日は、MaRinさんたちのチームのラウンドがない日です。出場しないチームのメンバーはステージ横に座って応援するため、入り時間は前日より遅くなります。
2日目はハーフタイムに流行りの曲で踊ったり、客席でサインボールを渡したりと、ファンと触れ合う時間が多い日です。ただ、この日も帰りは終電ギリギリになります。
2日間の本番を終えた金曜日は完全な休みで、土曜日も休みになることが多いといいます。PUNCHしょーへーさんは「週休2日制みたいな」とまとめます。
そして日曜日、次のラウンドに向けたリハーサルが始まります。最初に行うのは、2日間のラウンドを振り返る会議と、次の対戦相手と見比べてどう戦うかの話し合いです。
対戦相手と採点項目から逆算する作品づくり
I'moonの作品づくりは、対戦相手を意識した戦略から始まります。PUNCHしょーへーさんが、相手によって見せ方を変えるのかと聞くと、MaRinさんは「めっちゃあります」と即答します。
今シーズンのD.LEAGUEは採点項目ごとにパーセンテージが出て、勝ち負けが決まる仕組みです。そのため、項目と作品と自分たちにできることをすべてすり合わせ、穴を埋めていくように作品を組み立てるといいます。
なんかDリーグのシステムが項目ごとに今シーズンはパーセンテージが出て、それで勝ち負けが決まるんで、
なんか項目と作品と自分たちができることを全部すり合わせて、穴を埋めていくじゃないですけど。
PUNCHしょーへーさんは、この曲がかっこいいから選ぶのではなく、ある項目を捨ててでも別の項目で勝つために振り切る、といった会話があるのかと確認し、MaRinさんは「ほんまにそうです」と答えます。
振り返り
2日間のラウンドを見てどうだったかを会議する
比較
次の対戦相手と見比べ、どう戦うかを話し合う
すり合わせ
採点項目・作品・自分たちにできることを合わせて穴を埋める
まとめ
ジャンルの中心メンバーがベースを作り、ディレクターが最終的にまとめる
最終的にまとめるのはディレクターの瑞江さんです。今シーズンのI'moonはジャズダンスだけでなく、ワック ── ワッキング。腕を大きく素早く回したり振ったりする動きを特徴とするダンスジャンルですやロッキン ── ロッキング。動きを止める「ロック」と、指差しなどのコミカルな動きが特徴のダンスジャンルですなど違うジャンルに挑戦することが多く、そのジャンルが中心のメンバーがベースを作ったといいます。
音楽もオリジナルです。MaRinさん自身は曲作りに関わったことはないものの、作品の中心になるメンバーが構想を練り、曲を作る人と会議して作っていくそうです。その準備は対戦相手が決まった段階など、かなり前から始まっています。
またその、何ですか、その我々が出てたというか、そのジャパンとか、そういうコンテストの戦い方とは全く違う戦い方なんですね。
0.01秒単位で揃える「シンクロ」の世界
PUNCHしょーへーさんは、Dリーガーは振りのミスが少なく、全体的によく揃っていると感じています。特に審査項目にシンクロが加わったことで、揃える難しさは増しているといいます。
はい、シンクロはやばいです。
もう何個意識するとこあんねやっていうぐらい。
MaRinさんによると、シンクロは立って踊る場面だけでなく、床を使う動きや背面の動きでも求められます。プレッシャーが一番大きいのは踊る側ですが、見て指摘する側も大変だといいます。
はい。もう0.1秒、0.01ぐらいの世界線。
最初はメンバーも、指摘されることにストレスを感じていたそうです。しかし今ではみんなが「職人」のようになり、すぐにズレに気づき、言われた側も「ありがとう」と受け入れる雰囲気になっているといいます。
指摘されることにストレスを感じていた
みんなが職人のようにすぐ気づき、「ありがとう」と受け入れる
ケガに泣いた1年目から、毎晩1時間のメンテナンスへ
体やメンタルの管理について聞かれたMaRinさんは、1年目にケガも体調不良も多かったことを打ち明けます。本番の1週間前に出られるかわからない状態になったこともあったそうです。
なんで、もう2年目は絶対嫌やから。
そこで2年目のMaRinさんは、筋トレとメンテナンスを徹底しています。休みの日は必ずメンテナンスに行き、寝る前には1時間ほど筋膜ローラーやストレッチで体をケアしています。
1年目はケガや体調不良が多く、本番に出られるかわからないこともあった
2年目は筋トレ、休日のメンテナンス、寝る前1時間のセルフケアを続けている
PUNCHしょーへーさんは、自分のためだけのダンスならそこまではなかなかできないと話します。チームやリーグ、関係者を背負っているからこそ生まれる行動そのものにプロ意識が表れていると受け止めています。
下位から2位へ、I'moonはなぜ強くなった?
今シーズンのI'moonは2位という結果を残しました。PUNCHしょーへーさんは、以前はジャズ中心の女性チームという印象だったI'moonが、多彩なメンバーや勢いのある作品、映像越しにも伝わる一体感を持つチームになったと話します。
MaRinさんはまず、I'moonがD.LEAGUEで唯一の女性だけのチームであることを挙げます。D.LEAGUEが6年目を迎えた今シーズン、I'moonは初めてチャンピオンシップに進みました。
なんで、結構それまでの5年間が、まあ下位のチームっていうイメージやったと思うんで、なんか結構ほんまに苦しい5年間をずっと送ってきたっていう、なんかみんなの粘り強さもあるし。
MaRinさんが挙げたI'moonの強さを整理すると、次のようになります。
MaRinさんは、普段の和気あいあいとした雰囲気がダンスにも表れていると感じています。PUNCHしょーへーさんも、一週間の話を聞いて、仲が良くなければこの生活は続かないと応じます。
(I'moonとして)これがやるんだ、目指すんだっていうところがちゃんとみんなで共有できてないと2位は取れないと思いますね、本当に。
後輩ダンサーへ「やらんよりやった方が絶対いい」
24歳になり、後輩ダンサーも増えてきたMaRinさん。PUNCHしょーへーさんのスタジオにも、かつてMaRinさんと関わった生徒が今もダンスを続けています。そんな後輩たちへのメッセージを聞くと、MaRinさんは挑戦の大切さを語りました。
えー、もうなんかちょっとでもやりたいなとか興味あるなって思うものがあったら、何でもいいから絶対に挑戦してみたらいいと思います。
MaRinさんは、D.LEAGUEのオーディションを受けると連絡したとき、落ちたら恥ずかしいと感じていたそうです。それでも一歩を踏み出したからこそ今があると振り返ります。
別にあかんかったとしても、なんか絶対それが無駄になることはないと思うし、なんかやらんよりやった方が絶対いいし。
MaRinさんは、挑戦する中で助けてくれる人がたくさんいると感じたことも伝えました。PUNCHしょーへーさんも、挑戦は一人ではできないからこそ、周りへの感謝を忘れずに続けてほしいと言葉を添えます。
MaRinさんの「一生ダンサー宣言」
番組の最後は恒例の宣言コーナーです。番組を運営するグラフィーは「一生ダンサー宣言」をミッションに掲げ、誰もが一生ダンサーだと言い切れる社会を目指しています。その流れを受けて、MaRinさんが自身の宣言をしました。
PUNCHしょーへーさんは、MaRinさんには踊り続けてニコニコしているイメージがあり、その姿自体が周りに影響を与えるはずだと話して、前後編にわたるインタビューを締めくくりました。
まとめ
MaRinさんの一週間からは、華やかな本番の裏にある、会社員のように規則正しい練習と、勝つための緻密な戦略、徹底した体のケアが見えてきます。そして、その積み重ねを支えているのは、プライドを手放して同じ目標を目指せるI'moonの関係性です。
- Dリーガーの平日は10時から夕方まで練習が続き、複数の作品を並行して仕上げている
- 本番当日は始発ごろから準備し、照明も含めて20分のリハで合わせ、お見送り後に終電で帰る
- 作品は採点項目と対戦相手から逆算し、0.01秒単位のシンクロまで仲間同士で指摘し合う
- 1年目のケガを教訓に、MaRinさんは毎晩1時間のセルフケアを続けている
- 後輩へのメッセージは「やりたいと思ったら挑戦を」。宣言は、踊り続けて人の心に残るダンサーでいること


