なぜ面談で「占いました?霊感ですか?」と言われるのか
この回のテーマは、玉置さんが受講生面談でよく言われるという「霊感ありますか?」という言葉の正体です。
玉置さんは前職で25年間、占い業界で仕事をしてきました。ただし本人は占い師ではないと言います。
これ実際言われたんでびっくりしたんですけど。占い業界で仕事をしていたので、受講生の方が「占いました?霊感ですか?」っておっしゃるんですよ。
「飲食業界でやってきました」つったら、「むっちゃ料理うまいんですか?」みたいな感じで聞かれるような感じなんですよ。
玉置さんによれば、面談でいきなり占いをしているわけではありません。誰でも再現可能なコミュニケーションスキルであり、その種明かしをしてみたいと話します。
人が「なんでわかったんですか?」と驚く瞬間
玉置さんは、人が「当たってる」と感じる場面をいくつか挙げていきます。
1つ目は、自分しか知らないはずと思っていることを言い当てられた時です。「私それ話してませんよね」となると、不思議な力ではないかと感じてしまいます。
実際に前日も、受講生に「前職これブラック企業で辞めてますよね」と言ったところ、「え、私言いました?」という反応があったと言います。ただ玉置さんからすれば、それは必然的な話だったそうです。
2つ目は、情報量が少ないのに精度が高いと感じる時です。
「最近ちょっと忙しくって」っておっしゃってる人に対して、「忙しいというよりは、ご自身だけが責任拾っていく感じがしんどいんですよね」とか言うと、「なんでわかったんですか」みたいになったりするんですよ。
3つ目は、自分の中の矛盾を見抜かれた時です。「現職辞めたいです」と話している人に「でも本当は辞めるの怖いですよね」と返すと、ドキッとされると言います。
さらに、自分の物語が繊細に扱われていると感じる時にも驚かれます。悩みを話すと、多くの場面ではただ解決すべき問題として受け取られてしまうためです。
本人の中ではどんな背景があったか、自分が何を大事にしているか、どこで傷ついたか、どこで迷っているのか、非常に解像度の高い話だったりするんですよね。
背景や価値観まで含めて「こうですよね」と返された時、ちゃんと理解してくれたという嬉しい驚きが生まれるのだと話します。
透視ではなく、事実からのパズル
玉置さんは、こうした「言い当て」の正体を明かします。何かを透視したわけではありません。
何かを透視したわけではなくって、その方が発信している情報から仮説立てをして確認してるに過ぎないんです。
霊感といえば情報ゼロで言い当てるイメージがあるかもしれません。しかし実際には、相手が発信している情報をもとにパズルを組んでいるだけだと言います。
空いているピースはおそらくこれだろう、という仮説を立てて口にしているに過ぎません。つまり一種のロジカルシンキングであり、名探偵が証拠と事実からピースを埋めていくプロセスと同じだと玉置さんは説明します。
この技術は、人とコミュニケーションする場面全般で役立つと玉置さんは話します。
相手と対等・フラットに向き合うという基本姿勢
技術の前提として、玉置さんはまず基本姿勢を挙げます。それは、相手と対等かつフラットに向き合うことです。
相手を過度に敬ったり下に見たりせず、理想化して完璧な人間のように扱わないことが大事だと言います。
採用面接で緊張する人は、無意識のうちに面接官をパーフェクトな人間だと扱っていることが多いそうです。
自分と向かい合う人は自分より優れている人に違いないっていう信念をなぜか持ってるんですよ。
しかし相手も隙も欠点もある普通の人間です。玉置さんは、世の中で成功している有名な人も、欠点も弱点もある人間だと話します。
その上で、無意識に持っている偏見や決めつけを捨てることも重要だと言います。
「男性は女性より賢いに違いない」「この世代は常識を知らない」「この見た目の人は仕事ができなさそう」といった偏見は、誰もが持っています。
偏見を完全になくすのは無菌室を作るような話です。だからこそ、自分がどんな偏見を持っているかを客観視し、そのフィルターを使わないと決めて向き合うことが大切だと語ります。
正解を打ち返すのをやめ、一歩引いて観察する
玉置さんは、コミュニケーションが苦手な人の特徴を指摘します。面接などで「変なことを言ってはいけない」「正解を言わなきゃ」と、ボールを返すことに意識を100%つぎ込んでしまう点です。
そうすると、相手を観察する余裕がなくなってしまいます。
一歩下がってみて、本当は自分っていうプレーヤーがいたら、後ろに立っている監督ぐらいのポジションで見るのが一番いいんですよね。
岡島さんは、この感覚をゲームの視点で例えます。一人称視点ではなく、自分のキャラクターがすぐ後ろに見える視点です。
FPSが一人称視点で、この首の位置にカメラがあるんですけど、首よりちょっと後ろに自分の動かしてるキャラが見える状態。
一歩引いてみると、相手が投げたボールを無理に打ち返さなくてもよいと気づけます。もう一度投げてもらう、受け止めるだけで返さない、ずれたところに返す、といった選択肢があるからです。
そもそも相手が投げたボールが良いボールとは限りません。面接官が完璧に考え抜かれた質問をしているとも限らないのです。
それよりも前段で打ち返すべきなのかどうなのか、このボールは何なのかっていうことを考えることの方が大事なので。
これは面接に限らず、営業やパートナーとのやり取りなど、あらゆるコミュニケーションに言えることだと玉置さんは話します。
事実として何を言ったかを、まず正確に受け止める
基本姿勢ができた上で、玉置さんは相手の発言から何を見るかを説明します。
1つ目は、相手が表向きに何を言っているのか、その事実です。実はここをちゃんと聞けている人は少ないと言います。この時点で解釈を混ぜてしまう人が多いためです。
「仕事が手いっぱいで、新しく引き受ける余地がなくって」と状況説明していても、上司によっては「やりたくないって言ってる」みたいな解釈で理解しちゃうんですよね。
続いて、その言葉の奥にある恐れや不安、欲求を考えます。何があってこの言葉が出てきたのか、一段奥の意図を推測します。
さらに、本当はどうしたいのかを考えたとき、行動や願望とずれている部分がないかを探します。ずれや矛盾があるのは、強い感情や、自分が得ていない情報が働いている可能性があるからです。
玉置さんがやっているのは、あくまで事実を根拠に仮説を立てていることだけです。事実と事実の間を仮説でつなぎ、それを確認して当たっていれば「なんでわかったんですか」となるだけだと言います。
岡島さんは、勝手に解釈しないという点について、雑に決めつけないことが要点だと受け止めます。
自分がこのように考えるから相手もそうだろう、相手がこうやってるってことはこうだろうって、決めつけっぽくしちゃうみたいな。
ワンオンワンで本音を引き出す具体例
ここから玉置さんは具体的なシーンで技術を当てはめていきます。
まずは部下とのワンオンワンです。部下が「最近仕事が多くて忙しいです」と言ったとします。
一番よくないのは、言葉通りに受け取って「じゃあタスク調整しようか」と解決策に入ってしまうことです。間違いではありませんが、浅くなってしまうと言います。
「忙しい」の奥には、作業量の問題だけでなく、優先順位の付け方がわからない、上司に頼れない、評価を落としたくなくて断れない、本当は辞めたいなど、さまざまな仮説が考えられます。
その可能性を前提に、仮説を一つずつ潰していくのが会話の進め方です。たとえば「仕事、断りづらいのかな」と糸口を投げれば、相手は「実は」と話しやすくなります。
相手に恐れがあると、真実を口にしづらくなります。だからこそ、その恐れを先に取り除くことが有効だと言います。
「正論を今言うつもりはありません」「今あなたに起こっていることを知りたいだけです」っていうのをこっちから言ってあげればいいので。
もう一つの例が、新人マネージャーにありがちな「何かありますか?」に「特に何もないです」で終わってしまうワンオンワンです。
この「特にないです」も言葉通りには受け取りません。奥には「どうせ言っても変わらない」「言うと評価に響く」といった本音がある可能性があります。
ここで「本当は何かあるでしょ」と迫るのは悪手です。玉置さんは、まず相手の言葉を事実として尊重した上で、問いの角度を変えることを勧めます。
「このまま続くと問題になりそうなことや、自分の気持ちがしおれちゃいそうなことってありますか」みたいな聞き方をしてあげると、ちょっと出やすかったりするんですよね。
転職したての人には「前の職場に比べて違和感あるなという発見はありましたか」と聞く方法もあります。ネガティブなことを言いたくない人でも、「発見」という言葉なら話してくれることがあるからです。
面接で意図を先回りして言語化する
今度は面接を受ける立場での応用です。玉置さんは、面接官がその質問で何を知りたいのかを考えることを勧めます。
よく聞かれる「転職理由を教えてください」という質問を例に挙げます。面接官が本当に知りたいのは理由そのものではないと言います。
その奥には、感情的に辞めた人ではないか、他責にする人ではないか、うちに来てもすぐ辞めないか、といった恐れや不安があります。それを質問でクリアにしたいのです。
ここで対策本にある「より成長できる環境に挑戦したいと思ったからです」と正解っぽく答えても意味がないと玉置さんは言います。面接官の不安を何も解消しないからです。
むしろ、お互い不完全な人間である前提で、正直に答える方がよいと話します。前職への不満もあったと認めつつ、自分が積むべき経験を基準に選んだと整理して伝えるイメージです。
前職で成果を出しきれていなかった部分も確実にあるので、そこは逃げずに整理していきたい。今回の転職は環境への不満ではなくて、自分が次に積むべき経験が何かを基準に選びました。
岡島さんは、こう答えられると採用したくなる気がすると反応します。嘘をつかず、面接官の不安に先回りして答えているかどうかだけの差だと玉置さんは言います。
「弊社を選んだ動機は」という質問も同様です。玉置さんによれば、これは表向きの言葉のオンパレードになりやすい質問です。
御社の理念に共感しましたとか、成長環境に魅力を感じましたって言われても、何も確認できないですよ。
面接官が本当に知りたいのは、ちゃんと会社を調べていて、入社後にフィットするか、すぐ辞めたりがっかりしたりしないかです。
だからこそ、良い面に惹かれたと認めつつ、成長フェーズゆえに仕組みが整っていない部分もあると予測している、と正直に伝える方が響きます。曖昧な状況で課題を整理して進める力をつけたい、という経験の軸で語れると印象が変わると言います。
なんかしっかりしてそうだなぁ、なんかいいかもっていう。
「霊感」の正体と、忖度との違い
玉置さんは、ここまでの技術が最初の「霊感ですか」という驚きと全く同じスキルだとまとめます。
相手の本音とか不安とか葛藤、意思決定の障害になっているものを先に仮説立てをして、それを言語化していくっていう仕事です。
岡島さんは、日本語が結論を後に置く曖昧な言語であることや、対策本の影響で、無意識のうちに正解を当てに行く体系ができてしまうのではないかと感じたと話します。
玉置さんは、やっていることは曖昧な部分の仮説検証で同じでも、正解を探しに行くのか仮説を探すのかという意識の切り替えが要点だと応じます。
そして、この技術は空気を読んだり忖度したりするのとは似て非なるものだと強調します。
空気を読んだり忖度してるケースって、自分の解釈に軸足を置いて、解釈に解釈を重ねみたいなプロセスなんですよ。
自分の解釈と経験値だけで組み立てる作業と、相手が発信する事実をもとにロジカルに仮説を立てる作業は、全く違うプロセスだと玉置さんは締めくくります。
自分の解釈や過去の経験値に軸足を置き、解釈に解釈を重ねて相手の気持ちを推測する
相手が発信した事実を根拠に、ロジカルに仮説を立てて確認していく
まとめ
玉置さんが「霊感ですか」と言われる正体は、透視でも忖度でもなく、事実から仮説を立てて確認していくロジカルシンキングでした。相手と対等に向き合い、正解を打ち返すのをやめ、言葉の奥にある恐れや意図を推測することで、面接やワンオンワンのコミュニケーションは大きく変わると語られました。
- 「なんでわかったんですか」の正体は、発信された情報から仮説を立てて確認する再現可能な手順である
- 相手を過度に敬わず、偏見のフィルターを外して対等・フラットに向き合うことが基本姿勢になる
- 正解を打ち返そうとせず、一歩引いて相手やボールそのものを観察する余裕を持つ
- まず事実として何を言ったかを言葉通り受け止め、その奥の恐れ・欲求・矛盾を推測して仮説を確認する
- 相手の本音を探ることは、自分の解釈を重ねる忖度とは異なり、事実を根拠にしたロジカルな作業である




