店の裏に捨てられたゴミから考えたこと
この回は、コージさんが「なんだかな」と思った出来事の雑談から始まります。
オッタントットは駅前の四つ角の角にあり、二面が通りに面しています。裏にはローソンがあり、店との間には通路というより隙間のようなスペースがあります。
もう一片には三階の住居へつながる玄関があり、必要な通路になっています。昨日の夜、その通路にカップヌードルとお箸のセットのゴミが二つ捨てられていました。
夕方にはなかったので、夕方から夜の間に誰かが捨てたことになります。ローソンにはゴミ箱がなく、買って食べたゴミが店の周りに落ちていること自体は珍しくないそうです。
ただ、わざわざ店の裏に入ってまでラーメンのゴミを捨てるのは不思議だと話します。捨てる場所でも食べる場所でもないからです。
最近は外国の方も多く、ミャンマーやバングラデシュなどアジア系の人が増えているといいます。文化的に「普通」と感じているパターンもあるかもしれず、悪意とは限らないと考えています。
ゴミがあるところにはゴミを捨てがちなんですよね。ゴミがなかったらちょっと気を使うけど、もうゴミがすでにあるところだったら平気で捨てられちゃう。そういうのは心理学的にやっぱりあるので、仕方なく片付けるわけなんですけども。
だからこそ放っておけず、片付けるしかありません。解決が難しい問題だと感じたという話でした。
ワインシェアとはどんなサービスなのか
本編のテーマは、何度も話してきた「ワインシェア」です。
これは、誰でも一日1杯無料でワインが飲めるというサービスです。これだけ聞くと怪しく感じるかもしれませんが、仕組みには理由があります。
無料で飲めるのは、他に代金を支払ってくれた人がいるからです。ワインを一本まるごと寄付するパターンと、レジ横の募金箱にチップを入れるパターンがあります。
チップが貯まって目標のワイン1本分の価格に達すると、そのワインを無料提供に回すという流れです。
支払う人
ワイン1本の寄付、またはレジ横のチップを入れる
貯まる
チップが目標のワイン1本分の価格に達する
提供
そのワインを一日1杯無料で誰でも飲める
「わからないから」でワインを避ける人への思い
なぜこのサービスを始めたのか。開業からまもなく丸6年になるコージさんは、もともとワインを飲むのが好きだと話します。
ただし知識やうんちくには詳しくなく、産地や生産者もお客さんの方が詳しいくらいだといいます。それでも飲むのは好きで、お酒の中では今ワインが一番好きだと語ります。
地元の街に気軽にワインが飲めるお店があったらいいなってずっと思っていたんですよね。でも誰もやってくれなくて。誰もやってくれないから、じゃあもう俺がやるかっていうことで始めたお店でもあるんです。
ところが始めてみると、ワインを飲みたいという人は割合的にとても少なかったそうです。
聞こえてくる理由は「よくわからないから」「あまり飲んだことがないから」といった曖昧なものでした。飲んで好きじゃないなら仕方ないけれど、飲んだことがないのに苦手と決めてしまうのが不思議だといいます。
もっと気軽に飲んでいいと伝えても、なかなか伝わりません。そこで、どうすればハードルを下げられるかを考えた末に「無料なら飲んでもらえるかもしれない」という発想にたどり着きました。
ただ自腹で仕入れたワインをただ無料で出すのは赤字を出し続けるだけで違う、と考えます。もっと綺麗な形を探した結果が「チップ」でした。
美味しいものはシェアしたくなる
チップに人の善意を頼るという発想の背景には、コージさん自身の実体験があります。
オッタントットではワインの持ち込みを歓迎しています。持ち込み料は一人500円いただきますが、持ち込み自体は全然構わないという姿勢です。
そして持ち込む人のほとんどが、店主やマダムにも「一緒に飲もう」とワインを分けてくれるといいます。
このワインが美味しいから、これを自分でたくさん飲みたいとかじゃなくて、いや、もう美味しいから一緒に飲もうよっていうマインドなんですよ。やっぱり美味しいものってシェアしたいんですよね。
ここからコージさんは、ワインが好きな人はワインをシェアしたいはずだと考えます。
だから、飲んでみたいけれど一歩踏み出せない人の後押しのためにチップをお願いすれば、応えてくれる人がいるのではないかと考えたのです。
善意の可能性を社会に突きつける
一方で、みんなが共感してくれるとは思っていないとも話します。
他人が飲むお酒になぜ自分がお金を払うのか、と思う人が一定数いるのは当然だと考えています。むしろ払ってくれる人の方が少数派で、非常にありがたいことだと捉えています。
コージさんは人の善意を過信しているわけではありません。それでも、その善意は確かにあると感じています。
実際こうやって誰かが飲むワインのためにお金を支払ってくださってる方がいるんですよと。これだけいるんですよっていうことを突きつけたい。広い意味で言うと、社会を変えていきたいっていう気持ちがあると言ってもいいのではないでしょうか。
チップは100円台の小銭から、一杯飲んだからと1000円ほど入れてくれる人までさまざまです。中にはワインを一本まるごとプレゼントしてくれる人もいるといいます。
この事実を社会に突きつけ、社会がどう受け取るのかを見てみたい、という思いを語りました。
ワインシェアを一人歩きさせたい野望
この活動をオッタントット一店だけで続けても、社会的なインパクトは大きくないとコージさんは認識しています。事実を知れる人が限られているからです。
だからこそ、いろんなお店でこの活動をやってほしいという野望があります。
「ワインシェア」というネーミングとロゴは、もじもじデザインや制作を手がける会社。ここでは代表の松岡さんが名前とロゴ制作に関わったと語られていますの松岡さんに作ってもらいました。
商標申請の提案もありましたが、あえて申請せず、誰でも使えるようにしたそうです。名前もロゴも自由に使ってよく、みんなでやってほしいという考えです。
ワインシェアっていう名前、誰でも使っていいし、ロゴも言ってもらったらデータを渡します。本当に誰がやってもいいんです。みんなでやってほしいんですよ。そしたらこの活動が増えたら、そこそこ社会にインパクトを残せるんじゃないのかなと。
対象はワインでなくてもよく、日本酒やウイスキー、焼酎でもいいといいます。名前やロゴを使わずオリジナルでやってもらっても構わないとのことです。
2000日記念のカップルと、優しい社会への願い
この日、実際に若いカップルがワインシェアのワインを飲んでいったそうです。
提供したのは、ポッドキャスターの毛さんが送ってくれたブルゴーニュの白ワイン、フレデリック・マニャンのサン・ロマンでした。店で出せば1万円近くになる上等なワインです。
20代とみられる若い二人が「無料だから試しに飲んでみたい」と言って飲み、写真を撮ったりしていたといいます。
よく聞くと、二人が出会ってからちょうど2000日の記念日だったそうです。その特別な日に彩りを添えられたことを、コージさんは素直に喜んでいました。
なんかもう本当にこのためにやってきたよなっていうのも、ちょっとこう、なんだろう、エモかったですね。今風に言うとエモかったんですよ。
一方で、今の社会が優しいとは思っていないとも語ります。だからこそ、実際に善意を寄せる人がいるという事実を突きつける活動でもあるのだと話します。
日本の制度が高齢者優遇で若者が苦労していると言われることにも触れつつ、年代で一括りにはできないと考えます。持っている人が持っていない人に分け与える再分配のある社会が美しく、優しいと感じるといいます。
ソーシャルグッドだけではない、正直な理由
コージさんは、社会にとって良いからやっているだけではないと正直に明かします。
ワインを飲んでみる人が増えれば、この先ワインを飲みたい人が増える可能性が高まります。その人たちがいずれ店に来てくれれば、売上アップにつながります。
別に僕は聖人君子でもないですし、商売している身なので、ただその善意だけでやってるわけでもなくてですね、そういう面ももちろんありますよということは一応お伝えしておきます。
聞き飽きたヘビーリスナーもいるかもしれないが、わかりにくいサービスなので今後も何度も説明していきたいと話します。ネット上でチップを受け付ける仕組みやスポンサー制度の構想もあるそうです。
被災したハイディワイナリーへの支援
クロージングでは、無料提供できるワインの在庫が一時なくなったこと、そして毛さんが赤と白を送ってくれたことが語られました。
赤はすでに提供し終わり、今は白のフレデリック・マニャン サン・ロマンを提供中です。次の目標は、YUKAセレクションが扱うシャトー・ド・マスのシャルドネで、あと3000円ほどで貯まる状況だといいます。
その間に何もない期間が出そうなので、コージさんは個人的に買った日本ワインをワインシェアに回そうと考えています。
そのワインが、石川県輪島のハイディワイナリー石川県輪島市にあるワイナリー。番組内では、今年元旦の地震とその後の豪雨で被災したと語られていますの四本セットです。
きっかけは、サトナオさんのnoteでした。サトナオさんは自身のバーでハイディワイナリーのワインを扱っており、「みんなで買い支えをしませんか」と呼びかけていたといいます。
本当に踏んだり蹴ったりというか、もう九州にいる僕らにはちょっと想像もつかないような被害を受けていらっしゃって。ワインだし、自分で飲んでもいいし、お店で出してもいいし、どうにでもなるなと思って四本セットを注文したんです。
四本のうち「禅の里ワイン2021年赤」を、支援のつもりで買ったワインとしてワインシェアに回す予定だといいます。
報道が減ると復興のボランティアや支援が集まりにくくなるのはよくあることだと指摘し、ワイン好きの人にはネットで買えることを紹介しつつ、何かしらの支援を呼びかけました。
告知として、クリスマスのローストチキンは調整中、おせちは当初の20個が予約で埋まり5個追加して25個までとし、残りわずかと伝えています。
「輪」の中に入ってほしい
最後にコージさんは、ワインシェアを「輪」という言葉で表現します。
この輪の中に入ってほしいなって思いますね。チップを下さるのも輪に入ることだし、無料で飲むのも輪に入ることだし、この活動があるっていうことを知って誰かに話してくれるのも、輪の中に入る一つになるのかなと思うんです。
関わり方はさまざまで、何かしらこの活動に関わってくれたら嬉しい、という願いで締めくくられました。
まとめ
ワインシェアは、支払う人のチップや寄付で、誰でも一日1杯無料でワインを飲めるサービスです。ハードルを下げてワインに親しんでもらいたいという思いと、善意が確かに存在する事実を社会に示したいという願い、そして商売としての利益の三つが正直に語られた回でした。
- 無料で飲めるのは、チップや寄付でワイン1本分を支えてくれる人がいるから
- 「わからないから」と避ける人に、まず飲んでもらうためのハードルを下げる工夫
- 名前もロゴも自由に使え、他店やワイン以外でも広がってほしいという野望がある
- 提供中のワインには毛さんが送ったブルゴーニュ、次は被災地・輪島のハイディワイナリーのワインを予定
- チップも無料で飲むことも、活動を人に話すことも、すべて「輪」に入る一つの形
