Audio Hijackとはどんなアプリなのか?
DJリッキーさんは、久しぶりに自宅で収録する時間ができたことをきっかけに、自分が普段どうやってポッドキャストを収録しているのか、その裏側を公開しました。
DJリッキーさんによると、この回は編集画面を共有しながら進めるため、音声だけで聴くのには向いていません。YouTube、Spotify、Substackのビデオポッドキャストで観ることを勧めています。
DJリッキーさんが収録に使っているのは、Rogue AmoebaのAudio Hijackというアプリです。パソコンに入ってくる音を組み合わせ、その途中でコンプレッサーやハイパスフィルター、EQなどを入れられ、文字起こしもできるといいます。
(Audio Hijackは)これがね、なかなか、なかなかいいアプリケーションなんですよね。
Audio Hijackには無料体験枠があり、DJリッキーさんの記憶では10分までの音声を数回収録できるそうです。購入する場合は69ドルの買い切りライセンスで、一度買えば完了です。
音の経路図は京王線の路線図
Audio HijackはMac用のアプリで、Windows版はありません。DJリッキーさんは、早くほかの環境にも対応してほしいと話しています。
Audio Hijackの画面では、音の経路が左から右へ流れる線で表示されます。音が入ると線が膨らむので、どこがつながって収録されているかが一目でわかります。
DJリッキーさんは、Audio Hijackの経路図を見るたびに私鉄の路線図、とくに京王線を思い浮かべるといいます。車庫から出た電車が途中で合流し、新宿や渋谷の終点に着くイメージです。
いつも京王線の路線、路線図だっていうふうに思いながら、あの、収録させてもらっております。
DJリッキーさんのたとえでは、駅を通過するごとに音に味付けが加わり、整理されて終点に着きます。この「駅」の並びを、DJリッキーさんの収録環境に沿ってまとめると次のようになります。
マイク入力
Lauten Audio LS-208をApollo Twin X経由でステレオ入力
ゲート
UAD API Vision Channel Stripでゲートだけを使う
ディエッサー・EQ
RX 11 De-essで擦れる音を抑え、smartEQ4でほぼ引き算
コンプ・リミッター
CLA-2Aでマイルドに圧縮し、ピークリミッターで上限を決める
メーター・録音
Youlean Loudness Meter 2で確認し、MP3で録音
マイク入力とゲートで何を止めているのか?
DJリッキーさんの経路の出発点はマイクです。Universal AudioのApollo Twin XにThunderboltでつながった1系統目のマイクを、左右チャンネルのステレオで通しています。
Audio Hijackでは、片チャンネルだけを使ったり、左右でチャンネルを分配したりすることもできるそうです。DJリッキーさんは、入力の音量を100%にしたうえで次のプラグインへ送っています。
最初に入れているプラグインは、UAD API Vision Channel Stripです。プラグインをパソコンに入れておくと、Audio Hijack上で選んで経路に加えられます。
DJリッキーさんがUAD API Vision Channel Stripで使っているのはゲート ── 一定の音量より小さい音を通さないようにするエフェクト。話していない間の小さな雑音やノイズを消すのに使われますの機能だけです。話していないときは回線に音が入らないようにしています。
机をね、ゴツンと叩いちゃう音とか、そういったね、音が入らないようにしてますし、まああの、むしろエアコンとか背景のね、ノイズとかが入りづらいようにゲートを組んでいます。
UAD API Vision Channel StripではEQやコンプレッサー、ハイパスフィルター、パッドも使えますが、DJリッキーさんはこのプラグインではゲート以外を使っていません。
EQは足し算ではなく引き算
ゲートの次に、DJリッキーさんはRX 11のディエッサー ── 「サ行」などで出る、スーッと擦れる耳障りな高音を抑えるエフェクトを入れています。そのあとに置くEQについて、DJリッキーさんは「一番大事かもしれない」と話しています。
DJリッキーさんのEQは、ほぼ引き算で音を整える設定です。使っているLauten Audio LS-208は高音域の抜け感がありすぎてキンキンしやすいため、高音域をかなり下げています。
| 帯域 | 操作 | 理由 |
|---|---|---|
| 高音域 | かなり下げる | LS-208は抜け感が強くキンキンしやすい |
| 1キロヘルツ付近 | 少し下げる | DJリッキーさんの好みの調整 |
| 3キロヘルツ付近 | 集中的に下げる | 耳障りな音があった |
| 低域 | 120ヘルツぐらいからハイパス | 低音をガツンと切る |
ハイパスフィルターをかけているため、DJリッキーさんのポッドキャストの音声は後から低音をブーストしにくい状態です。画面ではフィルターをオンオフしたり、3キロヘルツや高音域を上げたりして、音の変化も見せていました。
聞き心地っていうのは結構人それぞれで、色々なデバイスで聞いてくれているので、(中略)自分の耳を頼りにですね、調整する必要があります。
CLA-2Aはどれくらい効かせているのか?
smartEQ4のあとに、DJリッキーさんはCLA-2Aというコンプレッサーをかけています。有名なLA-2Aではなく、人に相談した結果CLA-2Aを選んだそうです。
DJリッキーさんはコンプレッサー ── 大きな音を抑えて音量の差を縮めるエフェクト。小さな声と大きな声の差が減り、聞きやすい音量にそろいますをマイルドにかけ、大きな声のときに針がマイナス3からマイナス5ぐらい振れるようにしています。
コンプレッサー入れるとね、なんか音の、音の密度がね、高くなるんですよね。
DJリッキーさんによると、CLA-2Aを挿した瞬間に音がふくよかで柔らかくなり、小声で話しても普通に聞けるように持ち上げてくれるといいます。DJリッキーさんはCLA-2Aを経路の「大きな山場」と表現しています。
コンプレッサーのあとにはピークリミッターを入れ、続いて無料のYoulean Loudness Meter 2でラウドネス ── 人の耳が感じる音の大きさを数値化したもの。単位のLUFSは配信サービスの音量基準にも使われていますを見ています。
DJリッキーさんは、強い音で収録すると音が割れてしまうため、目標の数値選びは難しいと話しています。そのうえで、ラウドネスをモニターしながら収録しているそうです。
BGMは収録の時点で30%に落とす
DJリッキーさんは、BGMを流しながら収録しています。パソコンからそのままBGMを流すと音量が大きすぎるため、Audio Hijackのミキサー機能で下げています。
パソコンからそのまま流すと音量100%で声とぶつかる
ミキサーで30%にプリセットし、BGMありのまま収録する
ミキサーではBGMを左だけ、右だけに振ることもできます。DJリッキーさんは、Audio Hijackのミキサーを「結構万能なBGM屋さん」と呼んでいます。
すでに収録の時点でまずかなりガクッと下がりながらBGMありで収録しているのね。ほぼ一発録りの感じになってきております。
オープニングのジングルはなぜQuickTime Playerなのか?
DJリッキーさんは、自作のオープニングのジングルをQuickTime Playerで再生して、収録の経路に乗せています。
オープニングのジングルって結構こう、ちゃんと、ちゃんと聞かせたいので、なんかあの遠慮したくなかったんですよね。
ジングルは大きめに流したいため、ミキサーの値を高めにしています。画面では84ぐらいの設定で流したところ大きすぎたため、70%ぐらいに下げて流し直していました。
DJリッキーさんは、過去の自分の回を紹介するときにはApple Podcastで再生し、その音を収録回線に乗せることもできると話しています。
プリセットと録音設定をどう組むか
Audio Hijackでは、経路の組み合わせをプリセットとして複数保存できます。DJリッキーさんは、Zoomの打ち合わせを収録するプリセットも作っています。
DJリッキーさんによると、ナレーション用、語り手用、トークやMC用などのプリセットを分けて作っておくこともできます。複数人の入力を合流させるときは、京王線のたとえで説明していました。
八王子の方から一本来て、高尾さんの方からも一本来てみたいなね、えー、このあと相模原線からも一本来て、三人来たらもう、もう調布から新宿パンパンやん。
経路の終点の録音設定は、MP3、ビットレート192kbps、サンプルレート44.1kHzです。DJリッキーさんは、WAVでもよかったかもしれないとしつつ、ビットレートなどの細かい設定は非常に大事だと話しています。
カット編集しない「無編集問題」
DJリッキーさんの収録環境は、ほとんど編集しないことを前提に組まれています。BGMを収録時に直接ミックスし、音量もその場で調整しています。
いちいち入れてたら大変だから、もう収録の時点で落としちゃおうぜっていう話で、
BGMはRogue AmoebaのFarragoから流し、トラックも分けずにそのまま録っています。最後はYoulean Loudness Meter 2を見ながらマイナス19からマイナス18ぐらいにピークが来るようにし、iZotope RX 12 Standardで音を持ち上げて仕上げています。
DJリッキーさんは、ほとんどカット編集をしていないことを自ら「やばい」と認めつつ、BGM込みの一発録りを選ぶ理由とデメリットを率直に話していました。
DJリッキーさんは、Audio Hijackは日本ではあまり注目されていないものの、書き出しの形式が多く、UADのプラグインやRXの機能も使える優れたアプリだとまとめています。
エンディングBGMもFarragoから一発で
エンディングのBGMも、Audio Hijackと同じメーカーのFarragoから出しています。DJリッキーさんは、Stream Deckのボタンでポン出しできるように設定しています。
DJリッキーさんは、Farragoの中でエンディングにふさわしい音量を決め、その時点で収録しています。最後はボタンを押すと締めの音声が流れる様子を見せ、簡単なセッティングでライブでもできると話していました。
あなたの収録状況、収録で困っていることなどあったらぜひお気軽にXでご投稿ください。
まとめ
DJリッキーさんの収録は、Audio Hijackでマイクから録音までの経路を組み、ゲート、ディエッサー、引き算のEQ、マイルドなコンプレッサーで声を整えたうえで、BGMやジングルも収録時にミックスする形です。編集の手間を減らす代わりに、一発録りの設定を作り込んでいるのが特徴です。
- Audio HijackはMac用の買い切りアプリで、音の経路を左から右へつなぎ、途中でエフェクトを挟める
- EQはほぼ引き算で、マイクの癖に合わせて高音域や3キロヘルツ付近を下げている
- CLA-2Aはマイルドにかけ、ラウドネスは−19 LUFSのあたりを目安にしている
- BGMはミキサーで30%に落として収録時に混ぜ、ほとんどカット編集をしない
- 用途別にプリセットを作り、ジングルやエンディングもその場で流して収録している



