寄り添い型を求められて四苦八苦する現場
最近は人事の世界でも、寄り添い型の人材になりましょうと言われることが増えています。
特にマネージャーやリーダーは、チームメンバーに寄り添うよう求められる場面が多いようです。
成果とか数字を出すだけがあなたの仕事じゃないです。ちゃんと一人一人に向き合って、一人一人が楽しく健やかに仕事ができるように、そういう環境を整えるのもマネジメントの大事な仕事です、なんて言われて。
ただ、日頃から成果へのプレッシャーを浴び続けているリーダーは、仕事が増えたと感じたり、どう寄り添えばいいのか戸惑ったりしています。
逆に、寄り添いすぎて自分がいっぱいいっぱいになってしまう人もいるようです。
そこで今回は、ちょうどいい塩梅の寄り添い方について考えていきます。
EQデータから見えた寄り添いの二つのパターン
河原さんはPotage株式会社で、これまで約800人にEQ検査「EQPI」を受けてもらい、データ分析やフィードバックを行ってきました。
そのうち約4分の1、概算で200人ほどが人をマネジメントする立場の方だったといいます。
この寄り添いというキーワードで見ると、大きく二つのパターンに分かれると話されています。
行動ベースで成果を上げてきた人に多く、他者の感情を認知する力が相対的に低めに出やすい
共感型の人材に多く、相手に寄り添いすぎて自分の時間や気持ちをすり減らしてしまう
自分が高出力なF1だと気づけないパターン1
パターン1は、そもそも寄り添い方がわからないというタイプです。
自分が成果を上げるためにどう動くかにチューニングされているため、急に周りを大事にと言われてもやり方がわからないのです。
河原さんは、このタイプを高出力なエンジンにたとえます。
自分自身が、例えて言うなら、ものすごく高出力なエンジンを持っている。だからまあF1みたいなものでしょうか。
そういう人は、部下がセダンや軽自動車くらいの出力で動いていると、あれ?と感じてしまいます。
自分はこんなにできるのに、なぜ周りはできないのか。自分でやった方が早い。そうして仕事を抱え込んだまま突き進む傾向があるといいます。
パターン1の寄り添い方は、まず自分のエンジンを自覚すること
いずれのケースでも、まず前提として自分の特性を意識することが大事だと河原さんは話します。
パターン1の人は、自分がF1のエンジンを積んでいると自覚した上で、周りと比較したり理解しようとしたりすることが出発点になります。
F1の人は周りの人もF1だと勝手に勘違いします。けれども、よく見てみたら全然積まれてるエンジンが違うということに簡単に気づくはずです。
相手の動き方を観察し、ストレスが少なそうで得意が活きそうなタスクを、ほんの少しずつ切り出して渡していく。
そして詰まっていたら、具体的にこうやったらいいよとアドバイスをする。それがこのタイプの寄り添い方だといいます。
無理に相手の気持ちを理解しすぎる必要はありません。自分と相手は違うと理解するだけで、その人なりの寄り添いができるようになります。
寄り添いすぎて疲れるパターン2と、隠れた本音
パターン2は、むしろ寄り添いすぎてしまう共感型の人材です。
相手が困っていると、自分の得意でなくても手を貸してしまい、泥沼にはまってしまうこともあります。
河原さんによれば、フィードバックする人の中でこのタイプの割合は非常に多いそうです。
その共通の傾向として見えてきたのが、自分の本音に目を向けていないケースです。
自分の意見を持たない人はいません。ただ、このタイプは自分の本音を隠してしまう傾向があるといいます。
例えば、私が疲れているから休みたい、休ませろみたいな心の声が聞こえた時に、いや、これは私のわがままだから、ちょっと黙っていて、みたいな感じで、そのわがままな自分を隠そうとするんですね。
そうすると自分の時間がなくなり、疲労がたまって自己効力感が下がっていきます。
心の声に光を当てる。お弁当をやめた人の話
河原さんがこうしたタイプに投げかけているのは、隠れている自分の心の声にスポットを当てましょうという問いかけです。
この声は隠したり押し殺したりするマイナスの反応ではなく、自分の気持ちを助けるための自浄作用のようなものだといいます。
これはなんか自分の黒い側面だと表現されたクライアントさんもいらっしゃいました。そうじゃないんです。黒ではなくて白です。そっちが白なんです。
具体的な事例として、二年ぶりにEQ検査を受けたところ、自己感情認知が劇的に上がっていた共感型の人がいました。
その人が何をしていたかというと、家族のために毎日作っていたお弁当を、やめると宣言したことでした。
誰かに頼まれたわけではなく、こうすると喜ぶだろうという想像上の相手のニーズに応えて、自分にタスクを課していたと気づいたそうです。
理由を説明してお弁当をやめたところ、最初は家族も驚いたものの、だんだん受け入れてくれ、本人はものすごい解放感を得たといいます。
想像上の相手に尽くす
頼まれてもいないのに、喜ぶだろうと想像してタスクを抱え込む
自分の心の声を認める
お弁当をやめると宣言し、自分のための時間を作る
自己効力感の復活
自分で決められるという感覚が戻ってくる
本当の寄り添いへ
相手と対話し、いい距離感の中で寄り添えるようになる
距離感を調律する。寄る・引くは一メートルでいい
共感型の人におすすめされるのが、自分にとっての聖域を作ることです。
一日十五分でもいい。誰にも干渉されず気を使わない時間をキープする構造をつくると、自分を優先していいという感覚につながります。
こういう人は、そもそも寄り添いが息を吸うようにできます。だから、これ以上寄り添う必要はなく、寄り添い方を変えることが大事だといいます。
想像上の相手ではなく、明確に相手から出てきたニーズに寄り添う。そして空いたリソースを自分にも振り向ける。この感覚が鍵になります。
河原さんは、寄り添いとは相手との距離感を調律することだと語ります。距離がありすぎる人は歩み寄り、寄り添いすぎる人は少し引いてみる。
寄る、引くといっても一メートル二メートルでいいんです。それだけで景色は変わります。場合によって三十センチでも一ミリでも変わることがあります。
まとめ
寄り添えないF1型も、寄り添いすぎる共感型も、まず大事なのは自分の特性を知ることです。その上で相手との距離を近づけたり引いたりして調律していくことが、無理のない寄り添いにつながると河原さんは話しています。
- 寄り添いに関する悩みは、寄り添えないパターン1と寄り添いすぎるパターン2に大きく分かれる
- F1型は自分の高出力を自覚し、相手を観察して得意なタスクを少しずつ渡すことが寄り添いになる
- 共感型は自分の本音を否定せず、一日十五分でも自分の聖域をつくることが大切
- 想像上の相手ではなく、実際に出てきたニーズに寄り添い、空いたリソースを自分にも向ける
- 寄り添いとは距離感の調律であり、一メートルでも寄る・引くだけで景色は変わる