財務省レポートをスモールビジネス目線で読む理由
今回取り上げるのは、財務省が出した「成長、人口・地域等」という、かなり硬い名前のレポートです。
スモールビジネスのオーナーは、まさにこのタイトルにあるような国の成長分野、人口、地域を分解した結果の市場で戦っていることがほとんどです。だからこそ注目すべき資料だと伊藤さんは言います。
とはいえ、こういうレポートは読むのが面倒です。そこで伊藤さんが、リスナーに代わってごく簡単にサマリーを話していきます。
おぼつかないところがありますが、私が皆さんに代わってごく簡単にサマリーをですね、お話ししたいと思います。
全体の感想としては、ビジネスパーソンならニュースですでに概要を知っているような話が並んでいる、という印象だそうです。
ただ、それを点ではなく線や面として一気通貫で、日本の現状として再認識するのに優れたレポートだと評価しています。
レポートの構成と全体のメッセージ
このレポートは2024年4月に発表されたもので、3つの章に分かれています。1章が日本の現状と財政のあり方、2章が成長、3章が人口・地域です。
前提として、一部のグラフの信憑性を疑う声がSNS上で上がっているそうです。財務省という特別なポジションから発するレポートであることも、その背景にあるのかもしれない、と伊藤さんは触れています。
とはいえ、国が発表している一次資料であり、日本の現状を突きつけてくる資料であることに違いはないので、チェックしておいて損はないという立場です。
全体のメッセージを、伊藤さんは次のようにかみ砕いています。
財政赤字やばいよ、しかも経済成長してないよ、労働人口がめちゃくちゃ減ってるよ。だけどみんな東京ばっかり住みたがるよ。こういう大問題を日本は抱えていますよという話なんですね。
これに対してレポートでは、エビデンスに基づく政策形成をしないといけない、と強調されています。
第1章 財政赤字と「見える化」の動き
第1章では、政府債務残高が1兆円オーバー、GDPは横ばいで、GDP比に対して250%も債務残高がある、という現状が述べられています。
これまで財政支出は景気対策を狙って拡大してきたものの、その効果が不明確ではないか、とレポートは指摘しています。
そのため、EBPMによって政策効果を厳格に評価し、約5000の予算事業を徹底的に見直して可視化しよう、という主張がされています。
実際にこの発表の後、行政事業レビュー見える化サイトが立ち上がりました。1国民としてすごく良い動きだ、と伊藤さんは受け止めています。
1国民としてこれはもうすごく良い動きだなと思いました。逆に言うと、全然なんかこういうのがなかったんですね。
一方で、国会議員がこうしたデータをどのくらい活用するのか、という疑問もこぼしています。議員の質の差は激しく、こういうことを全然知らない人もいそうだ、という想像です。
第2章 三位一体の労働市場改革
第2章では、日本の経済成長率がもう1%台で、生産年齢人口や働き手が大きく減り、民間投資も他の先進国と比べて鈍っている、という危機感が語られています。
そのために提唱されているのが、三位一体の労働市場改革です。伊藤さんはこの3つを順に整理しています。
2つ目の職務給について、伊藤さんは具体例を挙げています。半導体やDX、AIといった成長分野では、日本の製造業で受け継がれてきた年功序列や画一的な賃金体系のままでは諸外国に勝てない、という話です。
それだと優秀な人、正直やっぱりね、このAIの分野とか来ないですからね。
具体策としては、教育訓練給付の拡充によるリスキリングの促進や、すでにある半導体産業への支援が掲載されていました。
半導体への支援は対GDP比で0.71%で、アメリカやフランスの0.2%台よりも高いそうです。
0.71%
0.2%台
なお民間投資の鈍化については、ODA政府開発援助と紐付けて語られていますが、財務省と外務省の論点が並んでおり、スモールビジネスとはやや遠いとして伊藤さんは割愛しています。
第3章 人口減少と2050年の地域
第3章の人口・地域は、スモールビジネスと特に接点がある話題だと伊藤さんは言います。
このレポートは将来、具体的には2050年にフォーカスして書かれていることが多いそうです。2050年はたった25年後で、25年前が西暦2000年だと考えると、あっという間だと指摘します。
その2050年に向けて、この章では厳しい数字が並んでいます。
道路などインフラの便益の指数についても言及されており、これが1.0を切ってしまう地域があるとのことです。住民の数に対する便益が低いと、各自治体が今のようにインフラを維持する判断ができない場合もありえます。
レポートでは能登の地震も引き合いに出され、それと関連付けてコンパクトな街づくり、いわゆるコンパクトシティが提唱されていました。
リモート移住とインフラ維持というリスク
ここで伊藤さんは、スモールビジネスをやる上で考えるべき点を挙げます。僻地にいてもリモートでやれる業種は多く、田舎に移住した人もいます。
ただし現時点は大丈夫でも、僻地では15年、25年先にインフラが維持できない可能性があります。これは事業をする上で大事な検討ポイントになる、という指摘です。
だから田舎に移住したという人もいますよね。ただ、現時点ではもちろん大丈夫なんだけども、いわゆる僻地では、このたった15年とか25年経た先でインフラが維持できない可能性があるということですよね。
全国で生産年齢人口が25%減るため、特に四大都市以外の地域では自治体職員自体が確保できない、という話も書かれていました。
そこで、自治体の効率化、DX化が急務だと主張されています。これは前の章のDX分野への人材確保が重要という話ともつながります。
だからこそ、特に小規模な自治体ほど、スモールビジネスの側から食い込んで支援するチャンスがあるのかもしれない、と伊藤さんは見ています。
東京一極集中とスモールビジネスの生き残り
人の移動も東京一極集中で、行政サービスに関して東京とそれ以外の地域の格差が大きい、とレポートは述べています。
首都圏の中ですら、東京と隣県の間で子育て支援などに格差ができているそうです。これを是正することは少子化対策としても重要だとされています。
レポートには直接書かれていませんが、伊藤さんは人口の転入超過のデータにも触れます。毎年1月にニュースになるこのデータでは、明らかな転入超過は首都圏と四大都市、大阪、名古屋、福岡だけのようだと言います。
そのため、そのいずれかのエリアに住まないとしても、何かしらそことのつながりをしっかり確保しておくことが、生き残りの優先的な選択肢になってくるのではないか、というのが伊藤さんの見立てです。
個人的には、逆張りして北海道の札幌などの都市に特化して活動するのも面白い、とも話しています。
今回のレポートは成長分野への労働移動を明示しているので、分野の見極めもこの2、3年で意識して展開していかなければいけない、と伊藤さんはまとめています。
まとめ
財務省の硬いレポートを、伊藤さんはスモールビジネス目線で線や面としてつなぎ、これからの事業判断に効く形で整理しました。人口減少とインフラ、労働移動、そして地域格差という現実が、25年後ではなくすでに始まっているという点が繰り返し強調されています。
- 財務省の「成長、人口・地域等」は、財政赤字、低成長、労働人口減、東京一極集中という日本の課題をまとめた資料
- 政策効果をデータで検証するEBPMが強調され、発表後には行政事業レビュー見える化サイトが立ち上がった
- 成長の鍵として、リスキリング・職務給・成長分野への労働移動という三位一体の労働市場改革が提唱されている
- 2050年に向けて8割の地域で人口が30%以上減り、2割が無居住化するなど、僻地のインフラ維持は事業リスクになりうる
- 転入超過は首都圏と大阪・名古屋・福岡に限られ、そことのつながり確保や成長分野の見極めが生き残りの選択肢になる





