派手なPRなしで、あの夏と同じ人数を呼んでいた
シルバーウィークに入って、雨が重なったのもあって、『河口湖 音楽と森の美術館』の一日の来館者数が伸びていました。
一昨日は1500人ぐらい、昨日も1200、1300人ぐらいまで伸びていたみたいです。
僕らは日頃、人気イベントの「何万人呼びました」みたいなニュースを目にします。幕張メッセだって何万人と呼んでいる。
そういうのを目の当たりにすると、1200人という数字を見ても、さほどうろたえずに「まあ1200人か」と片付けてしまいがちなんです。
でも、この1200人はふらっと立ち寄った人じゃありません。チケットを買って来館された、有料の1200人なんです。
この1200人は、去年の夏にやったミュージカル『えんとつ町のプペル』の1公演分と同じキャパなんですね。
あの夏、僕らは1ヶ月間の全公演を満席にするために、YouTubeで『バックストーリー』という企画を毎週やって、あれやこれやと走り回りました。
そうやってどうにか全公演を完売させた訳です。
その僕らと、派手なPRを一切していない美術館が、少なくとも数字の上では同じぐらいのインパクトを残している。
これはほんとにすごいことなんです。
試合開始早々のアリウープと、「同じ2点だピョン」
ここで重ねてしまうのが、『スラムダンク』の山王戦です。読まれていない方に簡単に説明させてください。
主人公の桜木花道がいる湘北高校が、全国大会の2回戦で絶対王者・山王工業と対峙します。モデルは間違いなく能代工業だと思いますが、とにかく高校バスケット界の絶対王者なんです。
運悪く2回戦でその山王とぶつかった湘北は、安西監督の指示のもと、試合開始早々に奇襲を仕掛けます。相手をうろたえさせて、ガタガタっと崩れた瞬間を狙う作戦です。
その奇襲が成功します。宮城リョータがゴールのすぐ近くに山なりのボールを上げて、それを桜木花道が空中で片手で受け取って、そのままダンクを決める。アリウープという大技です。
開始早々にとんでもない技を決めて、会場はブワッと沸きます。
ところがその直後です。山王のキャプテンの深津くんが、その奇襲に全く動じずに、何の面白みもないシンプルなツーポイントシュートをパサッと決める。
そして湘北のメンバーに言うんです。「同じ2点だピョン」って。
これで揺さぶられたのは、実は湘北の方でした。「勝つための最適解を淡々と選びますわ」という王者の凄みが、目の前にあった訳です。
「こいつら全然動じてないじゃん」と、むしろ湘北の方がガタガタっとなってしまう。この凄みですよね。
YouTubeでバズるのは、湘北のアリウープだった
これはお仕事にも言えるなと思いました。特に集客系のお仕事です。
YouTubeでバズるって、もうこれアリウープなんですよ。大技なんです。
「百万再生行ったわー」「SNSでインプめっちゃ稼いだわー」とみんな「わー」ってなる。でもこれは、湘北が仕掛けた奇襲の方なんです。
去年のミュージカル『えんとつ町のプペル』も、『バックストーリー』でバンと跳ねて会場にお客さんがごった返しました。あれもアリウープなんです。
その裏で、河口湖の美術館では淡々と、「まあこんな感じですけども」という顔で同じ1200人を呼んでいる。
去年の夏、CHIMNEYTOWNはアリウープを決めて人を呼んでいたけれど、美術館は深津くんのシンプルなシュートを淡々と決めていた訳です。
そこにやっぱり凄みを見ます。
人の流れがある場所は、むしろ知られていない
これは昔、ロザンの菅さんが言っていたことなんですけど、「チケットが即完する芸人の単独ライブよりも、チケットが売れてない芸人の単独ライブの方が有名になる」という話があります。
即完する単独ライブはPRする前に売れてしまうから、PRする機会がない。売れていない単独ライブは、まだ売れていないからメディアに出たときに「イベントやります」と発信しなきゃいけない。だから結果的に、売れていない方が認知を獲得してしまうんですね。
同じことが、人の流れがある場所でも起きています。
SNSやYouTubeを頑張らなくてもお客さんが次から次へと来てくれるから、そこまで発信しなくなって、結果あまり知られていないという状態になる。
観光地のなんとか美術館ってあんまり知られていなくて、知られているのはYouTubeを頑張っている人やインスタグラマーの方だったりする。でも現場は、人がごった返しているんです。
いわゆる大仏商売というやつで、人の流れがあるところに店を構えている強さは想像していましたが、実際に目の当たりにすると想像を遥かに超えていました。
この希望とも絶望とも言える事実は、実際の現場を見ていない人にはなかなか届かないと思います。そこまでのインパクトだとは想像できないと思うんです。
でも言っていてもしょうがないので、ひとまずCHIMNEYTOWNは今後、この領域にベットしていくことになると思います。
1200人呼ぶにしても、大技を決めて呼んでいるのと、日常的に淡々と呼んでいるのとでは訳が違って、やっぱり後者は強すぎる。
深津くんの方に、山王工業の方になっておかないと持たないよね、というお話でした。
皆さんの現場、サービス、職場、お店はどうなっているでしょうか。またお話を聞かせてください。
オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日2、3000文字の記事を投稿しています。興味がある方はぜひ覗いてみてください。
それでは素敵な一日をお過ごしください。じゃあまたね。
まとめ
大技で人を集めるのと、日常的に淡々と人を呼べるのとでは訳が違って、後者の方が圧倒的に強い。だからCHIMNEYTOWNは今後、人の流れがある領域にベットしていくことになると思います。
- 雨のシルバーウィークでも、河口湖の美術館は有料で1200人を呼んでいた。これは去年のミュージカル1公演分と同じキャパ
- YouTubeでバズるのはアリウープ(大技)。淡々と同じ人数を呼ぶのは深津くんの「同じ2点だピョン」で、後者の方が強い
- 人の流れがある場所は発信しなくても人が来るから、むしろ知られていないことが多い




