強いチームは調子が悪い日に負けきらない
あまり信じてもらえないんですけど、僕は学生時代、絵に描いたようなスポーツ少年でした。
ちなみに1500メートルは3分台で、陸上部の助っ人に呼ばれることもあったくらいです。
スポーツをやっていると、強い人や強いチームが何で強いのか、弱いチームや普通のチームと何が違うのかを、目の当たりにすることが多いんですね。
強いプレーヤーにも、当然、調子の悪い日はあります。ミスが続く時間帯もあるし、思うように連携が取れない日もある。
でも、そこで崩れきらないんですよ。調子が悪いなりに最低限のところで踏みとどまって、致命的な失点を避けながら、もう一度流れを引き寄せるんです。
負けることもあります。勝負ですからね。でも最後の最後で踏みとどまる。負けが込まないんです。
一円も使わないリニューアルから始めた理由
これは仕事でも同じだなと思います。僕らのような人気商売は、ヒットする作品もあれば、しない作品も当然あります。
大切なのは、ヒットに恵まれない時間帯をどう耐え忍ぶか。ここをきちんと設計しておかないと、次のヒットにたどり着く前にチームそのものが持たなくなってしまうんです。
僕たちは今年の4月から『河口湖 音楽と森の美術館』の運営のバトンを預かっています。事業再生ということで、最初に手をつけたのが、まさにこの「耐え忍び方」の設計でした。
使える予算なんてありません。リニューアル用の費用もないので、今日に至るまで美術館の予算は一円も使わずにやってきました。
まずは表に出してはいけないものを片付ける。お客様が「これ何ですか」と疑問を持って、スタッフが答えられないようなものを置いておくと、次はスタッフのモチベーションが下がってしまいますから。
そこからは美術館の倉庫や地下を何度も歩き回って、使えそうなものを探しました。「7年前のクリスマスに買ったもの」みたいなのが見つかると、埃を払って磨き直して、もう一度輝ける場所を探して展示する。
そんなお金のかからないリニューアルを、4月から何度も何度も繰り返してきました。
これは単にお金を使わないという話じゃありません。お金を使わなくてもまだ十分戦えるという共通認識を、スタッフの皆さんと作っておきたかったんです。
大々的なPRを、あえて今は止めている
皆さんが頑張ってくださったおかげで、先月8月はコロナ以降最大の来館者数を記録しました。
とはいえ、ここまでやってきたことは、極端に言えば、元々美術館にあったものをもう一度見つけて並び替えただけなんです。
まだ美術館の予算を使って新しいコンテンツを作るフェーズには入っていません。投資するタイミングではなかったので、今も大々的なPRは打っていないんですね。
「リニューアルしました」とPRを打てるタイミングは一度しかありません。だったら体制を整えて、必要な投資を終えて、強いコンテンツを作った上で、「ここから変わりましたよ」と言える状態になってから打った方がいい。
スタッフさんから「PRした方がいいんじゃないですか」と言われるんですけど、「今は違う。もっと強くなってからしましょう」と話しています。
しかるべきタイミングで、しかるべきPRを打つ。そうすれば先月の来館者数も大きく更新できると思っています。
そろばんを弾けば全然超えられるなと思うんですけど、繰り返しますが、大切なのはそこじゃないんです。
雨の9月に、致命傷を負わない設計
大切なのは、調子が悪い時にも崩れきらない美術館を作ることです。
屋内エンタメである美術館にとって、大型連休と雨が重なるのは、実は特需なんですね。河口湖まで来たのに雨でアウトドアが全部なくなった、そういう方々の行き先として矢印が向くからです。
でも、雨が降っても大丈夫という話じゃありません。平日の雨は、そもそも日帰りで河口湖に行こうという人自体が減るので、屋内エンタメでも客足は鈍ります。
今月はとにかく雨が多くて、調べてみたら関東では9月1日から17日までの17日間で、雨が降らなかった日は4日しかなかったそうです。
東京では9月4日から12日まで、9日間連続で雨でした。その影響で、美術館も9月は来館者数が目標を下回る日がちょこちょこありました。
でも僕は、これをスポーツでいう調子の悪い日だと捉えています。強いチームは調子の悪い日にこそ崩れきらない。ここについてはすでに手を打っているんです。
以前は、雨で客足が鈍る日でもスタッフがフルで稼働する設計になっていました。売り上げが立たないのに人件費はいつも通り発生する。これだと調子の悪い日の影響を、そのまま事業が受けてしまうんです。
先日の役員会議でも、雨で客足が鈍ること自体は全く問題ないと話しました。落ち込む必要も悲観する必要もない。大切なのは、それが致命傷にならない設計にしておくことなんです。
事業の強さは、絶好調の時にどれだけ伸ばせるかだけじゃありません。調子が悪い時にどれだけ崩れずにいられるか。そして次のチャンスが来た時に、もう一度アクセルを踏める状態を残しておけるか。
雨が続いた9月に致命的なダメージを負っていないところを見ると、うちの美術館もちょっと強くなったのかなと思います。皆さんのチームはいかがでしょうか。
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それでは素敵な一日をお過ごしください。じゃあまたね。
まとめ
強いチームは調子のいい日だけで勝つのではなく、調子の悪い日に崩れきらない。僕はいま、河口湖の美術館でそういうチームを作ろうとしています。
- 強いプレーヤーやチームは、調子が悪い日でも致命的な失点を避けて踏みとどまる
- 美術館の予算は一円も使わず、今あるものを磨き直すリニューアルから始めた
- 大々的なPRは、体制と投資を終えて強い状態になってから打つと決めている
- 雨で客足が鈍っても致命傷にならないよう、稼働の設計を見直している

