種子島の稲刈りとチムニータウン米
西野さんは冒頭、自身のスケジュールについて触れています。一日およそ二十時間弱働いているといい、「日本で五本の指に入るぐらい忙しい」と話しています。
貧乏暇なしっていうやつで、本当になんかあれやこれややっているからね。ただただ忙しいだけなんですよ。シンプルに労働時間が長いっていう話。
そんな中で向かった先が、種子島での稲刈りでした。きっかけは美術館の候補地として種子島を訪れたことで、島の人たちとの縁から米作りを手伝うようになったといいます。
CHIMNEYTOWNとして育てた米は、限定三百袋だけ販売されます。オリジナルの麻袋付きで、西野さんは「主には布袋の値段なんじゃないか」と話しています。
若手経営者に伝えた「競争するな」
ここからが相談回の本題です。最初の質問は、熊本で夜中まで仕事をした後、若手の事業相談で飲みに行ったという投稿についてでした。
熊本で夜中まで仕事をして、夜中から若手の事業相談で飲みに行ったという投稿を見ました。西野さんの体力もさることながら、その時若手の方にはどんなアドバイスをされたんですか?
西野さんはその日、熊本で玄関プペルを五軒回り、社内勉強会で話し、車で三時間かけて大分へ移動し、講演会と交流会をこなしたと振り返っています。深夜零時を過ぎてから、交流会にいた若手経営者を飲みに誘ったそうです。
以前から相談を受けていた相手であり、自分がアドバイスした手前、責任を取らなければと考えたといいます。そこで伝えたアドバイスはシンプルなものでした。
競争しちゃダメだ。競争するようなところに身を置くな。とにかくポジションを取れ。人が何かをするときにお前を通らないと仕事にならないという、その関所みたいなところを押さえとけ。
もう一つ伝えたのが、ブルーカラーの仕事を自分のビジネスに組み込んでおくことです。重い荷物を運ぶような身体性を伴う仕事は、AIに代替されにくいからだと話しています。
プラットフォームが作る「物差し」の正体
なぜ競争やポジションを意識する必要があるのか。西野さんは、多くの人が目の前のゲームに乗せられてしまうからだと説明します。
再生回数やフォロワー数がその例です。プラットフォームは「これぐらいの数字を稼いでいる人がかっこいい」という物差しを作り、その世界観に人を引き寄せていくといいます。
いいプラットフォームっていうのはね、その乗りたくなんの、その物差しに。ダウンタウンの松本さんとかもうまいですよね。松本さんの作ったゲームって参加したくなるんだよ。
ただし西野さんは、その物差しはたくさんある物差しのうちの一つでしかないと強調します。例として挙げたのが、映画の興行収入です。
公表される興行収入は東宝さんがカウントした数字だと説明します。東京国際フォーラムでの上映会に来た五千人や、そのチケット、グッズの売上は、公表される興行収入には入っていないといいます。
さらに込み入った話として、映画の利益構造を解説しています。チケット売上の半分は劇場、残りの一部は配給会社が持っていき、製作者に入るのはさらに残りだといいます。
一方で利益率が高いのはポップコーンやコーラですが、その売上は劇場に入り、製作委員会には入りません。ここに西野さんの発想の転換があります。
自分たちで小屋を押さえて、自分たちで上映して、そこでコーラとかポップコーンとか販売すれば、その分を製作委員会に入れることができる。こっちをぐるぐる回してる方がでかくなるんじゃねえかしら。
だからこそ映画『えんとつ町のプペル 約束の時計台』は、配信ではなく劇場やイベントでの上映を続ける方針だと話します。上映を五年、十年と続け、そこで飲食も販売することで、トータルの数字を大きくする狙いです。
劇場でカウントされたチケット売上が中心。上映会やグッズの売上は含まれない
自主上映のチケット、飲食、グッズを含めた総額。長く回し続けることで大きくできる
物差しはいっぱいある
物差しは一つではないという話は、さらに具体例へと広がります。西野さんはサンリオさんの「サンリオ時間」という考え方を紹介します。
これはグッズ商品を消費するまでにかかる時間のことだといいます。鉛筆を六本売れば、その分お客さんが商品に触れる時間が生まれ、また買おう、また応援しようというきっかけが増えるという発想です。
売り上げが一万円で、お客さんの時間を五秒しか取っていない商品なのか、それとも売り上げは五百円だけれども、お客さんの時間を一年取っている商品、どっちを売った方がいいんだろうって考える。
場合によっては後者の方がよいこともあると西野さんは話します。どの物差しを自分が選ぶかがめちゃくちゃ大事だという結論です。
チムニータウンで働くのに必要な能力
次の質問は、どんな能力があればチムニータウンで働けるか、というものでした。
どの能力があればチムニータウンで働けますか?
西野さんがまず挙げたのは「明るさ」です。誰も言わないことだと前置きしつつ、暗い人を採用するから、チームのモチベーションを上げる課題が生まれてしまうと指摘します。
暗い人って伝染するじゃん。暗い人に話しかけるのってリスクだから、話しかけても盛り上がらないかもしれないからさ、会話も減るでしょ。明るいやつだけでチーム組んだら、それだけでその課題のほとんどが消える。
そのため、暗いことや声が小さいことは絶対NGだと話しています。会社は学校でも育児施設でも介護施設でもない、という立場です。
もう一つ挙げたのが「営業ができること」です。英会話が得意だと言われても、営業ができなければ使い道がないと厳しく語ります。
営業ができない人は、営業という選択肢を抜いて戦おうとするため成果を出せず、ずっと悩み続けてしまうといいます。西野さんは、悩むことを仕事と向き合っていると自分の中ですり替えてはいけないと話します。
一方で、価値を生むために頑張ってくれるスタッフとその家族の責任は、最後までとことん見ると語っています。守れるなら何でもやると、その覚悟も口にしていました。
売上と利益、どっちが大事?
最後の質問が、このエピソードのタイトルにもなっている問いです。
売上と利益はどっちが大切ですか。
西野さんの結論は「どっちも大事」というものでした。会社は利益が出ていないといずれ終わるので利益は大事だと認めつつ、売上はポテンシャルそのものだと説明します。
売上一千万円の会社が作れる利益はせいぜい数百万円ですが、赤字でも売上十億円の会社は、経費削減やオペレーション見直しだけで五千万円ほどの利益を作れることがあるといいます。
無駄を省いた時のリターンめっちゃでけえみたいな。そう考えると、利益のことを考えたら売上が大事とも言えますよね。
そのうえで西野さんが最も大事だと語るのが、スタッフ全員が大まかなPLを理解し、今が投資開発のフェーズなのか回収のフェーズなのかを把握することです。
ここで西野さんは、赤字と投資は全然違うと強調します。同じマイナスでも、それが赤字なのか投資・開発なのかで意味がまったく変わるという話です。
例として挙げたのが、去年の夏に作ったミュージカル『えんとつ町のプペル』です。制作に四億五千万円ほどかかり、単体で見れば赤字だったといいます。
しかしそれがグッズ制作の源泉となり、『えんとつ町の小さな音楽会』というイベントにもつながりました。みんなが知っている曲を生で聴きたいというニーズが、次の売上を生み出しているのです。
あれは投資であり開発であるから、今あれをやったおかげで、ずっと僕たちはミュージカル『えんとつ町のプペル』の楽曲を歌うっていうイベントをずっと打つことができる。
つまり、回収のフェーズにいるのに利益が出ないのは問題だが、投資開発のフェーズなら赤字が出ても問題ないという整理です。今どのフェーズに立っているかを全員が把握して働くことが大事だと締めくくっています。
回収フェーズなのに利益が出ていない状態。改善が必要
将来の売上のためにあえてマイナスを出す状態。次のイベントや商品につながる
稲刈りを終えて
エピソードの最後に、種子島での稲刈りを終えた感想が語られています。チムニータウンのクリエイティブキャンプとして、経営者やクリエイターとともに鎌で稲を刈ったといいます。
みんなで声掛け合いながら、お茶飲んで、おむすびとか食べて、稲刈るぞってやってたんですけど、いや最高だったっすね。青春だったしね。
農家さんへの感謝も口にしていました。お米をいただくときには、この日の時間を思い出すだろうと話しています。完成した米は種子島産コシヒカリで、オリジナル麻袋付きの限定三百袋として届けられます。
まとめ
売上と利益はどちらも大事で、より重要なのは自分たちが今どのフェーズにいるかを把握することだと西野さんは語りました。プラットフォームが用意する物差しは一つにすぎず、どの物差しを選ぶかが問われる、というのがこの回の核心です。
- 競争せず、自分が関所となるポジションを取ることを若手に勧めている
- 再生回数やフォロワー数など、プラットフォームの物差しは数ある一つにすぎない
- チムニータウンで働くのに必要なのは、明るさと営業ができること
- 赤字と投資は違い、今が投資開発か回収のフェーズかを全員が把握することが大事
- ミュージカル制作は単体では赤字でも、次のイベントやグッズにつながる投資だった
