なぜ投資村は「説教番組」にならなかったのか
先日、『投資村』の収録がありました。仕組み自体は至ってシンプルなんです。
挑戦者が自分の事業をプレゼンして、その後に質疑応答を行う。事業に可能性を感じた投資家から、その場で投資が集まっていく。
事業投資型クラウドファンディングを組み込んでいることを除けば、いわゆるビジネスピッチ番組のよくあるフォーマットです。
ただ、結果として、こういう番組にありがちな、志願者を説教する番組にはならなかったんですね。
自分で言うのは恥ずいんですけど、その理由の一つは間違いなく話術なんです。現場にプロの芸人が3人いました。
要所要所で小さいボケとツッコミの応酬が入る。この小さい笑いが、番組全体の空気をほぐして、テンポを生んで、観客の皆さんを画面に留めてくれるんです。
笑いがむずいから、怒りで場をつなぐ
厳しいことを言えば、この空気感やテンポ感を、経営者だけで作るのはちょっと難しいんですね。そっちのプロじゃないですから。
だから経営者さんがこういう番組をやると、画を持たせるために、揉めるとか怒るとか説教するといった、強い感情をアクセントとして置く必要が出てくる。
エンタメが笑いではなく、怒りの方になっちゃうんです。やっぱり笑いがむずいからです、シンプルに。
ボケてツッコんでっていうのは、やっぱりむずいんですよね。だから怒りの方で場をつなぐみたいになる。
世の中に数多あるビジネスドキュメンタリーには、そういう構造が少なからずあるように思います。
今やっている仕事の根っこに、ずっと漫才があった
そんなことを考えていたら、ふと気づいたんです。
投資村でのほんの数秒のやりとり。絵本を作るときのフリとオチ。ミュージカルを作るときのテンポ。映画を作るときの緊張と緩和。
一人で喋る講演会でどこで声を張るか。企画会議でどうプレゼンを組み立てるか。現場で何百人ものスタッフにどういう言葉を紡いで、一つの方向を向いてもらうか。
考えてみたら、今僕がやっていることのすべてが、全部漫才から学んだことなんですね。
ここではこれぐらい声を張った方がいいとか。この場面ではこの言葉を選んだ方が伝わるとか。ここは一旦たとえ話を挟んどいた方がいいとか。
今お客さんが離れてるから、ここでひと笑い入れておいた方がいいとか。説明するよりも笑わせた方が空気が動くとか。
こういうことは、誰かに教わったわけじゃないんです。客前に立って何万回も受けてすべって、そのたびに修正して、舞台に立ち続ける中で体に叩き込まれていったものなんです。
今僕は、その財産で食っています。一見すると漫才とは何の関係もない仕事に見えて、その根っこにはずっと漫才があるんですね。
そう考えると、僕にとっての漫才は、単なる一つの職業ではなかったんだなあと思います。キャリアの最初に漫才師になったこと、それは今振り返ると、僕にとって最大の幸運であり、奇跡だったのかもしれません。
河口湖で、原点の新ネタを一本だけ試します
今、僕はもう一度、漫才と向き合っています。久しぶりに漫才を書いたらがっつり鈍っていたんですけど、あれから少しずつリハビリを続けています。
ありがたいことに、徐々に感覚が戻ってきました。2本目の漫才がもうすぐ書き終わります。この感覚が戻ってきたことが、すんごい嬉しいんですよ。
せっかく戻ってきたのなら、いろんなパターンのネタを書いて、お客さんの前で試してみたい。それを受けてまたブラッシュアップしたい。
そう考えていたら我慢できなくなって、スタッフに無理を言って、11月15日の日曜日に新ネタを一本だけ客前で披露させてもらうことになりました。会場は『河口湖 音楽と森の美術館』です。
この漫才は収録も配信もしません。その日、その場所に来てくださったお客さんだけが見られる限定コンテンツです。
全国ツアーでやる予定の新ネタを、あらかじめ別の場所でこっそり試して、お客さんの反応を見て、また直す。これは昔からやってきたことなんです。
舞台に立って笑いが起きたら伸ばす。すべったら変える。その繰り返しの中で、ネタが育っていく。僕の原点はここにあったんです。
25年以上経った今、また同じことをやろうとしています。随分遠くまで来たつもりでしたけど、その全ての景色を見せてくれたのは漫才でした。
だから今もう一度、舞台に戻って、まだ完成していないネタを客前に投げてみることが、もうたまらなく嬉しいんです。
11月15日、河口湖で一本の新しい漫才を試します。何年かぶりに、キングコングの原点を皆さんの前に持っていこうと思います。ぜひぜひ楽しみに待っておいてください。
まとめ
投資村の収録がなぜ説教番組にならなかったのかを考えていて、今僕がやっている仕事のすべての根っこに漫才があったことに気づきました。そのことがたまらなく嬉しくて、11月15日に原点の新ネタを客前で試します。
- 投資村が説教番組にならなかった理由は、プロの芸人が生む小さな笑いのテンポにあった
- 講演も企画会議も作品作りも、根っこにあるのは客前で叩き込まれた漫才の技術
- 笑いは難しいから、経営者だけの番組は怒りや説教で場をつなぎがちになる
- 感覚が戻ってきた原点の新ネタを、11月15日に河口湖で一本だけ試す





